金融庁が金融モニタリングレポートを公表

金融庁が金融モニタリングレポートを公表

(平成27年7月3日 金融庁)金融庁は平成27年7月3日に金融モニタリングレポートを公表しました。

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第I章 金融システムの現状

1.金融セクターを取り巻く経済・市場動向

  • 世界的な低金利環境下においてリスク性資産の価格は上昇している。
  • 債券市場の流動性が低下し、資産価格のボラティリティがやや上昇している。
  • わが国の株式市場は上昇しているが、国債金利は低水準であり一時的にボラティリティが上昇した。
  • 不動産価格は上昇している。
  • 仮に市況が反転した場合にどのようなアクションをとるのかなどを経営陣が的確に判断できるガバナンス態勢を構築しておくことが一層重要となっている。

2.金融機関の対応

  • 預金取扱金融機関等では、引き続き、家計や企業からの預金が増加しているほか、海外向け融資を含めた貸出も増加している。
  • 引き続き、国債保有額が減少する一方、日本銀行への預け金、外債や投資信託等の保有額が増加している。

3.預金取扱金融機関の経営動向

  • 総じて健全性は維持されている。
  • 円金利リスクは主要行等・地域銀行は足下では横ばいの状況にある。
  • 貸倒引当率は、企業倒産が減少する中にあって将来のリスク顕在化に備えた引当方法の見直しを行う先もあり、総じてみれば横ばいの傾向にある。

第II章 業態別の金融モニタリングの概要

主要行等、地域銀行、保険会社、証券会社等に関してモニタリングの検証結果及び課題等が説明されています。

1.主要行等

1)モニタリング結果の概要

(1)海外業務

  • 3メガバンクグループでは外貨建貸出の増加により、預貸金ギャップが貸出超過の状態となっており、外貨流動性への対応が必須の状況になっている。
  • 3メガバンクグループの多国籍企業に対する貸出の与信管理態勢は相応の水準にあると認められた。
  • アジアではトランザクションバンキング業務などクロスボーダービジネスの拡大を指向しており、現地拠点レベルでのコンプライアンス要員確保は喫緊の課題である。

(2)グループ経営管理

  • 3メガバンクグループでは、グループ全体の規制・監督対応から持株会社がより一層中核的な役割を果たすことが求められる。
  • 3メガバンクグループでは、財務・人事・リスク管理等といった機能ごとのチーフオフィサーの設置などの動きがみられる。
  • 3メガバンクグループは、欧米GSIFIsと比較して政策保有株式の自己資本に対する保有割合が高く、株価下落時の自己資本への影響は無視できない。株価変動リスクの縮減を含め財務基盤の更なる強化が必要である。
  • 3メガバンクグループの外貨流動性管理については貸出超過で市場性調達の割合が大きいことから外貨預金増強、外債発行などの取組を継続することが求められる。
  • リスクデータの集計能力と報告の十分性確保のため態勢整備を進めることが重要である。

2)今後の課題の概要

  • 3メガバンクグループについては、リアルタイムでの経営状況の把握を行うため部門責任者、内部監査担当者、社外取締役、監査役との意見交換によるオフサイト・モニタリングを充実させる。
  • GSIFIs等のグローバル・ベスト・プラクティスの情報収集体制の拡充を行う。
  • 水平的レビューに加えてターゲット検査も実施する。

2.地域銀行

1)モニタリング結果の概要

(1)ビジネスモデルの中長期的な持続可能性

  • 貸出金利息収入の増減が経常利益に与える影響について一定の仮定を置いてシミュレーションした結果、2018年3月期の経常利益が2014年3月期の半分以下となる地域銀行が106行のうち2割程度ある。
  • 2011年3月期から2015年3月期の貸出金利回りは全体として低下傾向にあるものの、その低下幅にはバラツキが認められた。営業地域における競争環境や貸出ポートフォリオの違いにより生じている面が大きいと考えられるが、ニッチなマーケットを見いだし相応の金利水準で融資を実行している銀行や、長期的な取引関係の追求や営業支援などのサービスを付加することにより金利競争に陥らない営業を可能としている先も認められた。
  • 資金利益が低下する一方で有価証券関係損益は上昇傾向にあることから、多くの地域銀行では経営計画等において市場運用業務を収益の柱の一つとして位置づけ、その高度化・強化を図るとしている。
  • 貸出規模と経費には強い相関関係があり、かつ規模の利益が働いている。

