FASB - ASU第2016-01号「金融資産及び金融負債の認識及び測定」を公表

Defining Issues 16-01 - FASBが2016年1月5日に、ASU第2016-01号「金融資産及び金融負債の認識及び測定」を公表したことについて記載しています。

FASBが2016年1月5日に、ASU第2016-01号「金融資産及び金融負債の認識及び測定」を公表したことについて記載しています。

ハイライト

FASBは、企業により保有される持分投資が損益計算書に与える影響、及び公正価値オプションの適用を選択した金融負債の公正価値変動の認識を大幅に変更する会計基準更新書(Accounting Standard Update, ASU)を公表した※1

※1 FASB ASU第16-01号「金融資産及び金融負債の認識及び測定」。www.fasb.orgより入手可能。

主な内容

  • 公正価値が測定できる(with readily determinable fair value)持分投資
    企業はこれらの持分投資を公正価値で測定し、公正価値変動を当期純利益に認識する。
  • 公正価値が測定できない(without readily determinable fair value)持分投資
    企業はこれらの投資を、公正価値か、または観察可能な価格の変動を加減して減損損失を控除した原価のいずれかにより測定することを選択できる。いずれの方法においても、測定による変動は当期純利益に認識しなければならない。
  • 金融負債
    金融負債に公正価値オプションの適用を選択した企業は、金融商品固有の信用リスクに関連する公正価値変動をその他の包括利益(other comprehensive income, OCI)に認識しなければならない。
  • 繰延税金
    企業は、売却可能負債証券に関連する繰延税金資産の評価性引当金の必要性を、企業のその他の繰延税金資産とまとめて評価する。

主な影響

  • 当期純利益
    企業は持分投資の測定における変動を当期純利益に認識しなければならないため、損益計算書のボラティリティは増加する。
  • 金融負債
    企業の信用リスクの変動は、公正価値オプションを選択した場合、当期純利益に影響を与えない。

持分投資

基準書は、持分法を適用する投資または連結子会社への投資には適用されない。また、ブローカー・ディーラーや投資会社等の特定の業種に適用される基準書に影響をもたらすものでもない。

公正価値が測定できる持分投資

基準書は、公正価値が測定できる持分投資を、当期純利益を通じて公正価値で測定することを求めている。企業は従来、売却可能持分証券の公正価値変動をその他の包括利益に認識し、一時的でない(other-than-temporary)減損について減損損失を当期純利益に認識していた。

公正価値が測定できない持分投資

企業は公正価値が測定できない持分投資を、公正価値で測定し、その変動を当期純利益に認識するか、または実務上の例外規定を適用することを選択できる。

実務上の例外規定では、企業はこれらの持分投資に観察可能な価格の変動を加減して減損損失を控除した原価で報告する。これにより投資の帳簿価額は原価を上回る可能性がある。測定における変動は、当期純利益に認識しなければならない。

観察可能な価格の変動の加減

減損しているか否かにかかわらず、基準書は、実務上の例外規定により会計処理される投資について観察可能な価格の変動を加減することを求めている。観察可能な価格は、同じ発行体の同一または類似商品の通常の取引から生じるものを入手しなければならない。

減損

基準書は、報告期間ごとに、減損の指標に関する定性的評価を行うことを求めている。この評価によって減損していることが示唆された場合は、企業は投資の帳簿価額を公正価値に加減して、減損損失を当期純利益に認識しなければならない。

持分投資に実務上の例外規定の適用を選択した企業は、以下の事項を開示しなければならない。

  • 公正価値が測定できない投資の帳簿価額
  • 帳簿価値に関する年度調整額及び累積調整額
  • 帳簿価額の算定に用いた情報及び観察可能な価格の変動による調整額

背景

現行のU.S. GAAPでは、公正価値が測定できない持分投資は、原価から減損金額を控除して報告される。ただし、減損損失は、一時的でないとみなされた場合にのみ認識される。

KPMGの見解

“企業は、減損に関する定性的判断を行わなければならない。企業は、観察可能な価格の変動を特定して計上する適切なプロセスを策定する必要がある。”

 

