金融庁「金融モニタリングレポート」を公表

金融庁「金融モニタリングレポート」を公表

(平成26年7月4日 金融庁)金融庁は、「金融モニタリングレポート」を2014年7月4日公表しました。平成25事務年度金融モニタリング基本方針に基づいた1年間の金融モニタリング結果をまとめたもので、人口減少等による国内業務の縮小傾向の中での、メガバンクにおける海外業務や信託・証券を含むグループ経営管理のあり方、地方銀行におけるビジネスモデルの持続性等の課題について、今後の銀行業務運営や金融モニタリングの方向性が示されています。

関連するコンテンツ

2014年7月4日に金融庁より公表された「金融モニタリングレポート」は、大きく4つの章により構成されており、各章に記述されている内容の概要を記載する。

1.「第I章 金融システムの現状」

金融システムとの関係が深いマクロ経済や金融市場など金融セクターを取り巻く状況について記述されている。以下、概要を記載する。

  • 金融セクターを取り巻く経済や市場動向が概観され、こうした状況変化を受けて、金融機関がバランス・シートをどのように変化させているかを確認している。さらに、経済・市場環境やバランス・シートの変化が、金融機関の収益・リスク・健全性に与える影響や留意点について整理されている。
  • 2010年3月期以降、預金取扱金融機関の収益性は高まっており、現時点において、健全性は総じて維持されているものと考えられる。
  • 収益の内訳をみると、業務純益から債券関係損益や信用コストの一部等を除いたコア業務純益では、貸出金利回りの低下を主因として全般に低下傾向にある。ここ数年の高い収益は、貸出金利回りの低下の影響が貸出金残高の増加によりある程度相殺される中、金利が低下局面にあったことによる債券売却益や、信用コストの低下傾向などが寄与してきたものといえる。
  • 円金利リスクは、預金取扱金融機関全体では2013年度中低下したが、その内容や程度には、業態・個別金融機関により差異がある。主要行等では、国債を中心とした債券残高が大幅に減少し、デュレーションも幾分短期化したことによりリスクは大きく低下した。地域銀行では、国債残高が減少したものの、社債等の残高が増加したこと、有価証券デュレーションがさほど短期化していないこと、貸出金残高が増加していることから、全体の円金利リスクは横ばいとなっている。信用金庫・信用組合は、地方債・社債等の残高増もあって、有価証券を主因に円金利リスク指標が高くなっている。
  • 株式リスクは、2012年秋以降の株価上昇もあって、主要行等、地域銀行では、保有株式の評価益が増加し、2014 年3月期決算においては株式売却益等の計上もあり、自己資本比率に対しプラスに寄与しているが、一方で、株価下落時の自己資本に及ぼす影響はなお小さいものとは言えず、株式リスクの管理は、引き続き重要である。
  • 信用リスクは、預金取扱金融機関では、貸出金利回り及び資金運用・調達利回りが趨勢的に低下してきた一方、信用コストは2006年3月期以降、最低レベルまで低下している。預金取扱金融機関の国内貸出業務の収益性に対しては、歴史的に見ても極めて低い水準の信用コストの寄与が小さくない。他方、中長期的に金融機関の健全性やビジネスモデルの持続性を確保するためには、適切なリスク・リターンの分析及び借手企業の事業性等の適切な評価の下、貸出金利に信用リスク等が適切に反映されることが重要である。

2.「第II章 業態別の金融モニタリングの概要」

3メガバンクグループ、地域銀行、外国銀行、保険会社に対して実施した業態別の金融モニタリングの検証結果や課題が記述されている。以下、概要を記載する。

3メガバンググループ

(1. グループ経営管理)

グループ経営

  • 持株会社のグループ管理機能は一層重要になってきている。
  • 子会社による持株会社への事前相談・協議事項を拡大するなど、持株会社の子会社に対する経営管理機能を強化している。

グループコンプライアンス

  • 銀行・証券間のファイアーウォール規制への一部見直し等を踏まえ、法人向け証券業務を中心に銀証連携を推進している。
  • 銀証連携の推進は、顧客の多様な金融ニーズに一つのグループとして対応することで顧客利便に適う面がある一方、利益相反や銀行の企業に対する優越的地位の濫用といった顧客保護の観点からの問題が生じないよう、コンプライアンス態勢が確立されていることが必要である。
  • 過度なノルマや不適切な営業方法により優越的地位の濫用が生じないよう、持株会社による検証の実施など、適切な防止態勢の構築が求められる。

