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IFRS第2号「株式に基づく報酬」について音声解説付きスライドにより分かりやすく解説します。

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株式に基づく報酬取引とは

株式に基づく報酬取引とは、株式に基づく報酬契約により、企業が財またはサービスを受け取る取引をいう。
具体的には、企業と、従業員などの取引相手との契約で、企業の株式やストック・オプションまたは、株価を基礎とする金額に相当する現金などを受け取る権利を、取引相手に与え、企業が取引相手から、対価として財またはサービスを受け取ることをいう。
財またはサービスの主な例として、取引相手である従業員の継続的な勤務が挙げられる。

株式に基づく報酬取引の分類

株式に基づく報酬取引は、従業員等の取引相手から受け取る、財またはサービスの対価の種類に基づき、持分決済型、現金決済型、現金選択権付き、の3つに分類される。
持分決済型は、企業が株式、ストック・オプションなどを発行し、決済する取引であり、現金決済型は、企業の株価を基礎とする金額に相当する現金などで、決済する取引である。現金選択権付きは、企業、または従業員などの取引相手が、持分決済型、または現金決済型のいずれによるか選択権を有する取引である。

権利確定条件1

株式に基づく報酬取引において、従業員等に勤続期間や企業の業績達成などの条件が付されることがある。
これらの条件は、企業が従業員等から、対応する財・サービスを受け取っているか否か、すなわち、株式に基づく報酬の権利が確定しているか否かを決定する条件になるため、このような条件を、権利確定条件という。
したがって、株式に基づく報酬契約上、権利確定条件が付与されている場合には、従業員等は、権利確定条件が達成された場合に、株式に基づく報酬を受け取る権利を得ることができる。

権利確定条件2

権利確定条件には、勤務条件、または、業績条件の2つがある。
勤務条件は、従業員などに一定の勤務期間を達成することを求める条件であり、例えば、2年間の継続勤務を求める条件が該当する。
業績条件は、勤務条件に加えて、所定の業績目標を達成することを求める条件であり、業績条件には、企業の株式等に関連する「株式市場条件」と、企業の営業または活動に関連する「株式市場条件以外の業績条件」がある。
株式市場条件には、例えば、一定の株価目標の達成などがある。
株式市場条件以外の業績条件には、例えば、一定の利益目標の達成などがある。

株式に基づく報酬取引の認識

株式に基づく報酬取引の認識時点は、企業が株式報酬により、財またはサービスを受け取った時である。
従業員等からサービスを受け取る例では、株式に基づく報酬契約による付与日から権利確定日まで一定期間の勤務を求める権利確定条件がある場合、この権利確定期間にわたって、受け取ったサービスを認識する。

株式に基づく報酬取引の認識(借方)

株式に基づく報酬取引により受け取った財またはサービスは、資産または費用として、借方に認識する。
企業が受け取った財またはサービスが、資産の認識要件を満たしている場合は、資産として認識し、資産の認識要件を満たしていない場合は、費用として認識する。
資産として認識する例としては、取引相手であるサプライヤーから受け取った原材料を、資産の認識要件を満たすものとして、企業が棚卸資産として認識する場合がある。
費用として認識する例としては、取引相手である従業員から受け取った勤務に、製品の加工作業時間は含まれていないため、棚卸資産などの資産の認識要件を満たさないものとして、企業が費用として認識する場合がある。

株式に基づく報酬取引の認識(貸方)

次に、株式に基づく報酬取引の種類に応じて、資産または費用の相手科目として、資本または負債を貸方に認識する。

すなわち、株式に基づく報酬取引が、株式、ストック・オプションを受け取る権利を付与する、持分決済型であれば、資本企業の株価を基礎とする金額に相当する現金などを受け取る権利を付与する、現金決済型であれば、負債、となる。
現金選択権付きのうち、企業側に現金選択権がある場合、企業に現金で決済する現在の義務がないときは、持分決済型の会計処理に基づき、相手科目を資本とする。
企業に現金で決済する現在の義務があるときは、現金決済型の会計処理に基づき、相手科目を負債とする。
現金選択権付きのうち、従業員等に選択権がある場合には、資本部分と負債部分を含む複合金融商品として取り扱われる。

