IASB、「IFRS第15号の明確化」(IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の改訂)を公表 | KPMG | JP
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IASB、「IFRS第15号の明確化」(IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の改訂)を公表

IASB、「IFRS第15号の明確化」(IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の改訂)を公表

IFRSニュースフラッシュ - IASBは2016年4月12日、「IFRS第15号の明確化」(IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の改訂)を公表しました。本改訂は、2015年7月30日に公表された公開草案「IFRS第15号の明確化」に寄せられたコメントを踏まえ、一部、公開草案に修正を加えて最終化したものです。

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  • 本改訂は、IASBが2014年5月に公表したIFRS第15号について、以下の論点に関する要求事項等を明確化するものである。
    1. 履行義務の識別
    2. 本人または代理人の検討
    3. ライセンス
  • また、移行措置として、完了した契約及び契約変更に関する実務上の便法を追加している。
  • 本改訂は、2018年1月1日以降に開始する会計年度より適用される。

改訂の背景

IASBは2014年5月に、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を公表した。IFRS第15号は米国会計基準のTopic 606「顧客との契約から生じる収益」と実質的に同じ内容となっている。IASBと米国財務会計基準審議会(FASB)は、これらの新基準の公表後、共同の移行リソースグループ(Transition Resource Group; TRG)を組成し、新基準の円滑な適用の促進を目的として適用上の課題について議論を行ってきた。TRGの議論では、新基準の適用に際して、以下の論点について潜在的に異なる見解が生じる可能性が示唆されており、IASB及びFASBは多くの論点についての審議を行った。
 
IASBは、これらのうち4項目について新基準を改訂することとしたが、FASBはこれに加え、下記の4項目についても新基準を改訂する方向である(公開草案を公表中。ただし、履行義務の識別、本人または代理人の検討、ライセンスの項目については、すでに最終基準化(会計基準更新書(ASU)第2016-08号「本人か代理人かの検討(収益の総額表示か純額表示)」、第2016-10号「履行義務の識別とライセンス」)している。
本改訂で取り上げられた項目(FASBも取り上げるが、本改訂と異なる部分がある) 本改訂では取り上げられなかった項目(FASBのみ取り上げる)
  • 履行義務の識別
  • 本人または代理人の検討
  • ライセンス
  • 移行措置における実務上の便法
  • 回収可能性
  • 売上税の表示
  • 現金以外の対価
  • 完了した契約の定義

改訂の内容

1.履行義務の識別

IFRS第15号は、顧客との契約における履行義務を識別し、履行義務の充足時に収益を認識することを求めている。IFRS第15号は履行義務を、原則として「別個の財またはサービス」ごとに識別することとしており(第22項)、約束した財またはサービスが別個であるかどうかは、2つの要件に基づいて判断される。この、2つの要件のうちの1つに、「財またはサービスを移転するという企業の約束が、契約の中の他の約束と区分して識別可能である」(第27項(b))ことがあるが、TRGの議論の中では、この要件と、この要件を満たすことを示す3つの指標(factor)(第29項)の関係が、利害関係者により多様に理解される可能性が指摘された。これに対応するため、本改訂では、第29項に、「区分して識別可能か」に関する次の原則を追記した。

  • 第27項(b)の要件を検討する目的は、約束の性質について、個々の財またはサービスを別々に移転することなのか、あるいは、財またはサービスが(材料等として)インプットとなる、結合された単一または複数の項目を移転することなのかを、契約に照らして判断することである。

また、この原則と、第29項の3つの指標をより明瞭に整合させるため、これらの指標を改訂前の「区分して識別可能である」ことを示す指標から、「区分して識別可能でない」ことを示す指標に再構成することとした。これらの改訂により、「区分して識別可能か」という第27項(b)の要件、第29項の原則及び3つの指標の関係を明確化している。
さらに、新たな設例の追加や既存の設例の一部修正によって、履行義務の識別に関する要求事項をどのように適用すべきかを明確にしている。

2.本人または代理人の検討

IFRS第15号は、企業に加えて、他の当事者が顧客への財またはサービスの提供に関与する場合、企業は、自らの約束の性質が、財またはサービス自体を提供する履行義務(すなわち、企業が本人)であるのか、それらの財またはサービスを提供するための手配をする履行義務(すなわち、企業が代理人)であるのかの判断を求めている。企業が本人であれば、対価の総額が収益として認識され、代理人であれば、対価の純額が収益として認識される。この本人か代理人かの検討に関して、a.支配の原則と支配の諸指標との関係、b.無形の財またはサービスへの支配の適用についてTRGの議論の中で懸念が明らかにされたことから、本改訂では、これらに関してIFRS第15号を明確化している。


