ASBJ、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を公表 | KPMG | JP

ASBJ、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を公表

ASBJ、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を公表

会計・監査ニュースフラッシュ - 企業会計基準委員会(ASBJ)より、平成27年12月28日に、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下「本適用指針」という)が公表されました。

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我が国における税効果会計に関する会計基準には、「税効果会計に係る会計基準」(以下「税効果会計基準」という)があり、また、これを受けて日本公認会計士協会(JICPA)から公表されている会計上の実務指針及び監査上の実務指針があるが、ASBJでは、このうちJICPAから公表されている実務指針をASBJに移管するための審議を行っていた。

今般公表された適用指針は、主に日本公認会計士協会 監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下「監査委員会報告第66号」という)において定められている繰延税金資産の回収可能性に関する指針について、基本的にその内容を引き継いだうえで、必要と考えられる点について見直しが行われている。

本適用指針のポイント

適用指針全般

  • 監査委員会報告第66号における企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いの枠組みを、基本的に踏襲したうえで、当該取扱いの一部について必要な見直しが行われた。

会社分類

  • 要件に基づき(分類1)から(分類5)に分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定することとしたうえで、(分類1)から(分類5)に係る各分類の要件をいずれも満たさない場合、過去の課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する。
  • (分類2)及び(分類3)に係る分類について、監査委員会報告第66号では、「経常的な利益(損益)」という会計上の利益に基づく要件とされていたのに対し、本適用指針では、「臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得」に基づく要件に変更する。
  • (分類2)に該当する企業においては、原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性がないものとしつつ、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金の算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金に算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを、企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとする。
  • (分類3)に該当する企業においては、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。
  • 過去(3年)又は当期において重要な税務上の欠損金が生じていること等により(分類4)に係る分類の要件を満たす企業においては、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは(分類2)に該当するものとして取り扱い、将来においておおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは(分類3)に該当するものとして取り扱う。

適用時期等

  • 適用時期
    平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、平成28年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる。
  • 本適用指針の適用に関する取扱い
    本適用指針の適用初年度の期首においては、次の項目を適用することにより、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。
    • (分類2)に該当する企業において、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には回収可能性があるとする取扱い
    • (分類3)に該当する企業において、おおむね5年を明らかに超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には回収可能性があるとする取扱い
    • (分類4)の要件に該当する企業であっても、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には(分類2)に該当するものとする取扱い
  • 適用初年度の取扱い
    本適用指針の適用初年度においては、当該年度の期首時点で新たな会計方針を適用した場合の繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債の額との差額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。

    ただし、資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等をその他の包括利益で認識したうえで純資産の部のその他の包括利益累計額に計上する場合又は直接純資産の部の評価・換算差額等に計上する場合、適用初年度の期首時点で新たな会計方針を適用したときの繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債の額との差額を、適用初年度の期首のその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減する。
  • 会計方針の変更による影響額の注記事項の取扱い
    本適用指針の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更による影響額の注記について、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第10項(5)ただし書きの定めにかかわらず、適用初年度の期首の繰延税金資産に対する影響額、利益剰余金に対する影響額、及びその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に対する影響額を注記する。

I. 本適用指針の概要

全般

  • 日本公認会計士協会における税効果会計に関する会計上の実務指針及び監査上の実務指針(会計処理に関する部分)からの移管の範囲
    本適用指針では、会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」、会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」及び会計制度委員会「税効果会計に関するQ&A」のうち繰延税金資産の回収可能性に関する定め、並びに監査委員会報告第66号及び監査委員会報告第70号「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」のうち会計処理に関する部分について、基本的にその内容を引き継いだうえで、必要と考えられる見直しが行われた。


