日本基準オンライン基礎講座 開示制度

「開示制度」について音声解説付きスライドにより分かりやすく解説します。

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チャプター別動画

解説文付きスライド

※2020年3月31日時点で公表されている基準等に基づき解説しています。

開示制度とは?

企業が、その事業内容、財務内容、経営成績などについて、情報として外部に公表することを、企業内容開示といい、一般的には、ディスクロージャーとも呼ばれています。
企業が一定のルールに基づき、企業内容についての情報開示を行う仕組みを「開示制度」といいます。

開示制度の必要性

企業には、株主、投資家、取引先、消費者、周辺住民等、企業活動を取り巻くさまざまな利害関係者が存在します。
この利害関係者が企業との関係において意思決定を行うためには、何らかの判断材料が必要となります。
そこで、各利害関係者が自己責任に基づき意思決定を行うことができるように、企業は、その判断材料の1つとして、企業内容を開示することが要請されます。

ただし、企業の開示内容を、各企業の自主的な判断に委ねてしまうと、その情報が正しいかどうか、他の企業と比較してどうかといった判断を行うには不十分であったり、混乱を招く可能性があります。
さらに、もし誤った情報が開示されると、情報を利用した利害関係者が損害を被ることも考えられます。
そこで、利用者を保護するために、一定のルール、すなわち制度に基づいた開示を行う必要が生じてきます。

情報の信頼性の確保

開示制度の当事者は、主に、情報の提供者である企業、情報の受け手である利害関係者、企業内の立場から情報の適法性について監査を行う監査役、企業から独立した立場で財務情報の適正性について監査を行う会計監査人、から構成されています。

情報の信頼性の確保

監査役や会計監査人による監査制度は、企業が発信した情報の信頼性を確保し、企業の外部にいる利害関係者を保護するという、重要な機能を果たしています。

主な開示制度

主な開示制度には、法律に基づくものとして、会社法に基づく開示制度や金融商品取引法に基づく開示制度があります。

主な開示制度

また、規則に基づくものとして、金融商品取引所の規則に基づく開示制度があります。
このほか、任意で会社が行うIR活動などもあります。

会社法に基づく開示制度

会社法における開示制度は、すべての会社を対象として定められています。
会社法の開示制度は、情報提供による、債権者・株主の保護を目的としています。
債権者や株主は、企業の財務状況に関心があると考えられるため、企業は、これに関する必要な情報の開示を求められます。
具体的には、企業は、決算期ごとに計算書類および事業報告の定時株主総会での報告または承認が必要になります。
ここで計算書類とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書および注記表のことをいいます。

計算書類、事業報告、附属明細書および監査報告書は5年間本店に、その謄本を3年間支店に備え置き、株主または債権者の閲覧に供することが求められています。

また、定時株主総会の終結後には、遅滞なく、その承認された貸借対照表、大会社の場合、これに加え損益計算書を公告することが必要となります。

ただし、ウェブサイトで開示を行う会社や、上場会社のように有価証券報告書を提出している会社は、この公告が免除されています。

金商法に基づく開示制度(1)~開示制度の分類~

金融商品取引法による開示制度は、投資家に対して適切な投資判断資料を提供することにより、株式市場の健全な発展を図ることを目的としています。
金融商品取引法による開示制度は、発行市場における開示制度と、流通市場における開示制度の、2つの開示制度に分けることができます。

金商法に基づく開示制度(1)~開示制度の分類~

発行市場とは、新たに株式や社債等の有価証券を発行することにより、資金調達を行う市場をいいます。
一方、流通市場とは、すでに発行された株式等が、投資家から投資家に転々と流通・売買される市場のことをいいます。
発行市場における開示制度は、新たに株式や社債等の有価証券を発行することにより、資金調達を行う会社についての投資家保護を目的とする開示制度です。
流通市場における開示制度は、既に株式を上場している会社等についての投資家保護を目的とする開示制度です。

発行市場と流通市場における開示書類は、それぞれ、以下の通りです。
このうち、有価証券届出書、有価証券報告書、四半期報告書、半期報告書の財務諸表等の一定の財務情報、および内部統制報告書については、会社とは独立した立場の公認会計士または監査法人による監査が義務付けられており、監査報告書等の添付が必要となります。

