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IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 33 金融商品会計の動向

IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 33

IFRS - 金融商品ニューズレターでは、IASBの金融商品に関するプロジェクトの動向について最新情報を提供しています。Issue33では、資本の特徴を有する金融商品のプロジェクトについて、2016年10月に行われたIASBの審議を取り上げています。

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「代替的な決済結果を伴う請求権の分類において経済的なインセンティブをより広く考慮することにより、現在の実務は大幅に変更される可能性がある。」


KPMGグローバル
IFRS金融商品リーダー
Chris Spall


IASBは、前回の会議において、負債として分類される、企業自身の資本に係る特定の種類のデリバティブの表示、及び開示によって分類及び表示のアプローチがどのように補完されるかについて検討したことをうけて、資本の特徴を有する金融商品に関する審議を継続した。

概要

IASBは、10月の会議において、発行企業が代替的な決済結果の中から選択できるような請求権について審議し、経済的なインセンティブが分類に影響を与えるべきかについて検討した。

プロジェクトの次のステップは、以下について検討することである。

  • 現行のプッタブル金融商品の例外に該当する商品の分類
  • 双方の当事者の支配が及ばない事象によって生じる代替的な決済結果の会計処理
  • 契約における権利及び義務の実質、並びに法律及び規制上の要求事項との関係
  • 資本性金融商品の認識、認識の中止及び分類変更

マクロヘッジ会計のプロジェクトについての審議は、10月の会議では行われなかった。

資本の特徴を有する金融商品

これまでの経緯

IAS第32号「金融商品:表示」には、負債と資本に金融商品を分類する規定が含まれている。この二元論的な分類規定を資本の特徴を有する多くの金融商品に適用した場合、重要な実務上の論点が生じる。過去において、IFRS解釈指針委員会にはこの分野に関する複数の質問が寄せられたが、一部のケースでは結論に至らなかった。IFRS解釈指針委員会は、それらのいくつかについてはIFRSの基礎的な概念の検討を要するため、IASBに議論を委ねた。

IASBは2008年にディスカッション・ペーパー(DP)「資本の特徴を有する金融商品」を公表した。しかし、リソースの問題により、IASBはこのトピックに関する公開草案を公表することができず、プロジェクトは中断した。その後、IASBは「財務報告に関する概念フレームワーク」※1プロジェクトの一環で一部の課題について審議した。

2015年5月、IASBは資本の特徴を有する金融商品に関するプロジェクトを正式に再開し、プロジェクトを2つ(分類、並びに表示及び開示)に分けることを決定した。

 

※1 IASBは、2015年5月にED「財務報告に関する概念フレームワーク(ED/2015/3)」を公表した。本ニューズレターにおける概念フレームワークは、別途記載のない限り、現行の財務報告に関する概念フレームワークを参照している。

 

会議開催
時期
審議内容
2015年
5月
IASBは、負債と資本を区別する際の概念上及び適用上の課題について審議した。
2015年
6月
IASBは、請求権の測定及び資本と負債の区別に関連する特性を特定した。
2015年
7月
IASBは、財務諸表利用者が財政状態計算書及び業績における情報を用いて行う可能性のある評価における、これらの特性の関連性を分析した。
2015年
9月
IASBは、デリバティブ以外の金融商品の分類に注目した。IASBは、IAS第32号の規定が、財務諸表利用者の評価に必要な特性をどの程度捕捉しているかについて審議した。また、3つの取りうる分類のアプローチ(アルファ、ベータ、ガンマ)についても検討した。
2015年
10月
IASBは、「企業自身の資本」に関するデリバティブの分類及び会計処理の課題、並びにIAS第32号がこれらの課題にどのように対処しているかについて審議した。
2016年
2月
IASBは金融負債の内訳分類を用いて財務成績及び財政状態を評価するための追加的情報を提供すること、及び資本の部の内訳分類を用いて関連する特性についての追加的情報を提供することについて審議した。また、条件付きの代替的な決済結果を伴う請求権についても審議を行った。
2016年
4月
IASBは残余金額に依存する負債の別個の表示に関する規定の適用範囲を検討した。IASBはまた、普通株式以外の資本に対する請求権(非デリバティブ及びデリバティブの両方を含む)に純損益及びOCIを割り当てる方法について審議した。
2016年
5月
IASBは割当てのアプローチに関する4月の審議を継続し、純損益及びOCIをデリバティブに該当する資本に対する請求権に割り当てるために取りうる別の方法について検討した。
2016年
7月