1)支配の原則と支配の諸指標との関係
IFRS第15号は、企業が、財またはサービスの「支配」を(顧客への移転前に)獲得するかという支配の原則に基づいて、本人か代理人かの判定を行うこととし、その判断のための諸指標(第B37項)を置いている。しかし、これらの諸指標は、支配とは異なる「リスクと経済価値」に基づいていた、IFRS第15号の導入前の会計基準から引き継がれたものであったため、「支配が常に、企業が本人か代理人かの判定の基礎であるのかどうか」、また、「支配の原則と支配の諸指標がどのように共同して機能するのか」といった質問が利害関係者から挙げられた。これを踏まえ、支配の原則と支配の諸指標との関係を明確にするため、以下の改訂を行っている。

  • 本人か代理人かの検討は、あくまで支配の原則に基づき行われるものであり、支配の諸指標はこれを支援するものであることの明示
  • 支配の諸指標の内容を、企業が「特定された財またはサービスを移転前に支配していないという指標」から「特定された財またはサービスを移転前に支配しているかという指標」への再構成
  • 諸指標は網羅的なリストではなく、また、個々の状況によって支配の判定への関連性が高い場合も低い場合もある
  • 各指標がどのように支配の評価を支援するかに関するガイダンスの追加
  • 支配の原則の検討に、有用でないと考えられる対価の形式(手数料)に関する指標及び関連性が低いと考えられる信用リスクの指標の削除

なお、本改訂の中では、本人か代理人かのガイダンス全体を通じて、「履行義務」ではなく、「財またはサービス」について言及することを決定した。これは、企業が代理人である場合に、「履行義務」という用語を使用すると混乱を招く可能性があるためである。代理人の「履行義務」の対象は、財またはサービスが他の当事者によって提供されるように手配することであり、顧客に提供される「財またはサービス」は代理人の「履行義務」の対象ではない。


2)無形の財またはサービスへの支配の適用

本人か代理人かの検討において、特に無形の財またはサービス(例えば、航空チケットや食事券)について支配の原則を適用することが困難であるとことが、利害関係者より指摘された。そのため、本改訂において、無形の財またはサービスへの支配の適用に関して適用指針に新たなガイダンスを追加し(第B34項、第B34A項)、次のような明確化をしている。

  • 支配の原則を適用する前に、まず、顧客に移転されることとなる特定された財またはサービスを識別しなければならない - ここで、識別される特定の財またはサービスは、他の当事者が提供すべき財またはサービスに対する権利(例えば将来の航空サービスに対する権利)となる場合や財またはサービスの束である場合がある
  • 顧客との契約に、複数の財またはサービスが含まれる場合、企業は、当該契約において、ある財またはサービスについては本人であるが、他の財またはサービスについては代理人となる可能性がある

また、財ではなくサービスが顧客に提供される場合、サービスは提供される瞬間においてのみ存在する。そのため、TRGの議論の中では、企業がサービスの移転前に当該サービスを支配できるかについて懸念が示された。本改訂は、こうした懸念への対応として、サービスに対する支配の評価に関して適用指針に新たなガイダンスを追加し(第B35A項)、財またはサービスの顧客への提供に他の当事者が関与する場合に、企業が支配を獲得して本人になるケースとして、3つの分類を示している。このうち、2つ目と3つ目の分類は、サービスにも関係するものである。

  • 他の当事者から、ある財またはある資産の支配を獲得し、その後に顧客に移転する。
  • 他の当事者が顧客に履行するサービスに対する権利の支配を、企業が獲得する場合。それによって、企業が他の当事者に、企業に代わって顧客にサービスを提供するよう指示する権利を得る。
  • 顧客に特定の財またはサービスを提供する際に、他の当事者から提供される財またはサービスの支配を獲得した上で、他の財またはサービスと結合させる。例えば、工事契約において、下請けから提供される財またはサービスを他の財またはサービスと統合させる重要なサービスを提供する場合などが考えられる。