金商法に基づく開示制度(2)~流通市場における開示~

ここでは、金融商品取引法における開示制度のうち、流通市場における主な開示書類について解説します。
有価証券報告書は、営業や経理の状況等を記載した報告書で、各事業年度末日経過後3ヵ月以内に内閣総理大臣への提出が義務付けられています。
この有価証券報告書と合わせて提出する書類として、内部統制報告書があります。
内部統制報告書は、事業年度ごとに、財務報告その他の情報の適正性を確保するための体制についての評価を記載した報告書です。

四半期報告書は、事業年度が3ヵ月を超える場合に、3ヵ月ごとに区分した期間ごとに経理の状況等を記載した報告書で、四半期末日経過後45日以内に内閣総理大臣への提出が義務付けられています。

臨時報告書は、臨時的に発生した事実のうち、例えば、一定の有価証券の発行や親会社、主要な株主の異動、あるいは重要な災害の発生等の企業内容に重要な影響を及ぼす可能性のあるものについての報告書で、当該事実の発生により遅滞なく内閣総理大臣に提出する必要があります。

金融商品取引所の規則に基づく開示制度(1)~目的~

金融商品取引所の規則に基づく開示制度は、有価証券の投資判断に重要な影響を与える会社の業務運営または業績等に関する情報について、投資家に適時・適切に開示することを目的としています。
金融商品取引所では、刻一刻と有価証券の取引が行われており、投資家に対して、意思決定に重要な影響を与えるような企業情報を適時提供する必要があることから、取引所の規則によって適時開示が求められます。
この開示制度は、適時性が重視された開示制度であることから、一般的に「タイムリー・ディスクロージャー制度」と言われています。

金融商品取引所の規則に基づく開示制度(1)~開示対象~

開示対象となる情報は3つの種類に分けることができます。
まず、会社が決定した重要事実に関する情報があります。例えば、多額の増資や合併等の意思決定事項に関する情報が挙げられます。
次に、会社に発生した重要事実に関する情報があります。例えば、会社に発生した災害や訴訟等に関する情報などが挙げられます。
最後に決算内容、業績予想、配当予想の修正等の決算に関する情報があります。

会社が決定した重要事実については、取締役会等の会社の機関による意思決定後、直ちに開示することが求められます。
また、会社に発生した重要事実については、それらの事象を認識した時点で直ちに開示することが求められます。
業績予想や配当予想についても、一定以上の変動があった場合には公表済の予想を修正することが求められます。

金融商品取引所の規則に基づく開示制度(2)~短信~

決算に関する情報開示として、決算情報の要点を取りまとめた「短信」の、定期的な開示が求められています。

短信には、年度の決算期ごとに開示される決算短信と、四半期決算ごとに開示される四半期決算短信があります。
短信は、決算情報をよりタイムリーに投資家に伝えることを目的としていることから、期末日後45日以内より前に開示することが求められ、30日以内に開示することが推奨されています。
短信の開示内容は、通常サマリー情報とその添付資料から構成されます。

サマリー情報には売上高、経常利益、純利益などの経営成績、総資産および純資産などの財政状態、1株情報等の開示のほか、配当の状況、配当予想、第2四半期および通期の業績予想等が記載されます。
添付資料の内容としては、連結財務諸表と継続企業の前提に関する事項などの、重要な事象の記載が求められます。
注記情報については有価証券報告書や四半期報告書の開示内容の一部のみが要請されており、その他の情報の記載については任意となっています。

任意の開示としてのIR活動

ここまでは、開示制度について解説してきましたが、最後に、任意の開示としてのIR活動について解説します。
IRは「インべスターズ・リレーション」の略で、会社が潜在的な投資家を含む投資家や株主に対して、投資判断に必要な情報を適時・公平・継続的に提供する活動全般をいいます。
会社は、こういったIR活動を通じて投資家等とコミュニケーションをとることにより、相互の理解を深め、信頼関係を構築し、結果として、証券市場における正当な評価を獲得することができます。
IR活動における開示は、今まで見てきたような法令等に基づく開示制度と異なり、開示すべき項目や基準等が定められておらず、情報の内容や量は会社独自の判断で決定することになっています。
具体的な開示内容の例としては、経営トップのメッセージ、経営ビジョンや経営方針、経営戦略、研究開発活動、将来の設備投資、人材投資、販売戦略などを記載した文章や資料、CSR報告書や環境報告書など、多岐にわたります。

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