IFRS Newsletter: IFRS 9 Impairment - Issue 4 | KPMG | JP

IFRS Newsletter: IFRS 9 Impairment - Issue 4 2017年2月の審議の動向

IFRS Newsletter: IFRS 9 Impairment - Issue 4

このニューズレターでは、IFRS第9号「金融商品」の減損規定に関するIASBの審議(2017年2月)について最新情報を提供しています。

関連するコンテンツ

“IASBは、クレジットカードのようなリボルビング与信枠のエクスポージャーの期間をどのように決定するかについて審議した”


2017年2月の会議において、IASBはIFRS第9号「金融商品」の減損規定を適用する企業に困難をもたらしている分野について審議を行った。審議では、信用リスク管理の活動を、IFRS第9号 第5.5.20項の適用範囲に含まれる金融商品(すなわち、クレジットカードのようなリボルビング与信枠)の予想信用損失を測定する際のエクスポージャーの期間の決定にどのように織り込むかが論点となった。

IASBスタッフは、関連するIFRS第9号の規定の概要及びIFRS移行リソース・グループ(IFRS Transition Resource Group for Impairment of Financial Instruments, ITG)のメンバーが会議において示した関連する見解(observation)を提供した。主な見解は、IFRS第9号B5.5.40項をどのように適用するかに関するものであり、以下について再確認することを含んでいた。

  • エクスポージャーの期間を決定する際に、企業はB5.5.40項に記載されている3つの要素すべてを検討することを要求される。すなわち、企業は信用リスク管理活動がエクスポージャーの期間に影響を及ぼすか否か、また(及ぼすとすれば)どのように及ぼすのかについて検討する。
  • 企業が一部の金融商品について信用リスク緩和の活動を実施しないことを選択した場合、この決定は関連する金融商品の予想残存期間に影響を及ぼす。
  • 企業は、信用リスク管理活動の影響を、それらが信用リスクを緩和する限り検討することを要求される。

スタッフはまた、B5.5.40項の原則をどのように適用することができるかに関する簡素化された設例も提供した。

IASBは、スタッフの概要に対して質問またはコメントを提示しなかった。


次のステップ
スタッフは、この論点及びその他の困難を生じさせている分野に関して、IFRS第9号の適用を支援するために必要である場合には、教育的資料を作成する意向があることをIASBに示した。

リボルビング与信枠のエクスポージャーの期間

IFRS第9号に基づいて予想信用損失を測定する際に、クレジットカードのようなリボルビング与信枠の エクスポージャーの期間をどのように決定するか?

 

“企業はIFRS第9号B5.5.40項に記載されている3つの要因すべてを検討することを要求される”


論点
IFRS第9号は一般に、予想信用損失を測定する際に企業が考慮すべき最長の期間は信用リスクに晒される最長の契約期間であることを要求している。それより長い期間が事業慣行と整合する場合でも、その長い期間を使用することはできない。

ただし、IFRS第9号第5.5.20項は、この要求事項に対する限定的な例外規定を設けている。ローンと未使用コミットメント部分の両方を含んでいる金融商品がこの例外規定の対象となる。このような金融商品の場合、返済を要求し未使用のコミットメントを解約する企業の契約上の能力は、企業のエクスポージャーを契約上の通知期間に限定しない。一般的なクレジットカードは、このような商品の例の1つである。この条項の解釈は実務上困難であることが証明されており、複数回にわたりITGによる議論の対象となっている。困難をもたらしている分野の1つは、IFRS第9号第5.5.20項の適用範囲に含まれる金融商品のエクスポージャーの期間をどのように見積るかということである。

IFRS第9号B5.5.40項は、第5.5.20項の適用に係るガイダンスを提供するとともに、エクスポージャーの期間を決定する際の以下の3つの要因について検討することを企業に要求している。

a. 企業が類似の金融商品についての信用リスクに晒された期間

b. 信用リスクが著しく増大した後に発生した、類似の金融商品についての関連する債務不履行の期間の長さ
c. 金融商品に係る信用リスクが増大した場合に企業が実施することが見込まれる信用リスク管理活動(例:未使用利用可能枠の引下げまたは撤廃)

上記の要求事項、特に(c)を実務においてどのように適用するかについて、疑問が呈されている。

 

ITGがこれまでの会議で審議した事項
これまでのITGの審議では、このトピックに関する論点を検討した(IFRS Newsletter: IFRS 9 Impairment - Issue 1及びIFRS Newsletter: IFRS 9 Impairment - Issue 3を参照)。2015年12月の会議では、B5.5.40項をどのように適用すべきかについて審議した。企業は、エクスポージャーの終了時点(end-point)を決定するために、実施することが見込まれる信用リスク管理活動で、かつ信用リスクを緩和することを目的としているもののみについて検討することを明確にした※1

※1 公式議事録のparagraph 40を参照のこと。

 

