IASB、討議資料「開示に関する取組み - 開示原則」を公表 | KPMG | JP

IASB、討議資料「開示に関する取組み - 開示原則」を公表

IASB、討議資料「開示に関する取組み - 開示原則」を公表

IFRSニュースフラッシュ - 国際会計基準審議会(IASB)は、2017年3月30日、討議資料「開示に関する取組み - 開示原則」を公表しました。

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本討議資料は、財務諸表におけるコミュニケーションを改善するため、IASBがアウトリーチ中に特定した問題に焦点を当ててコメントを募ることを主な目的としている。
なお、コメント期限は、2017年10月2日である。

背景

「開示に関する取組み」は、財務諸表における開示の有効性を改善することを目的に2013年に開始された、複数のプロジェクトのポートフォリオである。IAS第1号「財務諸表の表示」の改訂(2014年12月)、IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」の改訂(2016年1月)はすでに完了し、現在は重要性の適用に関する2つのプロジェクトと、本討議資料「開示原則」、及び「基準レベルにおける開示の見直し」に関するプロジェクトの4つが進行中となっている。「開示原則」は、「開示に関する取組み」プロジェクトの一環として、開示における論点を識別したうえで、その開発・明確化によりこれらの問題に対処することを目指すものである。なお、財務報告におけるコミュニケーションの改善に関しては、関連するプロジェクトとして、「基本財務諸表」及び「IFRSタクソノミー」がある。

「開示原則」に関するプロジェクト(以下、「本プロジェクト」という)においては、今後IAS第1号を改訂して、もしくはIAS第1号に代えて、開示一般に関する基準書を開発することを想定している。しかしながら、本討議資料は、IASBが特定した問題及びそれらの問題への対処に関するIASBの予備的見解に対してコメントを募ることを主な目的とするため、開示一般に関する基準書に係る公開草案に含まれるであろうすべての論点を取り扱うものではない。

討議資料の概要

以下では、今回提案された「開示原則」の概要及びIASBの予備的見解を解説する。

セクション1:開示に関する問題の概要と本プロジェクトの目的

IASBは、財務諸表における開示の問題として、以下の3点を特定している。

  • 目的適合性のある情報の提供が不十分
    目的適合性のある情報が十分に提供されないことにより、財務諸表の主要な利用者が、投資等の意思決定を誤るおそれがある。
  • 提供された情報に目的適合性がない
    目的適合性のある情報を埋没させ、財務諸表の理解を低下させるおそれがある。また、財務諸表の作成コストを意味なく増大させている恐れがある。
  • 情報提供におけるコミュニケーションが有効でない
    財務諸表の理解を低下させるおそれがある。


本プロジェクトは開示に関する原則を開発することで、以下を通じて上記の諸問題に対処しようとしている。

  • 企業が、より適切な判断の下に、より効果的に情報の発信を行えるような仕組みを整える。
  • 財務諸表の主要な利用者に対して開示の有効性を改善する。
  • 各基準書に定められた開示上の要求事項を、今後IASBが改善するうえでのガイドラインを提供する。

本プロジェクトは、最終的に開示について扱う現行IAS第1号を改訂するか、もしくは新たに開示一般に関する基準書を開発することを検討するが、あわせて、強制力のないガイダンスを公表することも検討している。

セクション2:効果的なコミュニケーションの原則

本討議資料では、企業が財務諸表においてより効果的に情報を伝達するため、次の7つの原則からなるコミュニケーションの原則を提案している。

  • 企業固有のものであること
  • 明確で単純であること
  • 重要事項を強調するために編成されていること
  • 関連する情報は紐づけられていること
  • 不要な重複がないこと
  • 時点間、及び企業間の比較可能性を最大限確保するものであること
  • 適切な様式(図表等)により提供されていること

