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2017年度税制改正 - タックスヘイブン対策税制

2017年度税制改正 - タックスヘイブン対策税制

2016年12月8日、政府与党(自民党・公明党)は「2017年度税制改正大綱」を決定しました。

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このニューズレターでは、税制改正大綱に示された改正項目のうち、タックスヘイブン対策税制に関する事項をお知らせいたします。

税制改正大綱は改正案の概要を示すものであり、改正の詳細は、改正法案の公表並びに法律及び政省令の公布を待たなければなりません。また、今後の国会審議等によりその内容に変更が生じる可能性がありますので、ご留意くださいますようお願いいたします。

 

英語コンテンツ
2017 Tax Reform - Japanese Anti-Tax Haven (CFC) Regime

改正の背景

タックスヘイブン対策税制とは、一定の外国法人の所得を、その株主である内国法人の所得に合算して課税する制度で、外国の子会社を利用した租税回避を抑止するために設けられています。

2017年度税制改正では、2015年10月5日に経済協力開発機構(OECD)が公表した税源浸食と利益移転(BEPS: Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクトの行動3(タックスヘイブン対策税制の設計)に関する最終レポートを踏まえて、制度全体にわたる改正が予定されています。

(タックスヘイブン対策税制は日本の居住者である個人にも適用がありますが、ここでは、原則として、内国法人が納税義務者である場合の取扱いについて解説いたします。)

改正のポイント

  • トリガー税率(合算課税の対象となる外国関係会社を判定するための租税負担割合。現行法においては、租税負担割合が20%以上である外国関係会社は、合算課税の対象から除外されている。)は廃止された。これにより、現行法において指摘されていたアンダーインクルージョンの問題(租税負担割合が20%以上であれば経済実体を伴わない所得であっても、自動的に合算課税の対象から除外されるという問題)が解消されることとなる。
  • ただし、企業の事務負担に配慮し、租税負担割合が20%以上である外国関係会社については、「経済活動基準」による判定は免除される。
  • したがって、租税負担割合が20%以上である外国関係会社が合算課税の対象となるのは、ペーパーカンパニー、キャッシュボックス又はブラックリストカンパニーに該当する場合に限られることになる。(ただし、租税負担割合30%の足切基準あり。)
  • 「適用除外基準」(改正案では「経済活動基準」)が見直され、現行法において指摘されていた、航空機リース事業等のオーバーインクルージョンの問題が解消されることが期待される。
  • 「資産性所得」(改正案では「受動的所得」)の範囲が拡大される。
  • 「外国関係会社」及び「納税義務者」の判定方法に、実質支配基準が導入される。

1. タックスヘイブン対策税制の全体像

以下は、タックスヘイブン対策税制の全体像を現行法と改正案それぞれで示したものです。

現行法

改正案

2. 外国関係会社

外国関係会社の範囲は以下のように見直され、たとえ、居住者及び内国法人による株式保有割合が50%以下であっても、居住者又は内国法人により実質的に支配されている場合には、その外国法人は外国関係会社の範囲に含まれることになります。

現行法 改正案
居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者による直接及び間接の株式保有割合が50%超である外国法人
  • 同左
  • 居住者又は内国法人と外国法人との間にその居住者又は内国法人がその外国法人の残余財産のおおむね全部を請求することができる等の関係がある場合におけるその外国法人(実質支配基準)

 

なお、間接保有割合は、現行法では掛け算方式により算定されていますが、改正により、50%超の株式保有を通じた連鎖関係がある外国法人が有する判定対象の外国法人に対する持分割合等により算定されることになります。

3. 納税義務者

納税義務者の範囲にも、実質支配基準が導入されることになります。

現行法 改正案
以下の(i)又は(ii)
(i)外国関係会社を直接及び間接に10%以上保有する内国法人又は居住者
(ii)外国関係会社を直接及び間接に10%以上保有する同族株主グループに属する内国法人又は居住者
  • 同左
  • 居住者又は内国法人と外国法人との間にその居住者又は内国法人がその外国法人の残余財産のおおむね全部を請求することができる等の関係がある場合におけるその居住者又は内国法人(実質支配基準)