参考:日本公認会計士協会から公表されている税効果会計に関する会計上の実務指針及び監査上の実務指針一覧

  • 日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(最終改正 平成26年2月24日)
  • 日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(最終改正 平成23年1月12日)
  • 日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第11号「中間財務諸表等における税効果会計に関する実務指針」(最終改正 平成23年1月12日)
  • 日本公認会計士協会 会計制度委員会「税効果会計に関するQ&A」(最終改正 平成27年5月26日)
  • 日本公認会計士協会 監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(公表 平成11年11月9日)
  • 日本公認会計士協会 監査委員会報告第70号「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(最終改正 平成16年2月17日)
  • 日本公認会計士協会 監査・保証実務委員会実務指針第63号「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(最終改正 平成23年3月29日)

 

  • 目的(本適用指針第1項)
    本適用指針では、繰延税金資産の回収可能性について、税効果会計基準を適用する際の指針が定められた。

会社分類

  • 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い(本適用指針第15項から第31項)
    監査委員会報告第66号における企業の分類に応じた取扱いを撤廃する場合には、実務への影響が大きいと考えられることから、本適用指針では当該取扱いの枠組み、すなわち企業を5つに分類し、当該分類に応じて繰延税金資産の計上額を見積る枠組みを基本的に踏襲したうえで、当該取扱いの一部について必要な見直しが行われた。

    監査委員会報告第66号と本適用指針における取扱いの具体的な比較については、「IV.企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いの比較」を参照いただきたい。

 

  • (分類1)から(分類5)に係る分類の要件をいずれも満たさない企業の取扱い(本適用指針第15項及び第16項)
    本適用指針では、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断する際に、要件に基づき企業を(分類1)から(分類5)に分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定することとしたうえで、(分類1)から(分類5)に係る分類の要件をいずれも満たさない企業は、過去の課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類することとされた。

 

  • (分類2)及び(分類3)に係る分類の要件(本適用指針第19項及び第22項)
    監査委員会報告第66号では、(分類2)及び(分類3)について、「経常的な利益(損益)」という会計上の利益に基づく要件とされていたのに対し、本適用指針では、「臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得」という課税所得に基づく要件に変更された。

    これは、繰延税金資産の回収可能性の判断は収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づくこととしており、受取配当金の益金不算入額のように永久に益金又は損金に算入されない項目が生じること等により会計上の利益の額と課税所得の額が通常は一致しない中で、繰延税金資産の回収可能性の判断においては課税所得の十分性を検討する必要があるため、企業を分類するにあたって重視すべき要件としては課税所得がより適切であると考えられたためとされている。

    なお、過去において臨時的な原因により生じた益金及び損金は、将来において頻繁に生じることは見込まれないという推定に基づき、課税所得から「臨時的な原因により生じたもの」を除くこととされている。

    具体的には、結論の背景において「営業損益項目に係る益金及び損金は通常の事業活動から生じたものであることから、原則として「臨時的な原因により生じたもの」に該当しないと考えられる。一方、営業外損益項目及び特別損益項目に係る益金及び損金のうち、企業が置かれた状況等に基づいて検討した場合に将来において頻繁に生じることが見込まれないものは「臨時的な原因により生じたもの」に該当することが考えられる」と記載されている。

 

  • (分類2)に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異に関する取扱い(本適用指針第21項)
    監査委員会報告第66号では、(分類2)に該当する企業の場合においては、スケジューリング不能な将来減算一時差異について、一律に繰延税金資産を計上することができないとする取扱いが示されていたが、当該取扱いは企業の実態を反映しない場合があるとの意見が聞かれ、また、(分類2)に該当する企業において国際財務報告基準(IFRS)又は米国会計基準を適用している場合、連結財務諸表においてはスケジューリング不能な将来減算一時差異について繰延税金資産を計上している実務がみられるとの意見が聞かれた。

    そのため、本適用指針では、(分類2)に該当する企業においては、原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性がないものとしつつ、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金の算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを、企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとされた。

 

  • (分類3)に該当する企業における将来の一時差異等加減算前課税所得の合理的な見積可能期間に関する取扱い(本適用指針第23項及び第24項)
    監査委員会報告第66号では、(分類3)に該当する企業においては、「将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)内の課税所得の見積額を限度」として、一時差異等のスケジューリングの結果に基づき繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとされていた。

