BEPS最終報告書(Action 6)租税条約の濫用防止 | KPMG | JP

BEPS最終報告書(Action 6)租税条約の濫用防止

BEPS最終報告書(Action 6)租税条約の濫用防止

経済協力開発機構(OECD)は10月5日、税源浸食と利益移転(BEPS: Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクトにおける15の行動計画(Action Plan)に関する最終パッケージを公表しました。

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(最終パッケージの概要については、KPMG Tax メールマガジンNo.101(2015年10月7日発行)をご参照ください。)。この最終パッケージは、10月8日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、G20諸国の財務大臣により承認され、さらに、11月15日・16日に行われたG20サミットにおいても承認されました。

このニューズレターでは、15のAction Planのうち、Action 6(Preventing the Granting of Treaty Benefits in Inappropriate Circumstances/租税条約の濫用防止)の最終報告書の概要をお知らせいたします。

 

BEPSとは、各国の税制のギャップやミスマッチを利用して、税務上の利益を消失させたり、税率が低く、かつ、実際には事業活動がほとんど行われていない国に税務上の利益を移転させて、税負担を少額又はゼロにするタックス・プランニングの手法です。

BEPSは主に多国籍企業により利用されており、既存の租税回避防止策では対処することが困難であることから、BEPSから生じるさまざまな課題に対処するために、BEPSプロジェクトが立ち上げられました。これまで、OECD加盟国・G20諸国をはじめとする60カ国以上が議論に参加し、税務関係の地域間組織や国際機関も作業に貢献し、23の公開草案が取りまとめられ、11のパブリック・コンサルテーションが行われてきました。

I. Action 6の背景と最終報告書の構成

トリーティーショッピング(本来、条約の特典を享受すべきでない第三国の居住者等が、不当に条約の特典を得ようとする行為)をはじめとする租税条約の濫用は、BEPS問題を引き起こす最も重要な原因のひとつであると考えられています。

そこで、Action 6では、租税条約の濫用を防止するため、OECDモデル租税条約の改正と国内法の設計について検討されてきました。

Action 6の最終報告書では、主に以下について勧告がまとめられ、OECDモデル租税条約及びコメンタリーの改正案が示されています。

  1. 租税条約の特典の不適切な付与を防止する規定の導入
  2. 租税条約は国内法の規定の適用を妨げるものではないことの明確化

II. 租税条約の特典の不適切な付与を防止する規定の導入

Action 6の最終報告書では、以下の1.及び2.の内容を各国が締結する租税条約に含めることが勧告されています。

1. 租税条約濫用防止規定

最終報告書では、租税条約濫用防止規定として、特典制限条項(Limitation on Benefits: LOB)及び主要目的テスト(Principal Purpose Test: PPT)の2つが取り上げられています。

LOB、PPTともに長所・短所があり、また、各国の有する税制等の違いを踏まえると、すべての国に対してLOBとPPTの併用を求めるのは必ずしも適切ではないことから、各国が租税条約の濫用に効果的に対処しうる限り、いずれのアプローチを採用するかについては、ある程度の柔軟性が認められています。

ただし、租税条約の濫用を防止するために最低限必要な措置(Minimum standard)として、以下の3つの方法のいずれかを各国の租税条約に取り入れることが勧告されています。

