未知の領域へ:LNGの需給を巡る業界変貌 | KPMG | JP

未知の領域へ:LNGの需給を巡る業界変貌

未知の領域へ:LNGの需給を巡る業界変貌

世界のLNG市場は変貌を遂げつつあります。米国は2016年までに、メキシコ湾岸からLNGの輸出を開始すると予想されていますが、これはわずか10年前でさえも予想できなかった展開です。パナマ、リトアニアから、エジプト、ベトナムまで、新たなLNG輸入国が出現する一方、豪州は間もなくカタールに匹敵する規模のLNG輸出国になります。LNGの輸入国が輸出国に転じる現象や、またその逆の現象も起こりつつあります。

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  • 売り手や買い手の数やタイプの増加により、LNG市場はグローバル化しています
  • 供給増とエネルギー価格の低下を受け、価格モデルは変化しつつあります。価格の高騰は需要にダメージを与え、価格の低下は供給にダメージを与えます。価格は主要市場間で収斂するようになりますが、新たな価格形成の場が出現する可能性もあります。
  • 需要にはさまざまな不確定要素が存在します。価格に対する参加者の期待や新規の供給計画は、需要予測にかかっています。

このレポートは、LNG市場に関する一連のシリーズの1つであり、市場がどのように、またなぜ変化しているのか、そして市場参加者がそれにどう反応すべきかを考察しています。

LNG需要を巡る不確定要素

長期 中期 短期
  • アジアにおける都市化の進行
  • 輸送分野でのLNG利用
  • 再生可能エネルギー
  • 気候政策
  • 需要家のアライアンス(JERA)
  • 日本のエネルギー分野での規制緩和
  • 中国の経済成長
  • ロシアの新規パイプライン
  • 新たなガス輸入国
  • 日本の原子力発電所再稼働
  • ウクライナ危機
  • LNG貯蔵
  • 商社の垂直統合

LNG需要の見通し

LNGの需要は、パイプライン輸送のガス、石炭、石油、再生可能エネルギーおよび原子力という競合エネルギー源のコスト、入手可能性ならびに受容性に密接に関係している(図1参照)。そのためLNGの需要予測は、エネルギー需要全体の予測より、さらに難しくなっている※1


※1 BP Statistical Review of World Energy 2015; Energy Information Administration; 経済産業省

図1:ガス、LNG、石炭および石油の価格(2015年年初来)

LNG市場戦略

LNG市場の参加者である生産者、トレーダーおよび需要家は、戦略的意思決定にあたり以下の点を考慮する必要がある。


1. LNG生産者
新規プロジェクトの開発・稼働に最適なタイミングはいつか。
ターゲットとなる最適な市場/買い手はどこか。
最適なパートナーは誰か。
供給ポートフォリオを成長予測といかに整合させるか。


2. LNGトレーダー

市場のシフトから自身を守るため、または利益を得るために、どのように契約や価格を交渉すべきか。

 

3. LNG需要家
LNGは他のエネルギー源に対してどれほど競争力を有するか。
各種の不確定要素に鑑み、最適なポートフォリオポジションは何か。

短期・中期の需要

「日本の総需要である年8900万トンのうち、JERAは約4000万トンを購入するようになるだろう。」


KPMGジャパン
パートナー
Oil & Gasリーダー
宮本 常雄


世界のLNG需要は、2014年の年2億3800万トン、2015年予想の2億5000万トン※2から、2020年には3億6500万トン~4億2000万トン、2025年には最大5億トンに増えると予想されている※3

近年の膨大なLNGの供給増は、世界の需要増の70 ~ 80%を占めると予想されていたアジアの需要拡大を前提にしていたもので、この需要は、高い価格で維持できると考えられていた。しかし、こうした楽観的な短期、中期の需要予測に対して、いささかの疑問を生じさせる新たな要因が出現している。2020年に予想される世界の需要のうち、年3億6500万トンの需要は底堅いが、5500万トンは価格次第で市場間を移動する「浮動」需要である。


