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German Business Bulletin Vol.91

German Business Bulletin Vol.91

German Business Bulletin Vol.91では、新日独租税条約が企業に与える影響、事例のご紹介、提言、短信など内容と変更点について詳しく解説しています。

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(I)Background & Introduction

5年以上の交渉を経て、2015年12月17日『所得税並びにその他特定の税金に関するドイツ連邦共和国並びに日本国との二重課税撤廃及び脱税・租税回避に関する協定』が東京で取り交わされました。

新日独租税条約(『新DTT』)は、1966年に遡る現在のDTTと差し替わります(1979年並びに1983年に一部改正)。租税条約を例えばオランダや英国と比べると、とりわけ源泉徴収税率は、現在のDTTのデメリットでした。日本の親会社は、ドイツ子会社の収益を日本へ直接送金すると、15%の源泉徴収税を支払わなければなりませんでした。

したがって、新DTTは納税者にも政府にもクロスボーダー投資が拡大できると歓迎されています。

2015年12月の本ニューズレター第90号の税金速報において新DTTの主な特徴について簡単に触れていますが、本号にて日独新DTTの主な内容と変更点についてさらに詳しく最新情報をお届けします。

(II)新日独租税条約が企業に与える10の影響

1. 序文

現行のDTTと比べ、新DTTには、税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトに関するOECDの話し合いを反映した『脱税並びに租税回避防止』という意味が含まれます。アクション6(租税条約の恩恵付与の防止)の最終報告書には、締約国が(a)二重課税を撤廃すること、(b)脱税や租税回避を通じて非課税や軽減課税の機会を設けないこと、について新DTTの序文で両締約国が明確に述べることが求められています。

改正条項や新条項には非課税防止を取り扱っているものもあり、以下を明らかにしています。

2. ハイブリッド事業体

いわゆるハイブリッド事業体は、DTT第4条の意味するところにおいて依然として居住者とみなされません。新DTT第1条(2)に則り、ハイブリッド事業体由来の収入は新協定のもとで恩恵の対象となります。しかし前提条件として、それぞれの収入が、収入の受益者が居住する締約国において課税収入として取り扱われる必要があります。

新DTTの本条項は、ハイブリッド事業体に関する最終報告書で定められたBEPS提言に準拠しています(アクション2:ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの効果の否認)。新しい本条項により、二重非課税所得の発生が回避されます。

これまでは、ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントによって、両締約国において課税されない課税所得が発生していました。

Recommendation:

ハイブリッド事業体の税務処理はかなり複雑なため、新しい規則が貴社の事業に該当すると思われる場合は、ご遠慮なくお問い合わせください。

3. 新日独租税条約が対象とする居住者

新DTT第4条では、居住者、すなわち条約が対象とする人物、条約の恩恵を受ける適格者の定義を述べています。個人と対照的に、例えば企業など非個人に対して、条約目的で住居を決定する、いわゆるタイブレイク・ルールはありません。したがって、各国の法律(税金)に従って企業がドイツと日本の居住者である場合、両締約国の管轄庁が当該企業を新DTTにおいて、どちらの締約国の居住者とみなすべきか相互合意によって決定するように努めることになります。しかしながら、管轄庁には居住地を決定する義務がないため、こうした場合二重課税のリスクが残ります。

Recommendation:

税務の見地から混乱を避けるため、マネジメントの場所が企業の登記地と同じにされることを推奨します(例えば、ドイツGmbHのマネジメントをドイツにおく等)。マネジメントの場所が企業の登記地と異なる場合、二重課税リスクが生じる可能性があります。

4. 事業利益、恒久的施設並びに関連会社

事業利益の割り当て方法についての定義は、新DTT第7条に規定されています。締約国の企業が他の締約国の恒久的施設(PE)を通じて事業を行う場合、係る恒久的施設に属する利益は、PEが自らの独立した事業である場合、その収入により発生する利益とされます。これには、同一企業内の他部門との取引から生じた利益も含まれ(同一もしくは類似の企業活動を、同一もしくは類似の条件のもと実行する)、あたかもそれぞれが独立した単独の企業体であるかのように決定されます。この規定は、OECD公認アプローチ(AOA)に準拠し、ドイツと日本の国内法に導入され、新DTTに盛り込まれています。AOA規定に基づき、資産の帰属並びにPEの機会とリスクの帰属に関連した重要な人的機能(SPF)を特定する必要があります。そこで、資産並びに機会/リスクと同様に資本(払込資本)もSPFの決定に基づいてPEに帰属されます。