グループリスク管理

  • 持株会社によるグループベースでの与信管理の重要性が増している。
  • 持株会社主導でグループベースでのリスク管理態勢を強化する動きが認められる。一方、こうしたリスク管理の基礎となるグループとしての与信合算額の適時把握の状況については、商業銀行など単体では一定の水準に達しているが、グループベースでは自動集計のためのデータシステムを含む経営情報システム(MIS)が構築途上の段階にあり、システム開発の早期の実行が課題である。

(2. 融資業務)

  • 中小企業に対する融資業務の効率化等を目的として、営業拠点を集約する動きが一部でみられるが、引き続き顧客ニーズに応じたコンサルティング機能を営業拠点が十分に発揮し、きめ細かな顧客対応を行うことが課題となっている。
  • 非日系企業への融資が増加しており、国内にとどまらず、グローバルな産業分析や与信管理が重要になっている。
  • 本邦大企業の中には、業種によっては、国内で同一業種に多数の企業が存在し、過当競争により総じて低収益体質にあり、国際競争力が低下している先もあるため、個別の企業だけでなく、産業全体を視野に入れて、その成長に寄与することが重要である。

(3. 信託業務)

  • 財産承継信託については、大手信託の営業職員の商品知識や顧客説明態勢は一定の水準にあるものと認められるが、各社とも、販売促進のために、信託代理店の活用を図っているところであり、今後の業務拡充に向けて、信託代理店の営業職員も含め、更なる専門知識・スキルの向上に努めることが課題となっている。

今後の課題として、以下のような点を重点的に検証していく予定であるとしている。

  1. 業務の多様化・国際化に対応するためのグループ経営管理態勢、銀証連携が進む中において、利益相反防止などを確実にするためのグループコンプライアンス態勢、MISを含むグループリスク管理態勢の強化などに係る継続的な検証。
  2. 海外業務の推進を踏まえ、非日系与信に対する審査管理態勢、日系企業のグローバル化を踏まえたCMSの提供などの対応状況、外貨建貸出を支える安定的な外貨調達確保の状況。
  3. 本事務年度のモニタリング結果(国内融資業務、市場リスク管理、法令等遵守など)のフォローアップとその他の主要行等への展開。

地域銀行

  • 地域銀行のビジネスモデルの中長期的持続性について検証が行われ、2025年3月末時点での貸出市場規模を推計した結果、これまでの企業向け貸出と生産年齢人口動態の関係等が今後も続くと仮定すれば、いずれの地域においても、貸出残高は減少すると推計されている。一方、各地域銀行が策定している中期経営計画を見ると、多くの銀行において計画期間中(3年間程度)に貸出金の増加を目標として掲げているが、全体としては中長期的に成立しない可能性がある。
  • 多くの地域銀行では、貸出業務の収益性の低下を経費削減で補ってきているが、更なる取組みは、営業職員の営業力は目利き力の低下を招き、経費のかからない定型的な貸出への傾斜や顧客利便の低下を招かないかといった懸念がある。
  • 地域銀行ごとに地域の典型的なメイン先企業であり、銀行にとっても大口融資先となる企業を中心に1~2社を選んで、当該企業の事業性をどう見るべきか、当該企業の経営改善に何が必要かといった事業性評価検証を行った結果、各銀行は借手企業を取り巻く一般的な市場の見立てや方向性についてはある程度把握していたが、一方、こうした状況把握を踏まえて、個別企業が採るべき戦略を検討し、それを実行するための具体的な提案につなげる部分には課題が見受けられた。
  • 銀行の健全性が将来にわたり確保され、地域の経済や企業の発展のために適切な金融仲介機能が持続的に発揮されることが重要である。

今後の課題として、ビジネスモデルが将来にわたって持続可能であることが必要であり、そうした観点からの議論を、銀行のガバナンスの在り方も含め、地域銀行経営陣との間で進めたいとしている。

外国銀行

G-SIFIs在日拠点

  • 継続的にグループ全体の経営状況を把握することが重要である。
  • 経営上の重要事項に関する業務の引継ぎ計画(サクセッション・プラン)の立案及び実施が重要である。
  • 業務の拡大・変更に対応した内部管理態勢の整備が重要である。
  • 外部委託について、在日拠点としては、委託先の管理を本店・本部等任せとするのではなく、主体的に行うことが重要である。
  • 提供する金融サービスの内容を踏まえ、業容に見合った、マネー・ローンダリングを含めた法令等遵守態勢の強化、システム構築等が重要である。

非G-SIFIs在日拠点

  • グループ全体の経営状況やそれを踏まえた在日拠点の経営戦略について、当局への説明が不足している事例がみられ、当局との日常のコミュニケーションをより密に行うことが望まれる。
  • 主要な業務を本部・本店に依存していることから、G-SIFIs在日拠点の規模と比較して人員等の規模が小さいケースが多い。当局のモニタリングにあたっては、本部・本店や母国当局と、在日拠点の業務運営状況の把握に関して、緊密な連携をとっていくことが重要。

