KPMGフォーラム2016 - 新経営潮流とテクノロジーイノベーション 講演報告 | KPMG | JP

KPMGフォーラム2016 - 新経営潮流とテクノロジーイノベーション 講演報告

KPMGフォーラム2016 - 新経営潮流とテクノロジーイノベーション 講演報告

KPMGジャパンは、去る2016年11月24日、25日東京ミッドタウン、11月29日大名古屋ビルヂング(名古屋)、12月12日ホテルニューオータニ大阪において、「KPMGフォーラム2016 - 新経営潮流とテクノロジーイノベーション」を開催しました。

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KPMGフォーラム2016

本フォーラムは、企業の皆様が日々向き合われている課題の解決に向けて、さらに、将来の新しい時代を切り開く付加価値の高い情報提供をすべく15年目を迎えています。
2016年6月、政府により閣議決定された「日本再興戦略2016」において、新たな有望成長市場の創出としてIoT・ビッグデータ・AI・ロボットなどを活用した第4次産業革命の実現が掲げられています。同時に、世界の産業構造は大きなパラダイムシフトを迎え、日本においてもイノベーションを経営ビジョンに掲げる企業が増えています。
一方、技術の高度化・複雑化が進み、先端テクノロジーによるイノベーション創出のハードルは、年々高くなり、自社がイノベーションを実現するうえで必要な外部との連携や、近未来の成長をリードするために必要な技術とは何か、どの分野に重点投資するのか、さまざまな経営判断が求められます。
こうした現状を踏まえ、KPMGジャパンでは、皆様が現在抱えられている、あるいは将来想定される企業戦略策定の一助となるよう、様々なテーマを企画しました。
本稿では、イノベーションを創出するための手法について、外部の有識者の方々も交えた講演内容を広くお伝えするため、概要をKPMGジャパンがご紹介します。

【基調講演】『大企業によるイノベーション創出とコーポレートベンチャーキャピタル』

SRIインターナショナル
イノベーション・リーダーシップ・センター
エグゼクティブディレクター
クロード・レグリーズ 氏


KPMGフォーラム2016 東京会場1日目は、酒井弘行KPMGジャパンCEOによる開会挨拶のあと、まず、レグリーズ氏による基調講演「大企業によるイノベーション創出とコーポレートベンチャーキャピタル」で始まりました。レグリーズ氏には、急変するビジネス環境を背景に、イノベーションを創出するための大企業の課題と、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を用いた大企業とスタートアップとの連携のメリットと留意点について、事例を踏まえてご講演頂きました。

1. 大企業によるイノベーション創出が求められる背景

レグリーズ氏は、冒頭、急変するビジネス環境として、研究開発のスピード化・低コスト化、世界各国の人口動態・GDPの変化とともに、様々な産業分野に導入されるロボットにより、企業の競争の在り方が変化していると説明されました。また、SNS、コネクテッドデバイスの発展により、あらゆる人・モノがつながる一方、サイバー犯罪の脅威がIoTにより被害拡大し、つながらないビジネスも着目されていると指摘されました。さらに、世界のサプライチェーンを変える物流の自動走行技術、工場自動化による消費地生産管理の事例等を説明した上で、様々な環境変化に対して、これまで通りに戻ることを望むのではなく、ビジネスチャンスが沢山あると捉えるべきと強調されました。

2. イノベーションの定義、創出プロセス

レグリーズ氏がいうイノベーションとは、持続可能なビジネスモデルにより新たな顧客価値を創出し、市場にもたらすことであり、一時的なもの、発明のみではイノベーションとはいえないと述べられました。
また、イノベーションは、幸運や一人の天才により偶然創出されるものではなく、体系的方法論と継続的な改善プロセスの結果創出されるものであると説明されました。その上で、イノベーションが成功するには、顧客と市場における重要なニーズを重視し、コストより利便性が上回る顧客価値を創出し、イノベーション実行者・チーム編成に最高の人材を揃え、チーム内の意思統一をすることが必要であると説明されました。