新DTTとは別に、日本の税務では、2016年4月1日以降から始まる会計年度について外国企業に課される法人税、並びに2017年以降の所得に対して非居住者に課される個人所得税にAOAが適用されます。

第三者間の契約上の取り決めと同様(例:賃貸や賃借契約)、恒久的施設とその本社間の“取引”並びに関連会社間の売買(新DTT第9条参照)は、独立企業の原則に準拠しなければなりません。しかしながら、税務当局が調整を査定できます。この点において、他の締約国は二重課税を避けるために対応的調整を行うことになります。現行のDTTと対照的に、新DTTには、相互協議のみならず仲裁規程も含まれます(以下参照)。

Recommendation:

ドイツや日本のPEの取扱い並びにAOA適用の前提条件を満たすかどうかについて留意する必要があります。特に、“取引”の対価が全て独立企業の原則を満たすかどうか、並びに(取引が計画中で存在しない場合)文書化システムをAOAに準拠するように設定するという点も十分に留意する必要があります。

5. 配当、利子並びにロイヤルティによる収入

配当金収入や金利収入、ロイヤルティに対する源泉徴収税率は、大幅に低減あるいは完全に免税となりました。特に、日本の親会社はドイツ子会社からの配当金支払いに際してこれまで課税されていた、源泉税の負担が無くなります。一方、現行のDTTでは、ドイツから日本への配当源泉税率は15%となります(また日本からドイツへの配当源泉税率は10%となります)。

 

a)配当金(第10条)
軽減源泉税は、パートナーシップを除き、企業である受益者に適用されます。受益所有者が18ヵ月間配当金支払い企業の最低25%を保有する企業である場合、配当源泉税は免除されます。受益所有者が6ヵ月間最低10%保有する企業である場合、税率は5%に軽減されます。その他の場合は全て、配当金に対する源泉徴収税率は15%のままとなります。
これは、配当金の権利決定日に終了する18ヵ月あるいは6ヵ月の期間を指します。


b)利子(第11条)並びにロイヤルティ(第12条)
利子収入並びにロイヤルティ収入は、一般的に完全無税となります。ただし、源泉国は、当事者間で合意された利子並びにロイヤルティ収入がアームスレングスの原則により決まる、金額を超える部分については、課税される可能性があります。

Recommendation:

ドイツにおける税務的観点から、日本企業はドイツ連邦税務局(“Bundeszentralamt fur Steuern”)に源泉税の免除あるいは軽減税率を申請すべきと言えます。原則として、源泉税免税証明は配当や利子、ロイヤルティの支払いを行う前に入手する必要があります。当該免税証明は、税務当局が税務調査で指摘する“みなし配当”(隠れた利益配当)に対しても適用されます。

さらに、ドイツの条約乱用防止規定についても考慮する必要があります。
加えて、直近において組織再編が行われた会社においては、配当を実施する前に前述の保有期間(0%もしくは5%の源泉税)について留意する必要があります。

 

傍注: 特別規定
新DTTと共に署名された議定書の文章では、投資収入に対する特別規定について定めています。次の収入は各締約国の国内法に従って課税されます:


日本
日本国内において生ずる次の所得または収益に対しては、日本国においてその法令に従って租税を課することができる:

  • 日本国の租税に関する課税所得の計算上受益者に対して支払う配当を控除することができる法人によって支払われる配当;
  • 債務者もしくはその関係者の収入、売上げ、所得、利得その他の資金の流出入、債務者もしくはその関係者の有する資産の価値の変動もしくは債務者もしくはその関係者が支払う配当、組合の分配金その他これらに類する支払金を基礎として算定される利子またはこれに類する利子;
  • 匿名組合契約その他これに類する契約に関連して匿名組合員が取得する所得または収益

