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英国のEU離脱による経済的影響

英国のEU離脱による経済的影響

英国のEU離脱という国民投票の結果を受け、政府、企業、一般家庭が混乱する中、差し迫った問題としてどのような政治的、経済的影響が想定されるでしょうか。

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英国のEU離脱を受け、英国への短期的な影響、欧州大陸の反応という2つの観点で、政治的・経済的な潜在的課題や影響について概説しています。本資料は、直近2週間の検討事項としてご提案します。なお、本資料はKPMG英国の現地専門家が作成した英語資料をベースに、専門家が日本語訳をしています。

詳細(日本語資料)はPDFをご参照ください。

英国への短期的な影響

英国のEU離脱という予想外の決定に政府、企業、一般家庭が混乱する中、差し迫った問題としてどのような政治的・経済的影響を想定しておけばよいのでしょうか


今の段階でまず最初に注意すべきなのは、英国消費者の購買力への影響です。多くの不確定要素、所得への圧力、ポンド安、高インフレといったいくつもの要素が購買力を弱め、それが住宅価格の下落などと相まって消費の停滞を招く恐れがあります。経済の60%を占める個人消費の今後数ヵ月の動向が経済全体の行方を決める極めて重要な要素となります。

また投資の成果も重要な要素の1つです。第2四半期には多くの企業が国民投票の結果を待ち、投資や雇用に関する判断を保留しましたが、国民投票の結果が出た現在ではその判断はさらに先延ばしとなり、企業は優先順位の見直しやEU離脱によるさまざまな影響に備えて計画を立て始めています。

一方、ポジティブな影響としては、ポンド安が輸出の底上げと輸入の抑制効果をもたらし、今後数ヵ月の英国GDP成長率の引き上げにつながることが予想されます。そこでKPMGは英国GDP成長率の予測を国民投票前の2%から2016年については1.5%、2017年については0.5%に修正しました。

真っ先に影響を受けた業種は旅行、銀行、保険、不動産業でした。公共投資については今の段階ではまだ明確にはなっていません。今後英国政府はEU離脱の影響に焦点を置くことになり、必然的に決断スピードは遅くなると考えられるため、公共投資にもその影響が及ぶと考えるのが妥当でしょう。

長期インフラ計画や重要な契約に関する判断も遅れることが予想され、投資や成長にさらなる下押し圧力がかかることになります。

10月までには英国に新しい政権が誕生する予定です。新首相が就任後にまずすべきことはEU離脱関連以外の優先課題を解決し、政治的にも経済的にもはるかに制約の多い環境で選出されたときに掲げた保守党の公約を実行に移す方法を決定することです。また財政関連の最初のイベントは今年の秋に発表される「秋の予算編成方針」になります。それ以前に、財政政策に関する大きな変更(公共投資計画、税制を含む)が発表されることはありません。

それに先立ち、イングランド銀行は金融政策の方向性や金利について明確な発表を行うものと考えられます。為替レートの下落によるインフレの急上昇は弱い国内経済環境においては長く続かない可能性もあります。

イングランド銀行はこうした一時的な上昇には対応せず、根本的な経済支援策に焦点を当てることになる可能性があります。そのため、市場の流動性を確保する上で必要と判断された場合には、金利の引き下げを通じたさらなる金融政策の緩和や新たな量的緩和政策が発表されることになるかもしれません。中期的には、経済状態がより不安定なものとなっていた場合、金利が上昇を始める時期がさらにずれ込み、上昇率もより緩やかなものとなり、イールドカーブ(利回り曲線)は0.25から0.5ポイント下がる可能性があります。

大方の予想では、エクスポージャーが英国に限定されている企業は多国籍企業に比べて厳しい影響を受けると見られていますが、必ずしもそうとは限りません。

欧州大陸の反応

英国の国民投票結果の影響はヨーロッパ全域やその他の地域でも見られ始めており、KPMGの大手クライアントは英国以外での影響についても把握しようとしています。政治的、経済的に不安定な時期が長引くことを懸念する欧州のリーダーたちは、英国がすぐにでもリスボン条約50条を発動し、離脱手続きを開始することを望んでいます。今の英国政府はEUと非公式な話し合いの開始を希望していますが、欧州のリーダーたちは「EU離脱通告を受け取るまでは交渉はしない」として、事前交渉を拒否しています。

ヨーロッパ中を駆け巡っている2つの大きな関心事は、欧州各国の政府は将来の英国との貿易交渉においてどのようなポジションをとるのか、また英国のEU離脱によって欧州大陸はより不安定な状況に陥るのか、ということです。

オランダ、フランス、ドイツでは、来年の春と秋ごろに総選挙が予定されています。欧州の中で大きな影響力を持つこれらの国の選挙結果は、新政権または続投する現政権が、今後、英国や英国との離脱交渉に向けてどのような立場を取るのかという判断に大きな影響を及ぼすことになるため、この選挙は非常に大きな意味を持っています。英国の国民投票の結果は、アムステルダム、パリ、ベルリンにも波及効果を及ぼすのでは、という推測がブリュッセルを始め、これらの都市でも広がっていました。しかし、6月26日にスペインで行われたスペイン議会総選挙の結果は、反EU派ではなく現体制支持を示すものとなりました。

英国の国民投票によりユーロ圏の経済が影響を受けることについては疑う余地はありませんでした。ただ、今のところその影響は英国での状況に比べるとそれほど大きなものではなく、現状、GDP成長率は2016年が1.5%、2017年はそれをやや下回ると予想されています(投票前は2015年からその後2年はやや上昇して1.7%になるとの予想でした)。

しかし、英国のEU離脱は欧州経済圏のみに影響を及ぼしているわけではありません。FRBの政策の代わりにドル高が金融引き締め効果をもたらしていることから、FRBは今後の利上げについては市場の混乱を考慮してさらに慎重に検討していくものとみられます。

オバマ大統領はすでに落ち着かせるような口調を使い始めています。比較的安全とされる場所への資本逃避行動が円高を加速させ、日本経済再生に向けた政策の足かせとなっており、その一方で中国のように自国通貨がドルと連動している国にも影響が及んでいます。その他の新興国にとっても、こうした不確実要素と安全圏への資本逃避によりドル高や資本の流出が起こり、経済のさらなる不安定化を引き起こすという影響が及ぶ可能性があります。

現段階では不確定要素が多く存在しています。KPMGは今後もさらなる分析を行い、クライアントをサポートするための情報を提供していく予定です。全体像が明らかになるまではまだまだ時間がかかると思われますが、これから起こりうるさまざまな事態に向けて慎重な対応が求められます。

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