4. ペーパーカンパニー等の定義

(1)ペーパーカンパニー

ペーパーカンパニーとは、以下の要件のいずれも満たさない外国関係会社をいいます。

  • 主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有していること。(保険業を営む一定の外国関係会社については、これらを有している場合と同様の状況にある場合が含まれます。)
  • 本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること。(保険業を営む一定の外国関係会社については、これらを自ら行っている場合と同様の状況にある場合が含まれます。)

なお、国税当局の職員が内国法人にその外国関係会社が、上記の要件を満たすことを証明する書類の提出等を求めた場合において、期限までにその提出等がないときは、その外国関係会社は上記の要件を満たさないものと推定されることになります。

(2)キャッシュボックス

「キャッシュボックス」とは、以下の2つの基準を満たす外国関係会社をいいます。

金融子会社等(詳細は「8」に記載しています。)の場合には、上記に代えて、以下の2つの基準で判定されます。

(3)ブラックリストカンパニー

「ブラックリストカンパニー」(仮称)には、租税に関する情報の交換に非協力的な国又は地域として財務大臣が指定する国又は地域に本店等を有する外国関係会社が該当します。

OECDは、グローバル・フォーラムが実施する要請に基づく情報交換に関するピア・レビューにおける評価や共通報告基準に基づく税務当局間での金融口座情報の自動的交換に対するコミットメント等により、「税の透明性に関する非協力的地域」と特定された国・地域のリスト(いわゆるブラックリスト)を2017年7月に公表する予定です。

改正案では詳細は示されていませんが、OECDのブラックリストに掲載された国・地域が、財務大臣により指定されるものと考えられます。

5. 適用除外基準・経済活動基準

現行法における「適用除外基準」は内容が見直され、「経済活動基準」に名称変更される予定です。

現行法 - 適用除外基準

(1)事業基準
主たる事業が以下のものでないこと。

  • 株式等又は債券の保有
  • 無形資産の提供
  • 船舶又は航空機の貸付け


(2)実体基準
本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること。


(3)管理支配基準
本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を行っていること。


(4)
A. 非関連者基準

非関連者との取引が全体の50%超であること。
適用業種: 卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業又は航空運送業

B. 所在地国基準
事業を主として本店所在地国で行っていること。
適用業種: Aの基準が適用される業種以外

改正案 - 経済活動基準

それぞれの基準の改正点は、以下のとおりです。

 

(1)事業基準
航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国においてその役員又は使用人が航空機の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすものについては、事業基準を満たすものとされます。


(2)実体基準及び管理支配基準
保険委託者の実体基準及び管理支配基準の判定について、その保険委託者に係る保険受託者が実体基準又は管理支配基準を満たしている場合には、その保険委託者は実体基準又は管理支配基準を満たすものとされます。

(上記の「保険委託者」とは、保険業法に相当する本店所在地国の法令の規定による免許を受けて保険業を営む一定の外国関係会社をいい、「保険受託者」とは、その「保険委託者」の免許の申請等の際に保険業に関する業務を委託するものとして申請等をされた者で一定の要件を満たすものをいいます。)


(3)非関連者基準

  • 非関連者との間で行う取引の対象となる資産、役務その他のものが、関連者に移転又は提供されることがあらかじめ定まっている場合には、その非関連者との間の取引は、関連者との間で行われたものとみなして、非関連者基準の判定を行うこととする等の見直しが行われます。
  • 保険業を主たる事業とする外国関係会社が保険受託者に該当する場合における非関連者基準の判定について、その外国関係会社がその外国関係会社に係る保険委託者との間で行う取引は、関連者取引に該当しないものとされます。
  • 航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社については、非関連者基準が適用されることになります。

 

(4)所在地国基準
製造業を主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国において製造における重要な業務を通じて製造に主体的に関与していると認められるものの所在地国基準の判定方法について、所要の整備が行われます。

(この改正により、来料加工を行う外国関係会社が所在地国基準を満たすようになることが期待されます。)


(5)経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等
現行法の「適用除外基準」においては、その適用があることを明らかにする書類の保存が適用要件とされています。「経済活動基準」においては、国税当局の職員が内国法人にその外国関係会社が経済活動基準を満たすことを証明する書類の提出等を求めた場合において、期限までにその提出等がないときは、その外国関係会社は経済活動基準を満たさないものと推定される規定が設けられることになります。

