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英国のEU離脱による年金制度への影響

英国のEU離脱による年金制度への影響

Brexitの現状および影響について、企業年金制度に与える影響、およびそのスポンサー企業、トラスティ、制度加入者の今後の対応等について説明しています。

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本資料はKPMG英国の現地専門家が作成した英語資料をベースに、専門家が日本語訳をしています。

概要 - 2016年7月

英国のEU離脱の投票結果を受けて、KPMGはこの選択が年金に与える影響、及び企業、トラスティー、制度加入者の今後の対応について検討した。
英国のEU離脱の影響に関する他の情報は、KPMGのウェブサイトを参照のこと。

英国がEU離脱を選択したことにより、英国の企業年金にいくつかの大きな問題が生じている。直接的な影響としては、多くの確定給付年金(DB)の積立状況の悪化が挙げられる。会計上の観点では、6月30日を決算日とする企業が積立状況の悪化を重要事項として開示することになる。英国政府がEUからの正式な離脱の手続開始に踏み切った場合、さらに不安定な状況に陥ることも予想される。トラスティーやスポンサー企業はこの不確実性に対処し、市場機会を有効活用するために慎重に計画・戦略を策定する必要がある。

2007/08年の世界金融危機や2011/12年の欧州債務危機などの過去の不安定な時期は、十分に準備を行い資産を即座に動かせたトラスティーやスポンサー企業に市場機会をもたらした。KPMGのクライアントは、特に投資や保険のソリューション等の市場機会が生じることが予想される複数の分野について、既に検討を始めている。

EU離脱がコベナンツ(企業の財務的健全性)に与える影響は、掛金への影響と同様に、企業によって大きく異なる。将来分給付が発生する(DCに移行していない)制度について、特にEU離脱の決定によってスポンサーの事業が悪影響を受けて積立コストが増加している場合は、将来分給付の見直しの動機付けとなるだろう。

制度加入者、特に受給開始が目前に迫っている加入者は、EU離脱が退職給付に与える影響を危惧している。加入者の多くは、制度からのEU離脱に関連する情報提供を通じて、状況を把握しようとするだろう。

確定拠出年金(DC)においては、制度加入者が退職を目前に控え年金保険を購入する場合に、不利な変動から回復する十分な時間がないリスクがあるため、加入者がDCにより多く関わることを促すように、特別なコミュニケーションを提供することが必要かもしれない。

少し先を見据えた場合、年金制度の健全性にとって重要な要素は、広く公表されているFTSE-100の指標ではなく、英国の新たな金融政策である。英国債やポンド建て社債に対する投資家のセンチメントは新たな金融政策と共に、積立不足、企業のバランスシート及び営業キャッシュフローに大きな影響を与えることになる。現段階では、どちらの影響も不確実であり、上方あるいは下方への大きな影響となる可能性がある。


2-2-2対応プラン
本資料では、重要項目を特定し、英国におけるビジネス、多国籍企業、及びトラスティーのさまざまな観点から論点を説明している。戦略的な計画作りのプロセスを2週間、2ヵ月、2年のスパンに分けて示すKPMG2-2-2対応プランを用いて、優先度の高い手続きについて検討している。その上で、より詳細かつ複数の重要項目にまたがる影響を分析している。

現時点で条件反射的な行動を起こす必要はないが、主なリスク及び課題を特定し、EU離脱の時期、プロセス及び影響がより明確になった段階で、これらのリスクや課題を特定し、モニタリングする必要がある。各社の状況は異なるため、利害関係者は何が最も影響があるかの理解を開始する必要がある。今はプラン作りを行うときである。


EU離脱に関しては大きな不確実性があります。ここに記載されている情報はあくまで一般的なものであり、特定の個人や組織が置かれている状況に対応するものではありません。私たちは、的確な情報をタイムリーに提供するよう努めておりますが、情報を受け取られた時点及びそれ以降においての正確さは保証の限りではありません。何らかの行動を取られる場合は、ここにある情報のみを根拠とせず、プロフェッショナルが特定の状況を綿密に調査した上で提案する適切なアドバイスをもとにご判断ください。

財務上の影響

債務評価、コベナンツ、及び掛金積立
英国のEU離脱による短期的影響は、大部分の年金制度の積立水準が低下したことである(6月末時点での英国債金利の0.4%の下落は、標準的な制度の年金債務を8%増加させた)。例外として、高い水準の金利ヘッジを行っている企業または通貨ヘッジが限定的な海外資産投資を多く行っている企業が挙げられる。この短期的な負の変動は好ましいものではないが、トラスティー及びスポンサー企業の大半は積立不足の短期的変動に対する備えがあり、過去により大幅な下落に対処した経験がある。

スポンサー企業の支援に変化があった場合や、EU離脱により生じる投資リスクがより高い水準となった場合は、それらを踏まえて掛金による積立を再検討する必要がある。こうした検討は、多くの制度にとって長期的計画における課題となるだろう。