2017年2月のIASBの審議

“主な見解はB5.5.40項の適用方法に関するものであった”


スタッフは、分析において企業が実施すべき最初のステップは、ある金融商品が第5.5.20項の適用範囲に含まれるか否かを決定することだと指摘した。

スタッフは、B5.5.40項の適用方法について以下の見解を示した。

  • 第5.5.20項の適用範囲に含まれる金融商品についてのエクスポージャーの期間を決定するうえで、企業はB5.5.40項に記載されている3つの要素すべてを検討することを要求される。これは、信用リスク管理活動によって、最初の2つの要素のみを企業が検討する場合よりもエクスポージャーの期間は短くなるか、また、どのように短くなるかについて企業が検討することを意味している。
  • 企業の信用リスク管理方針(信用リスク管理活動を実施する閾値(threshold)及びこのような活動の性質を含む)は関連する要素である。
  • 企業が信用リスクの増大に気付いた時に信用リスク緩和の活動を実施しないことを選択する場合、この決定は関連する金融商品のエクスポージャーの期間に影響を及ぼす。
  • 実質的な信用レビューは、このプロセスの一部として信用リスク緩和の活動を実施することが企業の通常の事業慣行であり、このような活動の実施が見込まれている場合には、エクスポージャーの期間の終了時点である可能性がある。
  • 企業が信用リスクが増大した金融商品のすべてではなく一部について、信用リスク緩和の活動を実施することが見込まれる場合、これを分析において考慮する必要がある。
  • 企業は信用リスク管理活動の影響を、その信用リスク管理活動が信用リスクを緩和する限り考慮することを要求される。すなわち、予想残存期間を制限することが見込まれる限り考慮する。ポートフォリオを、エクスポージャーが管理されている方法を反映して異なる部分に分割し階層化する企業の能力は、この点で関連している。
  • 使用部分と未使用部分の両方に平等に適用される与信枠のエクスポージャーの最長期間を決定する際に検討すべき期間は1つのみである。ただし、信用リスク緩和の活動は使用されたコミットメントと未使用のコミットメントに異なる影響を及ぼす可能性がある。例えば、未使用部分をゼロとすることにより、将来の引き出しの可能性はなくなるが、使用部分について返済が要求された場合には、この使用されたエクスポージャーの回収期間を予想信用損失の測定において引き続き考慮しなければならない。

 

“IASBスタッフは、簡素化された設例を提供した”
 

スタッフは、B5.5.40項の原則の適用方法について、以下の簡素化された設例を提供した。設例では、実質的な年次信用レビューの対象となっている100の与信枠のポートフォリオで、その後に信用リスク緩和の活動(すなわち、未使用利用可能枠の撤廃)を行う可能性があるものについて検討している。企業は以下のシナリオが次のレビュー実施日までに生じると予想している。

ポートフォリオの
セグメント
A B
与信枠の数 30 70
信用リスクの増大があったか? 有り 無し
信用リスク緩和活動は行われたか? 有り(30の与信枠のうちの15は有り、残りの15は無し) 無し

スタッフは、このシナリオについて以下の説明を行った。

  • 企業は、信用リスクの増大が見込まれる30の与信枠(セグメントA)のエクスポージャーの期間を、残りの70の与信枠(セグメントB)とは別個に決定する。
  • B5.5.40(c)項に基づき、企業が未使用利用可能枠の撤廃を行うことが見込まれるセグメントAの15の与信枠のエクスポージャーの期間は、存在する未使用部分に応じて短くなる。
  • セグメントAの残りの15の与信枠及びセグメントBの与信枠については、B5.5.40(a)項及びB5.5.40(b)項に従って、予想残存期間は類似の金融商品の過去の情報及び実績に基づき決定する。

 

KPMGの見解
実務上は、上述のスタッフの簡素化された設例よりも、さらに複雑な分析が必要となる可能性がある。複雑さをもたらす可能性のある事項として、以下が含まれる。

  • B5.5.40(c)項に基づいて予想残存期間が短くなっているセグメントAのエクスポージャーに関しては、未使用利用可能枠がゼロとされた時点で使用残高の回収期間について検討する必要がある。
  • セグメントAのその他のエクスポージャー及びセグメントBのエクスポージャーは、さらなる信用リスク管理活動の実施へとつながるその後の信用レビューの対象となる可能性がある。
    • セグメントAのその他のエクスポージャーは、レビュー時に特定された信用リスクの増大に基づき、次の年次信用レビュー後に、より頻繁なまたは集中的なレビューの対象となる可能性がある。
    • B5.5.40(a)項及びB5.5.40(b)項について検討した結果、予想残存期間が次の年次信用レビューを12ヶ月以上超過することが示された場合、次のレビューの結果も同様に検討することが必要となる可能性がある。

 

次のステップ

“スタッフは教育的資料を作成する意向がある”
 

