BEPS最終報告書(Action 7)恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止 | KPMG | JP

BEPS最終報告書(Action 7)恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止

BEPS最終報告書(Action 7)恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止

経済協力開発機構(OECD)は10 月5日、税源浸食と利益移転(BEPS: Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクトにおける15の行動計画(Action Plan)に関する最終パッケージを公表しました。

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(最終パッケージの概要については、KPMG Tax メールマガジンNo.101(2015年10月7日発行)をご参照ください。)。この最終パッケージは、10月8日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議にて報告され、G20諸国の財務大臣により承認されており、さらに、11月15日・16日に行われるG20サミットにおいて報告される予定です。

このニューズレターでは、15のAction Planのうち、Action 7(Preventing the Artificial Avoidance of Permanent Establishment Status/恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止)の最終報告書の概要をお知らせいたします。


BEPSとは、各国の税制のギャップやミスマッチを利用して、税務上の利益を消失させたり、税率が低く、かつ、実際には事業活動がほとんど行われていない国に税務上の利益を移転させて、税負担を少額又はゼロにするタックス・プランニングの手法です。

BEPSは主に多国籍企業により利用されており、既存の租税回避防止策では対処することが困難であることから、BEPSから生じるさまざまな課題に対処するために、BEPSプロジェクトが立ち上げられました。これまで、OECD加盟国・G20諸国をはじめとする60カ国以上が議論に参加し、税務関係の地域間組織や国際機関も作業に貢献し、23の公開草案が取りまとめられ、11のパブリック・コンサルテーションが行われてきました。

I. Action 7の背景と最終報告書の構成

OECDモデル租税条約第5条(恒久的施設/PE)の構成は、以下のとおりです。

 

(1)PEの定義
PEとは、事業を行う一定の場所であり、企業がその事業の全部又は一部を行っている場所をいう、と定義されています。


(2)PEの例示
PEには、(a)事業の管理の場所、(b)支店、(c)事務所、(d)工場、(e)作業場、(f)鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所が含まれるとされています。


(3)建築工事現場又は建設若しくは据付けの工事の取扱い
工事現場又は工事が12ヵ月を超える期間存続する場合には、PEを構成することとされています。


(4)PEに該当しない一定の活動(例外規定)
(a)から(f)の活動を掲げ、これらの活動を行う場合にはPEに該当しないことが規定されています。


(5)代理人PE
企業に代わって行動する一定の者は、独立代理人に該当する者を除き、代理人PEとされることが規定されています。


(6)独立代理人
独立代理人の範囲が規定されています。


(7)支配がPE認定に及ぼす影響
一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者である法人等を支配し、又はこれらに支配されているという事実のみによって、いずれの一方の法人も他方の法人のPEとはされないことが規定されています。


OECDモデル租税条約第7条(事業利得)の規定により、一方の締約国の企業が他方の締約国内にあるPEを通じて事業を行わない限り、その他方の締約国はその企業の事業から生ずる利得に租税を課すことができないこととされていますので、PE認定の有無は、企業の租税負担に大きな影響を及ぼすこととなります。

Action 7では、PE認定を人為的に回避することでBEPS問題が生じている事象に注目し、OECDモデル租税条約第5条の規定に関し、以下の改正をすることを提案してます。

  1. 代理人PEの範囲の拡大・・・第5条(5)及び(6)の改正
  2. PEに該当しないものとされる活動の範囲の縮小・・・第5条(4)の改正

II. OECDモデル租税条約の改正案

1. 代理人PEの範囲の拡大

Action 7の最終報告書で示された、OECDモデル租税条約第5条(5)及び(6)の改正案の内容は以下のとおりです。

OECDモデル租税条約第5条(5)及び(6)(代理人PE)の改正

現行の代理人PEの要件 改正後の代理人PEの要件
企業のために相手国内で行動する者は、以下の要件を満たす場合に代理人PEとされる。 企業のために相手国内で行動する者は、以下の要件を満たす場合に代理人PEとされる。
1. 企業の名において締結される契約であること。

1.次のいずれかの契約であること。

  1. 企業の名において締結される契約であること。
  2. 企業の物品の販売に関する契約であること。
  3. 企業による役務提供に関する契約であること。
2. 代理人が契約を締結すること。

2.次のいずれかの行為を行うこと。

  1. 代理人が契約を締結すること。
  2. 代理人が契約の締結に繋がる主要な役割を担うこと。
3. ただし、代理人業を通常業務として行う者(独立代理人)は、代理人PEとされない。 3.ただし、代理人業を通常業務として行う者(独立代理人)は、代理人PEとされない(ただし、専ら関連企業のためにのみ代理人業を行う者を除く。)