IASBは企業自身の資本に係るデリバティブの分類、資産と負債を交換するデリバティブ、及び負債と資本を交換するデリバティブにガンマ・アプローチをどのように適用するかについて審議した。
2016年
9月
IASBはガンマ・アプローチに基づく企業自身の資本に係るデリバティブに関する審議を継続したが、負債として分類された特定の種類のデリバティブの表示及び開示によって分類及び表示のアプローチがどのように補完されるかにも焦点を当てた。

発行企業の支配の範囲内の代替的な決済結果


“IASBは、発行企業が代替的な決済結果の中から選択できるような請求権について審議し、経済的なインセンティブが分類に影響を与えるべきかについて検討した”


問題の所在
一部の請求権は、代替的な決済結果の中から選択する権利を発行企業に付与している(例:リバース転換社債)。この場合、社債は、発行企業の選択により、固定数の普通株式に転換が可能である。これは、保有者が現金または株式での決済を選択することができる一般的な転換社債とは異なる。企業の義務の金額は、以下のいずれか低い方に効果的に制限されている。

  • 特定の数量の株式の価値
  • 特定の金額の現金

IAS第32号では、分類は、契約上の取決めの実質に基づいて行われる。契約上の義務を決済するために現金またはその他の金融資産を引き渡すことを回避できる無条件の権利を企業が有していない場合には、当該義務は金融負債の定義に該当する。リバース転換社債は、請求権を固定数の普通株式で決済することによって現金を引き渡すことを回避できる無条件の権利を企業が有しているため、通常、その全体を資本として分類する。これは、普通株式の価値が現金の支払金額よりも高い場合であっても同様である可能性がある。

特定の方法で決済する経済的なインセンティブは、「経済的な強制(economic compulsion)」とみなされるほど十分に強力であるとしても、それ自体は負債を生じさせない。ただし、IAS第32号は、どのような契約条件により、間接的に負債の定義を満たす義務が生じているかについて説明している。例えば、株式決済の選択肢の価値が、現金決済の選択肢の価値を実質的に上回るように決定されており、その結果、企業が現金で決済を行う場合がこれに該当する(IAS第32号第20項を参照)。

上記に基づき、新たな分類のモデルにおける経済的なインセンティブの役割について、2つの有力な見解が生じた。

見解 根拠
経済的なインセンティブを考慮すべきでない。 IAS第32号の分類は企業の権利及び義務を忠実に表している。リバース転換社債の例では、通常、企業が株式を移転する権利を放棄するまでは、経済的資源を移転する義務は存在しない。
経済的なインセンティブを考慮すべきである。 IAS第32号の分類結果は直観に反する。リバース転換社債の例では、現金で決済される可能性が高い場合であっても資本に分類される可能性がある。

 

現金を移転することによって請求権を決済する経済的なインセンティブを、請求権を分類する際に考慮すべきか否かについては、疑問が生じている。

IASBでの審議内容

スタッフは、それぞれの見解を裏付ける主張について議論した。

 

経済的なインセンティブを考慮すべきでない。


この見解は、契約における権利及び義務に焦点を当てている。企業が清算時まで支払を延期する権利を放棄することができ、かつ、清算前に資源を移転することができるという事実は関連しない。関連するのは、企業が清算前に資源を移転する義務を有しているか否かということである。さらに、企業が負債の決済結果を回避する実質的な無条件の権利を有している場合には、負債の決済結果が有利か否かは関連しない。