今後の課題として、引き続き、リスクの高い分野を特定し、当該分野を重点的にモニタリングしていくとしている(例:(1)在日拠点の経営陣の当局に対する説明責任や適格性に係る検証、(2)外部委託(アウトソーシング)先を在日拠点が十分に管理しているかの検証、(3)市場関連、与信関連業務の拡大等といった変化するビジネスモデル・業容に見合った業務運営態勢の整備状況の検証)。

3.「第III章 テーマ別の水平的レビューの概要」

業態横断的に実施した水平的レビューのモニタリング結果が記述されている。以下、概要を記載する。

経営管理

  • 取締役会が業務執行に対する監督機能を的確に果たすためには、社外の視点を活用し、その多様性を確保すること及び取締役会において実効性のある審議が行われることが重要。
  • 社外取締役が期待される機能を実質的に果たすためには、社外取締役の独立性、能力・見識、経営への強いコミットメント、判断に必要な情報提供等のサポート態勢が重要である。
  • 1件あたりの審議時間は短い傾向にあり、また、取締役会の会議資料が大部で、限られた会議時間の中で経営判断に付すべきポイントが明確になっていない先が認められた。こうした中、重要案件の審議時間を確保するため付議案件を絞り込むなどの取組みが行われている。
  • 社外取締役が期待される機能を発揮するため、社外取締役の判断に必要な情報の事前説明などサポート態勢を強化する等事例がみられる。
  • 業務の多様化や国際化が進む中、執行部門幹部がこうした変化に対応できる人材により構成されていることが重要である。

監査役監査

  • 監査役等の実効的な機能発揮のためには、監査役等を補助すべき使用人(補助人員)を置くなどのサポート態勢が重要。金融機関の一部においては、監査役室を設置していない事例や、設置している場合でも補助人員が1名となっている事例も認められる。
  • 監査役監査の目的である取締役の職務執行の監査を行う上で、監査役と代表取締役との意見交換が重要である。
  • 監査役等は、会計監査人による会計監査の相当性を評価することが求められていること、またコーポレート・ガバナンスの一層の充実を図るという観点から、監査役監査と会計監査人監査との一層の連携が重要であるとともに、監査役等が、会計監査人との契約継続・更新に際し、会計監査人の職務遂行の状況や会計監査に係る品質管理態勢等を評価することが必要である。

内部監査

  • 金融機関において実効性のある内部監査態勢が構築・運用されることは、金融機関の健全性、業務の適切性等を含めた実効性あるガバナンス態勢を確保する上で、極めて重要である。
  • 内部監査の高度化の一環として、従来のような金融機関の内部規定やリスク・リミット等の遵守状況を検証する「準拠性」の監査から、内部規定やリスク・リミット自体の「妥当性」や経営管理を対象とした内部監査が重要になっている。
  • 内部監査の高度化に対応して、内部監査の十分な資源の確保、特に、監査及び監査対象部署のビジネスを理解できる優秀な人材の配置、そのためのインセンティブとしての幹部へのキャリア・パス等が重要になっている。
  • 内部監査の高度化に対応して内部監査が有効かつ効率的に機能しているかどうかについての品質評価(内部評価及び外部評価)が重要になっている。
  • 変化のスピードの速い金融機関の業務、それに対応した多様なリスクの管理態勢等を対象に、限られた資源で効率的に内部監査を行うためには、監査に先立つリスク・アセスメントが極めて重要である。
  • 内部監査の高度化のためには、定期的なリスク・アセスメントに加え、金融機関の業務や内外環境の変化等に関するオフサイト・モニタリングが重要である。
  • 内部監査で指摘された事項については、被監査部門において適切な改善が図られることが必要であるとともに、内部監査部門において改善状況のフォローアップを行うことが重要である。
  • 金融機関全体としての監査機能の強化の上では、内部監査、監査役監査、外部監査(会計監査人監査)のいわゆる三様監査が連携を密にする必要がある。特に、内部監査部門の専門人材の確保が容易ではない本邦金融機関においては、三様監査の連携は監査機能全体の実効性の向上の上で重要である。