アジアにおけるLNG価格感度の向上:
アジアのLNG需要は、燃料間の競争の影響により、これまでの経験が示す以上に価格に敏感になっている。LNGは、中国が中央アジアや将来的にロシアからパイプラインで輸入すると予想されるガスと競争しなければならないことに加え、多くのアジア市場では石炭との競争もある。中東とインド亜大陸の大部分では、量的には限定的であるが、国内産ガスが市場価格よりも安価で入手可能である。一方、2015年には新たなLNG市場が6ヵ所出現した。このうち3ヵ所はアジアの国(フィリピン、ヨルダン、パキスタン)で、他はエジプト、ポーランド、およびウルグアイである。


日本の規制緩和:
福島原子力発電所の事故を起因とする価格ショックに伴う日本の電力セクターにおける規制緩和によって、今後燃料コストを消費者に転嫁できなくなる電力会社は、より燃料価格に敏感になっている。短期的には、現在進められている原子力発電所の再稼働によってLNG需要は低下しつつあり、再稼働の進展に伴い、2015年のLNG輸入量は年8800万トンから8500万トンに減少している※4。これは、日本の需要が2020年までに年8000万トンに減少する可能性があるとする、LNG-WorldwideのディレクターPatricia Robertsの予想とも一致する。一方、日本の経済産業省は、効率化の進展および石炭や再生可能エネルギーの利用増により、LNGの輸入は2035年までに6200万トンに低下すると予想している※5


「需要家がアライアンスを組むことで、各社のバッファーを共有するとともに過剰な購入契約を見直し、余分な調達を削減することができる。各社は、調達量が過剰であったと感じ始めている。」

KPMGカナダ
LNGグローバルリーダー兼LNG、
Power & Utilitiesナショナルセクター
リーダー
Mary Hemmingsen


需要家のアライアンス:
東京電力と中部電力の合弁会社であるJERAは、日本以外のどの国よりも大量のLNGを購入する企業となる。アライアンスにより、買い手は需要を集約でき、それにより余分な購入をなくし、価格交渉力が高まる。


「中国政府は、2020年までにエネルギー需要に占めるガスの割合を4%から10%へ拡大したいと考えている。政府は、補助金なしでLNGを輸入できるようにしようとしている。しかし、ラストワンマイルとなるパイプラインがないというガスインフラの未整備がボトルネックとなっている。中国政府は、もはやリターンを検討せずにやみくもにインフラ建設を行うようなことはないが、資金調達源は増えている。」

KPMG中国
Oil & Gas責任者、パートナー
Raymond Ng


中国は、経済成長が減速し、エネルギー集約度も徐々に低下している:
その一方で、LNGはユーラシア・パイプラインガスや石炭との競争を強いられている。中国の需要は、依然として大きな伸びが見込まれるが、それは、同国のガスの総消費量に影響を及ぼす無数のマクロおよびミクロ経済的要因や、総ガス消費量のうちどの程度がパイプライン経由の輸入ガスないし、国産シェールガスで賄われるかに依存しており、最も大きな不確定要素の1つである。


シェールガスの出現によるLNG輸入市場としての北米の消滅:
言うまでもなく、これは過去10年間に起きた最も劇的な状況の変化である。


インドはLNG需要にとって明るい材料となっている:
力強い経済成長と、全ての国民に電気を普及させるという決意を持つ現政権がその背景となっている。新たな価格政策が導入されたが、それでも、ガスがより多く消費されるようになるには、石炭に対する競争力を確保しなければならない。また、政府は再生可能エネルギーについても野心的な計画を立てている。インドは再ガス化能力を増強中であり、適正価格が形成されることが前提となるものの、将来的には余剰LNGを吸収し得る存在となるだろう。


欧州のガス需要:
欧州の生産量の減少は、輸入の増加に繋がるはずだが、経済成長の弱さ、再生可能エネルギーの増加および天然ガスと比較した石炭 - および炭素排出許可 - のコストの低さが、それを妨げている。LNGの安さに直面して「ロシアがマーケットシェアを譲る可能性は非常に低い」と、Patricia Robertsは考えている。ロシアの輸出拡大は欧州のガス総需要を増やすだろうが、LNGが占める割合は低下するだろう。


