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IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 29 金融商品会計の動向

IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 29

IFRS - 金融商品ニューズレターでは、IASBの金融商品に関するプロジェクトの動向について最新情報を提供しています。Issue29では、資本の特徴を有する金融商品のプロジェクトについて、2016年4月に行われたIASBの審議を取り上げています。

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「二元論的な分類アプローチのみをもって、すべての有用な情報を示すことはできない。新たな表示及び純損益等の割当てに関する規定は、この短所に対処するうえで役立つ可能性があるが、適用方法についてさらに検討する必要がある。」

KPMGグローバル
IFRS金融商品リーダー
Chris Spall

 

IASBは、前回の会議で検討した以下の事項を踏まえて、資本の特徴を有する金融商品に関する審議を継続した。

  • 金融負債及び資本の部の内訳分類(sub-class)を用いて、単一の負債と資本の区別では伝えることのできない追加的情報を提供すること
  • 条件付きで代替的な決済の結果を伴う請求権

概要

IASBは4月の会議において、以下の事項を審議した。
  • 残余の金額に依存する負債についての別個の表示に関する規定の範囲に単独のデリバティブ及び組込デリバティブを含めるか否か
  • 純損益及びその他の包括利益(OCI)を普通株式以外の資本に対する請求権(非デリバティブ及びデリバティブの両方を含む)にどのように割り当てるか
IASBはまた、2015年アジェンダ・コンサルテーションに関するフィードバックを受け取った。現行のIAS第32号の規定が引き続き適用上の困難をもたらしていることは明らかだった(特に複雑な条件を伴う新たに発行された商品に、この傾向が見られる)。
 
プロジェクトの次のステップは、残余の金額の定義の改善(固定対固定の条件を含む)を検討することである。またIASBは、その価値が残余の金額に依存する商品の収益及び費用の純損益またはOCIへの表示、デリバティブ資本に対する請求権の割り当てに関するアプローチ、及び資本に対する請求権の開示規定についても、さらに検討を進める予定である。
 
マクロヘッジ会計のプロジェクトについては、4月の会議では審議されなかった。

資本の特徴を有する金融商品

これまでの経緯

IAS第32号には、負債と資本に金融商品を分類する規定が含まれている。この二元論的な分類規定を資本の特徴を有する多くの金融商品(例えば、典型的な普通株式(償還可能ではなく、裁量により配当が支払われる)以外の商品)に適用した場合、重要な実務上の論点が生じる。過去において、IFRS解釈指針委員会にはこの分野に関する複数の質問が寄せられたが、一部のケースでは結論に至らなかった。IFRS解釈指針委員会は、それらのいくつかについてはIFRSの基礎的な概念の検討を要するため、IASBに委ねた。

IASBは2008年にディスカッション・ペーパー(DP)「資本の特徴を有する金融商品」を公表した。しかし、リソースの問題により、IASBはこのトピックに関する公開草案を公表することができず、プロジェクトは中断した。その後、IASBは「財務報告に関する概念フレームワーク」※1プロジェクトの一環で一部の課題について審議した。

2014年10月、IASBは資本の特徴を有する金融商品に関するプロジェクトを再開し、プロジェクトを2つ(分類/表示及び開示)に分けることを決定した。IASBは、このプロジェクトにより、概念フレームワークの負債と資本の定義が修正される可能性があると述べた。2015年5月に負債と資本を区別する概念及び適用上の課題について審議するまで、IASBは公式にはこのプロジェクトの再検討を行わなかった。

2015年6月、IASBは、請求権の測定及び資本と負債の区別に関連する特性を特定した。IASBは、ある特性が将来キャッシュフローの見込みに影響を及ぼす可能性がある場合、その特性は関連しているとした。

2015年7月、IASBは、財務諸表利用者が財政状態計算書及び財務成績の情報を用いて行う可能性のある評価におけるこれらの特性の関連性を分析した。

2015年9月、IASBは、デリバティブ以外の金融商品の分類に注目した。IASBは、IAS第32号の規定が、財務諸表利用者の評価に必要な特性を、どの程度補足しているかについて審議した。また、3つの取り得る分類のアプローチ(α、β、γ)についても検討した。

2015年10月、IASBは、「企業自身の資本」に関するデリバティブの分類及び会計処理の課題、並びにIAS第32号がこれらの課題にどのように対処しているかについて審議した。

2016年2月、IASBは金融負債の内訳分類を用いて、財務成績及び財政状態を評価するための追加的情報の提供、及び資本の部の内訳分類を用いて関連する特性についての追加的情報の提供について審議した。また、条件付きで代替的な決済の結果を伴う請求権についても審議を行った。