 

ドイツ
ドイツで発生する収入は、次の2つの前提条件を満たす場合、ドイツにおいてその法令に従って租税を課することができる:

  • 当該所得が、利得の分配を受ける権利もしくは信用に係る債権から生ずる所得(匿名組合員として取得する所得を含む。)、利率が債務者の利得に連動する貸付けから生ずる所得またはドイツの租税に関する法令に規定する利益分配型債券から生ずる所得であること
  • 当該所得に係る債務者の利得の決定に当たり、当該所得が控除できるものであること

さらに、議定書の第5段落に則り、配当金に対する0%並びに5%の軽減税率は株式資本が上場されるドイツの不動産投資信託会社が支払う配当及びドイツの投資基金が支払う配当に対しては、適用されません。

6. 資産保有会社

DTT第13条は現行DTTから若干の変更が加えられました。新DTT第13条(1)によると、一般的に、ある締約国にある不動産の販売、すなわち資産取引によるキャピタルゲインは当該国において課税されます。新DTTでは、他方の締約国に資産を保有する企業の持分の売却に関する新たな条項が追加されました。少なくとも50%の資産価値が直接・間接的に当該不動産に由来する企業の持分の販売は、新DTT第13条(2)に従って他方の締約国において課税されます。すなわち、企業価値の大部分が不動産の価値で構成される場合、資産取引および持分取引は同様に取り扱われます。

7. 租税条約の恩恵を受ける権利

新たに付け足された新DTT第21条では、実質的ないわゆる“条約乱用防止規定”を定めています。この規定は基本的にBEPSプロジェクト(アクション6:不適切な状況における条約の特典付与の防止)によるOECD提言に準拠しています。特典制限規定(LOB)および主要目的テスト(PPT)が、適格な締約国居住者のみが条約の特典を受けられるよう、盛り込まれました。LOBおよびPPT条項は、条約の乱用と脱税を避けるため、日本とドイツが締結した他のさまざまなDTTに既に盛り込まれています。これらのテストは複雑ですが、LOBの主要な項目について以下にまとめました。

国内規定は、ドイツと日本の税法のもとで既に施行され、条約の乱用を防止していますが、条約規定で補完されることになります。原則として、居住者は条約の特典を利用するため、(a)それぞれの条項(例えば配当金に対する軽減税率(第10条)に関する条項など)、および(b)新DTT第21条で規定された追加テスト、の条件を満たす必要があります。

LOBテストでは、上記の図に示したいくつかのテストについて定めています。

 

適格者テスト
一般的に、いわゆる“適格者”は、軽減税率などの条約による特典を受ける権利を有します。

詳細:

  • 新DTT第21条(2)では、次のような適格者を列挙している。個人、政府機関、法人(その主たる種類の株式が、1または2以上の公認の有価証券市場において上場され、または登録され、かつ、通常取引されるものに限る)、その他(個人以外で、議決権のある持分の65%以上を適格者である居住者が所有する場合)

企業が新DTTの第21条(2)に則り適格者とはならない場合でも、新DTTの第21条(3)に従って次のテストのうち1つを満たせば条約の恩恵を受ける権利があります。


同等受益者テスト
受益者が株式から得られる収益に対して条約の特典を享受するためには、一定割合以上の株式を保有する必要があります。

詳細:

  • その居住者の議決権のある株式その他の受益に関する持分の65%以上が、その所得を直接に取得したとしたならば新協定に基づいて同等のまたはその特典よりも有利な特典を受けることができるものによって直接または間接に所有される場合
  • その居住者の議決権のある株式その他の受益に関する持分の90%以上が、その所得を直接に取得したとしたならば新協定またはその所得が生ずる締約国が他の国との間で締結した協定に基づいて同等のまたはその特典よりも有利な特典を受け取ることができる者によって直接または間接に所有される場合


