IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 28 | KPMG | JP

IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 28 金融商品会計の動向

IFRS - Financial Instruments Newsletter - Issue 28

IFRS - 金融商品ニューズレターでは、IASBの金融商品に関するプロジェクトの動向について最新情報を提供しています。Issue28では、資本の特徴を有する金融商品のプロジェクトについて、2016年2月に行われたIASBの審議を取り上げています。

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「2月のボード会議において、IASBは、二元論的な分類アプローチの短所に対処する方法として、表示のオプションをさらに検討する必要があることを強調した。」

KPMGグローバル
IFRS金融商品リーダー
Chris Spall

 

IASBは、前回の会議で「企業自身の資本」に関するデリバティブの分類の会計上の課題を検討したことを踏まえて、資本の特徴を有する金融商品に関する審議を継続した。

概要

金融市場がより成熟してゆく中で、金融商品の数や複雑性が増してきている。単一の負債と資本の区別を、すべての請求権の類似点及び相違点に適用することはできない。このため、IASBはプロジェクトの目的に、負債と資本の区別の改善だけでなく、表示及び開示の改善可能性を検討することも含めることを決定した。

IASBは2月の会議において、以下の事項を審議した。

  • 金融負債の内訳分類(sub class)を用いて、財務成績及び財政状態の評価に有用な追加的情報を提供すること
  • 資本の部の内訳分類を用いて、関連する特性についての追加的情報を提供すること
  • 条件付きで代替的な決済の結果を伴う請求権

プロジェクトの次のステップは、アプローチ案をさらに発展させ、IASBが望むアプローチについての予備的見解を最終的に形成できるようにすることである。これは、「IAS第32号「金融商品:表示」に関する財務報告上の認識されている課題を調査し、財務報告の改善または識別されている不備の是正に向けて取りうる方法を評価する」という本リサーチ・プロジェクトの目的と整合している。

マクロヘッジ会計のプロジェクトについては、2月の会議では審議されなかった。

資本の特徴を有する金融商品

これまでの経緯

IAS第32号には、負債と資本に金融商品を分類する規定が含まれている。この二元論的な分類規定を資本の特徴を有する多くの金融商品(ここでは、例えば、典型的な普通株式(償還可能ではなく、裁量により配当が支払われる)以外の商品)に適用した場合、重要な実務上の論点が生じる。過去において、IFRS解釈指針委員会にはこの分野に関する複数の質問が寄せられたが、一部のケースでは結論に至らなかった。IFRS解釈指針委員会は、それらのいくつかについてはIFRSの基礎的な概念の検討を要するため、IASBに委ねた。

IASBは2008年にディスカッション・ペーパー(DP)「資本の特徴を有する金融商品」を公表した。しかし、リソースの問題により、IASBはこのトピックに関する公開草案を公表することができず、プロジェクトは中断した。その後、IASBは「財務報告に関する概念フレームワーク」※1プロジェクトの一環で一部の課題について審議した。

2014年10月、IASBは資本の特徴を有する金融商品に関するプロジェクトを再開し、プロジェクトを2つ(分類、並びに表示及び開示)に分けることを決定した。IASBは、このプロジェクトにより、概念フレームワークの負債と資本の定義が修正される可能性があると述べた。2015年5月に負債と資本を区別する概念上及び適用上の課題について審議するまで、IASBは公式にはこのプロジェクトの再検討を行わなかった。

2015年6月、IASBは、請求権の測定及び資本と負債の区別に関連する特性を特定した。IASBは、ある特性が将来キャッシュフローの見込みに影響を及ぼす可能性がある場合、その特性は関連しているとした。

2015年7月、IASBは、財務諸表利用者が財政状態計算書及び財務成績における情報を用いて行う可能性のある評価における、これらの特性の関連性を分析した。
2015年9月、IASBは、デリバティブ以外の金融商品の分類に注目した。IASBは、IAS第32号の規定が、財務諸表利用者の評価に必要な特性をどの程度補足しているかについて審議した。また、3つの取りうる分類のアプローチ(α、β、γ)についても検討した。

2015年10月、IASBは、「企業自身の資本」に関するデリバティブの分類及び会計処理の課題、並びにIAS第32号がこれらの課題にどのように対処しているかについて審議した。

 

※1 IASBは、2015年5月にED「財務報告に関する概念フレームワーク(ED/2015/3)」を公表した。本ニューズレターにおける概念フレームワークは、別途記載のない限り、現行の財務報告に関する概念フレームワークを参照している。

負債の内訳分類


“負債の内訳分類は、財務成績及び財政状態を評価するうえで有用な追加的情報を提供することができる”

 