3. 大企業によるイノベーション創出の課題と克服

続いて、レグリーズ氏は、イノベーション創出にあたり、大企業よりもスタートアップが革新的なのはなぜかと問いかけられました。
その答えとして、大企業によるイノベーション創出の課題として、イノベーションを偶然の産物、顧客の利便性よりもコストが高くなってしまうなど体系的・継続的なプロセスがないこと、既存コア事業を最適化するため最高の人材が揃えられないこと、企業規模が大きいためイノベーションに対する期待値が低いこと、企業文化として変化を受け入れられないことを指摘されました。
ただし、レグリーズ氏は、大企業においてもイノベーション創出は可能であることを自動車産業、IT産業、飲料メーカーの事例等を挙げながら説明されました。
そして、大企業によるイノベーションの創出には、トップ(CEO)が既存の視点を疑い、自由でリスクを取る組織文化を後押しし、既存の自社製品との共食いをいとわないこと、大胆な新しいイニシアチブを開始すること、迅速な行動が大切であると強調されました。

4. コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)のメリット、留意点

最後に、レグリーズ氏は、イノベーション戦略の一環として、近年増加傾向にあるスタートアップ・エコシステムと連携するツールであるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)について説明されました。
CVCは、大企業にとって、イノベーションを取り込む、M&Aの好機を得る、製品需要を増やす、販路を強化するために行われ、戦略とともに、金銭的リターンの両方を目指して選定されると述べられました。また、スタートアップにとっても、資金、評判、ネットワーク、技術面の支援を受けるメリットがあることを半導体メーカーの事例等を挙げながら説明されました。
また、CVCの留意点は、CEO直轄で明確な戦略を持つこと、経験豊富なチームを配置すること、投資効果は5-10年かかるため辛抱強く待つこと等を指摘されました。
講演は、リスクを恐れず先陣を切ったファースト・ペンギンがチャンスを掴みとれるというラストメッセージのもと、大企業によるイノベーション創出の今後の在り方について深く考えさせられる大変有意義なセッションでした。

【パネルディスカッション】『テクノロジーイノベーションへ-いかにして新産業を創出するか』

<パネリスト>
SRIインターナショナル
イノベーション・リーダーシップ・センター
エグゼクティブディレクター
クロード・レグリーズ 氏
×
株式会社ナインシグマ・ジャパン
ヴァイスプレジデント
松本 毅 氏
×
Mistletoe株式会社
代表取締役CGO
大蘿 淳司 氏
×
リバーフィールド株式会社
取締役
川嶋 健嗣 氏

<コーディネーター>
有限責任 あずさ監査法人
総合研究所 顧問
伊藤 慎介


東京会場1日目では、レグリーズ氏の基調講演をさらに深堀りする形で、レグリーズ氏と大企業の立場から株式会社ナインシグマ・ジャパンの松本ヴァイスプレジデント、アントレプレナー支援の立場からMistletoe株式会社の大蘿代表取締役CGO、大学発ベンチャーの立場からリバーフィールド株式会社の川嶋取締役の4人のパネリストをお招きし、あずさ監査法人 総合研究所の伊藤顧問の司会のもと、イノベーションを起こす担い手として相応しい人材、イノベーションを起こすにはトップはどうすべきか、組織はどう変わるべきかについて事例も交えてパネルディスカッションが行われました。

1. イノベーションを起こす人材

冒頭、松本氏は、イノベーションを起こす人材とは、与えられたものを実行するだけでなく、オープンに異分野コミュニケーションを積極的に行い、開発された技術の用途・ニーズに付加価値を見出す発見力のある人であると述べられました。また、社内にいるイノベーションを起こすダイヤの原石のような人材を見出し、磨くことが重要であると述べられました。続いて、川嶋氏は、異分野コミュニケーションとともに、興味を持ち、情熱と諦めない気持ちを持つ人材がイノベーションを起こす人材であると述べられました。同様に、大蘿氏も、イノベーションを起こす人材とは、自分がやりたいと思ったことを貫き通せる人であり、情熱があれば、支援者は集まってくると意見を述べられました。
また、レグリーズ氏は、イノベーションを起こす人材は誰でもなれる可能性があるものの、経験があり、組織の中で動きやすいミドル層に可能性が高いと述べられました。