    当該取扱いについては、見積可能期間に関して「おおむね」という表現が用いられているものの硬直的に運用されているという意見が聞かれ、また、将来の合理的な見積可能期間について一律に5年を限度とすることは、企業の実態を反映しない可能性があると考えられるため、本適用指針では、(分類3)に該当する企業においては、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを、企業が合理的な根拠をもって説明する場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとされた。

 

  • (分類4)に係る分類の要件を満たす企業が(分類2)又は(分類3)に該当する場合の取扱い(本適用指針第28項及び第29項)
    監査委員会報告第66号では、「重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社等」であっても、「重要な税務上の繰越欠損金や過去の経常的な利益水準を大きく上回る将来減算一時差異が、例えば、事業のリストラクチャリングや法令等の改正などによる非経常的な特別の原因により発生したものであり、それを除けば課税所得を毎期計上している会社の場合には、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)内の課税所得の見積額を限度として、当該期間内の一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする」とされていた。

    当該取扱いについては、見積可能期間に関して「おおむね」という表現が用いられているものの硬直的に運用されているとの意見や、「非経常的な特別の原因」の範囲が明確ではなく、実務上、議論となることが多いとの意見が聞かれた。

    このため、本適用指針では、過去(3年)又は当期において重要な税務上の欠損金が生じたこと等により(分類4)に係る分類の要件を満たす企業においては、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合に、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときには(分類2)に該当するものとして取り扱い、将来においておおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは(分類3)に該当するものとして取り扱うこととされた。

II. 適用時期等

  • 適用時期

    原則適用:
    平成28年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。

    早期適用:
    平成28年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる。

 

  • 本適用指針の適用に関する取扱い
    本適用指針の適用初年度の期首においては、次の項目を適用することにより、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。
    • (分類2)に該当する企業において、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には回収可能性があるとする取扱い
    • (分類3)に該当する企業において、おおむね5年を明らかに超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には回収可能性があるとする取扱い
    • (分類4)の要件に該当する企業であっても、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合には(分類2)に該当するものとする取扱い

これは、監査委員会報告第66号には、会計処理の原則及び手続を定めた部分が含まれており、本適用指針は監査委員会報告第66号に定められている繰延税金資産の計上額を算定するための会計処理の原則及び手続を変更する内容を含んでいること、本適用指針の適用によって生じる変更は会計上の見積りの変更に該当しないこと等を理由としている。

 

  • 適用初年度の取扱い
    本適用指針の適用初年度においては、当該年度の期首時点で新たな会計方針を適用した場合の繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債の額との差額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。

    ただし、資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等をその他の包括利益で認識したうえで純資産の部のその他の包括利益累計額に計上する場合、又は直接純資産の部の評価・換算差額等に計上する場合、適用初年度の期首時点で新たな会計方針を適用したときの繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債の額との差額を、適用初年度の期首のその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減する。

 

  • 会計方針の変更による影響額の注記事項に関する取扱い
    本適用指針の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更による影響額の注記について、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第10項(5)ただし書きの定めにかかわらず、適用初年度の期首の繰延税金資産に対する影響額、利益剰余金に対する影響額、及びその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に対する影響額を注記する。

III. 公開草案からの主な変更点

本適用指針において、公開草案から変更された主な箇所は、以下のとおりである。

  • 将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、原則とは異なる取扱いが容認される場合の考え方(第21項、第24項、第28項及び第29項)
    公開草案では、「合理的に説明できる場合」に、原則とは異なる取扱いが容認されていた。だが、当該取扱いに対して、企業が説明できる状況にあるものの、説明を行わなかった場合の取扱いが不明確であるとのコメントが寄せられたことを受け、本適用指針では、企業の検討に基づき適用する場合にのみ原則と異なる取扱いを容認することを意図しているため、その意図を明確化し、また、当該検討においては根拠が必要であることを明示するため、「企業が合理的な根拠をもって説明する場合」に、原則とは異なる取扱いが容認されることとされた。

