IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 32 | KPMG | JP

IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 32 金融商品会計の動向

IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 32

IFRS - 金融商品ニューズレターでは、IASBの金融商品に関するプロジェクトの動向について最新情報を提供しています。Issue32では、資本の特徴を有する金融商品のプロジェクトについて、2016年9月に行われたIASBの審議を取り上げています。

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「表示及び開示の改善によって、二元論的な分類のアプローチを補完する取組は、FICEプロジェクトの前進に向けた一歩として歓迎される。」

KPMGグローバル
IFRS金融商品リーダー
Chris Spall

 

IASBは、企業自身の資本に係るデリバティブの分類、資産と負債を交換するデリバティブ、及び負債と資本を交換するデリバティブにガンマ・アプローチ※1をどのように適用するかについての前回の会議の検討事項を踏まえて、資本の特徴を有する金融商品に関する審議を継続した。

※1 IFRS金融商品ニューズレター2015年9月を参照のこと

概要

9月の会議において、IASBは、ガンマ・アプローチにおける企業自身の資本に係るデリバティブに関する審議を継続し、以下に焦点を当てた。

  • 負債として分類された特定の種類のデリバティブの表示
  • 開示によって分類及び表示のアプローチがどのように補完されるか

プロジェクトの次のステップは、以下について検討することである。

  • 現行のプッタブル金融商品の例外に該当する商品の分類
  • 条件付きの代替的な決済結果の会計処理
  • 資本性金融商品の認識、認識の中止及び分類変更

マクロヘッジ会計のプロジェクトについて、9月の会議では審議は行われなかった。

IASBは、IFRS第9号「金融商品」と新しい保険契約基準の適用日が異なることによる一時的な会計上のミスマッチと純損益のボラティリティについての懸念及びコストと複雑性の増大に対処するために、IFRS第4号「保険契約」の改訂を公表した。これらの改訂は、保険会社に対してそれらの影響を緩和することが可能となるようなアプローチの選択肢を含んでいる。ただし、保険会社は、利用するかどうか及び利用方法を決定する上で、IFRS第9号の適用計画を慎重に検討することが必要となる。詳細については、IFRSニュースフラッシュを参照のこと。

資本の特徴を有する金融商品

これまでの経緯

IAS第32号「金融商品:表示」には、負債と資本に金融商品を分類する規定が含まれている。この二元論的な分類規定を、資本の特徴を有する多くの金融商品、例えば、典型的な普通株式(償還可能ではなく、裁量により配当が支払われる)以外の商品に適用した場合、重要な実務上の論点が生じる。過去において、IFRS解釈指針委員会にはこの分野に関する複数の質問が寄せられたが、一部のケースでは結論に至らなかった。IFRS解釈指針委員会は、それらのいくつかについてはIFRSの基礎的な概念の検討を要するため、IASBに議論を委ねた。

IASBは2008年にディスカッション・ペーパー(DP)「資本の特徴を有する金融商品」を公表した。しかし、リソースの問題により、IASBはこのトピックに関する公開草案を公表することができず、プロジェクトは中断した。その後、IASBは「財務報告に関する概念フレームワーク」※2プロジェクトの一環で一部の課題について審議した。

2014年10月、IASBは資本の特徴を有する金融商品に関するプロジェクトを再開し、プロジェクトを2つ(分類、並びに表示及び開示)に分けることを決定した。IASBは、このプロジェクトにより、概念フレームワークの負債と資本の定義が修正される可能性があると述べた。2015年5月に負債と資本を区別する概念上及び適用上の課題について審議するまで、IASBは公式にはこのプロジェクトの再検討を行わなかった。