2. イノベーションを起こすトップ、組織

大蘿氏はイノベーションを起こすために、トップがリードし、組織の環境作りを進める事が大切であると述べられました。具体的には、情熱のある人を見出す仕組み、成功率が低いため複数のプロジェクトを同時に進めること、短期では成功しないためいちいちとやかく言わずに慣習化させていくことが重要であると意見を述べられました。また、トップはリードすることも大切であるが、専門分野でない場合は、任せるという勇気ある行動も重要であると述べられました。
続いて、イノベーションを起こすことに成功している企業について、レグリーズ氏は、失敗を恐れず早く動き試行錯誤を繰り返している。自社だけで完結させようとせず、共同開発など外部のアイデアを募るようなオープン・イノベーションを行う企業であると説明されました。
また、ベンチャー企業から見て良い大企業について、松本氏は、まず、トップが強烈なメッセージを出せる企業が良い大企業であると述べられました。その上で、ミドルが戦略を練ってトップを説得し、技術者にもイノベーションを起こせるよう影響させる、ミドルトップダウンを行うことが重要であると説明されました。また、大企業にとって、プロダクトイノベーション、プロセスイノベーション、ビジネスモデルイノベーションの3つが重要であり、これらをトップおよびミドルが理解し、組織の仕組み作りを行うことが大切であると説明されました。昨今ではそのなかでもプロダクトイノベーションが疎かになっているため、これを強化することによって、イノベーションを起こす、より良い大企業になるのではないかと意見を述べられました。
最後に、レグリーズ氏は、日本の特許の発明はGDPあたり世界1位であり、被引用回数は6位であるものの、特許の経済影響力は70位台であり、イノベーションの創出の材料は揃っているため、世の中に広める努力を行う企業が良い大企業であると述べられました。
新産業を創出する人材、トップ・組織の在り方について、実例を交えたディスカッションは、今後、イノベーションの推進を検討する多くの参加者にとって、大変興味深く有意義なものでした。

【特別セッション 東京】「スタートアップとの連携を見つめ直す -イノベーションをどう戦略的に取り込むか」

500 Startups Japan
代表 兼マネージングパートナー ジェームズ・ライニー 氏
マネージングパートナー 澤山 陽平 氏

1. 企業がスタートアップとの連携する理由

1. グローバル企業とスタートアップとの連携実態
ライニー氏は、冒頭、グローバル企業とスタートアップとの連携に関して、5 0 0 StartupsおよびINSEADが行った実態調査『世界の大企業はスタートアップ革命にいかに対応するべきか?』より、ユニコーン企業(時価総額10億ドル以上)の大半(61%)が少なくとも1社以上の大企業(投資会社および銀行は含まない)から既に出資を受けており、Forbes Global 500の上位100社のうち68%がスタートアップと連携している実態を踏まえ、近年の動向として、非テクノロジー企業によるテクノロジー企業の買収が増えていることを説明されました。


2. 大企業がスタートアップと連携する意義
ライニー氏は、大企業とスタートアップとの連携が増加する背景について、スタートアップは少ない立ち上げコストと短い期間でビジネスを成功させており、スタートアップを受け入れなかった大企業が絶滅の危険にさらされる程の大きな変化の波があることを指摘されました。また、大企業がスタートアップと連携することにより、優秀な人材、プロダクト、新たな顧客といった新たなリソースが獲得できると説明されました。

2. 企業がスタートアップと連携する方法

1. 8つの連携方法
続いて、澤山氏は、スタートアップとの連携方法には、M&A、投資、スピンオフ、アクセラレーター(企業成長支援)&インキュベーター、イベント、サポートサービス、スタートアップ・プログラム、コワーキングスペースの8つの方法があると述べられました。その上で、企業目的に適した連携方法はあるものの、どの連携方法を選ぶのか日本企業だけでなく、世界中の企業が悩みながら試行錯誤していると説明されました。


2. 3つのファネル(漏斗)段階
次に、澤山氏は、オープンイノベーションを目的としたスタートアップとの連携には、3つのファネル(漏斗)段階があり、まずは最終段階としての連携目的(人材、プロダクト(製品)、顧客の獲得)、そして入口段階として案件獲得方法(アクセラレーター、イベント、オフィス、VC)、さらに中間段階として達成手段(パートナーシップ、投資、M&A)を決める必要があると説明されました。
その上で、案件獲得方法について、スタートアップとの連携は必ずしも成功するわけではないため、複数の案件を継続的に獲得する必要があること、案件獲得のみに注力して具体的な達成手段に進まないこと等に留意すべきと指摘されました。特に、アクセラレーターについては、あくまでも案件獲得の一手法であり万能でなく、乱立による他社との差別化が必要であるとともに、個社ごとに支援内容が異なり手間がかかること、結果が出るまで5年以上の長期になること、100社のうち5社程度しか成功しないため、リスクの許容、期待値をコントロールする必要があることを強調されました。
また、達成手段については、複数案件の中から、手段によって手間・コストとリターンが異なること、連携目的によってM&Aのタイミングが異なること等に留意すべきと指摘されました。