株式に基づく報酬取引の測定1

持分決済型の株式に基づく報酬取引では、取引の認識時に、借方に資産または費用を計上し、その相手科目として、貸方に資本を計上する。
計上された資産または費用は、企業が受け取った財またはサービスを表す。
この受け取った財またはサービスの公正価値を、信頼性をもって見積れる場合、受け取った財またはサービスの公正価値で、直接測定する。
一方、信頼性をもって見積れない場合、付与した株式、ストック・オプションの公正価値を参照して、間接的に測定する。
なお、最も一般的な「従業員との持分決済型取引」はこれに該当する。
持分決済型では、当初認識後の再測定は実施しない。
また、株式に基づく報酬に対する権利確定日後、権利が確定した株式、ストック・オプションが、後日失効したり、行使されなかった場合でも、認識した資本合計の事後的な修正や、戻入を行うことはできない。

株式に基づく報酬取引の測定2

現金決済型では、認識時点において、受け取った財またはサービスを資産または費用として計上し、その相手科目として負債を計上する。
このとき、受け取った財またはサービスである、資産または費用、および発生した負債は、負債の公正価値で測定する。
現金決済型では、負債の公正価値を各報告日および決済日に再測定し、公正価値の変動を各期の純損益に認識する。

従業員との持分決済型取引の測定

「従業員との持分決済型取引」の測定について見ていく。

従業員との持分決済型取引では、企業は、財、またはサービスとして「従業員の継続的な勤務」を受け取り、借方に費用を認識する。
また、企業は、従業員に、株式、ストック・オプションなどを受け取る権利を付与するので、貸方に資本を認識する。
借方で認識している、企業が受け取った従業員の継続的な勤務の公正価値を直接測定することは困難であるため、貸方の資本、すなわち、付与した「株式、ストック・オプション」の公正価値を参照して、間接的に測定する。
付与した株式、ストック・オプションに市場価格がある場合は、その市場価格に基づいて、付与した株式、ストック・オプションの契約条件を考慮に入れて公正価値を測定する。
市場価格がない場合には、一般に金融商品の価格算定に用いられる評価技法を用いて、付与した株式、ストック・オプションの公正価値を測定する。
測定日は、株式に基づく報酬を受け取る権利の付与日となり、株式に基づく報酬を受け取る権利の付与日は、企業と、従業員などの取引相手が、株式に基づく報酬契約に合意した日となる。

測定時における権利確定条件の取扱い

従業員との持分決済型取引において、株式に基づく報酬費用は、株式、ストック・オプションの付与日の公正価値に、権利が確定すると見込まれる数を乗じて算定する。
権利確定条件は、その条件の種類によって、測定時の取扱いと、付与日後の会計処理が異なる。
付与日の株式、ストック・オプションの公正価値を測定するときの取扱い例えば、一定の株価目標の達成などの、株式市場条件が付与されている場合、付与日の株式、ストック・オプションの公正価値測定にあたり、この条件を考慮に入れる必要がある。
これに対し、例えば2年間の継続勤務を求める「勤務条件」、または、例えば一定の利益目標の達成を求める「株式市場条件以外の業績条件」が付与されている場合、これらの条件は公正価値測定にあたっては考慮に入れず、付与する株式、ストック・オプションの数を見積る際に考慮に入れる。
付与日後の権利確定期間中に、条件が達成されない場合の会計処理
「株式市場条件」については、対象となる株式、ストック・オプションの付与日における公正価値を見積る時点で、株式市場条件が達成されない可能性を考慮に入れて、その公正価値を評価している。
このため、付与日に測定した、株式、ストック・オプションの公正価値については、その後に会計処理の変更は行わず、残りの権利確定期間にわたり、均等按分した費用の認識を毎期継続する。
「勤務条件」、および、「株式市場条件以外の業績条件」については、最終的に条件が達成されず、権利が確定しなかった場合には、「失効」扱いとなり、企業は、失効した数に対応する過去に認識済みの株式報酬費用を戻し入れる。

株式に基づく報酬取引の設例

従業員との持分決済型の株式に基づく報酬取引を想定し、具体的な事例を権利確定期間と権利行使期間に分けて見ていく。

3月決算のA社は、従業員100人に対して20X1年4月1日付で、今後、権利確定日までの3年間勤務するという勤務条件のもと、1株につき100で行使できるストック・オプションを1個ずつ付与した。
権利行使は20X5年3月31日まで可能である。
付与日のストック・オプション1個あたりの公正価値を100とする。
100人の従業員のうち10人は、20X4年3月期までに退職する可能性があり、権利の行使はできないと想定する。