また、こうした考え方の補足説明のため、IFRS第15号に2つの設例を追加するとともに、既存の設例の一部を改訂している。

3.ライセンス

1)知的財産のライセンスの性質の判断
IFRS第15号は、知的財産のライセンスを供与するという企業の約束の性質が、ライセンス期間にわたって知的財産にアクセスする権利を顧客に提供するものである(収益を一定期間にわたり認識する)か、ライセンスの供与時点で知的財産の使用権を提供するものである(収益を一時点で認識する)かの判定を求めている。企業の約束の性質は、第B58項に定められたすべての要件に該当する場合に、知的財産にアクセスする権利を顧客に提供するものとなる。

第B58項の要件には、顧客が権利を有する知的財産に対し、著しい影響を与える活動を企業が行うことが含まれる。しかし、この「著しい影響」を判断する際に、知的財産の形式及び機能性に与える影響のみが考慮されるのか、知的財産の価値に対する影響も含むのかが明確でなかった。本改訂は、適用指針に第B59A項を追加することで、次のいずれかの場合に、著しい影響を与えることになる点を明確にしている。

  • 企業の活動が知的財産の形式または機能性を著しく変化させることが予想される
  • 顧客が権利を有する知的財産から便益を獲得する能力が、実質的に企業の活動から得られるか、または、依存している(例えば、ブランド(知的財産)からの便益は、ブランドの価値の強化または維持を目的とする企業の継続的活動から得られるか、それに依存していることが多い)

また、本改訂は、知的財産が重大な独立した機能性を有する場合、知的財産の便益の相当部分はその機能性から得られているため、企業の活動が機能性を変えない限り、著しい影響を受けないであろうと言及している。


2)売上高・使用量ベースのロイヤルティに関する例外規定の適用範囲
IFRS第15号は、対価が変動する契約について、認識する収益累計額の重大な戻入れが事後的に生じない可能性が非常に高いと予想される範囲でのみ、変動対価の金額の見積りを取引価格に含めること(変動対価の見積りの制限)を求めている。知的財産のライセンスの提供によって生じる、売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティも、対価が変動する契約の一種であるが、これに係る収益の認識に対しては、さらに例外規定が設けられている。このロイヤルティの例外規定の下では、以下のいずれか遅い時点で収益を認識することとなる。

  • (ロイヤルティ計算の基礎となる)売上または使用が(実際に)発生する
  • ロイヤルティの一部または全部が配分されている履行義務が充足(または部分的に充足)されている

この点、本改訂が公表されるまで、ロイヤルティの一部がライセンス以外の財またはサービスに関連する場合等でも、本例外規定を適用すべきかが明確でなかった。また、ロイヤルティが、ライセンスとライセンス以外の財またはサービスに関連する場合に、本例外規定が、当該ロイヤルティ全体に対して適用されるのか、知的財産のライセンスに関連する部分とその他の部分に区分して適用されるのかが明確ではなかった。そのため、本改訂は、ロイヤルティが関連する支配的な項目が知的財産のライセンスである場合に、その全体に対して例外規定を適用すること、単一のロイヤルティを、ロイヤルティの例外規定の適用対象部分と適用対象外部分に分割して会計処理できないことを明確にしている。

移行措置

IASBは、移行措置として、完了した契約及び契約変更に関する実務上の便法を追加している。

 

1)契約変更
「IAS第8号に従って表示する過去の各報告期間にIFRS第15号を遡及適用する方法」(以下、「遡及方式」)と「IFRS第15号の適用による累積的影響を適用開始日に認識する方法」(以下、「累積的影響方式」)のいずれを採用する企業も、表示する最も古い比較期間の期首より前に生じたすべての契約変更による影響を、合計して反映できる。また、累積的影響方式を採用する場合は、適用開始日より前に生じたすべての契約変更による影響を、合計して反映することもできる。

 

2)完了した契約

  • 遡及方式を採用する企業は、表示する最も古い比較期間の期首よりも前に完了した契約については、IFRS第15号を遡及適用しないことができる。
  • 累積的影響方式を採用する場合、すべての契約に対してIFRS第15号を遡及適用することも、適用開始時点で完了していない契約に対してのみ遡及適用し、適用開始時点で完了している契約については遡及適用しないこともできる。

適用日

本改訂は、2018年1月1日以降に開始する会計年度より適用される。なお、早期適用も認められる。

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