スタジアムの収入源となるネーミングライツ~海外と日本の比較

スタジアムの収入源となるネーミングライツ~海外と日本の比較

スタジアムを開発し、長期的に運営していくためにはスタジアム完成前から収入源を確保しておくことが重要です。将来の収入源としては、施設内の営業権契約収入、特別観覧ルームのライセンス収入、広告掲載に係るスポンサー契約収入、ネーミングライツ収入が考えられます。そのなかでも近年、特に盛んになっているのはネーミングライツ収入です。

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ネーミングライツとは、スポーツ施設などの名称にスポンサー企業の社名やブランド名を付与するもので、いわゆる「命名権」と呼ばれます。アメリカでは、1990年代から北米のプロスポーツ施設を中心に市場が急速に拡大し、現在では、日本国内でもスポーツ施設などの運営資金調達のための重要な手法の1つとして定着していますが、わが国の公共施設では、「味の素スタジアム」での導入が初の事例となります(味の素スタジアムHPより抜粋)。
第1期契約は2003年3月1日より5年契約で総額12億円(年間2.4億円)、現在は第3期契約の期間中であり、5年間(2014年3月1日~2019年2月末日)で総額10億円(年間2億円)となっています。
日本では施設所有者の多くが自治体であることから、ネーミングライツ収入によって施設収入を増やし、納税者の負担を軽減することが大きな目的になっていると言えます。
なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • 海外のスポーツ施設のネーミングライツ市場は、導入件数の増加や新規参入が活発であることから高騰傾向にある。特に米国のスポーツ施設では、導入件数の増加だけでなく契約期間が長期間となっているため、他国と比べて金額が大きくなっていると言える。
  • 日本の主なプロスポーツであるサッカーと野球で使用している施設のネーミングライツ導入割合は同水準であるが、金額を比較すると野球の方が大きくなっている。
  • 近年のスポーツ施設のネーミングライツはスタジアム全体だけでなく、スタンドやセクションにかかるものについても販売されており、ネーミングライツの販売可能性は広がっている。

1. 海外のスポーツ施設のネーミングライツ

海外のサッカースタジアムのネーミングライツについて、1座席当たりの年間平均ネーミングライツ金額をドイツ・ブンデスリーガ、イングランド・プレミアリーグ、米国・メジャーリーグサッカーの3つのリーグで比較した結果、米国がドイツの2倍以上、イングランドの1.5倍弱となっており、米国の金額が特に大きくなっています(1ユーロ=119円で算定)。これは、米国・メジャーリーグサッカーの市場が北米4大スポーツに迫る勢いで成長しており、世界的に注目度が高くなってきているため、ネーミングライツの金額も大きくなっていることが考えられます。
また、イングランドおよびドイツにおける平均ネーミングライツ契約期間が8年間であるのに対して米国は14年間となっており、米国は長期間で契約していることが特徴的であると言えます(図表1参照)。
また、ドイツとイングランドの2ヵ国で現在契約されているネーミングライツを産業ごとにみると、金融業やエネルギー産業の件数が多くなっています。件数自体は多くありませんが航空産業も多額の投資を行っており、様々な産業がネーミングライツ市場に乗り出していると言えます(図表2参照)。

図表1 海外リーグの1座席当たりの年間平均ネーミングライツ金額と契約期間

出典:「スタジアム開発を成功させるための計画」を基に作成

海外リーグの1座席当たりの年間平均ネーミングライツ金額と契約期間

図表2 ドイツ、イングランドのネーミングライツ産業別シェア

出典:「スタジアム開発を成功させるための計画」を基に作成

ドイツ、イングランドのネーミングライツ産業別シェア

2. 日本のスポーツ施設のネーミングライツ

一方で、日本国内のスポーツ施設のネーミングライツについて、Jリーグ各カテゴリーとプロ野球で導入しているホームスタジアム・球場の数は、JリーグのカテゴリーのなかではJ2リーグが最も多く14スタジアム、ネーミングライツの導入割合はJリーグ全体でもプロ野球でも概ね50%程度となっています。このことから、日本のプロスポーツで使っている施設の約半分しかネーミングライツを導入していないことが分かります(図表3参照)。ここで、J3リーグ所属のU-23チームは基本的にトップチームと同じスタジアムを使っているため数から除いており、また、プロ野球の各球団の地方開催球場についても除いています。
1座席当たりの年間平均ネーミングライツ金額をJリーグ各カテゴリーとプロ野球で比較した結果、ネーミングライツ導入割合や座席数はほぼ同水準であるにもかかわらず、プロ野球で使用している球場の1座席当たりの年間平均ネーミングライツ金額はJリーグのスタジアムの約5倍となっています(図表4参照)。
これは、野球場のネーミングライツの金額がサッカースタジアムよりも大きいと言うことができます。

図表3 国内スポーツ施設のネーミングライツ導入件数

出典:Jリーグ公式HP、NPB.jp 日本野球機構 統計データ等を基に作成

国内スポーツ施設のネーミングライツ導入件数

図表4 国内スポーツ施設の1座席当たり年間平均ネーミングライツ金額

出典:各スタジアム・各球場のHP等を基に作成

国内スポーツ施設の1座席当たり年間平均ネーミングライツ金額

3. まとめ

近年ではスタジアム全体のネーミングライツ以外にも、スタジアムの各スタンドに対するネーミングライツも販売されており、その販売可能性は広がっていることが考えられます。
たとえば、トルコのプロサッカーリーグに所属しているガラタサライSKのホームスタジアムであるトルコ・テレコム・アリーナでは、トルコ最大の通信会社であるトルコ・テレコムがスタジアム全体のネーミングライツ契約を締結していますが、それ以外にも地元食品会社がスタジアム東側2階スタンド席のネーミングライツを年間150万ユーロ(約1.7億円)で購入しています。
通常であればスタンド席はテレビや新聞などにも露出しないためネーミングライツを購入するメリットは少ないと思われますが、入場者数の多いスタジアムの場合には、人々の目に触れる機会も多いため、企業としてネーミングライツに対する投資効果は十分にあると推察されます。
高額になりがちなスタジアム全体のネーミングライツだけでなく、相対的に安価な各スタンドや各セクションのネーミングライツについても販売するなどし、様々な工夫を凝らして収益源をより多く獲得することがスタジアム運営を行ううえで重要であると考えます。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
スポーツアドバイザリー室
室長 パートナー 大塚 敏弘
スポーツ科学修士 得田 進介

スポーツアドバイザリー

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一般事業会社へのサービス提供で培った知見や経験を活用し、強固な財政基盤の構築と成長戦略の策定、執行を支援します。

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