無形資産と企業評価 ~実例から見るゴルフ場の評価~ | KPMG | JP
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無形資産と企業評価 ~実例から見るゴルフ場の評価~

無形資産と企業評価 ~実例から見るゴルフ場の評価~

日本公認会計士協会から公表されている経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」より企業価値の概念および評価アプローチの概要を紹介し、ゴルフ場の実例から不動産事業における企業価値評価について考察しています。

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1. はじめに

企業価値評価を行う場合、多くは買収しようとする企業体が、買収対象先の企業体に対して行うケースとなるが、自社の企業価値に興味がある会社もあるだろう。

会計学においては、物の価値を対価によって図る慣行が古くから指示されていた(測定対価主義、取得原価主義等と称する)。つまり、支払行為が伴わない場合、それによって得た権利ないしは財産は、貸借対照表上ではゼロ円と評価される。したがって、何らかの手法を採用し、他社を買収し、金銭を支払った場合と、同様の手法を用いて自社の企業価値を評価した場合では、同じ評価額が算出されたとしても、自社の貸借対照表上では扱いが異なってくるのである。

本稿においては、前者の例、つまり、他社を対価を支払い買収するケースを前提にしている。これは、貸借対照表上、「見える」形で無形固定資産を論ずることができるからである。

企業価値評価を株式の評価の形で行う場合、公認会計士が当該業務を行う場合のガイドラインとして、日本公認会計士協会から「監査研究調査会研究報告第32号」で「企業価値評価ガイドライン」(以下ガイドラインと略す)が公表されている。まず、このガイドラインに沿って、2.企業価値の概念、3.評価アプローチ、の概要を紹介する。

2. 企業価値の概念

「価格」は売り手と買い手の間で決定された値段を言う。また、「価値」は評価対象会社から創出される経済的便益である。前者が当事者間で合意された取引として成立されている値段であるのに対し、後者は評価にあたっての前提条件等によって異なってくる。ガイドラインにおいては、後者の「価値」の評価について我が国の実務を取りまとめたものである。ちなみに評価目的の例として、以下の表を例示している。

目的 内容
取引目的 株式譲受・譲渡
合併
株式移転
株式交換
その他
裁判目的 買取価格決定
売買価格決定
その他
その他の目的 裁判目的のなかでも取引目的に近いもの
処分目的
課税目的
PPA(Purchase Price allocation)目的

本論においては上記のうちの取引目的を主題としている。ただ、一口に取引目的の評価と言っても、評価対象の内容(法人か事業か個別資産か)、評価対象の状況(継続企業が前提か清算が前提か)、依頼人の立場(買い手か売り手か)、相手との関係(友好的か敵対的か)、利害関係者間の状況等によって、結果にさまざまな影響を与えるのが実務においては多くみられる。つまり、結果として評価される価値は客観的、一義的に決まるものではない点に留意する必要がある。

さて、ガイドラインには企業価値の概念として、(1)事業価値、(2)企業価値、(3)株主価値、が挙げられている。

 

(1)事業価値
事業から創出される価値であり、会社の静態的な価値である純資産価値だけではなく、会社の超過収益力等を示すのれんや、貸借対照表に計上されない無形資産・知的財産価値を含めた価値である。事業活動から生じた営業フリーキャッシュフローに相当するもので、支払利息、配当金等の特定の投資家等へのキャッシュ・アウト・フローを控除する前のものである。

 

(2)企業価値
事業価値に加えて、事業以外の非事業資産の価値も含めた企業全体の価値である。なお、企業価値を株主価値と同義にとらえるケースも実務上はあるが、ガイドライン上では、企業価値と株主価値は別の概念として定義している。

 

(3)株主価値
企業価値から有利子負債等の他人資本を差し引いた株主に帰属する価値である。なお、株主価値の算定にあたっては、種類株式等の取扱いや連結財務諸表において非支配株主持分を減算する等の処理が必要となる。上記を図示すると以下のようになる。

(注)非事業資産には、例えば、遊休資産、余剰資金などがある。

3. 評価アプローチ

企業価値を評価する手法には多様なものがあるが、一般的には「インカム・アプローチ」「マーケット・アプローチ」「ネットアセット・アプローチ」の3つに分類される。

 