会議開催
時期
審議内容
2015年
6月
IASBは、請求権の測定及び資本と負債の区別に関連する特性を特定した。
2015年
7月
IASBは、財務諸表利用者が財政状態計算書及び業績における情報を用いて行う可能性のある評価における、これらの特性の関連性を分析した。
2015年
9月
IASBは、デリバティブ以外の金融商品の分類に注目した。IASBは、IAS第32号の規定が、財務諸表利用者の評価に必要な特性をどの程度補足しているかについて審議した。また、3つの取りうる分類のアプローチ(アルファ、ベータ、ガンマ)についても検討した。
2015年
10月
IASBは、「企業自身の資本」に関するデリバティブの分類及び会計処理の課題、並びにIAS第32号がこれらの課題にどのように対処しているかについて審議した。
2016年
2月
IASBは金融負債の内訳分類を用いて財務成績及び財政状態を評価するための追加的情報を提供すること、及び純資産の内訳分類を用いて関連する特性についての追加的情報を提供することについて審議した。また、条件付きの代替的な決済の結果を伴う請求権についても審議を行った。
2016年
4月
IASBは残余金額に依存する負債の別個の表示に関する規定の適用範囲を検討した。IASBはまた、普通株式以外の資本に対する請求権(非デリバティブ及びデリバティブの両方を含む)に純損益及びOCIを割り当てる方法について審議した。
2016年
5月
IASBは割当てのアプローチに関する4月の審議を継続し、純損益及びOCIをデリバティブに該当する資本に対する請求権に割り当てるために取りうる別の方法について検討した。
2016年
7月
IASBは企業自身の資本に係るデリバティブの分類、資産と負債を交換するデリバティブ、及び負債と資本を交換するデリバティブにガンマ・アプローチをどのように適用するかについて審議した。

 

※2 IASBは、2015年5月にED「財務報告に関する概念フレームワーク(ED/2015/3)」を公表した。本ニューズレターにおける概念フレームワークは、別途記載のない限り、現行の財務報告に関する概念フレームワークを参照している。

負債として分類される「企業自身の資本」に係るデリバティブの表示

“IASBは、部分的に残余金額に応じて決まる、企業自身の資本に係るデリバティブに関する2つの表示のアプローチについて審議した”

 

問題の所在
ガンマ・アプローチにおいては、以下の種類のデリバティブが負債として分類される。

タイプ1 金額は残余金額のみに応じて決まるが、企業の清算前に現金または金融資産により純額決済される。
タイプ2 金額は残余金額に全く依存していない。
タイプ3 金額は残余金額に全く依存していないわけではなく、また残余金額のみに応じて決まることもない。


IASBは、以前の会議において、区分表示により、残余金額に依存していない負債(及び関連する収益または費用)と残余金額に応じて決まる負債とを区別して表示すること(区分表示)は有用であることを合意した。

2016年4月に、IASBは、区分表示を負債として分類されるタイプ1のデリバティブに適用するものの、タイプ3のデリバティブには適用しないことについて審議した。

 

IASBでの審議内容
スタッフは、区分表示をタイプ3のデリバティブに適用する場合の2つの代替的なアプローチを提示した。スタッフは、OCIを用いて区分表示を行うことについて説明した。ただし、IASBは、区分表示が小計を用いた純損益における区分表示を意味するのか、あるいはOCIにおける区分表示を意味するのかについて、未だ決定していない。

 

分解アプローチ
このアプローチでは、デリバティブの収益及び費用の合計を以下のとおり分解する。

  • 残余金額とは無関係の変数から生じる部分(純損益に表示)
  • 残余金額を表す変数から生じる部分(OCIに表示)

以下の例では、普通株式1株と外貨建ての固定金額の現金を交換する1,000のコールオプションの発行について検討する。

  1年目 2年目
オプション数 1,000 1,000
外貨建て行使価格(AC※3 AC 10 AC 10
為替レート 1:1 1:10
機能通貨建て行使価格(FC) FC 10 FC 9.09
株価 FC 10 FC 12
デリバティブの公正価値 FC 2,280 FC 4,680
為替レート及び為替レートのボラティリティが一定に保たれている場合のオプションの価値   FC 4,080
株価及び株価のボラティリティが一定に保たれている場合のオプションの価値   FC 2,850