※2 P. Roberts1 (2014); BG Group  2015年
※3 BG Group 2013年
※4 一般財団法人 日本エネルギー経済研究(IEEJ)2014年(PDF:524kb)
※5 2015年

 

LNGの主要市場:2014年実績と2025年見通し※6の比較

欧州* 2014 2025見通し
  • 成熟したガス市場だが、域内産ガスの供給量減少に伴い、供給源の多様化に努めている。
  • LNGは調整要素。ロシアのガス戦略、エネルギー効率、代替エネルギー源との価格対比によって決まる。
38百万トン/年 60-81百万トン/年

 

新興市場・その他アジア(日本、韓国、台湾および中国を除く) 2014 2025見通し
  • 石炭との競争
  • ラテンアメリカ、アフリカ、中東のニッチ市場の成長
19百万トン/年 68百万トン/年

 

中国 2014 2025見通し
  • 高成長。ただしパイプラインガスやシェールガスとの競争、価格設定、経済成長、経済構造および環境
    政策によって決まる。
  • 現状のLNG購入確保量は過剰か。
20百万トン/年 46-74百万トン/年

 

日本・韓国・台湾 2014 2025見通し
日本 89百万トン/年 80-90百万トン/年
韓国 38百万トン/年 44百万トン/年
台湾 13百万トン/年 17百万トン/年
  • 成熟市場、低成長
  • 日本の原子力発電所再稼働のペースがLNG需要に影響

 

* 欧州は、EU、EFTA、東欧の非EU加盟国(ウクライナ、ベラルーシ、モルドバ、セルビア、モンテネグロ、コソボ、アルバニア、ボスニア、マケドニア)を含む。
注:予想数値は概数で表示。

 

※6 Forecasts from Roberts (2014), Stem (2014), Rogers (2015).

長期的な需要

「社会が裕福になるにつれ、人々はよりきれいな空気を求めるようになるが、大気汚染を抑制しない限り、アジアの巨大都市は居住不可能になる恐れがある。公共交通機関は、LNGや圧縮天然ガス(CNG)または一部LNG発電による電力を燃料とするようになるだろう。」

KPMGカナダ
LNGグローバルリーダー兼LNG、
Power & Utilitiesナショナルセクター
リーダー
Mary Hemmingsen


「長期的なトレンドは、よりクリーンなエネルギー源を志向している。」

KPMG中国
Oil & Gas責任者、パートナー
Raymond Ng


LNG需要の見通しは、長期的には当然不確実性が増すものの、より有望でもある。主要な5つの要因が、2030年までおよびそれ以降のLNG需要を左右すると考えられる。


1.アジアの経済成長と環境問題の圧力
中国および最近のインドにおける野放図な石炭利用の影響が、ますます明らかになってきている。効率化や補助金改革による多大な努力によって、ガス利用を促進することができるはずだが、エネルギー総需要の伸びを抑えることにも繋がる。より長期的には、気候変動に対する責任が果たす役割も一層大きくなり、エネルギーセクター全体が予測不可能な変革を迎えるだろう。

中国のLNG需要は、ガス消費の伸びと、パイプラインガスの調達の可否次第で、2025年までに年間4560万トンから7350万トンになり得る。この量は、韓国もしくは日本と同程度の規模に相当する※7。インドの輸入量は年間3300万トンと現在の韓国の輸入量と同程度になり、より小規模なアジア諸国のLNG購入量は合計で年間3500万トンに達する見込みである。


2.供給の多様化
米国、カナダおよび東アフリカの参入により、LNGはより多くの供給源から入手可能になりつつある。これによってエネルギー源の安定確保が可能となり、ホルムズ海峡や南シナ海経由の航路への依存度を低減させ、需要家の安心感を高めている。だが、LNGは新規のパイプラインガスと競争しなければならない。例えば、ロシア、中東およびカスピ海地域からの欧州向けパイプラインガスや、ロシア、中央アジアおよびミャンマーからの中国向けパイプラインガス等である。中国、アルゼンチン、豪州等の国々では、国内産の非在来型ガスが出現している。それらは、状況次第で国内需要を賄いLNGの輸入にとって代わる、ないしは、LNG輸出に向けられるかもしれない。