(1)インカム・アプローチ
企業が将来獲得することが期待される利益、キャッシュフローに基づいて評価する方法。一般的に、将来期待される収益獲得能力を価値に反映しやすいアプローチと言われ、また、評価対象会社独自の収益性等を基に価値を測定することから、評価対象会社が持つ固有の価値を示すと言われる。


利点

将来獲得することが期待される収益やキャッシュフローに基づいて評価することから、将来の収益獲得能力や固有の性質を評価結果に反映されるため、企業価値評価において多く用いられる。想定される総キャッシュフローを、市場環境を反映した割引率を用いて現在価値を算出することにより、市場価値も反映できる手法であると言える。


欠点

将来予測を各種の数値に用いることが、この手法の基礎となっている。つまり、将来収益等は策定された事業計画に基づき算定されるため、事業計画等に掲載されている将来見込みの実現可能性については、計画作成者の甘い期待の混入等、恣意的な要素をできる限り排除する必要がある。現時点で参照可能な情報に基づいて、客観性を確保するとしても自ずと限界があり、評価の基本となる各種数値の客観性の確保の点においては問題となるケースがある。

 

(2)マーケット・アプローチ
上場している同業他社や類似取引事例等、類似する会社、事業、ないし取引事例と比較することによって相対的に価値を評価するアプローチである。

一般的に比較対象とした上場会社の株価や取引事例は、その会社の事業の将来価値も含めた継続価値である。


利点

第三者間取引や市場取引等の事例を用いて評価するため、客観性を確保すると言う点では、優れたアプローチである。


欠点

類似する企業、業種の事例が乏しい場合や対象企業が成長ステージにある場合等、取引事例が無い場合や、前述したように、企業価値だけで取引価額が成立するものではないため、取引事例に将来性以外の要素によって形成される可能性もあり、そのような要素の見極めや、事例が無いことでこのアプローチを採用することが困難となることや、結果について会社固有の性質を反映させられないケースがある。

 

(3)ネットアセット・アプローチ
会社の貸借対照表上の純資産に注目したアプローチである。一般的に会社の貸借対照表を基に評価することから、静態的な評価アプローチであると言われている。


利点

帳簿上の純資産を基礎として、一定の時価評価等に基づく修正を行うため、帳簿作成が適正で、時価等の情報がとりやすい状況であれば、客観性に優れていることが期待される。


欠点

一時点の純資産に基づいた価値評価を前提とするため、のれん等が適正に計上されていない場合には、将来の収益能力の反映や市場での取引環境の反映は難しい。

以上のそれぞれのアプローチについて、ガイドライン上は以下の表が示されている。

項目 インカム マーケット ネットアセット
客観性
市場で取引環境の反映
将来の収益獲得能力の反映
固有の性質の反映

◎ : 優れている 〇 : やや優れている △ : 問題となるケースもある

 

上記の「客観性」とは、客観的な前提条件に基づいた株式等評価が可能かどうかであり、誰が行ってもある程度同じような評価結果が得られ、評価に恣意性が入る余地が小さいかどうかを示している。確かに評価結果に恣意性の混入は極力避けるべきであるが、企業価値は、現時点の収益実績を評価するだけでなく、将来の収益獲得能力が重要なポイントである。したがって、将来予測が評価プロセスに混入されるのは避けられない事実である。ただ、その予測が比較可能な他のデータでできる限り裏付けすることが求められるのである。なぜなら、いかに素晴らしい事業計画が存在していても、その企業体の過去実績が芳しくなく、将来の経済情勢の動向等を当てはめても実現可能性に疑念が残る場合、やはりそこで描かれている将来の収益計画は「絵に描いた餅」と言うことになる。

