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保険規制の進化2016 - 第6章:国際税務リスクがもたらす課題の増加

保険規制の進化2016 - 第6章:国際税務リスクがもたらす課題の増加

2016年版「保険規制の進化」の第6章をお届けします。本章は国際税務リスクがもたらす課題の増加と題し、OECDによる「税源浸食と利益移転(BEPS)」報告書において浮き彫りにされた、国際税務を管理するにあたって保険会社が直面する数々の課題について考察します。

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はじめに

「組織内のさまざまな関係者の間で、税務リスク情報の定義や管理、伝達に関して、調整や協働作業を改善する余地があるのは明らかです。」

 

保険業界の専門家によれば、保険業界における税務は、これまでにない変化のただ中にあると、毎年のように言われています。この変化がこれまでにないものかどうかについては議論の余地がありますが、このデジタル時代の中で変化が加速し、税務リスク管理において新たな課題が突きつけられていることについては疑問の余地はありません。保険会社は単年度の税務リスクを管理するだけでなく、法改正や税務調査、新たな開示要件、風評リスク、文書化、データ管理リスクについて、先を見越した対応を取らなければなりません。

あらゆるビジネスの専門家にとって、税務リスクを特定し管理することの重要性が増しており、これは従来の税務以外の専門家にも当てはまります。取締役会、上級経営陣、株主、顧客、規制当局、そして監督機関の全てが、保険グループにとっての税務リスクとは何か、そういったリスクをどのように管理しているかを理解しようと努めています。組織内のさまざまな関係者の間で、税務リスク情報の定義や管理、伝達に関して、調整や協働作業を改善する余地があるのは明らかです。

統制や開示の強化の流れの中で、保険会社は国際税務リスクや報告要件の管理の面で、増加する課題に直面しています。税務リスクには、税法の不遵守、税務上の意図しない結果を生む取引、不適切な財務報告および関連する開示、さまざまな国/地域からの二重課税リスクの高まりを受けた税務当局によるアプローチの変更などが挙げられます。さらに、規制要件の増加を受け、保険会社はさまざまなシナリオ下で正確に課税予測を行うことが求められています。

これらの進展に対応し、企業の国際課税関係の理解を深めるため、経済協力開発機構(OECD)は、「税源浸食と利益移転(BEPS)」に関する大規模な調査を実施しました。この調査は、不適切な税務戦略に対抗し、グループにおける国際税務の透明性を高めるための手段を税務当局に与えることを目的としています。

税源浸食と利益移転

OECDによる「税源浸食と利益移転(BEPS)」報告書※1では、国際税務を管理するにあたって保険会社が直面する数々の課題が浮き彫りになりました。BEPS報告書では、外国子会社合算税制、利子控除、租税条約の特典、恒久的施設、移転価格、開示義務についての行動計画が報告されています。また、既に保険会社には、国別報告書の作成、英国における迂回利益税、複数の国における利子控除制限などの新たな要件が課され始めています。

BEPS報告書では、デジタル経済がもたらす課題を特に強調しており、デジタル経済やそこから生まれたビジネスモデルによって、課税に関連する可能性のある、主な特徴が生まれていると述べています。これには、モビリティ、データへの依存、ネットワーク効果、マルチサイドビジネスモデルの広がり、独占または寡占傾向、ボラティリティなどが挙げられます。これらは保険業界にも一部関連するものの、これらがもたらす資本リスクなどの追加的な課題や、それらが利益配分に与える影響によって、保険業界特有の課題が生じています。

BEPS報告書では、デジタル経済モデルがBEPS固有の問題を生じさせているわけではないものの、そのいくつかの特徴によってリスクが増幅されていると指摘しています。この章では、デジタル時代に事業を行う保険会社にとって課題となるこれらのリスクのいくつかについて説明します。


「BEPS報告書では、外国子会社合算税制、利子控除、租税条約の特典、恒久的施設、移転価格、開示義務についての行動計画が報告されています。」


※1 2013年7月に立ち上げられたBEPSプロジェクトでは、2015年11月に最終報告書が取りまとめられました。

恒久的施設

BEPS報告書が出される以前の規則では、事務所または事業を行う一定の場所を持たない保険会社は、代理人がその国で契約を締結しない限り、その国には課税拠点がないものとみなされてきました。そのため保険会社は、契約を締結しない限りにおいて、国外に保険販売の代理人を置くことができました。インターネットがあれば、保険会社が、他国で保険を販売し保険申込書を送付させ、自国で引受承認および保険証券の発行を行うことは難しいことではありません。

現在では、代理人について、「重要な修正なく日常的に締結される契約の引受において、主たる役割を常時行っている」かどうかを判断することが企業に求められています。この新基準は従来よりも広範かつ主観的であるため、課税対象となる国/地域が増える可能性があります。