※1 IASBは、2015年5月にED「財務報告に関する概念フレームワーク(ED/2015/3)」を公表した。本ニューズレターにおける概念フレームワークは、別途記載のない限り、現行の財務報告に関する概念フレームワークを参照している。

残余の金額に依存する負債の別個の表示に関する規定

 

“IASBは、別個の表示に関する規定の範囲に単独のデリバティブと組込デリバティブを含めるべきか否かについて審議した”


問題の所在
アプローチγでは以下を負債として分類する。

  • 清算前に経済的資源を移転する義務、または
  • 企業の経済的資源に依存しない金額の義務

これらの負債から、以下2つの異なる種類のリターンのうちのいずれかが生じる。

  • 約束されたリターン(例:普通社債に係る利息)
  • 残余リターン(例:公正価値で償還可能な株式の変動)

IASBは以前、金融負債として分類される残余の金額に依存する請求権から生じる収益及び費用を区別して別個に表示することは、有用であることを示した。

公正価値で償還可能な株式は、残余の金額に依存する金融負債の唯一の種類というわけではない。スタッフは、混合金融負債(hybrid financial liability)が残余の金額に依存している場合には、区分処理が必要となる組込デリバティブが含まれている可能性が高いと述べた。混合契約に組み込まれたデリバティブは、以下のいずれかの方法で処理することができる。

  • 主契約から区分し、純損益を通じて公正価値で測定するもの(FVTPL)に分類する
  • 混合商品全体をFVTPLで測定する金融負債として分類する場合には、主契約から区分しない

 

IASBの審議
スタッフは、別個の表示に関する規定はその価値が残余の金額に依存する単独のデリバティブに適用すべきだと考えた。単独のデリバティブの価値の変動は残余の金額に依存する可能性があることをスタッフは考慮した。

多くの混合契約(例:株式に連動して利息または元本が支払われる債券)に関して、組込デリバティブを区分して主契約と別個に会計処理することは、混合商品全体をFVTPLで測定することと異なる。後者については、公正価値の変動は金利及び信用リスクから生じる主契約に関する変動も含んでいる。

下表では、別個の表示に関する規定を残余の金額に依存する組込デリバティブを含む混合契約に適用する際のアプローチについて、スタッフの提案をまとめている。

アプローチ 内容 利点
アプローチA 別個の表示規定は、残余の金額に依存し、かつ区分処理される組込デリバティブにのみ適用される。すなわち、FVTPLに分類された混合商品には適用されない。 残余の金額に依存するすべての組込デリバティブに対して区分処理を要求することによるコスト及び複雑性を最小限にする。
アプローチB 残余の金額に依存する組込デリバティブはすべての状況において区分処理され、別個の表示規定はこれらの組込デリバティブに適用される。 別個の表示規定を詳細なレベルですべての残余の金額に依存する金融負債に適用することによる利益を最大限にする。

IASBは、スタッフの分析全般をおおむね支持し、両方のアプローチを次のディスカッション・ペーパーに含めるべきであることを合意した。ボードメンバーの1人は、単独のデリバティブに関する現行の会計処理に影響を与える可能性があること(特に、残余部分に加えて他の基礎となる変数がある場合には影響があること)について懸念を示した。このメンバーは、このようなデリバティブのさらなる区分をIASBが認めるか否か、また残余部分に依存する公正価値の変動をOCIに表示することが適切であるか否かについて疑問を呈した。IASBはまた、アプローチBが適用された場合には、残余の金額に依存する組込デリバティブを区分処理した後の残りの混合商品に対して依然として公正価値オプションを適用できるか否かについて、スタッフが検討しなければならないことも認識した。

 

KPMGの見解
アプローチBは、認識及び測定の規定を変更することになり、表示規定の範囲を超えると考えられる(すなわち、残余の金額に依存する組込デリバティブの区分が強制される)。これは、組込デリバティブを別個に測定することは不可能であることから実行可能性が低いと考えられる。IAS第39号及びIFRS第9号はいずれも、企業がFVTPLに指定しなければ区分処理を行わなければならない組込デリバティブを別個に測定することが不可能である場合に、混合負債全体をFVTPLに指定することを要求している。

スタッフの分析では、その価値が残余の金額に依存し、かつ負債として分類される、単独のデリバティブ及び組込デリバティブについてのみ審議している。区分表示に関する規定を残余の金額に依存するデリバティブ資産に対しても適用するか否かについては審議していない。

普通株式以外の資本に対する請求権へ割り当てる純損益及びOCIの金額

 

“IASBは、普通株式以外の資本に対する請求権(非デリバティブ及びデリバティブの両方)に関する異なる割り当てのアプローチについて審議した”