能動的事業活動テスト
一方の締約国の居住者は、係る居住者が事業活動に従事している場合、他の締約国からの収入の対価として新DTTの恩恵を受ける権利があります。

詳細:

  • 居住者が一方の締約国内において事業の活動に従事していること。ただし、その事業には、その居住者が自己の勘定のために投資を行い、または管理するもの(例:ライセンス、IP。銀行、保険会社または証券会社が行う証券業を除く)を含まない。

上記テストをいずれも満たさない場合、他の締約国から収入を得ている居住者は、条約の恩恵を受けるためには、この居住者が特典を受けることを主たる目的としていないということを他の締約国の税務当局が認める必要があります。

いかなる不適切な状況、つまり、条約の恩恵を受けるためだけに作り上げられるような状況については、条約の濫用が意図される場合、上記の状況を満たさないようにしてください。

Recommendation:

新DTTの恩恵を受けるため上述した前提条件を満たす場合、これを注意深く見る必要があります。KPMGの経験では、日系企業は通常貿易や製造に従事されています。すなわち、能動的事業基準を満たす必要があります。日系企業の中には十分な実態のない『持株』会社(例:英国やオランダ等)である場合があります。そのような場合条約権利についての分析をお勧めします。

8. 二重課税の撤廃

日本居住者
日本は、外国税額控除方式を適用しています。日本居住者が新DTTに従ってドイツで課税されるドイツからの収入に由来する場合、係る収入の対価として支払義務のあるドイツの税額が、係る居住者に課される日本の税金に対する控除として認められます。ただし、控除額は係る収入に課される日本の税金額を超えないものとします。さらに、2009年以降、日本企業が受け取る海外子会社からの配当金はその95%が免税されています。


ドイツ居住者
一般的に、ドイツは国外所得免除方式を適用しています。累進税率が個人に適用され、免除される日本の収入を考慮して、係る税率が決定されます(『累進留保』)。

しかしながら、一定のタイプの収入については外国税額控除方式への切り替えを決める特別な規定があります。とりわけ、日本が源泉徴収税を課した配当金収入や資産保有会社の株式販売による収入(上記参照)、あるいは日本が課税権を有するが課税権が行使されず、いかなる税金も日本で課税されていない収入について、外国税額控除方式が適用されます(いわゆる課税留保条項)。

9. 相互協議

新DTTにおいては、第24条の改正相互協議も着目すべきポイントとなります。ここには、義務的で拘束力のある仲裁規定に関する条項が含まれています。

新DTTに準拠せず課税された法的措置が行われた場合、通知後3年以内であれば、一方の締約国の居住者は係る国の税務当局に異議申立ができます。締約国の税務当局は、自ら満足のいく結果に至ることができない場合、他の締約国の税務当局と共に相互協議によって係る申立を解決します。

両税務当局が2年以内に係る相互協議の合意に至らない場合、申立による未解決訴訟は、当事者が要請する場合、仲裁によって解決します。

新DTTと共に署名された議定書の第10項では、仲裁手順の設定方法について、例えば、仲裁委員会やその財源等、詳しい規定を定めています。

義務的で拘束力のある 仲裁 規定 を導入し、相互協議による合意を2年間に限定することで、新DTTに準拠せずに(二重)課税されてしまう場合の納税者の立場が強化されます。また、当該納税者の法的安定性が確保されます。

Recommendation:

仲裁 規定 は将来、特に両国間における移転価格の調整において重要となります。過去において、この調整の結果二重課税をもたらし、課税所得に対する実質税率があわや50%を超えてしまうという事態が起きていました。今回定められた仲裁規定により、二重課税が避けられ、係る弊害が解決されます。実務に即した参考情報については、以下の例をご参照ください。

 

参考情報:
移転価格の調整につき仲裁規定を利用することを両締約国が同意する場合、新DTT原案によれば、新DTT第24条を旧DTTの範疇となる申立に適用できます。この申立は、新DTTの施行から2年後に仲裁に付すことができます(以下参照)。