これらは、概念フレームワークの改訂プロジェクトにおいて当時の討議資料に含まれていたが、その後、内容が概念的でないとして削除されたものである。この7原則について、今後開発予定の一般開示基準に含めるのが良いか、それとも、強制力のないガイダンスに含めるのが良いかについて、IASBの予備的見解は示されていない。

なお、様式に関しては、強制力のないガイダンスとして、より詳細なガイダンスを用意する予定としている。

セクション3:基本財務諸表と注記の各役割

本討議資料では、基本財務諸表及び注記の役割を以下のように検討、開発予定の一般開示基準に本整理を含めることとしている。

財務諸表の構成要素 役割

基本財務諸表は、以下で構成される:

  • 財政状態計算書
  • 純損益及びその他の包括利益計算書
  • 持分変動計算書 そして
  • キャッシュ・フロー計算書

以下の観点から重要な情報を比較可能かつ構造化して提供すること:

  • 企業の資産、負債、資本、収益及び費用について、全体像を見せる。
  • 企業間、同一企業の時点間での比較を可能とする。
  • 注記を通じて追加的な情報を得るべき項目・エリアを、財務諸表の利用者が識別できるようにする。
注記 基本財務諸表の説明と補足

IASBはまた、上記の与えられた役割を果たすうえで基本財務諸表はどうあるべきかの整理を行っている。情報を基本財務諸表上で別掲表示すべきかどうかは基本財務諸表の役割に照らして検討され、別掲表示がされなかった場合に、注記による情報提供の要否が検討されることとなる。あわせて、「表示」「開示」といった表現が、現行基準においては情報提供の場所(基本財務諸表上か、注記内か)を必ずしも規定するものではないとしたうえで、予備的見解として、今後の基準開発においては財務諸表内のどの場所で情報が提供されるべきかを明記すべきとしている。

セクション4:情報の記載場所

本討議資料では、今後開発する一般開示基準において、情報の記載場所に関する以下の原則を導入することを、予備的見解として提案している。

IFRSを遵守するために必要な情報 非IFRS情報※

次の要件を満たす場合には、財務諸表の外で開示することができる。

  • 年次報告書の中で開示されている。
  • 財務諸表外で開示することで年次報告書全体がより理解しやすくなり、その一方、財務諸表は引き続き理解可能で、情報は忠実に表現されている。
  • 財務諸表に明示された相互参照によって明確に識別され、財務諸表に組み入れられる。

次の要件を満たす場合には、財務諸表内に開示することができる。

  • 非IFRS情報であることが特定され、監査対象外であればその旨識別されている。
  • 財務諸表がIFRSに遵守していることの記載とともに、どのような非IFRS情報が財務諸表に含まれているかがリスト化して記載されている。
  • 当該情報の有用性について説明されている。

※IFRSで個別に要求されている情報(カテゴリーA)にもIFRSに準拠するうえで追加的に必要となる情報(カテゴリーB)にもあたらない情報(カテゴリーC)に該当

なお、IFRSと整合しない特定の情報について、上表の「非IFRS情報」として識別するにとどまらず、その財務諸表内での開示を禁止もしくは制限すべきかどうかについて、本討議資料は意見を求めている。

セクション5:財務諸表における業績指標の利用

本セクションは、財務諸表における業績指標(例:調整後営業利益、調整後EBITDA)を扱っている。

業績指標のうち、基本財務諸表上で別掲、もしくは小計表示として示されるものは、別途「基本財務諸表」プロジェクトで行われるため、ここでは包括的な議論の対象としては扱わないものの、以下の2点について意見が求められている。

  • EBIT/EBITDAを財務業績の報告書(包括利益計算書など)内に表示することは、IFRS基準書に鑑み忠実な表現と考えられるか
  • 非通例的な、または頻繁に発生しない項目の表示に関してガイダンスを提供すべきか

上記以外の、財務諸表内に表示もしくは開示されるあらゆる業績指標については、その表示・開示の場所を問わず、すべて、「開示に関する取組み」プロジェクトの初期の成果物である2014年のIAS第1号の改訂で導入された、「追加的な小計等の表示」に関する要求事項に準ずる要件を、今後開発する一般開示基準において設けることが提案されている。

