金融機関における取締役会の実効性評価~評価手法の考え方・評価の進め方 | KPMG | JP

金融機関における取締役会の実効性評価~評価手法の考え方・評価の進め方

金融機関における取締役会の実効性評価~評価手法の考え方・評価の進め方

取締役会の実効性評価を行うにあたっての評価手法の考え方や評価の進め方についてご紹介いたします。

関連するコンテンツ

1.評価手法の考え方・評価の進め方

取締役会の実効性評価は、取締役会自身による自己評価が基本です(評価の決定者としては取締役会議長や筆頭独立社外取締役が担う場合があります)。評価にあたっては、取締役会全員の考えを集約するため、一般的にはアンケートやインタビューを通じて情報収集を行います。この過程において、外部の専門家を関与させることで、より客観的な観点から課題抽出や改善方針の立案が可能にもなります。
評価の進め方は、下図のとおり(1)評価の準備(2)評価の実施(3)評価結果のとりまとめと開示、という3つのステップで行います。それぞれのステップにおける実際の作業は、取締役会事務局が取締役会議長や筆頭独立社外取締役の指示の下で実施することになります。

1)評価の準備

ステップ(1)で実施する評価項目・評価基準の設定や評価計画の策定等は、取締役会の合意を得ながら進める必要があります。
評価項目・評価基準の策定は、一定の枠組みで評価項目を検討しつつ、コーポレートガバナンスの「あるべき姿」や「目指す姿」について取締役会の合意を得る必要があります。また評価項目・評価基準の内容だけでなく、取締役・監査役からの情報収集をスムーズに行うためのツール等、たとえばアンケートの書式や、インタビューでの質問項目の準備が必要になります。
アンケートでは、回答のしやすさを考慮して選択式の設問を中心に設計することが考えられますが、より具体的な課題抽出を行うためにも、重要な論点については記述式の設問も準備すべきでしょう。

2)評価の実施

評価においてはすべての取締役・監査役等に対して、アンケートとインタビューを実施することが一般的です。回答するのは多忙な取締役が中心となるため、アンケートやインタビューに要する時間がそれほどかからないような設計とする必要があります。例えば、アンケートについては設問数を絞り込むだけでなく、設問の趣旨や評価基準の考え方についてのガイダンスを併せて作成することで、回答しやすくすることなどが考えられます。
これまでの評価ではアンケートのみを実施する企業が多く見られますが、インタビューを組み合わせる方がよりメリットが大きいと言えるでしょう。アンケートでは得られないような背景情報や考え方について取締役から直接情報収集できるのももちろんですが、特に「目指す姿」についての目線合わせの場としてインタビューを活用できる点は大きなメリットです。

3)評価結果のとりまとめと開示

評価作業が終了した後、事務局では(2)で実施したアンケートやインタビューの結果をとりまとめた評価結果資料を作成します。この評価結果資料に基づき取締役会で改めて審議を行い、取締役会としての評価を確定させることになります。
評価結果資料は、取締役会での審議の際に自社の課題や強み・弱みが明確にわかるように作成する必要があります。
取締役会で確定された評価結果は、その内容をそのままコーポレート・ガバナンス報告書で開示する訳ではなく、「評価結果の概要」として評価結果の骨子や概要を表す文章(開示文案)を作成し、取締役会で承認したうえで開示することになります。
我が国においても徐々に取締役会実効性評価結果の概要の開示事例が増えてきているものの、コーポレートガバナンス・コードには細かな記述はされていないこともあり、その形式・内容は各社各様です。しかしながら、コーポレート・ガバナンス報告書の読み手のニーズから考えると、以下のような要素を開示することが望ましいと言えるでしょう。
a)評価の主体(誰が主体となって評価したか)
b)評価の手法(アンケート調査、インタビュー等、評価にあたり採用した手法)
c)評価の対象範囲(取締役のみか、監査役を含むか)
d)評価の結論(実効性の有無等についての言及)
e)評価の過程でわかった課題(取締役会として今後改善すべき点)
f)課題に対する今後の取組みの方向性(課題への対応方向性)
このうち、a)~c)は実施した評価そのものについての開示であり、d)~f)は評価結果についての開示です。コーポレートガバナンス・コードが求めているのは「結果の概要の開示」であり、字義通りの開示であればd)が中心となりますが、その根拠を示すためにはa)~c)を開示すべきであり、e)やf)については取締役会としての活動の方向性を関係者に知ってもらうためにも重要です。
英国のある金融機関の開示内容では、前年度評価で認識した課題に当年度どう対応したか、また翌年度どのような方向性で取り組むか、といった課題に対する中期的・継続的改善の状況を開示している例があります。取締役会実効性評価を取締役会の活動にうまく活用していることがよくわかる好例と言えるでしょう。また、我が国の金融機関の開示においては、単に評価結果や評価手法だけでなく、コーポレートガバナンスに関するこれまでの取組みの歴史・経緯から示した例が見られます。現時点を切り取った評価・取組みの開示ではなく、過去からの取組みと現時点の評価との関係や将来に向けた方向性を時系列で開示することは、ステークホルダーにとっても説得力のある開示と捉えられるでしょう。

2.外部専門家の活用

取締役会実効性評価を行うにあたっては、一連のステップにおいて作業負荷もかなり高くなることから、取締役会議長や筆頭独立社外取締役、作業を担当する取締役会事務局にとっては非常に大きな負担がかかることになります。また、コーポレートガバナンスに関するステークホルダーの期待や先行事例を考慮するためには、さまざまな専門的な知見や最新情報のアップデートも必要となります。さらに、自己評価はやはり身内による評価のため、客観的な視点も織り込むべきでしょう。
これらの観点から、外部専門家の活用は有用と考えられます。外部専門家を活用する場合、一律の基準で合否判定をするような「外部による客観評価」ではなく、自己評価の過程に専門家として関与してもらい助言を仰ぐような「外部が関与した自己評価」を想定して活用すべきです。
コーポレートガバナンス・コードには、取締役会実効性評価に外部専門家を活用するか否かについては特に言及されておりませんが、金融庁と東京証券取引所主催の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」により2016年2月18日に公表された「意見書(2)」では、今後の我が国における取組みの例として、「評価の独立性・客観性をより高める観点から外部の眼も入れた評価を行う。また、評価機関との利益相反関係の有無を明らかにするため、その名称の公表を行う」といった言及がされています。我が国においても取締役会実効性評価が定着する過程で、外部専門家の起用についても考慮が必要となると考えられます。

金融機関に関する最新情報

お問合せ

 

RFP(提案書依頼)

 

送信