利害関係者はスポンサー企業が提供するコベナンツについて検討する必要がある。EU離脱の影響を強く受ける事業がある場合、重要な対応事項について合意し、業績が大きく変動した場合の適切なモニタリング方法及びアクションプランを整備する必要がある。


財務報告
多くの企業は、6月30日現在のDBの運用状況をIAS第19号または英国GAAPに基づいて、期末または期中財務諸表において報告している。国民投票からわずか7日後に、大多数の企業が、離脱選択以前の予測と比較して、積立状況の悪化を報告することになると予想される。ただし、高い水準の金利ヘッジを行っている企業については、損失が少ないまたは積立状況の僅かな改善となるかもしれない。

英国年金に対する大きなエクスポージャーを有する企業は、上述の財務上の影響を受けて市場へのメッセージを変更する必要があるかもしれない。例えば、剰余金が減少した場合は、配当方針にも影響を及ぼす可能性がある。


多国籍企業に特有の論点
多国籍企業にとっては、離脱採択後のポンドの下落に関しては、報告通貨がポンドであるか否かが重要となる。ポンドを報告通貨とする企業は、海外の年金及び医療保険の債務増加に直面する可能性がある。一方でユーロや米ドルを報告通貨とする企業は、英国年金制度の負担額に特に変更がないか、あるいは改善する可能性もある。

スポンサー企業の取引がEU離脱によってどのように変化するか及び英国に対する継続的な投資は、トラスティーの重要な懸念事項である。年金制度の多くは、グローバルの企業グループからではなく英国の会社のみから掛金拠出を受けているため、債務保証のような親会社が提供する支援が求められるかもしれない。これらの懸念事項は、コベナンツのレビューの過程で対処する必要が出てくるだろう。

企業グループが英国における事業戦略を検討する中で、英国年金債務のエクスポージャーについても慎重に検討することが重要と考えられる。

投資リスクの管理

長期計画及びリスク削減
積立状況が悪化した年金制度は、従前のリスク削減の計画から乖離する可能性が高い。投資戦略のリスクを増やすことに惹かれる企業もあるかもしれない。しかし、多くの年金制度にとって、今はリスクバジェットを増やす時期ではないと考えられる。最近の市場の混乱は始まりにすぎないかもしれないからである。

そればかりか、今はリスク削減及びリスクバジェット縮小を検討する時期かもしれない。当初の英国株式市場の反応は(ポンドベースの価値ではあるが)1週間でほぼ元通りとなったものの、IMF及びイングランド銀行総裁を含む多くの関係者は、世界経済が英国の決定を受けて後退したとの見方をしている。なお、過去の市場の低迷においては、最初の急落よりも、底を脱するのに長い時間がかかる傾向が見られた。


保険取引
バルクアニュイティ(バイイン、バイアウト)は、クレジットスプレッドが拡大するとより魅力的な商品となる。スプレッドの拡大が保険会社の価格設定にプラスの影響を与えることは既に知られている。2011/12年の欧州債務危機では、平均1%のクレジットスプレッドの増加が保険料を大きく減少させた。2008年の金融危機においては、保険料はさらに減少した。保険会社は引き続き高い取引意欲を保持している。保険会社は長期リスクに対して十分な資本があり、取引の準備が整っており取引を望んでいる年金制度を継続的に探している。これには、変動する保険料をモニタリングし、ターゲット価格で取引しようとしている年金制度も含まれる。

給付費用/リスク管理

制度加入者に対する給付の柔軟性
Pension Increase Exchange(PIE)及びFlexible Retirement Options(FRO)等のMember Options(債務削減策)は、多くの制度加入者及びスポンサー企業に人気がある。これらの施策は、EU離脱に関係なく引き続き有効である。独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)はEU離脱の選択によって助言内容を変えないことを示唆しているが、不確実性が制度加入者の行動や選択率を変化させるかどうかを判断するにはまだ時期尚早である。

 

将来分給付
将来分給付が発生するDB年金の多くは、現在の市況が続くと将来の給付費用が増加する(最近の英国債の金利低下は、一般的な企業の年金費用を15%増加させる)ため、スポンサー企業(特にビジネスモデルに不利な影響を受け、そのため費用とリスクを低減しなければならない企業)は将来給付の変更に高い関心を寄せる可能性がある。また、年金に関する税金の変更も、将来給付の変更を促す可能性がある(下記参照)。

確定拠出年金

制度加入者のDCへの関与
EU離脱が個々の制度加入者の確定拠出年金に与える影響は多岐にわたり、制度加入者に混乱をもたらす可能性もある。早い段階でのコミュニケーションによって、加入者のDCへの関心を高め、自身の状況を確認することにつながる。退職が近づいている加入者は、DC資産の減少から回復する十分な時間がなく、さらに年金給付利率の低下によって影響を受ける可能性があるため、早期の支援が必要と見込まれる。

企業は、早期退職または標準退職年齢後の勤務の増加によって不確実な状況に直面する可能性がある。海外赴任者や海外従業員への年金の提供については、早晩、見直す必要があるかもしれない。