6. 会社単位の合算課税ルール

現行法において、会社単位の合算課税の対象所得(適用対象金額)の計算上、持分割合25%以上(かつ保有期間6ヵ月以上)の外国子会社からの配当を控除することとされています。

この25%の持分割合要件に特例が設けられ、主たる事業が化石燃料(原油、石油ガス、可燃性天然ガス又は石炭)を採取する事業(その採取した化石燃料に密接に関連する事業が含まれます。)である外国法人で日本が締結した租税条約の相手国に化石燃料を採取する場所を有するものから受ける配当等については、持分割合要件が10%以上に緩和されます。

7. 資産性所得・受動的所得

現行法における資産性所得は、受動的所得として範囲が拡大される予定です。それぞれの内容は以下のとおりです。

現行法 - 資産性所得

(1)配当
(持分割合10%以上の株式等に係るものを除く。)

(2)債券の利子

(3)債券の償還差益

(4)株式の市場における譲渡等から生じる譲渡益
(持分割合10%以上の株式等に係るものを除く。)

(5)債券の市場における譲渡等から生じる譲渡益

(6)特許権等の使用料
(自己開発した無形資産等及び対価を支払って取得し、又は使用許諾を得たうえで一定の事業の用に供している無形資産等に係るものを除く。)

(7)船舶・航空機の貸付けの対価


上記のうち(1)から(5)については、外国関係会社が行う事業(適用除外基準の事業基準に掲げられた事業を除きます。)の性質上、重要で欠くことのできない業務から生じたものは除かれます。

改正案 - 受動的所得

(1)利子
(一定の利子※1を除く。)

(2)配当
(持分割合25%以上等の要件を満たす法人から受ける配当等※2を除く。)

(3)有価証券の貸付けの対価

(4)有価証券の譲渡損益
(持分割合25%以上等の要件を満たす法人の株式等に係るものを除く。)

(5)デリバティブ取引に係る損益
(ヘッジ目的で行われることが明らかなデリバティブ取引等に係るもの及び一定の商品先物取引業者等※3が行う商品先物取引等に係るものを除く。)

(6)外国為替差損益
(外国関係会社が行う事業(外国為替相場の変動によって生ずる差額を得ることを目的とする事業を除く。)に係る業務の通常の過程で生ずるものを除く。)

(7)上記(1)から(6)までに掲げる所得を生ずべき資産から生ずるこれらの所得に類する所得
(ヘッジ目的で行われることが明らかな取引に係るものを除く。)

(8)有形固定資産の貸付けの対価
(一定の有形固定資産の貸付けの対価※4を除く。)

(9)無形資産等の使用料
(自己開発した無形資産等及び相当の対価を支払って取得し、又は使用許諾を得たうえで一定の事業の用に供している無形資産等に係るものを除く。)

(10)無形資産等の譲渡損益
(自己開発した無形資産等及び相当の対価を支払って取得し、又は使用許諾を得たうえで一定の事業の用に供している無形資産等に係るものを除く。)

(11)以下の算式により算出される金額に相当する所得
(当期利益)-(上記(1)から(10)までの所得金額)-(所得控除額※5

※1 一定の利子

「一定の利子」とは以下の利子をいいます。

  • 以下の貸し手及び借り手の間で行われる金銭の貸付けによる利子

    貸し手:
    本店所在地国においてその役員又は使用人が金銭の貸付け等を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たす外国関係会社

    借り手:
    貸し手の関連者等
  • 以下の貸し手及び借り手の間で行われる金銭の貸付けによる利子

    借り手:
    本店所在地国においてその役員又は使用人が金銭の貸付け等を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たす外国関係会社

    貸し手:
    借り手の関連者等である他の外国関係会社
  • 以下の貸し手が金銭の貸付けによって得る利子

    貸し手:
    本店所在地国において法令に準拠して貸金業を営む外国関係会社で、本店所在地国においてその役員又は使用人が貸金業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすもの
  • 外国関係会社が行う事業に係る業務の通常の過程で得る預金利子

※2 持分割合25%以上等の要件を満たす法人から受ける配当等

  • 配当支払法人において損金算入される配当等は除かれます。
  • 主たる事業が化石燃料を採取する事業(その採取した化石燃料に密接に関連する事業が含まれます。)である外国法人で日本が締結した租税条約の相手国に化石燃料を採取する場所を有するものから受ける配当等については、持分割合要件が10%以上とされます。