(2)取引先企業の事業性評価

  • 数値目標の達成度ではなく営業の実行プロセスに主眼を置いた営業店業績評価の仕組みを構築した事例、取引先の事業性評価の必要性を営業現場が認識し、そのための事業性評価手法を自ら開発した事例、ITを活用した情報の蓄積・共有化と活用への弛まぬ努力を継続している事例等がみられた。

(3)リスク管理態勢等の充実

  • 多くの地域銀行において収益の核となる戦略的分野について、その戦略を裏付けるだけの収益性を把握できる管理態勢になっていない事例が認められた。
  • 一部の地域銀行において、大口融資先に対する実態把握が不十分となっている事例が認められた。
  • 一部の銀行においては、市場運用やリスク管理についてベテラン職員に頼った体制となっており、人材育成等が課題となっている事例が認められた。

2)今後の課題の概要

  • 中長期的に持続可能なビジネスモデルの構築状況については、適切な収益管理に基づく現状把握と将来分析による具体的で実効的な施策が社外取締役を含む経営陣において適切に検討されているかに注目してモニタリングを実施する。

3.保険会社

1)モニタリング結果の概要

(1)生命保険乗合代理店における保険募集管理態勢

  • 代理店における乗換募集の管理状況をみると、締結した保険契約が乗換募集かどうかの記録を義務付けている先もみられたが、特段の措置を講じていない先が多かった。
  • 販売シェアが高い保険会社ほど手数料率が高いという関係は見出せなかった。
  • 一部の代理店については、改正保険業法の施行に向けて試行的に募集経緯の記録・保存を開始している先が認められた。

(2)損害保険会社の保険引受リスク管理態勢

  • 大手社においては、過去の保険金等の支払実績に加え、リスク計量モデルによる計測結果を活用することなどにより商品の収益性を客観的に検証し、リスクとリターンの適切なバランス確保に努めることが望まれる。
  • 大手社については、(1)リスクカテゴリー別に利用可能資本額を配賦し、その範囲内にリスク量がとどまるように大規模損害をカバーしつつ、(2)収支が赤字となる確率が一定以下となるよう中規模損害をカバーするといった再保険の活用方法が概ね確立されていた。

2)今後の課題の概要

(1)生命保険乗合代理店における保険募集管理態勢

  • 代理店自らが問題意識を持って、適切な保険募集管理態勢や顧客情報管理態勢を整備する必要がある。

(2)損害保険会社の保険引受リスク管理態勢

  • リスク・リターンのバランス確保に向けた体制の整備が期待される。

4.証券会社

1)モニタリング結果の概要

  • 一部の会社では、中長期的な経営計画において固定費カバー率のような市場動向に左右されにくい経営上の目標を採用する動きがみられる。
  • 大手証券会社においては、欧州拠点を中心に第1の防衛線におけるリスク管理強化の動きがみられる。KPIの設定等を通じてリスク管理の可視化を進めている。

2)今後の課題の概要

  • 証券会社においては、業務の規模や特性に応じた管理指標を設定するなど、第1の防衛線において不正行為等を行い難い業務環境を作り、リスク文化の醸成に繋げていくことが期待される。

第III章 業務・リスクカテゴリー別の金融モニタリングの概要

経営管理、統合的リスク管理等、市場業務等、法令等遵守、システムの5つの業務・リスクカテゴリー別にモニタリングの検証結果及び課題等が説明されています。

1.経営管理

取締役会、監査役会・監査委員会、内部監査、外部監査及び今後の課題に関して記載されています。

1)モニタリング結果の概要

(1)取締役会

社外取締役による経営陣に対する助言・監督機能を一層発揮させることで経営管理機能を強化することの重要性を認識したうえで、取締役会の実効性を高めるための工夫等に関して下記のように記載されています。

  • 3メガバンクグループ・大手生損保会社では、取締役総数に占める社外取締役の比率が2015年7月時点では4割近くまで上昇する見込であり、地域銀行でも2割近くまで上昇する見込である。
  • 取締役会を運営する中で、社外取締役の意見に真摯に耳を傾けて経営に反映させようとする経営トップの姿勢こそが最も重要である。
  • 3メガバンクグループでは、外部のコンサルティング会社を活用し、社内外の取締役へのインタビュー等により様々な観点から取締役会運営の評価を実施している事例がみられた。
  • 地域銀行では、重要性に応じた議案の選定・絞込みを行っていない、議案内容に関する社外取締役への事前説明等を早期に行っていない、社外取締役への金融知識等に関するレクチャー等を行っていない先が多くみられた。
  • 地域銀行では、社外取締役の持つ企業経営の経験などの多様な視点や知見を取り入れながら、従来の枠組みにとらわれない大胆かつ柔軟な発想の下、地域企業や個人顧客を惹きつけられるような魅力的かつ存在感のある銀行としてのあるべき姿を絶えず探求していくことが重要である。