制度の仕組み及び投資

スポンサー企業及びトラスティーは現行のデフォルトファンドを再検討し、株式のエクスポージャーの水準及びプロテクションに関して明確に理解することが望まれる。


プロバイダー及び投資マネジャー
EU離脱がDCのプロバイダー、投資マネジャー、及び特定のファンドに与える可能性のある影響、またこの影響が中期にわたって年金制度にどのように波及するかについて、スポンサー企業及びトラスティーが理解することは重要である。その結果、投資戦略、制度運営費用、そしてプロバイダーの財務健全性にも変化が生じる可能性がある。

年金法制への影響

現行のEU法及び今後新たに公表されるEU法
EUにおける多くの年金のルールは英国の法規制に組み込まれており、離脱に伴って自動的になくなることはない。しかし、英国政府が将来、年金法を改正する可能性はある。とりわけTUPE及びEqualisationなどの問題が認識されている分野が改正の対象となることが考えられる。EU法から派生したGMP equalisationが英国の法規制に組み込まれるか否かは未定である。

英国がEUからの離脱の交渉をしている間に施行が予定されているEUの規制に関しても、不確実性がある。その一例が最近合意され、2018年下半期に発効予定のIORPII指令(報酬の開示、複数国にまたがる制度及び追加的なトラスティー規制等を含んでいる)である。今のところ、この指令はEUに導入される予定である。

重要なこととして、英国における既存の及び新たなEUの規制は、英国が欧州経済領域(EEA)のメンバーであることを通じて、あるいは欧州単一市場への継続的なアクセスの条件の一部として引き続き残る可能性がある。


EU及び英国の今後の動向
今後施行される可能性のあるEUの新たな年金関連法、規制及び指令にはさまざまな要素がある(例:標準的な年金リスク評価の導入の提案や、自己資本規制の長期的な見直し等)。これらの規制が施行される前に英国がEUを離脱する可能性があり、その場合には影響を受けないかもしれない。

税収を確保するために財務大臣による年金税制改革が次の秋の予算編成で検討されることが予想されており、その結果、年間及び生涯の年金掛金非課税枠はさらに削減される可能性がある。


全ての領域に関して、従業員や制度加入者はEU離脱の影響を理解することを強く望んでいる。トラスティーと企業は明確かつ対象者が期待するコミュニケーションの提供が必要になると考えられる。

優先度の高い手続き

2週間

  • 年金掛金について交渉中、または近いうちに交渉予定である場合、現在の年金の状況に与える影響を検討し始める。
  • 6月30日が期末または中間決算日である場合、B/Sへの予想される影響を早期に確認する。
  • 重要な施策のタイミングについて妥当性の確認を行う。予定している投資戦略の変更、保険を用いたソリューション、債務削減施策、企業再編等のプロジェクトの時期を再検討する。
  • DC年金についても、制度、関連するプロバイダー、投資マネジャー及び特定のファンドが受ける影響を確認する。
  • 制度加入者、特に退職を目前に控えている加入者への必要なコミュニケーションを計画する。

2ヵ月

  • 今後のスポンサー企業とトラスティーの交渉に備えてEU離脱についての見解をまとめる。
  • コベナンツへの影響の有無及びコベナンツのモニタリングプロセスの要否を検討するための作業の必要性を確認する。
  • 現実的な年金費用及びリスクがEU離脱のシナリオプランニングに組み込まれていることを確認する(IAS第19号または英国GAAPにおける積立不足が分配可能剰余金に与える影響を含む)。
  • 英国事業に関するグループレベルでの戦略のレビューが、英国年金の状況を理解した上で行われていることを確認する。
  • 年金制度における投資リスクを今後の事業の展望との対比により再確認し、必要に応じてリスク削減を検討する。
  • DC年金について、制度加入者(特に退職を目前に控えている加入者)とのコミュニケーションを図る。また、現行制度やプロバイダーの見直しが必要かどうかを評価する。
  • 親会社の保証を見直す必要があるか否かについて合意する。

2年

  • 新たなガイダンスが公表されれば、それを踏まえて次回の掛金計算及び交渉に向けた準備を行う。
  • 英国のEU離脱プロセス及び離脱後の状況が明確になってきたら、コベナンツの評価プロセスを適用する。
  • 特に主要報告日の直前または企業再編中のショック等、年金制度における市場エクスポージャーへの対応方針を整理する。マーケットショックの例は次のとおりである。
    • EU基本条約第50条の手続きの開始
    • 英国金融政策の急激な変更
    • 米国、フランス、ドイツの選挙が2016年第4四半期から2017年第3四半期にかけて行われることに伴う市場の変化
  • さらなるショックが生じた場合に年金投資戦略をどのように対応させるべきかを検討する。
  • DC年金について、離脱の日が近づいてきたら、制度加入者とのコミュニケーションの明確なタイムラインを設定する。
  • 英国に対する企業戦略が変更されそうな場合は、年金に関するアクションプランを策定する。

2-2-2対応プラン

2-2-2対応プランの詳細については、PDFを参照。

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