10. 施行

新DTTは、2015年12月17日に両国政府により署名されました。次の段階として、両政府は新DTTの施行に必要な国内手続き、すなわち両国における国内法制化を行います。新DTT第31条に従い、両国はそれぞれの必要手続きが完了したら、当該事項を相手国に通知することとなっています。

新DTTは、遅い方の通知が受領された後30日目の日に効力が生じます。

一般的に、会計年度に基づいて課税される租税については、新DTTが効力を生じる年の翌年の1月1日以降に開始する会計年度の租税に適用されます。

源泉税についても同様に、新DTTの効力が生じた年の翌年1月1日から適用されます。

施行に必要な内部手続きが2016年中に日本とドイツで完了し、通知が2016年12月以前に取り交わされれば、新DTTは2017年1月1日付で適用されることになります。

新DTTが施行されると、現行の日独DTT(1966年4月22日付)は効力を失います。ただし、現行のDTT規定は引き続き、新DTTの適用日以前に生じた事案に適用されることになります(新DTT第31条(6)並びに(7))。

(III)事例のご紹介

1. 配当金への源泉課税

例:
日本企業が、5年間にわたりドイツ企業の株式を100%保有しています。そのドイツ子会社は、欧州市場向けに日本本社が製造した製品を販売しています。

現行DTTでは、ドイツ子会社から日本親会社に支払われる配当金は、15%の税率で源泉税が課されます。つまり、ドイツ子会社における税引前利益が1百万ユーロであるとすると、これに対し法人税と営業税が約30%の税率でまず課税され、残りの70万ユーロを配当する場合、その15%が源泉税の対象となり、結果、59万5千ユーロを配当として日本へ送金できることになります。

新DTTに基づくと、ドイツ子会社から日本親会社に同額の配当金を支払う場合、新DTT第10条に従い免税扱いとなり、全額70万ユーロを送金できるようになります。

日本親会社はドイツ連邦税務局(“Bundeszentralamt fur Steuern”)に源泉税の免除あるいは軽減税率適用の申請をしなければならないということにご留意ください。原則として、源泉税免税証明書を、各配当金支払い前に入手する必要があります。


ケース2:
オランダにある実体のない持ち株会社(事業活動を伴わない『ペーパー』カンパニーなど)が、ドイツの有限責任会社の株式を100%保有しており、かつ日本親会社とドイツ子会社との間に位置する中間親会社であるとします。

一般的に、ドイツ子会社GerCoからオランダ中間親会社NLCoへの配当金は、EU親子会社指令に基づき源泉税が免除されます。さらに、オランダと日本間のDTTでは、源泉税は免税扱いとされているため、配当全額をドイツからオランダ経由で日本へ支払うことが可能です(すなわち70万ユーロ全額)。しかしながら、オランダの中間持株会社に実体もその存在に対する経済的理由もない場合には、ドイツ所得税法第50d(3)項(租税条約乱用防止規定)が適用されます。したがって、EU親子会社指令の規定があっても、ドイツ子会社からオランダ中間持株会社への配当金は免税扱いとはなりません。当該規定は、租税条約の乱用防止を意図しています。

その実体の有無が、ドイツ子会社と日本最終親会社との間における源泉税に影響を与えるため、租税条約乱用防止規定の適用を避けるために中間親会社の実体の有無を注意してチェックする必要がありました。しかしながら、新DTTの適用後は、(前提条件を満たす場合)日独間の源泉税は免税となるため、このようなケースであってもその結果に差異が生じることはありません。

2. ドイツにおける移転価格の調整に伴う課税

例:
ドイツでの税務調査後、ドイツ子会社が日本本社から仕入れた製品の販売によって得た利益が、税務当局によって調整されるケースを例とします。税務当局の分析では、ドイツ子会社の機能を考慮すると、日本本社からドイツ子会社に販売した製品の利益率が高く設定されていることで、ドイツ子会社の利益率が低くなっていると結論付けられました。その結果、税務当局はドイツ子会社の課税標準額を増額修正し、ドイツ子会社の所得税課税の対象(約30%: 法人税、営業税並びに連帯付加税を含む)とすべきであると指摘しました。