※3 代替的な通貨 - すなわち、外貨

残余金額の変動による影響が分離される(すなわち、為替レート及び為替レートのボラティリティが一定に保たれている)場合は、以下のとおり分解される。

公正価値変動合計(4,680 - 2,280) FC 2,400
純損益に表示される独立の為替レートの変数から生じる変動
(4,680 - 4,080)
FC 600
OCIに表示される残余金額に応じて決まる変動
(2,400 - 600または4,080 - 2,280)
FC 1,800

 

残余金額に依存しない変数から生じる公正価値の変動による影響が分離される(すなわち、株価及び株価のボラティリティが一定に保たれている)場合は、以下のとおり分解される。

公正価値変動合計(4,680 - 2,280) FC 2,400
純損益に表示される独立の為替レートの変数から生じる変動
(2,850 - 2,280)
FC 570
OCIに表示される残余金額に応じて決まる変動
(2,400 - 570または4,680 - 2,850)
FC 1,830


これらの計算が異なる金額を生じさせることは、分解アプローチの適用に不利な点があることを表している。変数は相互に依存しているため、公正価値変動を個々の変数のレベルに分解することが必ずしも十分であるとは限らない。

財政状態計算書上の表示に分解アプローチを適用することによって、1つのデリバティブの帳簿価額が以下の2つの部分に分解されることになる。

  • 企業の経済的資源からは独立した部分
  • 残余金額に応じて決まる部分

この配分は恣意的になる可能性が高く、デリバティブを小区分(sub-components)に分類すべきではないというIASBの以前の認識とは矛盾する。

オールイン/オールアウト・アプローチ(すべてを含めるかすべてを除外するアプローチ)

このアプローチは、以下の要件を満たす場合に、この種類のデリバティブから生じるすべての収益及び費用をOCIに区分表示することを要求している。

  • デリバティブが発行企業の機能通貨意外の通貨で表示されていなかったとしたら、そのデリバティブは残余金額のみに応じて決まるとみなされていた。
  • 外貨エクスポージャーはレバレッジされていない。
  • 契約当事者は、デリバティブ契約に基づいて引き渡す通貨または受け取る通貨の種類を選択することができない。
  • 表示通貨は、企業の選択によるものではなく市場に課せられたものである(すなわち、企業の機能通貨建ての同一のデリバティブを締結することが実務上可能でなかった)。

前述の例を引続き用いて、このアプローチにおいてコールオプションが要件を満たす場合は、公正価値変動の全額FC 2,400はOCIに区分表示される。要件を満たさない場合は、変動の全額は純損益に表示される。

財政状態計算書における表示にオールイン/オールアウト・アプローチを適用することによって、さらなる分割を行うことなくデリバティブの帳簿価額の全額を表示することになる。したがって、残余金額に完全に無関係ではなく、残余金額のみに応じて決まることもないデリバティブは、別のクラスとして表示される可能性がある。しかしこれは、残余金額に依存しない変動は区分表示される場合があることを意味する。

 

IASBの意思決定
IASBは、両方のアプローチをディスカッション・ペーパーに記載するものの、オールイン/オールアウト・アプローチを支持する予備的見解とすることを合意した。IASBは、区分表示の適用は、外貨エクスポージャーのあるデリバティブに限定し、特定の状況のみとすべきであることを決定した。あるボードメンバーは、外貨エクスポージャーは価値の変動を区分表示することに十分に値する特別な商品であるが、根本的な分類の要件を無効にするほど特別な商品ではないと述べた。

スタッフはオールイン/オールアウト・アプローチにおける4つ目の要件の中の「市場に課せられた」という文言の意味を明確にするよう求められ、1名のボードメンバーは外貨エクスポージャーを取る動機が重要か否かについて疑問を呈した。

