金融機関における取締役会の実効性評価対応

金融機関における取締役会の実効性評価対応

2015年6月にコーポレートガバナンス・コード(以下「コード」)の適用が開始され、金融機関を含む上場会社においてコードへの対応・開示が求められるようになりました。そのなかで上場会社には、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示することが求められています。

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1.制度内容および国内外の対応状況

コードの補充原則4-11(3)には、取締役会の実効性評価について以下のように定められています。
「取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。」
我が国においては、従来、取締役会の実効性評価はほとんど行われておらず、参考となる国内事例が少ない中で、評価の枠組み・手法を検討しながら取組みを進めてきています。
一方で海外においては、取締役会の実効性評価は一般的な取組みとなっています。例えば英国では、上場企業(FTSE 350)のほとんどがこれを実施しており、また制度上は少なくとも3年に1回、外部専門家によるファシリテーションにより評価を行うことが推奨されています。

2.取締役会の実効性評価の基本的な考え方

コーポレートガバナンスはそれ自体が目的ではなく、あくまで企業価値を創造するための手段といえます。そのため、各企業の「目指すコーポレートガバナンス」は、各社の目指す企業価値によって異なります。
取締役会の実効性評価においては、一律の基準に基づく「絶対評価」よりも、まずは自社の「目指す姿」を設定し、そこからの現状とのギャップや課題を自己評価し、改善につなげることがより重要です。この点では、いわゆる「PDCAサイクル」と非常によく似ているといえます。自ら目標設定し、その実現のために継続的に改善する取り組みを、取締役会においても取り入れようという考え方です。この考え方から言えば、例えば「標準的なチェックリストでの評価」や、「他社との比較・ベンチマークに基づく評価」はあまり意味をなさない(他社と同じことをやっても自社の目指す姿には近づくことはできない)ことになります。

3.評価の主な観点・論点と評価手法

取締役会の実効性を評価する上での主な評価観点と論点は、例えば以下の表のように整理することができます。

No. 評価観点 主な論点
I 取締役(会)の役割・責務 中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念策定、経営戦略立案、後継者計画等
II 取締役会と経営陣幹部の関係 経営幹部の専任・解任、リスク管理・コンプライアンス、執行状況報告・監督
III 取締役会等の機関設計・構成 機関設計、社外取締役等の活用、「委員会」の設置・運用
IV 取締役(会)の資質と知見 知識・能力・経験、社外役員の独立性・多様性、トレーニング
V 取締役会における審議 取締役会における審議の活発化、情報入手と支援体制、社外取締役等の活用
VI 株主との関係・対話 株主の権利確保・株主対応、情報開示の充実、株主との建設的な対話
VII 株主以外のステークホルダーへの対応 社会・環境課題への対応、従業員の多様性の確保・従業員の尊重、ステークホルダーコミュニケーション

これらの評価観点と論点に基づき、前述のように各社の目指すゴールを設定するとともに現状とのギャップや課題を自己評価します。そのための評価手法には、主に「アンケート」と「インタビュー」があります。アンケートは多くの企業で採用されていますが、具体的な課題や改善方向性を見極めるためには、インタビューを通じて取締役との間でより深いコミュニケーションを図ることが必要となります。

4.金融機関における取組みのポイント

金融機関においては、コードが示しているコーポレートガバナンスの方向性を尊重しつつも、既存の国内外の金融規制への対応も必要です。実効性ある取締役会の運営を金融規制の枠組みと調和させながら行っていく必要性があります。例えば、取締役会の監督機能を強化する目的で取締役会への付議基準を見直す場合でも、金融検査マニュアル等で求められる取締役会の役割と整合させながら進める必要があります。またコードが求める「リスクテイクを促す環境整備」についても、金融機関に整備が求められるリスクアペタイト・フレームワークとの整合が必要となるでしょう。
取締役会の実効性評価を行う上でも、このような背景を十分に踏まえつつ、金融機関として目指すべきコーポレートガバナンスが実現できているかを評価すべきといえます。

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