また、外国保険会社は、代理人が密接な関係のある1社以上の企業のために専属的またはほぼ専属的に業務を行う場合、独立代理人の例外規定を根拠として、当該代理人が当該国/地域における恒久的施設には該当しないと結論付けることができなくなります。BEPSの下では、事実や状況を鑑み、外国保険会社または代理人の一方が他方を支配している場合、または両者が共通の支配下にある場合は、当該代理人は代理する外国保険会社と密接な関係があるとみなされます。さらに、個人および法人が、その受益権の50%超を保有する者の共通の支配下にある場合、その個人と法人は密接な関係にあるとみなされます。

恒久的施設から除外される独立代理人の範囲が狭まることで、保険会社にとっては恒久的施設が増える可能性があります。例えば、外国の関連会社から再保険を引き受けている保険会社は、その関連会社が従属代理人に該当するかどうかを見極める必要があります。特定の状況下では、外国の関連会社から再保険を引き受けるだけで、出再側の関連会社が恒久的施設に該当するリスクがあります。

移転価格

クロスボーダーでの保険では、課税利益を各国間で適切に配分しなければなりません。残念ながら、何が「適切」であるかの判断が変わりつつあります。BEPSに盛り込まれた指針の改訂版は、取引に対する各社の貢献度に基づいて課税利益を確実に配分することを目的としています。

企業は、引き受けた実際のリスク、果たした役割、さらには取引が独立企業間で実施されたと仮定した場合の商業的合理性を検討しなければなりません。BEPS報告書には、保険事業に該当する有益な文言が多少は含まれていますが、それでもクロスボーダーでの保険や再保険取引における適切な移転価格について、新たな不確実性が生じています。

再保険取引を含む金融取引におけるアームズ・レングス原則についての追加指針が期待されるところです。


「残念ながら、何が『適切』であるかの判断が変わりつつあります。BEPSに盛り込まれた指針の改訂版は、取引に対する各社の貢献度に基づいて課税利益を確実に配分することを目的としています。」

国別報告書の作成

保険会社は2017年から、所得が生じ、税金を払い、従業員を雇用している国ごとに報告書を提出することが求められます。これにより、従業員が比較的少ない国で多額の所得が生じているグループの実態が明るみに出る可能性があります。BEPSの移転価格では、従業員がどこで価値を付加しているかを重視しています。これは、保険や再保険のように、高度に規制され資本集約的なビジネスが所得を生み出す方法とは、大きく異なる可能性があります。保険業界はOECDに対してこの点を指摘しましたが、国別報告(CBYC)規則においては、このような懸念は対処されませんでした。これにより、各国が保険会社への課税アプローチを変更し、資本や保険リスクを抱える場所に基づいた従来のアプローチではなく、従業員の雇用場所など、CBYC報告書における主な報告項目に基づいたアプローチを採用した場合、税務リスクが生じる可能性があります。

また、グループ内での従業員の雇用場所についての規制要件が、利益が帰属すべき場所についてのBEPSの見解と一致しない可能性があることも懸念されます。

外国子会社合算税制

BEPS報告書では、外国の子会社の支配持分を有する納税者が、特定外国子会社等(CFC)に所得を移すことなどにより、居住国またはその他の国の税基盤を縮小するリスクが指摘されています。報告書では、CFCの保険所得に懸念が生じる可能性があるケースとして、CFCの資本が過大である場合、CFCがCFCの所在する国/地域以外の出再者から再保険を引き受けた場合、関連当事者との保険契約によって保険所得が生じた場合の3つを挙げています。

KPMGの見解

  • OECDによるBEPSプロジェクトは、国際税務における過去50年間で最大の進展の1つです。
  • 課税逃れに携わっていたとみられる納税者を狙い撃ちしたネガティブ報道(例えば、いわゆる「パナマ文書」と呼ばれる情報公開に関連したもの)を考えると、税制は引き続き複雑かつ制約的な方向に向かうことが示唆されます。
  • BEPSプロジェクトの一環として発表された変更案は、英国の迂回利益税や欧州連合の租税回避防止パッケージ、米国における特定の状況下での、債務の株式化の全面規制案など、各国の法律に反映されています。
  • 新たな国際税務環境に対応するにあたり、保険業界は特に難しい固有の課題に直面する可能性があり、最高財務責任者(CFO)やグローバル税務責任者だけでなく、保険会社の取締役会も、税務上の論点についての議論にこれまで以上の時間を割く必要があるでしょう。適切な準備を怠った場合、予想外の課税評価や風評リスクが生じるほか、競争面で不利な立場に立たされる可能性があります。

「保険規制の進化2016」について

「保険規制の進化」はKPMGインターナショナルが発行する年次レポートであり、保険業界が直面する規制関連の主要なトピックを取り上げています。第6版となる今年のレポートは各章を順次発行する方式とし、今回の第6章をもって最終章となります。

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