IASBは、区分表示の要求事項を満たす金融商品から生じる収益及び費用(企業自身の資本に係るデリバティブを含む)はOCIに表示すべきだと決定した。一部のボードメンバーは、企業の業績に連動する、直観に反する金額が利益に計上されるため、純損益に表示科目を明示して区分表示しても有用ではないと述べた。1名のボードメンバーは、スタッフに対して、OCIが純損益を通じてリサイクルされない場合に、純資産における振替が認められるか否かについて検討するように求めた。別のボードメンバーは、純損益における表示科目を明示しての区分表示またはOCIの利用に変わるアプローチを(そのアプローチが業績報告に関連する場合であっても)開発するようにスタッフに求めた。

IASBは、ディスカッション・ペーパーに、ガンマ・アプローチにおける「企業自身の資本」に係るデリバティブの分類及び表示に関するこれまでの決定事項を含めることを決定した。

 

KPMGの見解
KPMGは、IASBが、表示の変更を通じて財務諸表利用者がより有用な情報を得ることに焦点を置いていることを支持している。ただし、IASBは、変更によって利用者または作成者の潜在的な利益を損なう、またはそれを上回る追加的な困難やコストが生じる可能性があるかどうかについて注意深く検討する必要がある。スタッフは、これらが分解アプローチに関する潜在的な懸念事項であるとして注意喚起した。

他方で、オールイン/オールアウト・アプローチは、情報の構成要素が少なくより単純な表示で、適用コストも低くなる可能性がある。しかし、オールイン/オールアウト・アプローチは、事実(または事実についての判断)のごく僅かな変化が結果に大きな影響を与える可能性があることを意味している。例えば、スタッフが提案している要件は、そのほとんどが外貨の表示が「市場に課せられた」ものか否かを評価することに依拠する可能性があることを意味している。同様に、企業の株価または外貨以外の変数に少しでも依存している場合には、デリバティブは区分表示の要件を満たさなくなる。区分表示の要求事項を満たす金融商品から生じる収益及び費用はOCIに表示すべきであるというIASBの暫定的な決定は、非デリバティブ商品にも適用されるようである。非デリバティブ商品(例:公正価値により償還可能な株式)への区分表示の要求事項の適用に関しては、2016年2月に審議されている。ただし、これらの要求事項を、リターンの一部が残余金額、一部がその他の要因に応じて決まる非デリバティブ負債に適用するのか、する場合はどのように適用するかについては未だ明確になっていない。

OCIを用いるという暫定的な決定は、議論の対象となる可能性があり概念フレームワーク及び業績報告に関するIASBのその他のプロジェクトと相互に関連する。KPMGは、最初のステップは純損益とOCIの間の境界線(dividing line)について原則を設けることであると考えている。そのためには、業績の概念について適切な議論を進める必要がある。

分類及び表示のアプローチを補完する開示

 

“IASBは、請求権の優先度、普通株式の潜在的希薄化性、及びガンマ・アプローチの表示及び分類の要件を裏付ける情報を追加的に開示することについて審議した”

 

問題の所在
現在、資本に分類される項目について提供される情報と負債に分類される項目について提供される情報との間には、著しい差異がある。資本について負債と同等の開示を提供することによって、財務諸表利用者はすべての請求権について、その分類に関わらず、十分な情報を得て評価を行うことができるようになる。スタッフは、以下の事項について検討した。

  • IASBの様々なコメント募集に応える形で投資者その他の財務諸表利用者が要望した情報
  • どの開示がガンマ・アプローチに基づき策定される分類及び表示の要件に役立つことになるか。
  • 既存の規定をどのように改善できるか。

 

IASBでの審議内容
スタッフは、ガンマ・アプローチに基づく分類及び表示では、請求権の優先度の特性に関する情報が直接提供されないことを特定した。また、分類及び表示によって普通株式の潜在的希薄化性の一部は表現されるものの、普通株式を用いて決済される負債及び資本に関する情報も追加されれば、財務諸表利用者が普通株主に及ぶ希薄化の影響を評価するのに役立つ可能性がある。さらに、スタッフは追加的な補完情報についても特定した。

 