問題の所在
アプローチγでは以下を負債として分類する。

  • 清算前に経済的資源を移転する義務、または
  • 企業の経済的資源に依存しない金額の義務

負債と資本の両方の特性を有する特定の商品(例:清算前の特定の時期または要求に応じて公正価値で償還可能な証券)は金融負債として分類することになる。ただし、これらの商品の帳簿価額の変動は残余リターンに基づく(すなわち、企業の経済的資源の変動及びリターンが約束されている他の請求権の変動によって決まる)。したがって、スタッフは、これらの帳簿価額の変動をその他の収益及び費用とは別個に表示することは有用であると考えた。


IASBの審議
スタッフは、残余リターンに基づく収益及び費用をその他の包括利益に別個に表示することを提案した。これによって、企業の業績に連動して償還に関連される商品の直観に反する結果(counterintuitive results)を阻止することができ、また、純損益を通じて公正価値で測定するものとして指定された金融負債の自己の信用リスクによる公正価値変動をその他の包括利益に表示するというIFRS第9号「金融商品」と類似する会計処理を達成することができる。さらに、スタッフは、この種類の収益及び費用の性質が将来的に変わることはないため、その他の包括利益から純損益への分類変更をその後の期間に行うことは適確ではないと考えた。

下表は、アプローチγのもとで負債の分類をもたらす特性に基づいて追加的な内訳分類を表示することに関するスタッフの見解をまとめている。

  清算前の経済的資源の移転に基づく分類 企業の経済的資源に依存しない金額に基づく分類
既存のIFRSの
ガイダンス
IAS第1号「金融商品の表示」には、負債の内訳分類を流動・非流動の区分及び流動性の順序に基づいて決定するという表示規定が含まれている。IFRS第7号「金融商品:開示」は、金融負債の満期分析を要求している。 特段の規定はない。
スタッフの見解 内訳分類に関する追加的規定は必要ない。
企業の経済的資源に依存しない金額の請求権を企業の経済的資源に依存する金額の請求権と区別する追加的な内訳分類は有用である。流動性の順序に従って請求権を配列することに加え、企業は財政状態計算書上に優先順位に基づいて請求権を表示することも認められる(あるいは、場合によって要求される)べきである。

IASBは、財政状態及び財務成績の両方に注目して、約束されたリターンと残余リターンとを区別することの重要性を認めたスタッフの分析全般を概ね支持した。ただし、IASBのメンバーは、このリターンの区別をどこに表示するかについては異なる見解を示した。スタッフは、業績報告の改善可能性、その他の包括利益の使用、並びに残余リターンに基づく収益及び費用を資本の部における拠出または分配とみなすか否か、についてさらに検討する予定である。


KPMGの見解
スタッフの分析は、新たな種類の収益または費用に関してその他の包括利益を使用することにより、その他の包括利益の用途が拡大され、企業が請求権の帳簿価額の変動を純損益に報告することを回避する機会を得ることにつながる可能性があることを強調した。IASBはこれを主要財務諸表に関する広範囲のプロジェクトの一環として検討することが必要であろう。

流動性の順序に加えて、優先順位に基づいて財政状態計算書上に請求権を表示することは、2つの異なる基準を組み合わせることから困難であると考えられる。この問題に対処するため、IASBは、財政状態計算書上の順位付けに1つの基準を使用し、かつ以下のいずれかを採用することを検討しなければならない可能性がある。

  • 追加的な説明またはカテゴリーとしてのその他の基準
  • 財政状態計算書に対する注記における追加開示

資本の部の内訳分類


“資本の部の内訳分類は、関連する特性についての追加的情報を提供しうる”


問題の所在

アプローチγでは、以下の両方に該当する場合に請求権を資本として分類する。

  • 経済的資源の移転が清算時にのみ要求される。
  • 清算時に移転することが要求される経済的資源の金額が利用可能な経済的資源に基づいている。

アプローチγのもとでの資本の部の請求権は、清算前の経済的資源の流出及び固定リターンのいずれも要求しないが、資本請求権(equity claims)の間の差異は依然として存在する。


IASBの審議
スタッフは、様々な要因によって資本請求権の間に差異が生じていることから(例:残余純資産に対する優先、偶発事象、及び配当制限)、異なるクラスの資本を区別することは有用であると考えた。

しかし、資本の部における内訳分類はアプローチα及びβにおいてより重要である。アプローチαでは、資本の部における請求権は企業に固定または確定リターンの創出を義務付ける場合がある。アプローチβでは、資本の部における請求権は清算前に経済的資源を移転することを企業に要求する場合がある。したがって、スタッフは、このようなケースでは、財政状態計算書上の資本の部でこれらの義務を明確に表示すべきであると考えた。