(出典:財務省)

この改正により、人為的なPE認定の回避が行われる可能性があるとされていた、以下の3つのBEPS問題に対処することになります。

(1)企業の名において契約が締結される場合だけでなく、企業の物品の販売や企業による役務の提供に関する契約が締結される場合も、代理人PEの認定がなされる。(コミッショネア・ストラクチャーに対応する改正)

(2)代理人が契約を締結しなくとも、契約の締結に繋がる主要な役割を担う場合には、代理人PEの認定がなされる。

(3)関連企業(50%超の直接・間接支配関係を有する企業)を独立代理人とすることにより、代理人PEの認定を回避することができなくなる。

 

《参考》
現行の租税条約の規定のもとにおけるコミッショネア・ストラクチャー(受託者の名において企業の製品等の売買契約を顧客と締結するしくみ)の問題点を、財務省は以下のように整理しています。

代理人PEの認定を回避する例:販売委託契約(コミッショネア契約)

  1. 企業がB国に支店を設けて製品を販売すると、B国にPEを有することとなり、B国において製品の販売利益に課税される。
  2. また、企業がB国に代理人を置いて、代理人が企業(本人)の名において企業の製品の販売契約を締結すると、企業がB国に代理人PEを有することとなり、B国において企業が製品の販売利益に課税される。
  3. これに対し、企業はB国の受託者と販売委託契約(コミッショネア契約)を締結し、受託者(コミッショネア)が受託者の名において企業(委託者)の製品の販売契約を締結すると、代理人PEの要件に該当しないため、企業はB国にPEを有しないこととなり、B国において製品の販売利益に課税されない。
    (出典:財務省)

2. PEに該当しないものとされる活動の範囲の縮小

Action 7の最終報告書で示された、OECDモデル租税条約第5条(4)の改正案の内容は以下のとおりです。

OECDモデル租税条約第5条(4)(恒久的施設の例外)の改正

現行の規定 改正後の規定
次の活動を行う場合は、「恒久的施設」に当たらない。 次の活動を行う場合は、「恒久的施設」に当たらない。
ただし、その(a)から(e)の活動((f)の場合には、その組合せによる活動の全体)が準備的又は補助的な性格のものである場合に限る。
(a)物品等の保管・展示・引渡しのためにのみ施設を使用 (a)物品等の保管・展示・引渡しのためにのみ施設を使用
(b)企業の在庫を保管・展示・引渡しのためにのみ保有 (b)企業の在庫を保管・展示・引渡しのためにのみ保有
(c)企業の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有 (c)企業の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有
(d)企業のために物品等を購入し、又は情報収集のみを目的として、一定の場所を保有 (d)企業のために物品等を購入し、又は情報収集のみを目的として、一定の場所を保有
(e)企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、一定の場所を保有 (e)企業のためにその他の活動を行うことのみを目的として、一定の場所を保有
(f)(a)から(e)までの活動を組み合わせた活動のみを目的として、一定の場所を保有。
ただし、その組合せによる活動の全体が準備的又は補助的な性格のものである場合に限る。
(f)(a)から(e)までの活動を組み合わせた活動のみを目的として、一定の場所を保有。

(出典:財務省)

(Action 7の最終報告書には、OECDモデル租税条約のコメンタリーの改正案も含まれており、そこには、上記とは多少異なる第5条(4)の代替案も示されています。)

また、第5条に新たに(4.1)という項が追加されることも提案されています。これによると、企業又はその関連企業が活動する複数の場所が相互に補完的な活動を行う場合には、その複数の場所を一体の場所とみなしてPEに該当するか否かの判定が行われることになります。

これらの改正により、人為的なPE認定の回避が行われる可能性があるとされていた、以下の2つのBEPS問題に対処することになります。

(1)現行の第5条(4)の規定では、(a)から(d)の活動は「準備的又は補助的な性格のもの」でなくとも、PE認定をもたらす活動とはされていないが、改正後の第5条(4)の規定によると、いかなる種類の活動も、「準備的又は補助的な性格のもの」でない限り、PE認定をもたらすことになる。

(2)第5条(4.1)の導入により、企業の活動を複数の場所に分割することによってPE認定を回避することができなくなる。

III. 今後の対応等

上記のOECDモデル租税条約第5条の改正案は、今後、二国間の租税条約の締結・改正のタイミングで盛り込まれるほか、Action 15にて検討され、2016年末までに署名ができるように準備が進められている多数国間協定に盛り込まれることも考えられます。

なお、上記のPEの範囲に関する改正に伴い、PEに帰属する利得に関するルールの見直しも必要となりますが、これについては今後検討が重ねられ、2016年末までに必要なガイダンスが公表される見込みです。

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