優先度
請求権の優先度とは、企業に対する他の請求権との相対度を表す特性である。IASBは以前、財務諸表上または注記において負債を優先度順に表示することについて審議した。負債と資本両方の区分において、様々な水準の優先性及び劣後性を有する請求権が存在し得る。優先度の特性に関する情報は、財務諸表利用者が経済的資源(及び関連するリターン)の不足分または超過分が請求権間でどのように配分される可能性があるかを評価するのに役立つ。

スタッフは、以下の目的及び開示を提案した。

目的 開示
企業の資本構成(金融商品の優先度を含む)が様々な債権者に対する企業の予測される将来キャッシュフローの配分方法にどのような影響を及ぼすかを財務諸表利用者が評価するのに役立つ情報を提供すること

各種類の金融商品を優先度順に並べた金融負債及び資本のリスト

各種類の金融商品について、以下を開示する。

  • 以下のような契約条件
    • 優先度を示す契約条件
    • 優先度に変化をもたらす可能性のある契約条件
    • 約束されたリターン及び(または)配当(分配)の権利を示す契約条件
  • 企業の経済的資源及びリターンの配分能力に影響を及ぼすその他の特性

各種類の金融商品の優先度に変化が生じた場合には、その理由を提供する。

 

潜在的希薄化性
IAS第33号「1株当たり利益」では、潜在的普通株式は、継続事業からの1株当たり利益が減少(または損失が増加)する場合に、希薄化性を有するとみなされる。普通株式の潜在的希薄化性は、負債性金融商品または資本性金融商品のいずれかから生じる可能性がある。ガンマ・アプローチに基づく表示では、他の金融商品が普通株主への残余リターンの分配にどのような影響を及ぼしているかが一部表現されている。しかし、普通株式の追加発行によって普通株式がどの程度希薄化したか(または希薄化する予定か)を知ることも、財務諸表利用者にとって有用である。潜在的希薄化性に関する情報は、財務諸表利用者が企業に対する債権間でのリターンの分配を評価するのに役立つ。スタッフは、以下の用語を定義した。

普通株式 最も残余性があり、かつ清算時にのみ、企業が清算時の企業の純資産の比例配分額と同額の経済的資源を譲渡することが要求される資本のクラス
希薄化 発行済普通株式数の実際の増加または潜在的増加

 

スタッフは、以下の目的及び開示を提案した。

目的 開示
普通株式の発行によって決済される可能性のある金融商品から生じる普通株式の潜在的希薄化性を、財務諸表利用者が評価するのに役立つ情報を提供すること

各報告日現在の潜在的希薄化性を有するすべての金融商品を網羅したリスト

希薄化性を有する各種類の金融商品について、以下を開示する。

  • 普通株式によって決済される可能性を示す契約条件(決済に必要な普通株式数の算定方法を含む)
  • 予想される株式の決済日
  • 報告日現在の状況に基づき譲渡される見込みの株式数

普通株式数の変動の調整表及び期中に起こり得る普通株式の最大増加数を提供する。これには以下が含まれる。

  • 報告期間の期首及び期末現在の普通株式数及び起こり得る普通株式の増加数の合計
  • 普通株式数及び起こり得る普通株式の増加数の変動の要因
  • 普通株式数の変動をもたらす決済の日
  • 自己株式の買戻計画の詳細

 

スタッフは、普通株式の潜在的希薄化性に関する情報を普通株式数に関する既存の開示に組み入れることは可能であり、企業がIAS第33号を適用している場合にはすでにその情報の一部を収集しているはずであると考えている。

 

分類及び表示の要件の補足
IASBは以前、デリバティブに該当する資本に対する請求権について考え得る4つの割当てのアプローチについて審議した。これらのアプローチのうちの3つは、報告期間の期首及び期末現在のデリバティブに該当する資本に対する請求権の公正価値測定を要求するものである。スタッフは、デリバティブに該当する資本に対する請求権の公正価値測定について追加の情報を提供することによって、財務諸表利用者はこのような請求権に対する金額の割当てについて理解できるようになると考えている。