セクション6:会計方針の開示

本討議資料は、今後開発する一般開示基準において、どの会計方針をなぜ開示する必要があるかを企業がより理解できるようにするために、会計方針の開示の目的を説明すること、また、会計方針を次のように3つに分類し、財務諸表を理解するために必要な会計方針(分類1及び分類2)のみを開示することを提案している。分類3の会計方針の開示も禁止はされないが、それによって、重要な情報が曖昧になったり財務諸表が理解しにくくなったりする場合はその限りではない。

 

分類1 - 財務諸表を理解するために常に必要
重要な項目、取引または事象に関する会計方針で、財務諸表の理解において常に必要なものであり、具体的には次のいずれかに該当するもの:

  • IFRS基準上、会計方針の選択が可能
  • 変更された会計方針
  • IFRS基準上の定めがない
  • 重要な判断や仮定に基づく


分類2 - 分類1ではないが財務諸表を理解するために必要

分類1には該当しないが、定量的、もしくは定性的に、企業にとって重要な項目、取引または事象に関連する会計方針


分類3 - 分類1及び分類2ではないが、財務諸表の作成に使用される
財務諸表の作成に使用されるその他のすべての会計方針


IASBは予備的見解として、会計方針の記載場所につき、一括してひとまとめに記載しても、それぞれが関連する項目の注記の部分に記載してもよい、また、両者を組み合わせてもよい、としている。分類3の会計方針の開示はIFRS上の要求事項ではないため、セクション4で述べた、財務諸表外でのIFRS情報の開示に関する要件は適用されない。また、予備的見解として、重要な判断及び見積りに関する開示は原則として関連する会計方針の開示場所に近接して記載すること、また、どこに記載されているかを明示的に説明することが示されている。会計方針の記載場所に関するこれらのガイダンスについては、開示一般に関する基準書に含めるべきか、それとも、強制力のないガイダンスに含めるべきかについて、意見が求められている。

セクション7:中心的な開示目的

IASBは、財務諸表の目的や注記の役割を考慮する、核となる開示目的を設定することを提案している。まだ詳細な議論はなされていないが、次の2つの方法が特定されており、いずれかの方法がよいか、他に望ましい方法がないかについての意見が求められている。

  • 方法A:企業の資産、負債、資本、収益及び費用について開示される様々な種類の情報に焦点を当てる。
  • 方法B:企業の将来正味キャッシュ・インフローの予測や、経営者の管理責任の評価を行う際の財務諸表利用者の視点をより反映する、企業の活動に関する情報に焦点を当てる。

また、IASBは、IFRSにおけるすべての開示目的及び要件を、財務諸表のすべての開示について定める単一(もしくはエリア別に複数)の基準にまとめるべきかどうかについても検討している。

セクション8:ニュージーランド会計基準審議会スタッフによるIFRSにおける開示要件の作成アプローチ

セクション8では、ニュージーランド会計基準審議会のスタッフが作成したアプローチについても意見を求めている。当該アプローチの主な特徴は、次のとおり。

  • 各基準において、当該基準における全般的な開示目的と、それを満たすための個別開示項目に対応するサブ目的とを設けること
  • 要開示事項を以下の2つの階層に区分すること
    • 要約情報(重要性評価の対象となるがすべての企業が開示する)
    • 追加情報(開示目的を満たすために企業が開示を検討する)
  • 開示目的を満たすために開示対象、開示方法を決定するにあたり、企業が判断を行う必要性を強調すること
  • 開示要件において規範的ではない表現とすること

本アプローチについて、IASBは現時点では特段の見解を有していない。しかしながら、今回の意見募集によって寄せられたフィードバックによっては、開示に関する取組みの次のステップである「基準レベルにおける開示の見直し」のプロジェクトにおいて、本アプローチを考慮することも検討している。

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