 

  • (分類3)の要件(第22項(1))
    公開草案では、(分類3)の要件として、「(1)過去(3年)及び当期において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している」ことが挙げられていた。これにつき、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得にマイナスの値が含まれるのかを明確にすべきとのコメントが寄せられたことを受け、本適用指針では、適用指針第22項(1)の要件に加え、なお書きとして、「なお、(1)における課税所得から臨時的な原因により生じたものを除いた数値は、負の値となる場合を含む」と追加された。

 

  • 将来の課税所得の見積り(本適用指針第32項)
    公開草案では、「業績予測の前提となった数値」を用いて、将来の課税所得又は税務上の欠損金を見積ることとされていた。これにつき、取締役会等の承認を得た業績予測であることを明記すべきとのコメントを踏まえて、将来の業績予測は合理的な金額であるべきという監査委員会報告第66号の趣旨を変えることを意図していないことを明確化するべく、「適切な権限を有する機関の承認を得た業績予測の前提となった数値」を用いて、将来の課税所得又は税務上の欠損金を見積ることとされた。

 

  • 適用初年度の取扱い(本適用指針第49項(3))
    公開草案では、適用初年度において、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされていた。だが、監査委員会報告第66号の定めと本適用指針の定めとの間で、どの部分がこれまでの会計処理と異なることとなるかに関する検討を行うことが実務上困難であるとのコメントを踏まえ、会計方針の変更として取り扱われる項目を特定することとされた。

IV. 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いの比較※1

※1 ASBJ「企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の公表」における(別紙2)の内容を記載している。


下表は、監査委員会報告第66号と、本適用指針における全般的な事項及び各分類における主な取扱いを比較したものである。

 

全般的な事項

監査委員会報告
第66号における取扱い
本適用指針における取扱い
  • 将来年度の会社の収益力を客観的に判断することは実務上困難な場合が多い。そこで、会社の過去の業績等の状況を主たる判断基準として、将来年度の課税所得の見積額による繰延税金資産の回収可能性を判断する場合の指針を示す。
  • 過去の業績等に基づいて、将来年度の課税所得の見積額による繰延税金資産の回収可能性を判断する指針としては、以下の例示区分に応じた取扱いによるものとする。ただし、それぞれの例示区分に直接該当しない場合であっても、それぞれの例示区分の趣旨を斟酌し、会社の実態に応じて、それぞれの例示区分に準じた判断を行う必要がある。
  • 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づいて繰延税金資産の回収可能性を判断する際に、要件に基づき企業を(分類1)から(分類5)に分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定する。
  • (分類1)から(分類5)に係る分類の要件をいずれも満たさない企業は、過去の課税所得又は税務上の欠損金の推移、当期の課税所得又は税務上の欠損金の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する。

 

(分類1)

監査委員会報告
第66号における取扱い
本適用指針における取扱い

期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期計上している会社等

 

期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期(当期及びおおむね過去3年以上)計上している会社等で、その経営環境に著しい変化がない場合には、通常、当該会社が、将来においても一定水準の課税所得を発生させることが可能であると予測できる。したがって、そのような会社については、一般的に、繰延税金資産の全額について、その回収可能性があると判断できる。なお、この場合には、スケジューリングが不能な将来減算一時差異についても、将来スケジューリングが可能となった時点で課税所得が発生する蓋然性が高いため、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産については回収可能性があると判断できるものとする。

1.分類の要件
次の要件をいずれも満たす。

  • 過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じている。
  • 当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。

 

2.繰延税金資産の計上額

  • 繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。

 

(分類2)

監査委員会報告
第66号における取扱い
本適用指針における取扱い

業績は安定しているが、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社等

 

過去の業績が安定している会社等の場合、すなわち、当期及び過去(おおむね3年以上)連続してある程度の経常的な利益を計上しているような会社の場合には、通常、将来においても同水準の課税所得の発生が見込まれる。したがって、そのような会社については、一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする。