(2)監査役会・監査委員会

能動的・積極的に監査権限を行使することが要請されることから、その機能発揮状況に関して下記のように記載されています。

  • 3メガバンクグループ・大手生損保会社では、グループ経営管理態勢等を重点監査項目に掲げ、グループガバナンス、グループコンプライアンス等の視点から監査活動を行っている。
  • 外部監査人と月次で意見交換している事例、持株会社の監査役、主要グループ会社の監査役及び外部監査人が一堂に会して意見交換を行っている事例がみられた。

(3)内部監査

業務の多様化・国際化に応じた内部監査の高度化に向けた取組に関して下記のように記載されています。

  • 3メガバンクグループでは、グループ統一的な内部監査を実施するために監査支援システムの導入・開発に向けた動きがみられた。
  • 3メガバンクグループでは、本部のビジネス部門から中堅人材を内部監査部門に転入させる一方で、内部監査部門の人材を営業拠点長として転出させる事例がみられた。
  • 地域銀行では、営業店ごとのリスクに応じた監査項目・周期を設定している事例や、本部監査と営業店監査を相互に連携させた一体的な監査を行っている事例など、営業店監査を高度化させるための取組がみられた。

(4)外部監査

  • 一部の外部監査人では、監査先における近年のグローバルな事業展開の拡大に応じた海外子会社の監査対応において、金融事業の監査業務に精通した海外赴任経験者を監査チームに複数名配置する事例などがみられた。

2)今後の課題の概要

  • 取締役会、監査役会・監査等委員会、内部監査の機能発揮状況確認のための着眼点等を策定し、3メガバンクグループ・大手生損保会社等との間でガバナンスの高度化に向けて議論していく。
  • 地域銀行については、取締役会の機能発揮状況を中心に実態把握を行う。また、持株会社による子銀行に対する経営管理機能の発揮状況について重点的にモニタリングしていく。

2.統合的リスク管理等

統合的リスク管理態勢の確立・強化(地域銀行)及び住宅ローン業務に関して記載されています。

1)モニタリング結果の概要

(1)統合的リスク管理態勢の確立・強化(地域銀行)

  • 地域銀行においてもストレス・テストの実施を通じて、ストレス事象発生時の自己資本や多期間の損益に生じる影響を信用リスク・市場リスク間の相互連関等も考慮して把握することが望まれる。また、資産負債構造を変化させる分析など統合的リスク管理態勢の高度化を図ることが望まれる。
  • やむを得ず与信集中が生じる経営環境にある先においては、具体的で実効性のある基本方針を定め、適切にリスクの評価や制御を行うことが望まれる。
  • 貸倒引当金の損失見積期間・算定期間の長期化、フロア設定等の工夫により直近2期において連続して貸倒引当金を上回る損失が発生している先は7%にとどまっている。
  • 引当等は先行きを見越した将来損失に対する備えであり、その十分性を確保するためには、引き続き様々な工夫を検討していくことが重要である。

(2)住宅ローン業務

  • 信用リスクは個別行単位でも顕著な悪化はみられない。
  • 残高の増加による収益への寄与度は限定的で、一部には近年実行した住宅ローンの収益性が損益分岐点近傍まで低下している先もみられる。

2)今後のモニタリング・課題の概要

(1)統合的リスク管理態勢の確立・強化(地域銀行)

  • 貸出金の自己査定に関しては、統合的リスク管理態勢、与信集中リスク等、引当等の管理態勢の検証を行い、これが十分でない場合に大口与信先を中心に自己査定の状況を検証する。
  • 自己資本充実度と統合的リスク管理態勢の整備状況が金融機関のリスクに見合っているか等を検証する。
  • 与信集中リスクの管理態勢、規程・債務者区分遷移・引当額の十分性等を検証する。

(2)住宅ローン業務

  • 現在の住宅ローンビジネスモデルの妥当性・持続可能性について一段の考察を加えることが重要である。
  • 今後金利が上昇した場合、銀行の収益改善効果がある一方でデフォルトが増加することも考えられる。適切なALM運営、信用リスク管理強化が重要である。