天然ガス全体が、太陽光や風力発電の価格低下や、電力貯蔵をもたらすような再生可能エネルギー分野の大きな技術面および製造面での進歩との競争に対処しなければならない。一部の市場では、原子力発電や二酸化炭素回収・貯留付きの石炭火力発電もコスト競争力があり、環境面からも受入れ可能な選択肢となる可能性がある。


3.LNGのコモディティ化
供給者および需要家の多様性の増大、浮体式再ガス化設備の設置数の増加、および取引可能なLNGの流動性の増加により、LNGは石油のようなコモディティ商品と化す可能性がある。原油価格の下落は、石炭からガスへの切替えを促し得るが、輸送分野における石油からガスへの切替え意欲の減退を招く。大手の戦略的プレーヤーは、このコモディティ化にもかかわらず、少なくともそれが適した一部の市場では、LNGを高級燃料として維持しようとするだろう。

 

「Shell、BPおよびGazpromは、新たな市場を開拓しようとしているが、それにはかなりの期間(2 ~ 3年)を要する。」

LNG-Worldwide
ディレクター
Patricia Roberts博士

 

4.新たな市場
地理的なニッチ市場として、中東やラテンアメリカ、そして、小型化が進み柔軟性が向上した浮体式貯蔵再ガス化設備のおかげでアクセスしやすくなった東南アジアやカリブ海の離島がる。南アフリカ、ケニヤ、ガーナ、ベナン等のサハラ砂漠以南のアフリカ市場も可能性として考えられる。ただしこれらの新しい市場は信用力が相対的に低い場合もあり、再ガス化設備の建設遅延や中止もあり得る状況にある。

セクター的なニッチとしては、輸送業界があり、船舶のバンカー燃料としてのLNGに関心が高まっている。石油価格の動向や拡大する排出規制海域(高硫黄燃料油の使用が禁止されている)の遵守義務次第では、輸送燃料としてのLNGには、石油より低コストとなり得るという利点がある。LNGを燃料とするトラック輸送も注目を集めつつある。船舶燃料として、2025年までに年約2000万トン※8、2035年までには5000万トン超のLNGが消費される可能性がある。Celigazのより強気の予想シナリオでは、年4億2000万トン前後※9の従来のLNG市場に加えて、輸送用LNGの需要が年1億7900万トン※10に達すると見込まれる。


5.地政学的な混乱やその他の不確定要素
戦争、破壊行為、環境災害および政治的動乱は、予測可不能な間隔で出現し、LNGの輸出を制約し、輸送を妨害し、輸入国の経済成長を損ない、エネルギーインフラストラクチャーの重要な部分を使用不能にしてしまう可能性がある。同時に、政治的変革や飛躍的な技術進歩により、新たな地域でのガス探査やLNG開発が可能になるかもしれない。


※7 H. Rogers(2015)
※8 Rogers(2015)
※9 Poten
※10 Cedigaz(October 2014)

図2:2035年の輸送用LNGの予想需要

LNG事業を成功に導く10の戦略

LNG需要の多様性と不確実性の増大により、効果的な戦略を策定することの重要性が、売り手および買い手の双方にとって高まっている。

売り手の戦略

LNGの売り手のための6つの戦略

  • LNG需要の全体論としての理解
  • 市場のセグメント分け
  • 需要の創出
  • 買い手の事業戦略の理解
  • 選択肢と競争力の維持
  • 輸出戦略としてのLNGとパイプラインガスの最適化


1. LNG需要の全体論としての理解
大きいが成熟した市場、潜在的成長力のある大市場、および新興のニッチ市場といった、各最終消費地の魅力度を比較する。例えば、ロシアがパイプラインの重点を欧州から中国に移しつつあるように、地球的規模で見て、ガス輸出国が、ある市場から他の市場にシフトするという戦略的な選択が、LNG供給の機会を切り開く場合がある。