資本への分類は、経済的資源が資本請求権の保有者に移転されないことを意味するわけではない。ガンマ・アプローチでは以下を資本として分類する。

  • 清算時にのみ経済的資源を移転する義務
  • 残余の金額に対する義務

企業が固定数の資本性金融商品を引き渡すことにより決済する実質的な無条件の権利を有している場合は、ガンマ・アプローチに基づいて、リバース転換社債を資本として分類する。したがって、請求権の金額は企業の経済的資源の利用可能性によって決まり、現金決済の移転は回避できる。

一部のケースにおいて、固定数の普通株式を引き渡すことによって請求権を決済する企業の権利は、その構造上、アウト・オブ・ザ・マネーである(すなわち、常にアウト・オブ・ザ・マネーであるか、または、常に不利な状態である)。例えば、企業は80の株式の公正価値と同等の現金を支払うか、100の株式を引き渡すことができる。したがって、このようなケースでは、負債の決済結果の価値は常に資本の決済結果の価値よりも小さくなるため、現金を支払う間接的な義務が存在する。

ガンマ・アプローチでは、現金またはその他の金融資産を清算前に移転する義務、または企業の経済的資源に依存しない特定の金額に対する義務が存在する場合に負債への分類が行われる。したがって、リセット条項が付された償還可能優先株式(企業が優先株式を償還しない場合は、時間の経過に伴ってより高い率で償還金額が増加する)は、支払の時期が不明であるとしても支払われる金額は確定していることから、ガンマ・アプローチでは負債として分類される。この分類を達成するために、経済的なインセンティブを考慮する必要はない。

 

経済的なインセンティブを考慮すべきである。


この見解は、義務の有無に関わらず企業によって経済的資源が移転される可能性を考慮している。

IASBは、概念フレームワークの公開草案において、企業が移転を回避する実務上の能力を有していない場合には、当該企業に経済的資源を移転する義務があると提案している。これは以下のことを意味している。

  • 移転は法的に強制可能である、または
  • 移転を回避するために必要となる何らかの措置は、重大な事業の混乱を引き起こすか、あるいは、移転そのものよりも著しく不利な経済的影響を与える。

概念フレームワークの公開草案における結論の根拠には、経済的な強制は将来の移転を回避する企業の実務上の能力を損なわせる要因となる可能性があるため、その要件を満たしているか否かを評価する際に考慮する必要があることが記載されている。したがって、資本の決済結果よりも負債の決済結果の方がはるかに有利である可能性があるため、金融負債が認識される結果になる。

ただし、極めて広範囲の事実及び状況が企業の決済の選択に影響を及ぼす可能性があるため、分類の評価にあたって経済的なインセンティブが考慮された場合には複数の追加的な論点及び疑問が生じることになる。

論点 疑問
負債として決済する選択肢を行使する経済的なインセンティブの範囲は、「わずかに有利」から「ディープ・イン・ザ・マネー」まで及ぶ 企業が経済的資源の移転を「経済的に強制される」ためには、経済的なインセンティブはどの程度の重要性を有していなければならないか
市場の変化により、経済的なインセンティブの重要性が期間ごとに変化する 経済的な強制の評価は、当初認識時に請求権を分類する際にのみ実施すべきか、または事実及び状況の変化を反映させるために継続的に実施すべきか
企業のその他の経済的資源または請求権に対する影響、あるいはその他のビジネス要因は、負債として決済する選択肢を行使する企業の決定に影響を与える場合がある 経済的な強制の評価において、契約上の選択肢の範囲を超える経済的影響を考慮すべきか
リスクの影響を受ける選択肢は通常、常に有利となる可能性がある 評価の対象は、評価日における現在の経済的影響に限定すべきか、または将来の経済的影響も含めるべきか
株式に転換される可能性が極めて高いが負債として分類される一般的な転換社債に関して、同様の直観に反する結果が生じる リバース転換社債に関して経済的なインセンティブを考慮する場合は、一般的な転換社債の分類において、保有者の観点からも(経済的インセンティブを)考慮すべきではないか

 