3.市場業務等

1)モニタリング結果の概要

(1)投資運用業者の運用態勢

  • 日系の投資運用業者では社長・取締役・監査役の8割が系列の販売会社出身であり、独立社外取締役を選任しているケースは限定的であった。
  • 系列の販売会社を持つ投資運用業者の過半数において、系列販売会社経由での投信販売が5割を超えている。
  • 日系の投資運用業者において、運用を外部委託している割合は5割、海外資産を投資対象とした投信に限ると6割を超えている。

(2)投資信託販売態勢

  • 業績評価の判断指標として6割以上の販売会社が「預り資産残高」・「顧客基盤拡大」の比重を増加させており、ストック重視の動きが着実に広がっている。
  • 米国と比較して高い販売手数料の設定根拠については、販売コストを十分精査した上で設定する動きはみられない。

(3)金融機関の有価証券運用

  • 地域金融機関において、リスク特性の把握が不十分な事例、ファンド運用会社の運用手法を検証していない事例、仕組商品に関する業者時価の妥当性の検証が不十分な事例等があった。
  • 急激・大幅な金利上昇などストトレス時におけるアクションプランを定めている金融機関は一部にとどまっている。

2)今後の課題の概要

(1)投資運用業者の運用態勢

  • 系列に拘らずに資産運用業務に精通した人材を経営陣に登用したり、独立社外取締役の選任によりけん制機能を高めることが期待される。
  • コアとなる大型・長寿ファンドを育てることで運用効率を高めて顧客・販売会社の負担軽減につなげることが期待される。

(2)投資信託販売態勢

  • 顧客のライフステージや属性に合わせたコンサルティング営業を進展させることが重要である。
  • 商品開発・販売・運用等に係る金融機関がフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)を果たすことが求められている。

(3)金融機関の有価証券運用

  • 海外クレジット商品・複雑な仕組債への投資意欲は限定的であるが、急激な市場の変化に備えて市場リスク管理態勢の高度化を図ることは重要である。
  • 市場リスクの多い地域金融機関は、ストレス時におけるアクションプランの策定が求められる。

4.法令等遵守

1)モニタリング結果の概要

(1)反社

  • 反社DBの構築に際して大半の金融機関が外部情報を活用している。
  • 事前審査のため大半の金融機関がフィルタリングシステムを導入している。
  • 多くの地域金融機関において定期的に反社との取引状況のモニタリング結果を経営陣に報告していた。

(2)マネロン

  • 3メガバンクグループ及び地域金融機関においてリスクベース・アプローチが可能な取引モニタリングシステムを導入している先がみられた。
  • 3メガバンクグループでは、取引モニタリングシステムでの抽出基準の有効性を検証する取組がみられた。
  • 地域金融機関では抽出基準の有効性を検証していない先がみられた。

2)今後の課題の概要

  • 反社・マネロン等管理態勢について改善の余地がある金融機関は、重要な課題を抱えていると認識し、経営陣が主体となって態勢強化に取り組むことが求められる。

5.システム

1)モニタリング結果の概要

(1)サイバーセキュリティ管理態勢

  • 3メガバンクはCSIRT(Computer Security Incident Response Team:緊急時対応及び早期警戒のための体制)など専門組織を設置するなどして管理態勢の整備を進めている。
  • IB不正送金について、多くの金融機関はワンタイムパスワードの利用を進めている。

(2)基幹システムの将来計画と移行プロジェクトの状況

  • 基幹システムを自行で運営している主要行等及び地域銀行では基幹システムのあるべき姿を分析した上でシステム移行作業を開始しており、作業時間が不十分な例はなかった。
  • 移行プロジェクトの移行判定に影響を及ぼす所管部署の管理態勢の課題が認められた。

(3)ビジネスモデルの特徴に応じたITガバナンス

  • 3メガバンクグループは、海外現法等において貸出業務・トランザクション業務等を提供しており、そこで利用する現地システムをグローバル共通システムに移行する計画などIT統括部門による統括機能を強化する取組を行っている。
  • 大手生損保会社は、グローバルなシステム連携はなく、現地で個別にシステム開発・運用を実施している。

2)今後の課題の概要

  • モニタリング対象を広げ、サイバーセキュリティ管理態勢の実効性についてモニタリングを実施する。
  • 基幹システムの将来計画の検討状況等をモニタリングする。
  • 基幹システムの移行プロジェクトの管理態勢についてモニタリングする。

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