 

問題の所在
現時点では、財務諸表上、負債に分類された項目について提供される情報の方が、資本に分類された項目について提供される情報よりも多い。IASBは以前に、純損益及びOCIを親会社の普通株主を除く資本の一部またはすべての内訳分類に割り当てることや、このような割り当てを反映して資本の各内訳分類の帳簿価額を更新することは有用であると示していた。

IAS第33号「1株当たり利益」は、基本1株当たり利益の計算目的での割り当ての原則を含んでおり、希薄化効果を有する商品(デリバティブを含む)の影響を希薄化後1株当たり利益(EPS)の計算において考慮している。これらの原則は、純損益及びOCIの金額を普通株式以外の資本に対する請求権のクラスへ割り当てるための基礎を提供できる可能性がある。

 

IASBの審議
スタッフは、純損益及びOCIの非デリバティブに該当する資本に対する請求権(例:非累積優先株式、他の参加型の資本に対する請求権及び複合商品の非デリバティブ資本構成要素)への割り当てについては、現行のIAS第33号の規定に従わなければならないと考えた。

スタッフは、純損益及びOCIのデリバティブに該当する資本に対する請求権(例:先渡契約、資本性金融商品を発行する買建及び売建オプション、資本性金融商品を購入する買建オプション、複合商品のデリバティブ資本構成要素)への割り当てに関して、以下のようなアプローチを提案した。

アプローチ 内容 考察
アプローチA
金額を割り当てない(すなわち、単に希薄化後EPSを通じて影響を開示する現行の会計処理を引き継ぐ)。
他の資本クラスによる普通株式に与える影響に関する現行の規定によって提供される情報は、改善される可能性が低い。
アプローチB デリバティブの公正価値の変動に相当する金額を割り当てる。 他の資本クラスによる普通株式に与える影響に関するより多くの情報が提供され、かつその他の計算の影響を受けない。ただし、デリバティブの公正価値の変動が認識済みの残余リターンよりも大きい場合には、普通株式に対して欠損金を割り当てる結果となる。
アプローチC 相対的な公正価値ベースで金額を割り当てる(すなわち、認識済みの資本合計額を、相対的な公正価値ベースで、デリバティブと他の資本クラスとの間で割り当て、デリバティブ部分の変動相当を割り当てる)。 認識済みの資本合計額は比例配分される。ただし、デリバティブに割り当てられた金額は、普通株式に割り当てられた金額と比較する場合にのみ関連性がある。このアプローチは最もコストがかかる。

 

自己の資本に関するデリバティブに割り当てられた金額は、基本的EPSを計算する際の分子に影響を与えるが、希薄化後EPSの計算目的では振り戻される。3つのアプローチすべてにおいてデリバティブは行使されたものと仮定するため、希薄化後EPSの計算結果は同じになる。

今月の会議での判断は求められなかったが、IASBは財務諸表利用者がより多くの希薄化及び参加権に関する情報を求めていることを承知している。アプローチAは現行のEPSの計算方法を変更しないため、最も実用的なアプローチである。ただし、一部のボードメンバーは、アプローチAは追加的な開示による補足が必要であると考えた。複数のボードメンバーは、アプローチCのもとで割り当てられる金額は計算上の数値であり、その意味について疑問を呈した。他方で、アプローチBは部分的認識及び複数の測定基準の組み合わせ(mixed measurement)であり、普通株主から企業への割り当て可能な金額をもたらす可能性があることを認識した。あるボードメンバーは、割り当ての代替案として、本源的価値だけでなくオプションの公正価値が反映されるように希薄化後EPSの計算方法を変更することを提案した。スタッフはさらに割り当てのアプローチを発展させる予定である。

 

KPMGの見解
割り当てを通じて、二元論的な分類アプローチからは得ることのできない追加的な情報を財務諸表利用者に提供することは、特に企業が複雑な資本構造を有している場合に極めて有用である。

損益及びその他の包括利益計算書は企業の観点から表示されている。ただし、投資家は企業利益と企業利益に対する投資家の現在または潜在的持分との間の関連性を理解することによって便益を得る。

また、普通株式以外の資本性金融商品への投資家は、清算時の企業の純資産に関する請求権を有している。以前の財務諸表利用者からのフィードバックによると、請求権を認識する方法の1つとして、企業が普通株式のみを資本に分類し、その他のすべての商品を負債に分類する方法がある。しかし、α、β、γの分類アプローチがどのように開発されたかを考慮すると、この方法はこれらに関連する特性に基づいて商品を区別しない。割り当ては、財務諸表利用者にとってより有用な情報を提供する1つの方法となり得る。

英語コンテンツ(原文)

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