地方銀行の経営統合~統合準備態勢(PMI) | KPMG | JP

地方銀行の経営統合~統合準備態勢(PMI)

地方銀行の経営統合~統合準備態勢(PMI)

地方銀行の経営統合に至るまでの統合準備態勢(PMI)の考え方についてご紹介いたします。

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地方銀行の経営統合案件が増える傾向にあります。経営統合を機に統合効果(シナジー)を発揮するためには、そこに至るまでの準備段階で経営統合後の絵姿(統合基本方針)を具体的に描く必要があります。この統合基本方針の立案やその実行のための一連の活動をPMI(Post Merger Integration)と呼びます。統合当事者行がPMIに一丸となって取り組むことにより、異なる複数の銀行が経営統合後には1つの目標に向かって企業活動を迅速かつ機動的に展開することが可能になります。
ここでは、経営統合後の組織が円滑に運営され、シナジーを発揮するために、経営統合の準備段階でどのような態勢を整備し運用していくべきかについて解説いたします。

経営統合の場合、当初から経営統合日(Day1)は統合当事者行間で決められますので、統合準備のプロジェクトは初めから期日が設定されたものになります。その間に、法令や規制への対応を進めながら経営統合後にシナジーを発揮するために、さまざまな方針決めから戦略・施策の立案を計画的に進めなければなりません。金融庁も「単に足し合わせただけでは意味がない」といった趣旨のコメントを発しているように、経営統合により収益性や生産性を高めるような効果をもたらすことが必要です。こういった命題に応えるべく、経営統合準備の段階でフェーズごとに対処すべきタスクを整理し、Day1までに確実に対処していくことが重要になります。

(1)基本合意までの態勢

多くの場合は、統合当事者行で基本合意が締結されたタイミングで経営統合について協議しているという事実がプレスリリースされます。したがって、それまではFA(ファイナンシャル・アドバイザー)などの協力を得ながら、経営企画部などを中心に少人数のコンフィデンシャルなプロジェクトとして基本合意に向けた検討を進めていくことになります。
基本合意までに何をどこまで決定するかはケース・バイ・ケースになりますが、理想的には予備的なデューデリジェンスをお互いに済ませ、統合比率やトップ人事などについても合意するところまで達していることだと考えます。しかし、我が国の経営統合事案においては、地方銀行の場合に限らずそこまで至らない状態で基本合意を締結するケースが少なからず見受けられます。
基本合意における決定事項が少なかったとしても、それらは最終合意までに決定する事項になるわけですが、基本合意までにどこまで合意することにするかは統合当事者行間で早期に決定しておくことが重要です。基本合意までの合意内容が多ければ、(前述のようにコンフィデンシャルな状況下ですので)それに従事するプロジェクトメンバーの負担も多くなると言えますが、少数精鋭部隊でそれに対峙した方が結果的にスムーズに事が運ぶ場合もありますので、それも加味して合意内容の範囲を決めることが必要でしょう。
また、経営統合の手法(持株会社形態か合併かなど)に合わせ、経営統合後の絵姿がイメージできるような統合基本方針の全体像を統合当事者各行がこの段階できちんと共有しておくことが重要です。

(2)基本合意から最終合意まで

基本合意が締結されプレスリリースがされるとオフィシャルなプロジェクトとして統合当事者各行において態勢が整備され始動することになります。経営統合に限らず、多人数が参画するプロジェクトにおいては動き出しが最も肝心です。
この段階で統合当事者各行の強みや弱みとともに、重複業務などで集約可能なものについて整理されることが必要です。それらを踏まえ、トップラインを伸ばすシナジー(トップライン・シナジー)とコストを抑制するシナジー(コストダウン・シナジー)のそれぞれを享受するための具体的な戦略や施策を練ることになります(※)。また、それらを経営統合後の中期経営計画にどのように反映させるかが同時に検討されます。
これらを推進するための態勢として、マネジメントを中心として統合準備委員会が組成され、統合当事者各行に統合準備事務局、さらには機能別の分科会(一般的に5~10ぐらい)、さらにその機能を細分化した作業部会などが設置されることが通常です(下図)。しかしながら、経営統合を経験したことのない銀行においては、これらに参画する行員は具体的にどのようなタスクをどのように進めていくのか要領を得ないこともあります。また、統合準備事務局も複数の分科会が一斉に活動を開始するため、それらの進捗をコントロールすることがマンパワーの観点からも難しくなることが想定されます。経営統合準備段階において外部のアドバイザーを採用して運営をサポートしてもらうケースが多いのはこのためです。

各分科会が同じ方向を向いて議論を進めていくためには、(1)で言及したような統合基本方針の全体像を各行員が共有することが重要です。それが共有されていなければ、例えば持株会社傘下に統合当事者各行が入る場合などは、店舗戦略や人事方針などをどのように整理するのかについて、議論が拡散する可能性があります。また、各分科会も統合基本方針の下、経営統合後の経営者の目線で物事を考えることが重要です。各行でこれまで運用してきた慣習やルールは、統一化しなくても法令やその他規制に照らして問題なければ当面はそのまま並行運用で良いという結論に実務者レベルではなりがちです。しかし、経営統合後の経営管理のために統一化などが必要かどうかはグループ経営者の視点で考えるべきです。例えば、経営者が重視している経営指標や財務数値などは、グループ経営の視点からは同じ手法で算出されたものを傘下各行で用いなければ、経営判断をする上での有用な情報としての価値が損なわれることもあり得ます。
こうした検討を統合当事者行間で積み重ねることによって、前向きな経営統合の機運が生まれます。そして、これら分科会の活動における合意事項や施策、最終的なデューデリジェンスなどを踏まえ、統合準備事務局を中心に最終合意の骨子がまとめられるとともに、経営統合後に発揮されるシナジーが整理され統合基本方針の具体化が進むことになります。

(3)最終合意からDay1まで

最終合意を経てからは統合基本方針の実現に向け、実務的な課題への対処も含め各分科会においてより闊達な議論が展開されます。ここでの活動が活発であればあるほど人的関係も含めた組織風土の融合がうまくなされると言えます。
この段階では、(2)までの議論を踏まえ、Day1以降の早期取組みシナジー(クイックウィン)への施策や規程類の調整、人事の確定、新組織の広報活動など、より具体的かつ実務的な対応への最終確認がされます。


※ トップライン・シナジーとコストダウン・シナジーの解説については以下をご参照ください。

地方銀行の経営統合 - シナジーの発揮

また、財務報告関連の統合準備対応については以下をご参照ください。

地方銀行の経営統合時における財務報告関連の対応

執筆者

株式会社KPMG FAS
パートナー 中尾 哲也

有限責任 あずさ監査法人
金融事業部
パートナー 宮田 世紀

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