事業計画で問題となるのは、他に例のない新規事業や、全く新しいアイディアによって革新的な事業を行う場合である。会計学における将来予測は、「古きを尋ねて新しきを予想する」という手法が伝統的に取られている。貸借対照表に計上されている各種引当金は、過去の実績に重きを置いて計上されることが非常に多い。したがって、過去に比較すべき実例等が存在しない場合、つまり、計画を検証すべき明確なデータが入手できない等、策定されている将来の事業計画を明確に否定する根拠に乏しい場合は、その予測は消極的ではあるが受け入れざるを得ないこととなる。その場合、そこで描かれた事業計画の客観性の実現可能性の検証は、後日の実績と照らし合わせて、乖離が有るのかどうかを観察するモニタリング活動を通じて行うことになる。後日の実績が計画より下回った場合、その事象が一過性の要因によるものであるのか、つまり、近い将来において回復可能であるのか否かについての判断は、企業を取り巻くさまざまな事象を総合的に考慮して行うことになり、非常に難しい判断となる。

企業価値評価を行う場合、一見するとインカム・アプローチが優れているように見えるが、それぞれのアプローチは、それぞれの利点、欠点を持っており、また、それらは絶対的なものではなく補完関係にあると言える。したがって、実際の評価にあたっては、単独の方法ではなく、複数のアプローチによる結果を使い、それぞれウエイト付けする方法が用いられる。

4. 不動産事業における企業価値評価

以上、企業価値評価にあたってのガイドラインによる評価アプローチを紹介してきた。これを、不動産事業に適用した場合を考えてみよう。

たとえばオフィスや住宅の賃貸事業等、事業の根幹が建設された施設を運営する事業である場合、企業価値評価の大部分が運営している「不動産」自体の鑑定評価によって決定されると言う特徴を持つ。

 

(1)不動産鑑定評価
我が国には、不動産鑑定士制度がある。不動産鑑定士は、「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき制定された国家資格であり、不動産に関する経済価値を算定する専門家である。不動産の鑑定評価に関しては不動産鑑定士固有の業務であり、不動産鑑定士が発行する不動産鑑定評価書は、信頼性の高いものであると考えられる。

前述したガイドラインにおいて、重要なポイントとしているのが「客観性」「恣意性の排除」である。施設運営事業の企業価値評価を行う場合、この評価結果の「客観性」を担保するために当事者から独立した立場にいる不動産鑑定士に不動産の鑑定評価を依頼し、その結果を用いて最終的な企業価値評価を行うことが多い。

貸借対照表を利用して、企業評価を行う場合、資産側の大部分が事業用不動産で構成されている場合、事業用不動産の帳簿価格を不動産鑑定評価書の鑑定評価額と置き換えて、負債を差し引いて計算された純資産金額を企業評価額とするのである。鑑定評価書を作成した不動産鑑定士等が、社会的に信頼性が高い場合、その不動産鑑定評価書を利用して得られた企業価値評価は、信頼性の高い評価結果であることが推定される。したがって、不動産運営事業の企業価値評価においては、不動産鑑定評価書を作成した不動産鑑定士等の信頼性を慎重に評価することが必須な手続となる。

企業価値評価だけでなく、会計監査においても、不動産鑑定評価書を利用する場合には、同様な手続を行い、客観性を担保しながら、固定資産の減損会計、のれんの評価等の検討することになる。

 

(2)ゴルフ場と他の事業用不動産との違い
オフィスビル、住宅、商業施設運営等、施設を運営する事業はさまざまなものがある。ゴルフ場は施設運営事業に分類されるが、単純な運営事業では測れない部分が観察される。

ゴルフ場は、広大な事業面積を造成し、また、事業用地内にもともと存在する丘、川、谷、等があったら、プレーに支障が無い限りにおいては、それらの特徴を、できるだけ残した形で設計されゴルフコースとして造成される。芝の手入れ等、ゴルフ場としてのプレー環境を維持しながら営まれる施設運営事業である。

ゴルフ場を運営する母体組織が、1社または少数の共同事業者社で資金調達し建設から運営をする場合は、前述したオフィスビル等の事業形態と類似する面を持っている。

しかし、メンバーシップ制のゴルフ場にみられるように、建設資金をメンバーから徴収する場合、程度によるが、事業運営に運営主体の意思だけではなくメンバー群も何らかの形で運営に参加してくる余地を残す。このメンバーシップが社会的な認知度が高く、高いステイタスを認識できるような場合、施設運営事業でありながら、企業価値評価においては、不動産鑑定評価書の結果を流用するだけでは足りないケースも出てき得る。過去において、ゴルフの会員権が高騰していた時代においては、会員権の価格や会員の追加募集の残り枠等を企業価値評価において考慮するケースもあっただろう。