スタッフはまた、包括利益合計の割振り(attribution)を、非累積優先株式、企業自身の資本に関するデリバティブ及び複合商品の資本構成要素を含む他のクラスの資本にまで拡大すべきであるという見解を示した。これにより、財務諸表利用者は異なるクラスの資本へのリターンの配分を評価することが可能となる。これらのクラスの帳簿価額は割り振った金額によって修正される。

割振りを行うためには、1つのクラスの資本を残余として識別する必要がある。以下の理由から、普通株式が通常これに該当する。

  • 最残余の請求権を有している
  • 経済的資源の移転が以下のとおり要求される
    • 清算時にのみ、かつ
    • 企業の純資産の比例的な取り分に相当する金額

他のクラスの資本は、普通株式として利用可能な純資産を減少させることから、優先クラスの資本とみなされる。

IASBは、スタッフが純損益及びその他の包括利益の割振りを追加的情報を提供するツールとして利用することを検討していることを支持した。ただし、IASBは、企業自身の資本に関するデリバティブの取り扱いをまず初めに検討する必要があるとした。


KPMGの見解
多くの企業が既に異なるクラスの資本(例:優先株式及び普通株式)を表示していることから、資本の内訳分類の表示は全く新しい概念というわけではない。スタッフが指摘しているとおり、資本の部における内訳分類はアプローチα及びアプローチβにおいてより重要である。したがって、資本の表示に対する最終的な影響は、IASBが選択するアプローチによって異なると考えられる。

条件付きで代替的な決済の結果を伴う請求権


“負債の決済結果を回避する権利を有するか否かを明確にする場合、困難を伴う可能性がある”


問題の所在

負債か資本かの代替的な決済の結果を伴う一部の請求権は、

  • 企業(取引相手や保有者ではない)の支配が及ぶ権利を条件とするか、または
  • 企業及び請求権保有者の両方の支配が及ばない不確実な将来の事象の発生または不発生を条件とする

関連する課題の多くは、企業が負債の決済結果を回避する権利を有するか否かを明確にすることに関するものである。


IASBの審議
スタッフはデリバティブ以外の金融商品の分析に焦点を当て、ある事象が企業の支配の及ぶものなのか、あるいは及ばないものなのかを判断することは、特にそれが企業の将来の活動、経営成績または財政状態に関連している場合には、困難である場合があることを認めた。

スタッフの見解によると、アプローチγは、特定金額の移転を要求するものの、企業が経済的資源の移転を清算時まで延期すること、または可変数の普通株式の移転によって請求権を決済することを依然として認めることで、それぞれの代替的な決済の結果は負債であるため、金融商品の分類を簡素化できる可能性がある。ただし、このアプローチは、特に請求権に負債及び資本の代替的な決済の結果が含まれている場合(例:企業が固定数の資本性金融商品を発行するか、または特定金額の現金を支払うことによって請求権を決済する権利を有している場合)には、すべての課題を解決するわけではない。

スタッフは、企業が資本の決済結果を選択する規定上の権利が実質的であるべきかについて検討した。スタッフはIAS第32号の間接的義務に関するガイダンスを検討し、概念フレームワークのEDにおける商業的実質がない契約条件に関する文言の提案を行った。特に、企業の支配が及ぶ権利を条件とする代替的な決済の結果を伴う請求権は、資本の決済結果に商業的実質がない(すなわち、契約の経済実態に対しての見分けのつく影響がない)場合には金融負債とするべきであると主張した。

資本の決済結果に関する権利が実質的である場合には、スタッフは、企業が概念フレームワークのEDにおける「移転を回避する実際上の能力」に関するガイダンス案を用いて、当該権利を行使する実際上の能力を有しているか否かについて検討した。

スタッフはまた、多くの不確実な将来の事象は、企業の将来の行動と何らかの関連性があるとしても、企業の支配が及ばない様々なリスクや関連当事者の行動に基づいているとの見解を示した。

IASBは、スタッフがその分析において、契約の範囲を超えて他の事実及び状況を検討することに賛成した。スタッフは、権利の選好性(favourability)をそれらが実質的であるか否かの評価にどのように反映させるかについてさらに検討を進め、特定の種類の商品に対する影響の分析について今後の会議で取り上げる予定である。


KPMGの見解
スタッフは、IASB及び解釈指針委員会の双方が、IAS第32号を様々な種類の請求権に適用することを以前から検討していたことを強調した。このことを根拠として、IAS第32号の規定は、権利及び義務の実態に関する現在のIASBの考え方が反映されるように修正する必要があると主張した。また、概念フレームワークのEDに関するアジェンダ・ベーパーにも多数の言及がある。

これらを踏まえ、KPMGは、このプロジェクトが進行するにつれて、従前の提案及び他の関連するプロジェクトについてのIASB及び解釈指針委員会のこれまでの決定事項を利用することが、今後ますます重要となると考えている。

英語コンテンツ(原文)

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