さらに、当該取引は、ドイツ子会社から日本本社への隠れた利益配当とみなされます。隠れた利益配当は通常の配当として取り扱われ、源泉徴収税が課税されます。

現行のDTTにおいては、隠れた利益配当はドイツで約30%の所得税が課税されることに加え、15%の配当源泉税の対象となります。しかしながら、ドイツ子会社での利益の減少が、必ず日本の親会社においての利益調整につながるとは限りません。ドイツ子会社の課税標準がグループ間価格の調整によって増加すると、理論的には日本本社における利益は減少することとなります。税務調査の指摘によって生じる二重課税は、前述の移転価格の例のように、日本の親会社において相当する利益を減少させることによってのみ解決できます。日本の税務当局は、ドイツの税務当局によって、日本の親会社の課税標準額を減少させるように求められます。しかし、現行のDTT第24/25条では拘束力ある相互協議を義務として定めていません。したがって、両国の管轄庁が合意に達することができない場合、二重課税を避けることはできない状況となっているのです。

新DTTにおける第10条により、配当金に対する源泉徴収税は、一定条件のもとで0%まで引き下げられることとなっています。この結果、移転価格調整の結果により生じた隠れた利益配当は、ドイツにおいて源泉徴収税が免除されることとなります。

しかしながら、管轄税務当局が合意しない限り、利益調整によって生じる二重課税の問題は残ったままとなってしまいます。上述した通り、新租税条約第24条では、2つの締約国の管轄庁が合意に至ることができない場合、仲裁規定を含めた拘束力のある相互協議を義務として定めています。その結果、二重課税は両国間での調整によって解決され、利益は1ヵ国においてのみ課税対象となります。

3. 新たな可能性: ドイツを通じた利益配当

新DTTにより、他国にあるグループ子会社/事業体から日本本社への利益配当に関して、新たな選択肢が考えられます。ドイツが当該国との租税条約上、有利な利益配当の条件を結んでおり、ドイツ子会社がその適用を受けるために必要な条件を満たす場合、ドイツの子会社を経由して配当実施するという選択肢を考える必要があります。例えば、トルコ、ロシア、フィンランドの子会社から日本企業へ直接配当を実施すると、現行のDTT規定では10-15%の源泉徴収税を課税さされることになります。しかしながら、ファーストステップとしてドイツ有限責任会社に対して配当を実施すると、源泉徴収税を0-5%まで抑えることができ、ドイツから日本への利益配当に関しては、上述した通り新DTTの条件に基づき免税となります。ただし、ドイツの有限責任会社が受け取る配当金の5%がドイツ法人税法第8b項に従って、損金不算入として取り扱われるということにご留意ください。

4. 計画的な利益配当の実施: 配当金に対する源泉徴収税を軽減する方法とは?

  • 新DTTは、施行される前の年の暦年1月1日より適用されます。2017年から見込まれている新DTTの適用に先立ち、ドイツと日本で必要な内部手続きは2016年12月までに完了する必要があると考えられます。
  • 配当支払いの場合、仮にさらなる詳細が決議書の中に記載されていない限り、一般的に、株主決議の日付が、源泉税の決定及び対応する源泉税の申告との関係では、決定的なものになります。しかしながら、当該決議書において、より遅い日付で配当支払日が決められている場合、当該日付がむしろ決定的となります。新DTTの条約の恩恵、特に軽減源泉税率を生かすために、近い将来において計画されている配当金支払いは、新DTTが適用可能となるまで延期すべきです。一方、支払日が2017年の新DTT有効後となる場合、株主決議書を既に今の段階で準備可能です。
  • 上述の通り、配当金の軽減源泉税率は、一定の要件の充足が必要となることにご留意ください。さらに、受益者、つまり日本の親会社は、新DTT第21条の特典制限条項を満たさなければなりません。しかしながら、受領側企業で活発な事業活動が行なわれている限り、一般的に当該条件は満たされます。
  • 上述の通り、日本の親会社はドイツ連邦税務局(“Bundeszentralamt fur Steuern”)に源泉税の免除あるいは軽減源泉税率を申請しなければなりません。原則として、対応する配当金支払いの前に源泉税免除証明書を取得する必要があります。さもなければ、後日、払戻のための法的手続を検討しなければならなくなります。
  • 上記の条件が満たされると、ドイツから日本への配当について、源泉税への考慮なしに計画することができます。これは2017年以降の利益だけではなく、過去の事業年度からの剰余金にも適用されるであろうと考えられます。