1.分類の要件
次の要件をいずれも満たす。

  • 過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が、期末における将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じている。
  • 当期末において、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれない。
  • 過去(3年)及び当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。

 

2.繰延税金資産の計上額

  • 一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。
  • 原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性がないものとする。ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金に算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

 

(分類3)

監査委員会報告
第66号における取扱い
本適用指針における取扱い

業績が不安定であり、期末における将来減算一時差異を十分に上回るほどの課税所得がない会社等

 

過去の業績が不安定な会社等の場合、すなわち、過去の経常的な損益が大きく増減しているような会社の場合には、通常、過去の業績等により長期にわたり安定的な課税所得の発生を予測することができない。したがって、そのような会社については、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)内の課税所得の見積額を限度として、当該期間内の一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする。

1.分類の要件
次の要件をいずれも満たす(ただし、本適用指針の第26項(2)又は(3)の要件を満たす場合を除く)。

  • 過去(3年)及び当期において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している。
  • 過去(3年)及び当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。

なお、課税所得から臨時的な原因により生じたものを除いた数値は、負の値となる場合を含む。

 

2.繰延税金資産の計上額

  • 将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、当該見積可能期間の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。
  • 上記にかかわらず、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

 

(分類4)

監査委員会報告
第66号における取扱い
本適用指針における取扱い

重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社等

 

期末において重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社、過去(おおむね3年以内)に重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実があった会社、又は当期末において重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる会社の場合には、通常、将来の課税所得の発生を合理的に見積ることは困難と判断される。したがって、そのような会社については、原則として、翌期に課税所得の発生が確実に見込まれる場合で、かつ、その範囲内で翌期の一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする。

また、過去の経常的な利益水準を大きく上回る将来減算一時差異が期末に存在する会社について、翌期末において重要な税務上の繰越欠損金の発生が見込まれる場合には、期末において重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社と同様に取り扱うこととする。

ただし、前述の場合においても、重要な税務上の繰越欠損金や過去の経常的な利益水準を大きく上回る将来減算一時差異が、例えば、事業のリストラクチャリングや法令等の改正などによる非経常的な特別の原因により発生したものであり、それを除けば課税所得を毎期計上している会社の場合には、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)内の課税所得の見積額を限度として、当該期間内の一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする。

1.分類の要件
次のいずれかの要件を満たし、かつ、翌期において一時差異等加減算前課税所得が生じることが見込まれる。

  • 過去(3年)又は当期において、重要な税務上の欠損金が生じている。
  • 過去(3年)において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなる事実がある。
  • 当期末において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる。

 

2.繰延税金資産の計上額

  • 翌期の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、翌期の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

 

3.(分類2)又は(分類3)に該当するものとして取り扱う場合

  • 上記の繰延税金資産の計上額にかかわらず、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは(分類2)に該当するものとして取り扱い、将来においておおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることを企業が合理的な根拠をもって説明するときは(分類3)に該当するものとして取り扱う。

 

(分類5)

監査委員会報告
第66号における取扱い
本適用指針における取扱い

過去連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社等

 

過去(おおむね3年以上)連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社で、かつ、当期も重要な税務上の欠損金の計上が見込まれる会社の場合には、通常、将来の課税所得の発生を合理的に見積ることができないと判断される。したがって、そのような会社については、原則として、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金等に係る繰延税金資産の回収可能性はないものと判断する。

また、債務超過の状況にある会社や資本の欠損の状況が長期にわたっている会社で、かつ、短期間に当該状況の解消が見込まれない場合には、これと同様に取り扱うものとする。

1.分類の要件
次の要件をいずれも満たす。

  • 過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、重要な税務上の欠損金が生じている。
  • 翌期においても重要な税務上の欠損金が生じることが見込まれる。

 

2.繰延税金資産の計上額
原則として、繰延税金資産の回収可能性はないものとする。

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