IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 34 | KPMG | JP

IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 34 金融商品会計の動向

IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 34

IFRS - 金融商品ニューズレターでは、IASBの金融商品に関するプロジェクトの動向について最新情報を提供しています。Issue34では、資本の特徴を有する金融商品のプロジェクトについて、2016年11月に行われたIASBの審議を取り上げています。

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「IAS第32号におけるプッタブル金融商品の例外規定を引き継ぐことについての議論は、利用者にとって重要な情報のすべてを示すことができる分類のアプローチは存在しないということを強調している。」

KPMGグローバル
IFRS金融商品リーダー
Chris Spall

 

IASBは、前回の会議において、発行企業が代替的な決済結果の中から選択できるような請求権及び経済的なインセンティブが分類に与える影響について検討したことをうけて、資本の特徴を有する金融商品に関する審議を継続した。

概要

IASBは、11月の会議において、IAS第32号における現行のプッタブル金融商品の例外に該当する商品のガンマ・アプローチに基づく分類、及びこの例外規定を引き継ぐことの利点について審議した。

プロジェクトの次のステップは、以下について検討することである。

  • 契約における権利及び義務の実質、並びに法律及び規制上の要求事項との関係
  • 資本性金融商品の認識、認識の中止及び分類変更

マクロヘッジ会計のプロジェクトについての審議は、11月の会議では行われなかった。

資本の特徴を有する金融商品

これまでの経緯

IAS第32号「金融商品:表示」には、負債と資本に金融商品を分類する規定が含まれている。この二元論的な分類規定を資本の特徴を有する多くの金融商品に適用した場合、重要な実務上の論点が生じる。過去において、IFRS解釈指針委員会にはこの分野に関する複数の質問が寄せられたが、一部のケースでは結論に至らなかった。IFRS解釈指針委員会は、それらのいくつかについてはIFRSの基礎的な概念の検討を要するため、IASBに議論を委ねた。

IASBは2008年にディスカッション・ペーパー(DP)「資本の特徴を有する金融商品」を公表した。しかし、リソースの問題により、IASBはこのトピックに関する公開草案を公表することができず、プロジェクトは中断した。その後、IASBは「財務報告に関する概念フレームワーク」※1プロジェクトの一環で一部の課題について審議した。

2015年5月、IASBは資本の特徴を有する金融商品に関するプロジェクトを正式に再開し、プロジェクトを2つ(分類、並びに表示及び開示)に分けることを決定した。

 

会議開催
時期
審議内容
2015年
5月
IASBは、負債と資本を区別する際の概念上及び適用上の課題について審議した。
2015年
6月
IASBは、請求権の測定及び資本と負債の区別に関連する特性を特定した。
2015年
7月
IASBは、財務諸表利用者が財政状態計算書及び業績における情報を用いて行う可能性のある評価における、これらの特性の関連性を分析した。
2015年
9月
IASBは、デリバティブ以外の金融商品の分類に注目した。IASBは、IAS第32号の規定が、財務諸表利用者の評価に必要な特性をどの程度捕捉しているかについて審議した。また、3つの取りうる分類のアプローチ(アルファ、ベータ、ガンマ)についても検討した。
2015年
10月
IASBは、「企業自身の資本」に関するデリバティブの分類及び会計処理の課題、並びにIAS第32号がこれらの課題にどのように対処しているかについて審議した。
2016年
2月
IASBは金融負債の内訳分類を用いて財務成績及び財政状態を評価するための追加的情報を提供すること、及び資本の部の内訳分類を用いて関連する特性についての追加的情報を提供することについて審議した。また、条件付きの代替的な決済結果を伴う請求権についても審議を行った。
2016年
4月
IASBは残余金額に依存する負債の別個の表示に関する規定の適用範囲を検討した。IASBはまた、普通株式以外の資本に対する請求権(非デリバティブ及びデリバティブの両方を含む)に純損益及びOCIを割当てる方法について審議した。
2016年
5月
IASBは割当てのアプローチに関する4月の審議を継続し、純損益及びOCIをデリバティブに該当する資本に対する請求権に割当てるために取りうる別の方法について検討した。
2016年
7月
IASBは企業自身の資本に係るデリバティブの分類、資産と負債を交換するデリバティブ、及び負債と資本を交換するデリバティブにガンマ・アプローチをどのように適用するかについて審議した。
2016年
9月
IASBはガンマ・アプローチに基づく企業自身の資本に係るデリバティブに関する審議を継続したが、負債として分類された特定の種類のデリバティブの表示及び開示によって分類及び表示のアプローチがどのように補完されるかにも焦点を当てた。
2016年
10月
IASBは発行企業が代替的な決済結果を選択できるような請求権について審議し、経済的なインセンティブは分類に影響を及ぼすべきでないということに合意した。