しかし、長引く不況の中で、会員権価格が暴落する状況や、実際のプレー人口の激減も伴い、ゴルフ場を維持すること自体も困難になる事業体も出てきており、既存メンバーにとっては理不尽な条件で運営母体の変更等が行われてきたのが現状である。したがって、メンバーが現存していても、企業価値評価に与える影響が僅少であると認められる場合は、通常の施設運営事業と同様に不動産鑑定評価の結果を利用して行われることになる。

 

(3)不動産鑑定評価書における評価傾向
不動産鑑定評価書を閲覧してみると、評価手法においては大体、1.収益還元価値法(DCF法)、2.取引事例比較法、3.積算価格法、が使われており、1.の結果に近づけているものが多くみられる。不動産鑑定評価は、理屈の上では、最有効利用されたケースを前提として行われるのであるが、実務上、最有効利用された施設を、個別案件ごとに想定するのは困難であり、現状有姿の形で収受されている賃貸料等、修繕履歴等を考慮してDCF法を利用した結果が中心部分を占めることになる。

通常、1. 2. 3.を算出して、それぞれのウエイト付けを行って総合的に適切と思われる鑑定評価額を算定している。

以上は通常の不動産鑑定評価実務においてよくみられる手法である。前述したように、a.類似したゴルフ場が近隣にないことが多く取引事例比較法は採用しづらいこと、b.メンバーシップ制を取っている場合、この会員固有の権利や義務および会員権価格の動向等が、不動産鑑定評価額に影響を与える可能性があること、等固有の考慮点があり、鑑定評価を実際に行う場合は、特にb.の点については、何らかの仮定をおいて、実施することとなるだろう。

 

(4)ゴルフ場の企業価値評価
ゴルフ場開発が活発に行われていた1980年から90年代までは、地価高騰現象もあり、新規のゴルフ場開発コストは、地域にもよるが100億から200億円程度は必要とされていた。また、名門ゴルフ場ともなると、会員権価格が一口1億円となるものも見受けられた。したがって、この時期のゴルフ場の企業価値評価を行うとすると、ゴルフ事業から得られる収益だけでなく、会員権の追加募集による資金調達能力等、多面的な考慮点があり、評価にあたっての前提条件に今後の見込みが入る余地が多かった。もちろん、企業価値評価を行うと言うことは、M&A等の場面が一義的に考えられるため、当時の時代背景から考えるならば、企業評価を行う場面は少なかったと推定される。

さて、1990年以降、いわゆるバブル経済が崩壊後は、ゴルフ事業を取り巻く環境が激変する。プレーフィーの下落はもちろん、プレー人口そのものが減少してしまい、当初の事業計画を幾度となく修正せざるを得ない状況におかれてしまった。結果として、事業が行き詰まりゴルフ事業そのものの売却を考慮しなければならない状況に陥ったゴルフ場も少なくなかった。

前述したように、ゴルフ場と他の施設運営事業との差は、メンバーシップ制の存在が大きい。不動産鑑定評価においては、ゴルフ運営により獲得されるプレーフィー等から運営に係るコストを差し引いて求められるキャッシュフローをベースにしたDCF法が多く使われるが、企業価値評価の段階においては、固定資産固有の評価額に加えてメンバーシップ制により形成される価値も何らかの仮定を用いて評価額に加えることもある。

名門と言われるゴルフクラブには、数字でとらえられる収益性数値だけでは推し量れない無形の価値が存在すると推定される。これは「のれん」と言われるものに相当する。

 

(5)のれん
「のれん」は、古くから営まれている料亭、和菓子屋、伝統工芸品等、創業以来から伝統を重んじ歴史的な格式等から形成された「暖簾」から生まれた会計用語である。非常に長い間の企業活動で形成された企業に存在している屋号、信頼、品格等であり、単純な財務的な数値ではとらえられない超過収益力と言われている。