(IV)提言

ドイツ事業について、潜在的な(EU内)組織再編/リロケーション計画を含め、事業運営に与える潜在的な影響を注意深くモニターされることをお勧めします。

加えて、新DTTの施行後、新しい源泉税免除証明書をドイツ連邦税務局(“Bundeszentralamt fur Steuern”)から取得する必要があります。その後、源泉税無しで配当金、利子及びロイヤルティを日本へ支払うことが可能になります。この点について、ご依頼いただければ、KPMGでサポートします。

暦年2016年に計画された配当金については、注意深く見直し、可能であれば、新DTTが適用され、軽減源泉税率の恩恵を受けられるようになった後に、支払われるべきです。これに関し、株主決議で明確に後の支払日について言及する必要があります。KPMGチームが、関連資料の草案や見直しをサポートします。さらに詳しい情報については、遠慮なくKPMGまでお問い合わせください。

(V)短信

1. BFH(ドイツ連邦税務裁判所)が憲法裁判所の利息控除制限規定の合憲性に言及

2015年10月14日付の決定(2016年2月10日公布)において、ドイツ連邦税務裁判所(BFH)は、利息控除制限規定(ドイツ税務上“Zinsschranke”)がドイツ憲法裁判所(BVerfG)のドイツ憲法上の原則に準拠しているかどうかについての疑問を取り上げました。BFHは、ドイツの利息控除制限規定が憲法の原則に違反するという立場をとった一方、本案件の最終決定は、憲法裁判所次第となります。

憲法裁判所がいかに決定するか予測するのは難しいですが、利息控除制限規定に起因して、過去、利子費用の控除を十分に取れなかった影響を受ける納税者は、未完了の事案に関して、引続き未解決の状態を保つために、査定通知書に対する異議申立を検討すべきです。

2. VAT: パートナーシップもまたVATグループに支配される企業となる

2015年12月の判決(2016年1月28日公布)において、ドイツ連邦税務裁判所(BFH)は、ドイツVATグループ規定に関するEU司法裁判所(CJEU)の判決に応じて、パートナーシップがVATグループの一部となりうると結論づけました。


判決の概要:

  • 既存の判例法に反し、一定の条件を満たす場合、パートナーシップもVATグループ内の支配される企業となりうる。
  • 兄弟会社間の税務グループの形成は依然として可能ではない。
  • 非事業者は依然として支配企業としての資格はない。

ドイツの税務当局がBFH判決にどのように反応するか明らかではないものの、当該規定が過年度について適用されないという指針を出すと思われます。当該判決に関して、VATグループ並びに企業グループを見直すことをお勧めします。

3. エネルギー監査: 猶予期間は2016年4月に終了

EDL-G(エネルギー・サービスに関する法律)第8項以下に従い、非中小企業、すなわち大企業並びに特定の共同企業体は2015年12月5日までエネルギー監査を行うことが義務付けられました。追加的に付与された猶予期間は2016年4月末に終了しました。

非中小企業は、一定の規模で定義されます(従業員250人以上、売上高50百万ユーロ以上、貸借対照表43百万ユーロ以上)。しかしながら、非中小企業に支配されている中小企業もエネルギー監査を行うことが義務付けられています。

したがって、特に違反が5万ユーロまでの罰金に結果し得ることを考慮すると、単体では基準を満たさない中小企業である子会社であっても、企業グループレベルの観点でエネルギー監査の要件を満たし、監査を義務付けられていないかどうか、確認することを推奨します。

執筆者

KPMG Global Japanese Practice in Germany
KPMGドイツ 日系企業担当チーム

German Business Bulletin

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