スタッフはこの論点及び他の困難を生じさせる分野に関して、IFRS第9号の適用を支援するために必要となる場合には、教育的資料を作成する意向があることをIASBに報告した。IASBはこの件、及びその他のスタッフが提出した概要に対して、質問またはコメントを提示しなかった。

これまでの経緯

IFRS第9号「金融商品」によって導入される金融商品の減損に関する新たな予想信用損失モデルは、銀行がローン・ポートフォリオに係る信用損失を会計処理する方法、並びに関連するシステム及びプロセスに重大な影響を与えることになる。
 
市場関係者が適用上の論点に対処できるようにするために、IASBは金融商品の減損に関するIFRS移行リソース・グループ(ITG)を立ち上げた。
 
ITGは2015年4月、9月及び12月に会議を開催した(KPMGはそれらの会議について IFRS Newsletter: IFRS 9 Impairment - Issue 1IFRS Newsletter: IFRS 9 Impairment - Issue 2、及び IFRS Newsletter IFRS 9 Impairment - Issue 3を公表している)。現在のところ、今後の会議は予定されていない。ただし、ITGは今後も存在し、市場関係者は引き続き論点を提出する可能性がある。

ITGについて
ITGの目的 ※2は、以下のとおりである。
  • 市場関係者から適用上の論点を聞き出し、分析及び審議を行う。
  • これらの適用上の論点をIASBに報告し、IASBがこれらの論点に対処するために、措置を講じる必要があるとすればどのような措置かを決定できるようにする。
  • 市場関係者が適用に関与した他の関係者から新たな減損規定について学ぶための公開フォーラムを開催する。
ITGは基準設定の権限を有しておらず、IASBに助言を提供することを目的としている。ITGメンバーには、銀行及びアカウンティング・ファームの代表者が含まれている。
 
特定のIASBの理事、並びにバーゼル銀行監督委員会及び証券監督者国際機構(IOSCO)の代表者も、ITG会議のオブザーバーである。IASBの理事が会議の議長を務めている。
 
IASBのスタッフが作成するITGのアジェンダ・ペーパー及び議事録は一般に公表されている。また、すべての会議が公開されている。
 
※2 ITGの目的及び活動の詳細については、IASBの ウェブサイトで提供している。

これまでの審議の状況

2015年4月22日

ITGの索引 ITGの審議事項
1 予想信用損失を測定する際に考慮すべき最長の期間
2 将来の経済状況の予測
3 ローン・コミットメント - 適用範囲
4 リボルビングの与信枠
4.1 予想信用損失の測定に用いる適切な期間の決定
4.2 信用リスクの著しい増大を評価するための当初認識日の決定
5 保証付負債性金融商品の信用リスクの著しい増大の評価
6 発行された金融保証契約の予想信用損失の測定
7 予想信用損失 - 測定日
8 条件変更された金融資産の予想信用損失の測定

 

2015年9月16日

ITGの索引 ITGの審議事項 
1 信用リスクの著しい増大
1.1  広い信用の質の範囲に対して価格設定が行われているローンに関する信用リスクの変化の評価方法
1.2  信用リスクの著しい増大を特定するための行動指標の使用の可否
2 ステージ判定における12ヶ月のデフォルト率の変化の利用
3 リボルビングの与信枠の予想信用損失の測定
4 将来予測の情報
4.1 将来予測の情報の差別化
4.2 「合理的かつ裏付け可能な情報」の判定

 

 2015年12月11日

ITGの索引 ITGの審議事項
1 将来予測シナリオの織り込み
1.1
企業は予想信用損失の測定に、単一の将来予測の経済シナリオを使用することはできるか?または、複数の将来予測の経済シナリオを織り込まなければならないか?その場合は、どのように織り込むのか?
1.2 企業は信用リスクが著しく増大したか否かの決定において、どのように将来予測の経済シナリオを織り込むのか?
2 IFRS第9号第5.5.20号の適用範囲
3 チャージ・カードの予想信用損失の測定
4 リボルビングの与信枠の予想信用損失の測定期間
5 担保及びその他の信用補完と予想信用損失の測定
6 予想信用損失の測定における、不履行に陥ったローンの売却から予想されるキャッシュフローの取扱い
7 現在の実効金利という用語の意味
8 満期までの期間が12ヶ月未満の金融資産の信用リスクの著しい増大の評価
9 信用が毀損した金融資産の信用損失引当金の測定
10 償却原価で測定される金融資産の信用損失引当金の表示

英語コンテンツ(原文)

このページに関連する会計トピック

会計トピック別に、解説記事やニュースなどの情報を紹介します。

このページに関連する会計基準

会計基準別に、解説記事やニュースなどの情報を紹介します。

IFRS 9 Impairment Newsletter

お問合せ

 

RFP(提案書依頼)

 

送信