この設例では、付与日は20X1年4月1日、権利確定日は20X4年3月31日、失効日は20X5年3月31日とする。
従業員による権利行使日は20X4年12月24日と仮定する。

また、権利確定条件として勤務条件が付与されており、ストック・オプションの付与日における公正価値の測定にあたり、勤務条件は考慮しない。

権利確定期間の会計処理1

ストック・オプションを付与し、これに応じて企業が従業員等から受け取るサービスは、権利確定期間にわたって報酬費用として計上する。また、このときの相手勘定は、本取引が持分決済型であるため、資本となる。
付与日において、企業は従業員等から付与に対するサービスを受け取っていないため、仕訳なしとなる。
付与日後から権利確定日の仕訳は、報酬費用を借方に計上し、費用計上額に対応する金額を、権利確定期間にわたって資本として貸方に計上する。
なお、各会計期間における費用計上額は、ストック・オプションの公正な評価額のうち、権利確定期間に基づき、当期に発生したと認められる額となる。

権利確定期間の会計処理2

A社の設例を基に、権利確定期間の各期の会計処理を見ていく。

A社は、1個あたり公正価値100のストック・オプションを従業員100人に付与したが、10人は退職する見込みであるため、権利確定日に付与されるストック・オプションの公正価値は90個分となる予定である。
これは、90個という付与数の見積りにあたり、勤務条件が考慮されていることを意味する。
したがって、権利確定日までの報酬費用総額は90個×100で9,000になる。
ここでA社は、ストック・オプションの行使に関して3年間の継続勤務条件のみ付しており、従業員からのサービスが時の経過により提供されると考えられるので、権利確定期間にわたり、この9,000の費用を按分することになる。
つまり、各会計期間の費用処理額は9,000÷36ヶ月×12ヶ月により3,000となる。
したがって、20X2年3月期の費用処理額は3,000、20X3年3月期も、条件に変化がなければ、3,000を費用処理し累計6,000、20X4年3月期も、条件に変化がなければ、3,000を費用処理し累計9,000となる。
各期の仕訳は、借方に報酬費用、および、貸方に資本を計上することになる。

権利確定期間の会計処理3

付与日時点の退職者見込数と実際の退職者数に、差異が生じた場合の会計処理を見ていく。

20X4年3月期に実際の退職者は15人だったことが明らかになったとする。
この結果、権利が確定した従業員は85人となり、実際に付与されるストック・オプションの数は85個となる。
したがって、20X4年3月期末において85個×100で8,500のストック・オプションの公正価値が確定する。
20X2年3月期と20X3年3月期で、それぞれ3,000の報酬費用を計上しているため、20X4年3月期では、それまでの費用計上累計額6,000と、公正価値の最終確定額8,500との差額の2,500の報酬費用および資本が計上される。

権利行使期間の会計処理1

従業員等により権利行使され、権利行使に対して新株発行により対応した場合、IFRSでは、資本の中の表示区分について具体的には定めていないが、ここでは、これまで資本として計上した額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替えることとする。
このときの仕訳は、借方は、現金および、ストック・オプションの付与日における公正価値に相当する資本、貸方は、払込資本を意味する資本となる。
従業員等により権利行使されず、失効した場合、企業は、権利確定日後の資本合計に事後的な修正を行ってはならず、ここでは、仕訳なしとなる。
ただし、資本の中での振替え、すなわち、資本の中のある項目から、他の項目への振替は可能である。

権利行使期間の会計処理2

権利行使期間において、権利行使がされた場合の会計処理を見ていく。
従業員10人がストック・オプションを行使した場合、権利行使時に、従業員は資本の払込みとして1,000を拠出する。
仕訳は、借方、現金預金1,000、貸方、資本1,000となる。この時の資本は従業員による払込資本を意味する。
A社は、行使されたストック・オプションに相当する金額1,000を払込資本に振り替える。
ここでの仕訳は借方、貸方いずれも資本となるが、借方の資本は、権利確定期間を通じて計上したストック・オプション相当分であり、貸方の資本は、従業員がストック・オプションの権利行使を行ったことにより、ストック・オプション相当分が会社の払込資本に振り替わったことを意味している。

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