(1)LOBとPPTの組合せ
(2)PPTのみ
(3)LOB及び導管取引防止規定の組合せ

LOBとPPTの特徴及び最終報告書の内容のポイントは以下のとおりです。

特典制限条項(LOB) 主要目的テスト(PPT)
  • LOBとは、所得の受領者の属性に着目し、租税条約の特典を享受することができる者を一定の適格者(第三国の居住者に支配されていないと考えられる者(たとえば、個人や上場会社、年金基金等))に制限する規定である。(所得の受領者の事業活動による基準等も併用されている。)
  • LOBは、客観的基準(その事業者/法人の法的性質や支配関係等)に基づき適格者に該当するか否かを判定するため、PPTよりも確実性が高く、租税条約濫用防止規定として有用である。
  • しかし、導管取引など対処できない条約濫用取引もある。
  • 既存の条約では、主に米国が締結したものに含まれているほか、日本、インドが締結している租税条約にもいくつかで採用されている。
  • 最終報告書には、OECDモデル租税条約に含めるべきLOBの条文及びコメンタリーの草案が示されており、簡素版と詳細版の2つの選択肢が用意されている。
  • LOBの条文及びコメンタリーの草案は、米国モデル租税条約に沿った内容となっているが、現在、米国モデル租税条約のLOB等の条項について改正が予定されているため、米国モデル租税条約の改正後に草案の見直しが行われる。
  • LOBの条文及びコメンタリーの最終案は、2016年前半に完成する予定である。
  • PPTとは、取引の目的に着目するもので、租税条約の特典を享受することを主たる目的のひとつとする取引から生ずる所得には、租税条約の特典の付与を認めないこととする規定である。
  • PPTは、LOBでは対応できない条約濫用取引(導管金融取引など)に対処できるとされている。
  • その取引が、租税条約の特典を享受することを主たる目的のひとつとするものであるかを判断するために、個々の場合に応じた客観的な分析が求められる。
  • 最終報告書には、OECDモデル租税条約に含めるべきPPTの条文及びコメンタリーの最終案が示されおり、コメンタリーには、PPTの適用に関する例示及びPPTで対処する必要のある導管取引の例示も含まれている。

2. OECDモデル租税条約のタイトル・前文

最終報告書では、租税条約は脱税・租税回避(トリーティーショッピングを含む。)を通じた二重非課税又は税負担軽減の機会を創出することなく、二重課税を排除することを意図するものであることを、OECDモデル租税条約のタイトル及び前文に明記することとされました。各国はこれに沿った改正を行うことが勧告されています。

3. 個別的濫用防止規定

租税条約の一部の条項(配当条項等)には、その租税条約の締約国の居住者であること以外にも、特典の適用を受けるために満たさなければならない要件が設けられています。

最終報告書では、こうした要件を不正に回避することで租税条約の特典を享受しうる方法として、以下の取引例を挙げています。OECDモデル租税条約及びコメンタリーには、このような取引に対処するための個別的濫用防止規定がすでに設けられていますが、より確実性を高めるため、最終報告書には、これらの規定のうち、いくつかについて、改正案が示されています。

取引例 特典の不適切な付与等
建設工事契約の分割 契約を分割することにより、PE認定を回避
労働者の派遣 源泉地国における不適切な短期滞在者免税の適用
配当としての性格を回避する取引 国内法上配当とされるものにつき、条約上の所得区分を利用した源泉地国課税の回避
配当の譲渡取引 支払の直前に持分を増加させることで、より有利な軽減税率を適用
不動産関連法人株式(不動産の保有割合が50%超の法人)の譲渡取引 株式譲渡の直前に不動産以外の資産を出資する等して、不動産の保有割合を50%以下にすることにより、租税を回避
個人以外の二重居住者を利用した取引 二重居住者とされる個人以外の者を利用した租税回避
第三国に設置したPEを利用した取引 国外PEの所得を免税とする国の企業が、配当・利子・使用料を優遇的に取り扱う国にPEを設け、それらの所得をPEに移転することにより、租税を回避

III. 租税条約は国内法の規定の適用を妨げるものではないことの明確化

租税条約の特典を利用することで、国内法に定められた租税回避防止規定等の適用を回避することが可能となるケースがあります。

OECDモデル租税条約のコメンタリーでは、このようなケースに対処するための言及が随所でなされていますが、租税条約と国内法との関係をより明確にし、租税条約が租税回避の防止を目的とする国内法の規定の適用を妨げるものではないことを明らかにするため、最終報告書には、OECDモデル租税条約第1条(人的範囲)のコメンタリーの「条約の不適切な利用」の部分の改正案が示されています。

また、租税条約が自国の居住者に対する課税に影響を及ぼすものでないことを定めたセービング・クローズの規定を、OECDモデル租税条約第1条に設けることが提案されています。

IV. 今後の対応等

上記のOECDモデル租税条約及びコメンタリーの改正案は、今後、二国間の租税条約の締結・改正のタイミングで盛り込まれるほか、Action 15にて検討され、2016年末までに署名ができるように準備が進められている多数国間協定に盛り込まれることも考えられます。

日本においては、主に先進主要国との租税条約には、すでにLOBやPPTなどの租税条約濫用防止規定が導入されていますが、今後は、多数国間協定への参加を含め、租税条約濫用防止規定を含む租税条約の締結を拡充していくことが見込まれます。

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