3. 次のステップ

最後に、澤山氏は、スタートアップとの連携について、VCファンドやアクセラレーターに加え、500 Startupsは、イノベーションエコシステムの構築のための、ベンチャー投資等の教育プログラム、スタートアップとの連携をOJT的に学ぶイマージョンプログラム等も展開していると述べられました。
講演は、イノベーションを戦略的に取り込むために、スタートアップとどのような連携を行い、どのような手段で目的を達成するかについて考えさせられる大変示唆に富んだ講演でした。

【基調講演 名古屋・大阪】「オープン・イノベーションで切り拓く新たな事業創造 大阪ガスでの新事業事例とナインシグマが展開するHow To DoからWhat To Doのオープン・イノベーション」

株式会社ナインシグマ・ジャパン
ヴァイスプレジデント 松本 毅 氏

1. オープン・イノベーションの成功要素と誤解・阻害要因

松本氏は、まず、様々なオープン・イノベーションの成功事例の鍵となる点を説明した上で、オープン・イノベーションを成功させるためには、企業が変わらざるを得ない危機感をもって、トップが戦略をもって本気で取り組むリーダーシップを発揮すること、推進チームがミドルトップダウンとして機能すること、現場にやる気があることが必要であると述べられました。
また、イノベーションで収益を伸ばすためには、ゲーム・チェンジャーになる必要があり、ルールを書き替える新しいゲームをつくり出す先見の明を持つこと、外部のイノベーションを利用して新たな価値を創造すること、リーダーは消費者や顧客がボスであると理解すること、イノベーションは単に技術の問題ではなく人と人との協働が鍵となると説明されました。
さらに、技術、事業ともに競争が激化し、不確実性が増加するなか、戦略において発見力、業務執行において実行力が重要になると述べられました。
一方、オープン・イノベーションの誤解として、共同開発・委託研究等は既に行っているという主張に対しては、既存の業界・地域・組織内を越えた連携が新しい付加価値を創造すること、技術・ノウハウがオープンになることで強みが無くなるという主張に対しては、技術流出を伴うアウトソーシングでなく、技術を取り込むインソーシングであると指摘されました。
特に、オープン・イノベーションを阻害する課題として情報のパラドックスがあり、ニーズのある企業が戦略や機密事項が情報漏洩するリスクを回避するため開示が一部となり、シーズのある企業も対価得ることなく情報だけ奪われるリスクを回避するため開示が一部となることを指摘されました。

2. オープン・イノベーションを推進する仕組み

次に、松本氏は、外部・海外とも協調した様々な技術探索事例の鍵となる点を説明した上で、イノベーションを推進する仕組みについて、出口を見据えた上で、オープン・イノベーションといった戦略的提携を図るのか、内製か、買収するかビジネスモデルが変わると述べられました。
また、オープン・イノベーションの推進体制は、技術開発部門のニーズの探索依頼を内部・外部のエージェント機能と連携させることが必要であるとともに、協働・コラボレーションを意識した枠組み(各企業の実施すべき範囲、製品技術をオープンにする範囲、アライアンスの枠組み、社内の共有)が必要であると指摘されました。

3. 成果を生むオープン・イノベーション

続いて、松本氏は、様々なオープン・イノベーションの成果実績例の鍵となる点を説明した上で、情報のパラドックスを回避するためには、ニーズ側、シーズ側、イノベーション・エージェントの連携ネットワークが重要であり、日本企業もエージェントを上手く活用することを強調されました。
また、オープン・イノベーションの活用方法について、目標期間内にHow to Do(目的を達成する)という発想からスピードを重視し、必要があれば社外の技術を使うWhat to Do(何をすべきか決める)という発想へ転換し、より高い目標を達成することが大事であると指摘されました。
最後に、イノベーションにおいて追求するのは、新しいビジネスモデルとともに、新しいテクノロジー(技術)を同時に求めること、ゲーム・チェンジャーとなるイノベーターの育成が重要であること、科学技術を事業に活かし新たな事業を創造する技術経営の人材が必要であること、科学技術と事業とをつなぎ新事業をプロモートするイノベーション・エージェント機能が重要であると再度強調されました。
講演は、具体的なオープン・イノベーション事例に基づき、いかにオープン・イノベーションの誤解・阻害要因を取り除き、成果を生み出すかにについて考えさせられる大変示唆に富んだ講演でした。

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