 

※1 IASBは、2015年5月にED「財務報告に関する概念フレームワーク(ED/2015/3)」を公表した。本ニューズレターにおける概念フレームワークは、別途記載のない限り、現行の財務報告に関する概念フレームワークを参照している。

IAS第32号におけるプッタブル金融商品の例外に該当する商品の分類

 

“IASBは、IAS第32号の現行のプッタブル金融商品の例外に該当する商品のガンマ・アプローチにおける分類、及びこの例外規定を引き継ぐことの利点について審議した”


問題の所在
プッタブル金融商品は、プットの行使時に現金または他の金融資産と交換に当該金融商品を発行者が買い戻すかまたは償還する契約上の義務を含んでおり、負債として分類される。ただし、IAS第32号では、その商品が一定の特徴を有し特定の条件を満たしている場合には、企業の純資産に対する最残余の請求権を表しているため、資本として分類される。これは「プッタブル金融商品の例外」と称されている。

この例外規定は、以下の負債の分類に関する懸念事項に対処することを目的として、IAS第32号に含まれた。

  • 企業の時価総額が負債として認識される可能性がある
  • 負債の帳簿価額の変動は純損益に認識され、これらの損益の変動は直観に反している
  • 企業は負の純資産を計上する可能性がある
  • 企業は完全に、またはその大部分について借入により資金調達しているとみなされる
  • 株主への利益分配が費用として認識される

プッタブル金融商品の例外により、普通株式とほぼ同等の金融商品は、企業の構成が異なっている場合でも、同様に分類される(例:一部のパートナーシップ、期限付きの事業体及び共同組合)。

さらに、IAS第1号「財務諸表の表示」は、利用者が企業の流動性及びキャッシュフローへの影響について評価できるようにするために、資本として分類されたプッタブル金融商品に関する特定の開示を義務付けている。

ガンマ・アプローチのもとでは、これらのプッタブル金融商品は、清算前のいずれかの時点で経済的資源を対価に発行企業に移転される可能性があるため、負債の定義を満たす。

IAS第32号はまた、清算時にのみ企業の純資産の比例的な取り分を他の当事者に引き渡す義務を企業に課す商品に関する同様の例外規定を含んでいる。これらの商品もガンマ・アプローチのもとで負債として分類される。これらの商品は、発行企業に対して、清算前に経済的資源を移転することを要求していないが、以下のいずれかの場合に特定の時点で契約上の義務を生じさせる。

  • 清算が生じることが確実であり、それに企業の支配が及ばない場合
  • 清算が商品保有者の選択により行われる場合

ガンマ・アプローチがプッタブル金融商品の例外規定の要因となっていた懸念事項に対処しているか、または、IAS第32号におけるプッタブル金融商品の例外規定を引き継ぐべきかについては、疑問が呈されている。

 

IASBでの審議内容
スタッフの分析は、プッタブル金融商品の例外に該当する商品の取扱いに焦点を当てていたが、清算時に企業の純資産の比例的な取り分を引き渡す義務を課す商品にも同様の分析を適用すべきだということを明確にした。

スタッフは、プッタブル金融商品の例外規定が適用される条件の1つは、当該商品の存続期間にわたって当該金融商品に帰属する予想キャッシュフローの合計額が、実質的に、以下に基づいていることだという点に留意した。

  • 純損益
  • 認識されている純資産の変動、または
  • 当該金融商品の存続期間にわたる企業の認識済み、または未認識の純資産の公正価値の変動

これは、このような金融商品に帰属するキャッシュフローの合計額が、「実質的に」残余の金額の主要な要因(key driver)によって決まることを意味している。IASBが審議しているガンマ・アプローチは、キャッシュフローが残余の金額のみ(または、残余の金額と外貨換算レート)に依存している金融商品に関する区分表示の規定を含んでいるが、これらの規定は、IAS第32号におけるプッタブル金融商品の例外に該当する商品にも適用することができるとスタッフは考えている。

スタッフは、区分表示の規定は負債の分類に関する懸念事項の一部に対処していると考えている(例:金融商品の帳簿価額の変動がOCIに区分表示される場合は、純損益への直観に反する影響が回避される)。

さらに、負債として分類されることによって、公正価値での直接的な測定が可能となり、そのような請求権から生じる可能性のある現金流出を予想する際に利用者にとって有用な情報が提供される。