※3 一定の商品先物取引業者等

「一定の商品先物取引業者等」とは、本店所在地国の法令に準拠して商品先物取引業又はこれに準ずる事業を行う外国関係会社で、本店所在地国においてその役員又は使用人がこれらの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすものをいいます。

※4 一定の有形固定資産の貸付けの対価

「一定の有形固定資産の貸付けの対価」とは、以下のものをいいます。

  • 主として外国関係会社の本店所在地国において使用に供される有形固定資産等の貸付けによる対価
  • 本店所在地国においてその役員又は使用人が有形固定資産の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たす外国関係会社が行う有形固定資産の貸付けによる対価

※5 所得控除額

「所得控除額」は、以下のように計算されます。

(総資産+減価償却累計額+人件費)x 50%

8. 受動的所得の合算課税ルール

(1)デミニマス基準

現行法においては、外国関係会社が以下のいずれかの基準を満たす場合には、その事業年度においては、資産性所得の合算課税ルールの適用は免除されることとされています(少額免除規定)。

改正後の受動的所得の合算課税ルールにも、同様のデニミマス基準が適用されることになりますが、上記(i)の1,000万円が2,000万円に引き上げられます。

また、現行法では、デミニマス基準を満たす旨を記載した書面の確定申告書への添付及びその適用があることを明らかにする資料等の保存が、この少額免除規定の適用要件とされていますが、これらの要件は廃止される予定です。

(2)受動的所得の合算課税の対象所得

外国関係会社の受動的所得の合算課税の対象所得(部分適用対象金額)は、以下のA及びBの所得の金額の合計額とされます。

A B
以下の所得の金額の合計額
(1)利子
(2)配当
(3)有価証券の貸付けの対価
(8)有形固定資産の貸付けの対価
(9)無形資産等の使用料
(11)一定の算式により算出される金額に相当する所得
以下の所得の金額の合計額(合計額が零を下回る場合には、零)
(4)有価証券の譲渡損益
(5)デリバティブ取引に係る損益
(6)外国為替差損益
(7)(1)から(6)までに掲げる所得を生ずべき資産から生ずるこれらの所得に類する所得
(10)無形資産等の譲渡損益

外国関係会社のBの合計額が零を下回る場合には、その金額は7年間繰り越され、翌事業年度以降のBの合計額の計算上、控除することが認められます。

(3)金融子会社等の特例

金融子会社等(本店所在地国の法令に準拠して、銀行業、金融商品取引業又は保険業を営む外国関係会社で、本店所在地国においてその役員又は使用人がこれらの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすもの)については、以下の特例が設けられます。

金融子会社等の受動的所得は以下のものとされ、A又はBのうちいずれか大きい金額が受動的所得の合算課税の対象所得(部分適用対象金額)とされます。

A B
  • 金融子会社等の異常な水準の資本に係る所得

(i)+(ii)
(i)以下の所得の金額の合計額

  • 有形固定資産の貸付けの対価
  • 無形資産等の使用料
  • 無形資産等の譲渡損益(零を下回る場合には、零)

(ii)一定の算式により算出される金額に相当する所得(「7」で示した受動的所得の(11))

外国関係会社の無形資産等の譲渡損益が零を下回る場合には、その金額は7年間繰り越され、翌事業年度以降の無形資産等の譲渡損益の計算上、控除することが認められます。

9. その他

(1)外国関係会社に係る財務諸表等の添付

内国法人は、以下に掲げる外国関係会社に係る財務諸表等を確定申告書に添付することが求められるようになります。

  • 租税負担割合が20%未満の外国関係会社
  • 租税負担割合が30%未満の外国関係会社
    (「4」で述べた、ペーパーカンパニー、キャッシュボックス又はブラックリストカンパニーに該当するものに限られます。)

(2)二重課税の調整

  • 外国関係会社の合算課税された所得に対して課される日本の所得税の額、復興特別所得税の額及び法人税の額は、法人税の額から控除されます。
  • 投資法人等が外国関係会社から配当を受けた場合には、過去10年以内にその外国関係会社の所得につき合算対象とされた金額の合計額に達するまでの金額は課税所得に含めないこととされます。

10. 適用開始時期

上記の改正は、外国関係会社の2018年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

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