地方銀行の経営統合 - シナジーの発揮

地方銀行の経営統合 - シナジーの発揮

地方銀行の経営統合時に検討されるシナジーの考え方についてご紹介いたします。

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これまで地方銀行が経営統合する場合、隣接する商圏(県)の銀行同士になることが多く見受けられます。これは、隣接する県を合わせて1つの大きな商圏と捉えることで、より広域のネットワークを基盤としたビジネスが展開し易いということが背景にあると思われます。
しかしながら、経営統合はそれまでの単体行での経営に比べ、経営統合することによって“プラスαのシナジー”が生まれることを期待して行われるものですから、隣接する商圏を足し合わせたことで単に広域化させただけでは本来の目的は達成できないと言えます。
経営統合によって、重複業務を排除したり機能を集約したりすることでコスト削減を図るとともに、両者の経営資源を結集することでトップラインについても単なる足し算ではない“プラスαのシナジー”を享受できるような経営戦略を策定することが重要です。

経営統合をした際のシナジーには、一般にトップライン・シナジーとコストダウン・シナジーがあります。
前者は、経営統合後の経営資源の結集により本業による収益面で上述したような“プラスαのシナジー”を享受するものです。一方で、後者は重複業務や機能の集約・排除によってこれまで単体行で負担していたコストを経営統合する両行で足し合わせたものから削減させる効果をもたらすシナジーです。
トップライン・シナジーにおける経営資源の結集は、経営統合する両行が持つ顧客基盤やノウハウ、情報等の差異の相互活用と捉えることができます。お互いに自行が持っていない統合相手の経営資源を活用することで、これまで獲得できなかったビジネス機会を得ることにより本業による収益面でより大きなベネフィットを得ることを目的とするものです。この場合、相互に顧客基盤やノウハウ、情報を活用することになりますので、各行員が自身の所属する銀行単体のみならず、グループ全体の収益に寄与するために行動できるよう発想を転換することが必要です。
これに対してコストダウン・シナジーは、経営統合後の傘下各行に重複して存在する業務や機能を集約することで、それぞれにかかっていたコストを削減することが目的です。トップライン・シナジーは経営統合後の営業戦略そのものですので、経営環境や景気動向によって影響を受け易い側面があるのに対し、コストダウン・シナジーは施策を講じれば必ず何かしらの効果が出るのが特徴です。
下図は、経営統合した際に活用し得るシナジーの源泉を図式化したものですが、ここでトップライン・シナジーの源泉は主に(1)から、コストダウン・シナジーの源泉は(2)(3)から生じると説明することができます。

【参考】企業優位の戦略:「企業戦略」を再考する [著]マイケル E ポーター

上図で、傘下各行の「重複の排除」や「機能の共有」は比較的わかり易いのですが、傘下各行の持つ顧客基盤やノウハウ、情報等の差異で活用可能なもの(「差異の活用」)は見えにくいケースが多々あります。これは、持株会社傘下に既存の銀行が入るような統合形態の場合、傘下各行自身は変化を感じにくいことにも起因します。また、差異を見つけたとしてもそれを活用するにはトランスフォーメーション(変革)を必要とすることもあり、こういった活用可能な差異はマネジメントがリーダーシップを発揮して活用の仕方を考えなければ埋没してしまうこともあり得ます。したがって、マネジメントは経営統合をトランスフォーメーションの機会と捉え、前述のような差異を見つけ出し、経営判断の俎上に乗せるための仕組みを作っておくことが重要です。

経営統合にあたっては、経営統合後の絵姿を中期経営計画で示すことが想定されますが、その際はこれらトップライン・シナジーとコストダウン・シナジーをどのように発揮できそうかを見込みながら当該計画に織り込んでいくことになります。
前述のとおり、コストダウン・シナジーは例えばシステム統合などのように、それを実行すれば(当初に見込んだ通りかどうかは別として)必ず効果が得られますが、トップライン・シナジーは営業戦略そのものになりますのでさまざまな外部要因の影響を受けます。
したがって、中期経営計画策定にあたっては見積りし易いコストダウン・シナジーをベースにしながら、“プラスαのシナジー”としてトップライン・シナジーを上乗せしていく形になるのが通常と考えられます。いずれにしても経営統合準備の早い段階で態勢を整備し、時間をかけてこれらシナジーを分析して戦略に反映させることが重要です。
さらに、昨今の金融行政の動向を勘案すると、地方銀行においては経営統合時にも地域への貢献と顧客利便性の向上への配慮が必要であることは言うまでもありません。トップライン・シナジーは、これらの要素を織り込んだものであることが望まれることになります。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
金融事業部
パートナー 宮田世紀

株式会社KPMG FAS
パートナー 中尾哲也

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