企業は、実務上の例外規定の適用を選択することに伴うコスト及び効果を慎重に検討しなければならない。実務上の例外規定を適用することにより報告期間ごとの公正価値決定の必要性は減るが、以下の追加的な取り組みが求められる。

  • 認知されている、または合理的に認知できる観察可能な取引を特定する。
  • 観察された取引が通常の取引であるか否かを決定する。
  • 観察された取引が、類似するものであるか否かを決定する。

基準書は、すべての観察可能な変動について網羅的に調査する必要はないと示している。ただし、どの程度の努力が求められているかは判断の問題である。

同一商品の通常の観察可能な取引がある場合、公正価値に関する他の潜在的な兆候を考慮することなく、価格は取引価格に調整される。この結果、企業は公正価値測定の決定において、通常用いるものと同程度の判断を適用できない可能性がある。

企業の投資と同一商品の観察可能な取引はないが、類似する取引が観察される場合、企業の投資と類似する商品の権利及び義務に関する相違について、観察可能な価格を加減しなければならない。

金融負債

金融負債に公正価値オプションの適用を選択した企業は、金融商品固有の信用リスクに起因する公正価値変動を、当期純利益ではなく、OCIに認識しなければならない。

企業は、金融商品固有の信用リスクに起因する公正価値変動を、公正価値変動全額のうち、リスク・フリー金利等の基準金利の変動に起因する公正価値変動を超過する部分と定義することができる。企業が他に忠実な測定方法を策定して継続的に適用する場合は、その他の方法を選択することもできる。

背景

現行のU.S. GAAPでは、企業が公正価値オプションを適用して金融負債を公正価値で測定する場合、金融商品固有の信用リスクに起因する公正価値変動を含めたすべての公正価値変動を当期純利益に認識する。市場関係者はFASBに対して、信用リスクの悪化により当期純利益が増加するのは誤解を生じさせる可能性があると述べた。

繰延税金資産

企業は、売却可能負債証券に関連する繰延税金資産の評価性引当金の必要性を、企業のその他の繰延税金資産とまとめて評価する。

背景

この基準書より、売却可能負債証券に関連する繰延税金資産の評価性引当金に関する実務のばらつきが解消される。一部の企業は、売却可能負債証券に関連する繰延税金資産の評価性引当金を、その他の繰延税金資産と区別して評価している。その他の企業は、繰延税金資産の評価をまとめて実施している。

開示

非公開営利企業は、償却原価で測定される金融商品の公正価値の開示が求められない。公開営利企業は引き続き開示が求められるが、それらの公正価値の見積りに用いた技法及び重要な仮定を、もはや開示しなくてもよい。

公開営利企業は、開示目的上、出口価格の考え方を用いて金融商品の公正価値を測定する。現行のU.S. GAAPでは、市場価格が入手できない場合、入口価格を用いた特定の金融商品の公正価値の見積りを認めている。

企業は経営成績を表示する期間ごとに、報告日時点で保有する持分投資に関連する未実現利益及び損失部分を開示しなければならない。

基準書の適用日

基準書は、公開営利企業については、2017年12月16日以降開始する会計年度及び同会計年度の期中期間から適用される。その他すべての企業については、2018年12月16日以降開始する会計年度及び2019年12月16日以降開始する会計年度の期中期間から適用される。

早期適用

非公開営利企業は、2017年12月16日以降開始する会計年度及び同会計年度の期中期間から早期適用できる。

企業は、金融負債の公正価値変動の認識に関連する規定を早期適用することができる。これには、公開営利企業については未公表の、非公開営利企業については公表可能になっていない年次財務諸表または期中財務諸表が含まれる。例えば、企業が2015年度の財務諸表を公表していない場合は、2015年度の財務諸表において、これらの規定を適用できる。規定は、会計年度の期首において適用する。

また、非公開営利企業は、基準書の規定を早期適用することにより過去に義務付けられていた特定の開示を除外することができる。これらの規定もまた、公表可能になっていない財務諸表に適用される。

移行措置

基準書の適用は、基準書を適用する会計年度の期首の財政状態計算書において累積的な影響を調整することにより行わなければならない。持分投資に対しては、公正価値が測定できない持分投資に関連する規定を適用日において将来に向かって適用する。

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