現金で決済される負債の請求権について、スタッフは、特定の決済時期について追加の情報が提供されれば、流動性の評価に役立つ可能性があると考えている。また、企業の義務が期限を迎える際に、その履行に要する経済的資源の程度を評価するには、決済金額の算定方法及び予想されるキャッシュ・アウトフローの金額について追加の情報が提供されれば可能になるとスタッフは考えている。

スタッフは、以下の目的及び開示を提案した。

目的 開示
デリバティブに該当する資本に対する請求権の公正価値測定に関する情報を提供することによって、財務諸表利用者が残余リターンの配分を評価するのに役立てること

デリバティブに該当する資本に対する請求権に分類される各種類の金融商品について、以下を開示する。

  • 金融商品グループの報告期間の期首及び期末現在の公正価値
  • 報告期間の期中の公正価値の変動の調整表(その評価に投入した主要なインプットの変動に関する定性的及び定量的説明を含む)
  • 用いた評価技法、インプット及び仮定の説明
  • 主要なインプットの一部の変動が不安定になることが見込まれる場合に、その変動に対して報告日現在の公正価値がどのように反応するかを示す感応度分析
財務諸表利用者が各種類の金融負債を決済するのに必要な経済的資源の流出時期及び金額を評価するのに役立てること

現金のみによって決済される各種類の金融負債について、以下を開示する。

  • 決済金額の算定に関連する契約条件
  • キャッシュ・アウトフローが見込まれる日及びその金額(例えば、満期分析の形式で開示する(スタッフは、満期分析はIFRS第7号「金融商品:開示」ですでに要求されていることを指摘している))

 

IASBの意思決定
IASBは、上記の開示案の概要についての議論をディスカッション・ペーパーに含めることを決定した。

ボードメンバーは、清算時の請求権の優先度及び普通株式の潜在的希薄化性に関する開示案をおおむね歓迎した。ただし、スタッフは、情報を表示する方法を規定するのではなく、優先度に関する開示の目的を定めることに焦点を当てるよう指示を受けた。1名のボードメンバーは、潜在的希薄化性に関する開示を策定する目的は、1株当たり利益に関する規定を再検討するためではなく、既存の開示を補完するためにどのような情報が必要かを定めるためであると述べた。

一部のボードメンバーは、公正価値測定に関する開示案のすべてが必要なものか否かについて疑問を呈した。また、1名のメンバーは、IFRS第13号「公正価値測定」では、財政状態計算書上公正価値で測定されていない金融商品について、開示の一部を省略することが認められていることを指摘した。

 

KPMGの見解
提案された目的及び開示は、金融商品についての開示の範囲を著しく拡大するものであることを示している。その目的は、資本に対する請求権について、現行よりもはるかに重点を置いた詳細な情報を提供し、その開示の水準を他の金融商品の水準に近づけることにある。この分野への重点を高めることは、資本構成における自らの立場について理解を深めたいと考える普通株主やその他の株主にとって特に有益となる可能性がある。これは、特に規制上の要求に対応して新たな種類の資本性金融商品を発行した金融機関や、複雑な資本構成を有するその他の企業にとっても当てはまる可能性がある。契約条件や負債の順位についての情報を整理することも、財務諸表利用者が分析を行う上で役に立つ可能性がある。

開示を提供する際には、以下を避けることが重要である。

  • 過度に詳細な情報によって、財務諸表利用者に負担を掛け、本質的な情報を分かりにくくすること
  • 不適切な情報を提供すること

このような議論の目的は、単に開示を増やすことではなく、既存の(資本性金融商品については簡素であった)開示規定に注目してそれらの開示の有効性を高めることができるか否かを検討することであるとスタッフが認めたことは、評価に値する。

金融負債からのキャッシュ・アウトフローが見込まれる日及びその金額に関する開示を提案する際に、スタッフは、金融負債に関する満期分析はIFRS第7号ですでに要求されていることを認識していた。しかし、既存のIFRS第7号の満期分析は、一般的に契約上の満期に基づく分析であり、債権者が契約上可能な限り速やかに返済を求めることを前提としている。したがって、予想される満期は、契約上の満期と異なる可能性がある。

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