スタッフの提案
スタッフは、分類の評価において経済的なインセンティブを考慮すべきでないと提案した。ただし、間接的な義務に関するIAS第32号の規定を引き継ぎ、ガンマ・アプローチが反映されるように更新すべきだとした。スタッフは、代替的な決済結果を伴う請求権と企業に対するその他の請求権との差異については、表示及び開示の規定を通じて伝えることができると考えている。


IASBの決定
IASBは、ガンマ・アプローチでは、分類の評価において経済的なインセンティブを考慮すべきでないというスタッフの予備的見解に同意した。したがって、分類は契約で設定された実質的な権利及び義務(契約条件によって間接的に設定された義務を含む)に基づき行われる。複数のボードメンバーは、表示及び開示の規定を通じて追加的な情報を利用者に伝えることができるというスタッフの見解を認めた。一部のボードメンバーは、分類の評価において経済的なインセンティブを考慮することを求めることは、過度に複雑であり、判断が変更された場合には分類の再評価が必要になると考えた。

ボードメンバーは、間接的な義務に関するIAS第32号の規定は、経済的な強制の検討とは異なると指摘した。これは、前者が商品の契約条件により初日からの義務が生じている場合に負債への分類を要求するのに対して、後者の検討はそれぞれの決済結果の発生の可能性を事前に予測しなければならないことを示唆していることが背景にある。別のボードメンバーは、決済の選択肢が商業的な実態を伴わない場合の分類に対する影響について疑問を呈した。スタッフは、経済的な強制の検討は、IAS第32号ですでに要求されているものであり、ある結果が経済的な影響を与えているか否かと、代替的な決済結果の中から選択する経済的な強制があるか否かを明確に区別する方が容易である可能性があると考えた。

KPMGの見解

スタッフペーパーは、特定の種類の請求権、及びそれらの請求権が実質的に負債の定義を満たす義務を有するか否かに関する、IFRS解釈指針委員会とIASBのこれまでの審議に焦点を当てた。

これらの商品のうちの1つは、リセット条項が付された償還可能優先株式※2である。この商品は配当を支払う、または償還する契約上の義務を含んでいないため、IAS第32号では資本として分類すべきだと結論付けられた。ガンマ・アプローチにおいては、この商品は、経済的なインセンティブまたは経済的な強制を考慮する必要もなく負債として分類される。したがって、いずれのアプローチも経済的なインセンティブを考慮しないものの、ガンマ・アプローチに基づく分類はIAS第32号のアプローチと異なる。

間接的な義務の概念をスタッフがどの程度広義に、または狭義に解釈しているか、また、間接的な義務がどのように生じるかは明確化されていない。IAS第32号第20項は、企業が現金で決済する結果となるような株式決済の選択肢の価値について説明している。ただし、変動数の株式に強制的に転換される(キャップ及びフロアーの影響を受ける)が、最大(固定)数の株式を引き渡すことによって決済を行う選択肢を発行者に対して与える金融商品について審議した際に、委員会は、発行者による期限前決済の選択肢が実質的であるか否かを判定するために、判断が必要だと指摘した※3。商品の契約条件、キャップとフロアーの間の範囲、発行者の株価等の様々な要因を考慮する必要がある。したがって、代替的な決済結果を伴う請求権を評価する場合には、選択肢が実質的か否かを検討することが重要となる。

また、経済的なインセンティブが商品の分類に影響を与えるべきか否かは、検討すべき要素の1つにすぎない。負債または資本の決済結果を行使する企業にとって、法律及び規制上の要求事項等のその他の障害もあるかもしれない。IASBは今後の会議において、これらについて審議する必要がある。

 

※2 IFRICアップデート(2006年11月)「負債または資本としての金融商品の分類」

※3 IFRICアップデート(2014年1月)「IAS第32号『金融商品:表示』」- 変動数の株式に強制的に転換される(キャップ及びフロアーの影響を受ける)が、最大(固定)数の株式を引き渡すことによって決済を行う選択肢を発行者に対して与える金融商品

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