したがって、年月を経て形成されるものであり、物理的な劣化が生じるような性格ではもともとないと考えることもできるし、物理的に視認できる存在でもない。

会計的に単独で価値を評価することが難しく、現在の取扱い上では、連結財務諸表において、子会社として買収した株式の支出金額と、その子会社の帳簿上の純資産額との差額として認識されるものである。帳簿上の純資産を上回る金額で買収されることが多く、連結財務諸表上、「借方」に計上されることが多い。なお、前述したように買収先の都合により金額を安くするケースもあり、その場合は「貸方」に計上され「負ののれん」と呼ばれる結果となるケースもある。「のれん」は現行の日本の会計基準においては、20年以内でのれんが存在すると予想される年数を見積もり、均等償却を行う。また「負ののれん」は一時償却が求められている。

 

(6)ゴルフ場の買収事例
メンバーシップ制が有効に機能している場合、なんらかの形で「のれん」が評価され結果として、不動産鑑定評価額よりも高い企業価値評価額が算出されることになる。また、メンバーシップ制を取っていない場合でも、買収側の事業とのコラボレーション等でゴルフ事業単独の買収よりも高額であっても買収する経済的な合理性があるケースも有り得る。リゾートホテル開発会社が近隣のゴルフ場を買収し、リゾートホテルとゴルフ場の相乗効果を狙うケースがそれに当たる。

A)買収先の事業用資産の帳簿価格 10億円

B)買収先の帳簿上の純資産 10億円

C)ゴルフ場の不動産鑑定評価額 10億円

D)メンバーシップによる超過収益力 1億円

E)ゴルフ会社の企業価値評価額 11億円

F)買収にあたって競争者が提示している価格 12億円

G)ホテルとのコラボレーションで生み出される価値 2億円


以上の説例で、会計上の数値を考えてみると、E)の競争者がいない場合であるなら、11億円を基準として先方と金額交渉ができたと思われる。しかし、競争者が12億円の数値を提示しているため、購入するには12億円を超える形を提示しなければならない。リゾートホテル開発会社にとっては、ホテルとの相乗効果を狙え、企業価値評価額よりも2億円ほど大きい金額までは経済的な合理性を持つと考えられるため、最終的には13億円を提示して、子会社を買収することになる。

 

(7)連結財務諸表での取扱い
説例におけるD)G)に相当する部分が、連結貸借対照表上において「のれん」として3億円、借方に計上される。日本基準においては、20年以内の適切と思われる年数を決定し、毎期均等償却することになる。

重要な点は、D)G)の価値が保たれているかどうかである。それは、買収時に策定された事業計画によって判定されることになる。買収後のゴルフ場の収益実績をモニタリングしていくことになるが、通常、買収年度においては、まだ判定に要する数値が出ない。そのため買収時の期末決算においては、地震やその他の災害によりゴルフ場の運営が著しく阻害されている等の事実が無い限りは償却のみが行われる。翌年、翌々年と実績が出てきた段階で、策定された事業計画とのマイナスの乖離がみられる場合、収益性を回復するための施策を提示してもらい、その実現可能性を判定することになる。実現可能とするなら、特にのれんの減損の問題は回避されるが、実現不能と判定された場合は、再度企業価値評価を行い、計上されているのれんの金額や、場合によってはゴルフ場自体の帳簿価額の減損まで視野に入れて判定しなければならない。

 

(8)事業計画の重要性
以上、不動産鑑定評価書の特徴、説例による「のれん」や減損会計等の問題を示してきたが、それらのベースになっているものが「事業計画の実現可能性」であると言えるだろう。事業を買収する場合、将来獲得収益に着目するのは当然であるが、いかなる手法を用いても、誤差のない精緻な評価手法は存在しないということに留意すべきである。

不動産事業の場合は、通常の企業の企業価値評価に比べて不動産鑑定評価書による評価部分が大きいため、比較的客観性を保った企業価値評価ができるが、やはり、将来予測の部分が混入することは避けられない。第一義的には、買収側の経営者が主体となって将来予測を策定するわけであるが、その中に混入する恣意性をできる限り排除しなければならない。そのために、外部の鑑定評価機関を利用することや、現在の経済事情を良く観察し、事業計画の客観性の程度が測れる目をもって企業価値評価を行うことが重要である。

 

参考文献・資料
日本公認会計士協会 経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
金融事業部 パートナー 佐藤 茂

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