スタッフは、ガンマ・アプローチに基づく分類及び表示は、すべての企業の請求権が負債の定義を満たす可能性があり、したがって、資本として分類される請求権はないという懸念事項に対処していないことを認めた。また、資産と負債の差異は何を示しているのか、及びこの差異をどのように計上すべきかについて、疑問が呈されている。

これに対して、スタッフは、以下の2つの選択肢があると考えている。

  • このような種類の金融商品に、負債の分類の例外規定を適用せずにガンマ・アプローチを適用する。
  • IAS第32号の例外規定を引き継ぐとともに、IAS第1号のプッタブル金融商品に関する開示規定を引き継いで、清算時に企業の純資産の比例的な取り分を引き渡す義務を課す金融商品にこれらの開示規定を適用する。

IASBは、FICEプロジェクトの目的の1つは、IAS第32号における負債と資本の区別の基礎となる論拠を補強することであり、IAS第32号の根本的な見直しを行うことではないことに着目した。IASBはまた、この例外規定に該当する金融商品にガンマ・アプローチを適用することによって、例外規定の要因となっていた従来の懸念事項の一部が解決される可能性があるが、全部は解決されないことにも注目した。したがって、この例外規定は引き続き必要となる可能性がある。ただし、ボードメンバーは、異なる国地域の実務において、プッタブル金融商品の例外規定がどれぐらい広く適用されているかを判断することが有用であることについて、スタッフと合意した。IASBは、この審議の内容をディスカッション・ペーパーに含めることを決定した。

KPMGの見解

プッタブル金融商品を分割しない?

スタッフは、IASBがこれまで、プッタブル金融商品をプット・オプションと主契約である資本性金融商品とに区分することを要求するアプローチを受け入れていなかったことに着目した。その理由は、資本と負債の区別に関するIASBの従前のプロジェクトの取組みと重複するためであった。

KPMGは、IASBが2016年7月に企業自身の資本に係るデリバティブへのガンマ・アプローチの適用について議論した際に、現金と引き換えに資本性金融商品を買い戻すことを要求する商品(例:自己株式に係る売建プットオプション)に焦点を当てていたことに着目した。IASBは、ガンマ・アプローチがIAS第32号における現行の償還義務の規定と同様の規定を適用すべきであることで同意している。これにより、清算前に一定額の現金を支払う義務に対する負債及び残余の金額に対する資本部分が通常生じることになる。IASBは、プッタブル金融商品に対してこのような分析を適用することについては議論していない。

しかし、多くのプッタブル金融商品は常に公正価値によりプット可能であるため、ガンマ・アプローチまたは現行の償還義務の規定のいずれを適用した場合でも、同様の会計処理が行われることになる。恐らくこの理由から、ガンマ・アプローチは利用者がプッタブル金融商品から生じる可能性のある現金流出を予想するために役立つ情報を提供するとスタッフが主張する際に、このような商品を負債として分類することにより公正価値での直接的な測定が可能になるとスタッフは述べている。


清算時に生じる義務

スタッフは、清算時に企業の純資産の比例的な取り分を他の当事者に引き渡す義務を課す金融商品もまた、清算が生じることが確実で企業の支配が及ばないか、あるいは清算が商品保有者の選択により行使できる場合に、ガンマ・アプローチに基づいて負債として分類されることに着目した。ただし、これは、ガンマ・アプローチにおける負債及び資本の定義の文字通りの解釈からは明確ではない。つまり、当該義務は清算時にのみ経済的資源を移転することに関係し、残余の金額に対するものであるため、これらの金融商品は資本として分類されると考えられる可能性がある。

また、IASBは、清算権(例:企業の支配が及ばない事象が発生した場合に行使可能となる保有者の清算権、または個別の商品に含まれずに1つのクラスとして保有される商品保有者の清算権)が付された金融商品については未だ議論していない。


今後の展開

プッタブル金融商品に関する決定は、どのようなものであれ議論の対象となることが予想される。プッタブル金融商品の例外規定は、利害関係者の負債の分類に関する懸念事項が要因であったため、一部の利害関係者は例外規定の削除に反対する可能性がある。ただし、利害関係者によっては、例外規定を引き継ぐことは、ガンマ・アプローチの根本的な問題を示唆している、またはIASBに他の例外事項も認めるよう要求することにつながると考えるかもしれない。

いずれにしても、プットに関する権利は一部地域の法定上または規制上の要件から生じている可能性があるため、この論点の重要性は、IASBが未だ議論していない契約要件対法定要件の論点にある程度依拠している。

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