チームとスタジアムの一体経営 | KPMG | JP

チームとスタジアムの一体経営

チームとスタジアムの一体経営

スポーツ全般において、チームの入場者数の増減は勝利や好成績と密に関連しており、特にプロスポーツであるとそれが顕著であると言えます。

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ただし、チームが勝利するか否かは不確定要素であるため、すべての試合に勝利することは現実的に難しく、シーズン中に負けが続くこともあります。たとえチームが負けてしまった試合を観戦に来ていたとしても、スタジアムにまた来たいと思わせるような観客の満足度が高いスタジアムにしなければなりません。
そこで重要となってくるのは、チームがスタジアム運営について工夫を凝らし、エンターテインメント性を増すことができるかという点です。
なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • スタジアムは「競技をする」という競技者の視点だけではなく、「観戦する」という観客の視点も取り入れていかなくてはならない。
  • チームとスタジアムの一体経営を図ることで、観客のニーズをより一層取り入れることが可能となり、入場者数の増加に繋がると言える。
  • スタジアムの入場者数の増加がチームの収入増加に繋がると考えられ、収入が増加するとチームの強化も進むため、結果として入場者数の増加がチームの好成績にも繋がると言える。

1.セントラル・リーグの入場者数の変遷

図表1はセントラル・リーグ6チームの入場率の推移を示したグラフです(2016年9月20日時点のデータ)。入場率とは、1試合平均入場者数をスタジアムの推定収容人数で除して算定した指標です。この指標が高いほどスタジアムが毎試合観客で埋まっていることとなり、スタジアム運営において優れていると言えます。

2008年シーズンにおいては上位3チーム(巨人・阪神・中日)と下位3チーム(広島、横浜、ヤクルト)の入場率には大きな差が開いておりましたが、近年では全体的に入場率の差が縮まってきており、トップに迫る勢いで急激に入場率を上昇させている2チームがあることが分かります。

この2チームというのが、広島東洋カープと横浜DeNAベイスターズであり、入場率が急上昇した大きな要因の1つとして考えられるのが、チームとスタジアムの一体経営が可能となったためであると言えます。

図表1 セントラル・リーグ6チームの入場率推移

出典:NPB.jp 日本野球機構 統計データを基に作成

セントラル・リーグ6チームの入場率推移

2.入場率上昇の要因~横浜DeNAベイスターズ

横浜ベイスターズは2012年にDeNAが親会社となり、試合がつまらなかったら返金に応じるチケットやVIP待遇で試合観戦できるチケットの販売、照明・花火・音楽で盛り上げるショーといった、従来までに無かったような様々なイベントやサービスを行ってきました。また、横浜DeNAベイスターズは、横浜スタジアムを運営していた株式会社横浜スタジアムの株式に対して公開買付を行い、2016年1月に議決権の50%超を保有することとなり、株式会社横浜スタジアムを子会社としました。当該会社を子会社とすることでチームとスタジアムの一体経営の実現が可能になったと考えられます。具体的には、試合のハイライトやブルペンなどの特典映像が流れるテレビモニターが付いた「ベースボールモニターBOXシート」の設置といった観客のニーズを反映した施設改修や、多種多様な飲食メニューの導入等、チームが実施したい施策を行うことができるようになり、それが入場者数の増加に繋げられたと言えます(図表2参照)。

2016年シーズンには球団史上最速で入場者数が100万人を超え、さらに、チームは史上初のクライマックスシリーズに進出することになったことからも、入場者数の増加はチームの成績にも好影響を与えたと言えます。

図表2 横浜DeNAベイスターズの入場数推移

出典:NPB.jp 日本野球機構 統計データを基に作成

横浜DeNAベイスターズの入場数推移

3.入場率上昇の要因~広島東洋カープ

広島東洋カープのホームスタジアムが広島市民球場から、2009年に新たに開場したMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島へと変わることになりました。このスタジアムの所有者は広島市ですが、指定管理者制度によって広島東洋カープが管理・運営することになっています。指定管理者制度とは、公共施設の運営を協定によって民間事業者に委ねる手法です。広島東洋カープが管理・運営を広島市から任されたことにより、スタジアム運営についてもチーム独自の工夫を凝らすことができるようになりました。具体的には、スタジアム内の売店、看板広告の自主運営、設備(観客席・アミューズメント施設等)をある程度自由に変更できるようになりました。

入場者数の推移を見ると2013年シーズンから入場者数が増加していますが、これは過去最大規模のスタジアム改修によって、カウンターテーブル付きで観戦しながら食事ができるパーティデッキ等のバラエティ豊かな座席が設置されたことによる顧客満足度の上昇と、チームがクライマックスシリーズに初進出した影響だと考えられます(図表3参照)。

そして2016年シーズン、チームは25年ぶりのリーグ優勝を成し遂げることとなり、スタジアムは大盛況であったと言えます。

【図表3 広島東洋カープの入場数推移】

出典:NPB.jp 日本野球機構 統計データを基に作成

広島東洋カープの入場数推移

4.まとめ

横浜DeNAベイスターズも広島東洋カープも2016年シーズンは好成績を収めることができましたが、これはチームの監督、選手、スタッフの努力であることはもちろん間違いありません。それに加えてチームとスタジアムの一体経営による影響も大きいと考えられます。入場者数の増加が収入の増加に繋がり、その結果によりチーム強化を推進し勝利していくといった好循環を作り出すためにも、チーム自らがスタジアムを運営することが重要であると言えます。観客のニーズをつかみ満足度を高めるためには、各チームでスタジアム運営において差別化を図ることが、プロ野球だけでなく日本のプロスポーツ全体で急務であると言えます。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
スポーツアドバイザリー室
室長 パートナー 大塚 敏弘
スポーツ科学修士 得田 進介

スポーツアドバイザリー

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