2. 価格感応度と価格形成基準による市場のセグメント分け
ガス同士が競争する市場もあれば、石油価格に連動したパイプラインガスとの競争が存在する市場や、LNGが大口需要を巡って石炭と競争している市場もある。純粋な経済性を歪める政策が、需要と価格をさらに複雑化している。需要を賢く理解するには、適切な価格形成基準と政策メカニズムを基準に判断しなければならない。


3. 需要の創出
ニッチ市場や新規市場へのアクセスによって、また、再ガス化ターミナルや接続基地への投資またはその実現促進を通じて新たな輸入地点を造ることで、需要を創り出す。既存の石炭火力発電所をガス火力発電に切り替えたり、あるいは船舶燃料としてのLNG利用等に対する需要を創出したりするために、合弁事業を検討することもできる。シンガポールのLNGバンカリング拠点化構想は、中国やインドの海上および陸上輸送に関連していると言える。


4. 買い手の事業戦略の理解
固定顧客の確保を目指す伝統的な大型LNGプロジェクト、ヘンリーハブ価格に基づく米国のトーリングプロジェクト、小規模なフローティングLNGプロジェクト、および多くの調達源と仕向先を有するポートフォリオプレーヤ/トレーダーで、各々異なるマーケティング戦略や事業戦略がある中、それぞれに目線を合わせてみる。これらのビジネスモデルごとに価格設定基準や契約期間、物理的なインフラストラクチャー(タンカー、再ガス化ターミナル等)へのアクセスの要否も異なっている。


5. 選択肢と競争力の維持
LNGは景気循環的なビジネスである。LNG市場は再び引締めがあり、価格は上昇し、素早く開発し取引できる多様性のあるポートフォリオを有する企業に利益をもたらすだろう。供給側は、他のLNG供給源や他のエネルギー源に対して競争力がなければならない。まだ建設段階に至っていないプロジェクトに関しては、液化コストの削減に努める必要がある。景気後退期において推進可能なプロジェクトは、最も条件に恵まれたプロジェクト、すなわち大規模で、市場に近いか地理的に有利なプロジェクトのみである。KPMGが過去に発行した「Is Canada still considered an LNG supplier of choice?」(日本語翻訳版未発行)や「Unlocking the supply chain for LNG project success(ベールに包まれたサプライチェーンの全貌を解き明かす)」にもある通り、プロジェクトの遂行にあたりコスト管理は不可欠である。


6. 輸出戦略としてのLNGとパイプラインガスの最適化
輸出に関してLNGとパイプラインガスの2つの方法を選択可能な地中海東岸諸国やロシア、アルジェリア等においては、両者の最適化戦略を決定すべきである。このためには、ネットバック価格と買い手の分散という戦略的な目標とのバランスを取ることや、プレミアム市場へのアクセスを維持しながら同時に新規市場を開拓することが必要になる。

買い手の戦略

LNGの買い手のための4つの戦略

  • 交渉上の立場の理解
  • 契約ポートフォリオのバランス化
  • ガス利用に関する規制と政策提言への関与
  • 需要家のアライアンスの形成


1. 交渉上の立場の理解

現在の市場は買い手優位である。長期の買い手は、ポートフォリオと供給源の分散(法域、商業モデル、契約条件およびバリューチェーンに沿った投資等)や、川下の顧客に対する価格とLNG購入価格の設定基準の整合性、および柔軟性という諸目標のバランスをとる必要がある。


2. 契約ポートフォリオのバランス化
短期の契約は、不確実な需要に対する過剰な購入量確保のリスクを低減する。LNG市場の柔軟性が増したことにより、再出荷は選択肢の1つとなり得るが、転売者は長期契約価格とスポット価格のミスマッチのリスクに晒される。供給者や契約期間、価格設定基準が異なる複数の契約ポートフォリオを保有することは、大手商社が複数の事業ポートフォリオを有することにより需要リスクを管理できるのと同じように、有効である。


3. ガス利用に関する規制および政策提言への関与
LNG需要は、LNG輸入基地の試運転、電源構成および供給者分散に関する目標値、大気汚染規制、炭素価格制度、温室効果ガス排出基準およびクリーン輸送政策等の規制や政府の政策に強く影響される。

規制設計を進め、操業の確実性を確保し、エネルギー市場におけるガスの役割を確保するために、主要なLNG供給国と輸入国の間で政府間交渉が必要となる場合がある。


4. 需要家のアライアンスの形成

需要家がアライアンスを形成することは、余剰需要の重複を減らし、交渉力を強化することに繋がる。JERAは、中部電力とインドガス公社(GAIL)や、東京ガスと韓国ガス公社(KOGAS)※11が検討しているような将来的な需要家のアライアンスの方向性を示しているかもしれない。価格形成に与える影響に関しては、今後KPMG Global Energy Instituteが発行するレポートの中で取り上げる予定である。

需要家のアライアンスを考えるにあたり、多くの買い手がLNG液化プラントやその他LNGバリューチェーン内で抱えている少数株主持分の問題をさらに検討する必要がある。例えば、アライアンスを組む全ての買い手が、そうした株主間契約やこれに付随するLNG購入義務に協調するだろうか。アライアンスを成功させるためには多くの企業が保有するLNG液化プラントの少数株主持分の売却を検討する必要があると考えられるが、彼らはこれに協調するだろうか。

需要家のアライアンスは、競争法上や独占禁止法上の懸念を引き起こす可能性もあり、専門的な法務アドバイスが必要になる。また、需要家のアライアンスに対し、LNGの売り手がどのような反応を示すかについても考慮する必要がある。

また、北東アジアと中東の買い手による連携は、需要の季節的変動を補完し得るものと言える。


※11 https://eneken.ieej.or.jp/data/5971.pdf; http://www.ft.com/intl/cms/s/0/74bd4438-4e0e-11e4-bfda-00144feab7de.html#axzz3nRkKOAuG、2015年

結論

LNG市場におけるグローバル化の進展、業界変貌、および多様性の増大は、全ての市場参加者に課題をつきつけている。従来からの大口の買い手における需要の不確実性が高まるにつれて、LNG生産者やトレーダーは競争力をより高め新興市場に目を向けることを余儀なくされる。一方買い手は、新たな戦略を展開しつつ、現在の強い立場を最大限に活かすべきである。LNGバリューチェーンの勝者になるためには、反循環的に行動し、環境変化に能動的に対応することで市場を自ら創造・最大化し、LNG需要を推し進める長期的なトレンドを見極める一方、新しい機会を確実に掴めるような柔軟性を保つことが重要である。

 

主要参考資料:
KPMG Global Energy Institute の出版物 - Unlocking the supply chain for LNG project success(2015)(LNGプロジェクト:ベールに包まれたサプライチェーンの全貌を解き明かす(日本語版)); Managing tax in the LNG and FLNG Industry: Lessons from the front lines(2015)(LNG・FLNG業界におけるタックスマネージメント:現場からの教訓(日本語版)); Floating LNG: Revolution and evolution for the global industry?(2014)(フローティングLNG:世界のLNG業界にとっての革命と進化になりうるか?(日本語版)); Major LNG projects: Navigating the new terrain(2014); Is Canada still considered an LNG supplier of choice?(2015)

Jonathan Stern, Challenges to JCC Pricing in Asian LNG Markets - Oxford Institute for Energy Studies, 2014.

Howard Rogers, The Impact of Lower Gas and Oil Prices on Global Gas and LNG Markets -Oxford Institute for Energy Studies, 2015.

Patricia Roberts, Current outlook for Global LNG to 2020 and European LNG prospects - Clingendaal Energy, 2015.

執筆者

KPMGカナダ
LNG, Power & Utilities ナショナルセクターリーダー
パートナー Mary Hemmingsen, CA

KPMGジャパン
Oil & Gas リーダー
パートナー 宮本 常雄 他

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