反社会的勢力、マネー・ローンダリング(資金洗浄)への対応

  • 反社排除の方針の宣言等、経営陣が反社対応に適切に関与することは、当該金融機関による組織的かつ継続的な対応の上で不可欠である。
  • 反社対策とマネロン・テロ資金供与対策は、密接に関連するものであり、反社対応部署とマネロン等対応部署が区々となっている場合には、両者間の適切な連携を図ることが有効である。また、営業店等のフロント部署と反社対応部署・マネロン等対応部署等のミドル・バック部署においても適切に連携を行い、反社・マネロン等対応にあたる必要がある。
  • 反社を取引から適切に排除するためには、各金融機関において、反社情報をデータベース化するとともに、情報の適時の更新等、データベースの質的な向上が必要である。
  • 金融機関が疑わしい取引の届出を適切に行うためには、対象となる取引を抽出するための取引モニタリングシステム、及び抽出した取引について適切に疑わしい取引の届出を行うための内部管理態勢を構築するとともに、当該態勢を適時に見直すことが必要である。
  • 反社との関係の遮断には、取引関係を持たないように、取引開始前に謝絶することが基本であるが、合わせて取引開始後に反社と認識された場合の取引解消に向けた取組みも重要である。

投資信託販売業務態勢

  • 日本において、様々な資産への分散投資を通じた個人の安定的な資産形成を進めていくには、(1)金融機関が顧客のニーズを的確に把握し、そのニーズに沿った商品のうち顧客にとって最良の商品を提供する、(2)こうした取組みが、顧客による投資の成功体験をもたらし、ひいては、貯蓄から投資への流れを一層進めることにつながる、(3)この結果、金融機関においても、投資信託販売業務の収益が拡大・安定していく、という好循環を実現することが重要である。
  • 銀行の業績評価で預り資産残高等を重視する動きについても、営業現場の目標(インセンティブ)が行き過ぎると、例えば、営業店で顧客の解約の求めに消極的な対応が取られるなど、顧客の意向に沿わない営業がなされる懸念もあることから、目標設定の適切性等について不断に検証されることが重要である。
  • リスクの複雑な商品を、銀行窓口ではなくグループ内の証券会社でのみ取り扱う場合においても、顧客に適切な情報提供を行い、最適な商品の提案を行うことが求められる。

ITガバナンス

  • IT投資が業務粗利益に占める割合をみると、一部のG-SIFIsでは7%となっているのに対して、3メガバンクグループでは5%程度となっている。また、IT 投資の目的をみると、G-SIFIsでは戦略的IT 投資を2~3割行っている先があるのに対して、3メガバンクグループは1割程度となっている。このような状況下、3メガバンクグループでは、事業戦略目標の早期実現や新ビジネス創出のための戦略的IT投資が課題となっている。
  • 多くの地域銀行においては、システムコストの削減や平準化、高度なシステム機能の実現等を目的として、勘定系システム等の基幹システムを自行で開発・運用する形態から、複数の銀行と共に共同センターを利用する形態に移行している。
  • 共同センター利用に係る課題として、(1)システム人材の確保・育成、(2)共同化範囲の拡大、時期システムの検討といった課題がある。

4.「第IV章 当局としての取組み」

前述の第2章、第3章において言及されなかった主な取組みや今後の課題が記述されている。以下、概要を記載する。

  • グローバルに活動する金融機関に対して有効かつ適切な監督対応を実施するため、監督カレッジや個別面談等を通じて、海外当局(米、英、欧州、韓国、香港、シンガポール等)と情報交換を行い、連携の強化を図った。
  • 金融モニタリングの端緒となる情報収集を強化するため、金融機関等の監督・検査及び金融資本市場の監視、その他金融庁の業務に関連する情報収集・分析の強化、情報活用を図ることとして、「金融資本市場に関連するインテリジェンスの収集・分析PT」(以下「インテリジェンスPT」という)を設置した。
  • 分析等のベースとなる定期的な報告資料や水平的レビュー等で入手すべき情報は、金融システムを取り巻く経済金融情勢や金融機関の経営環境に応じて、見直しや追加収集を機動的に行っていく。また、監督・検査両部局での連携強化を図りながら、収集した情報を統合的に管理・活用する態勢(ITシステムを含む)を整備することが重要である。
  • 専門性の高い分野に関する知見の蓄積・拡充や、グローバル・ベスト・プラクティスに関する知見を組織的に蓄積・拡充していくため、中長期的な観点から、外部専門家の登用や、内部人材の育成等に計画的に取り組んでいく必要がある。
  • 金融モニタリング基本方針に則り、検査手法の改善や見直しを行う中で、昨年12 月における一部銀行等における反社との取引の問題を踏まえ、(1)問題事案やリスクの早期発見、(2)重要事案についてのより深い検証、(3)検査の運用や態勢の改善等の検査の質的向上策について公表した。
  • リスク専門チームを編成し、信用リスク管理に関するベスト・プラクティスを把握し、金融機関の信用リスク管理の高度化につなげていく。その過程において、高度な信用リスク管理の在り方について知見を蓄積し、金融機関に還元していく。

金融機関に関する最新情報

お問合せ

 

RFP(提案書依頼)

 

送信

新デジタルプラットフォーム

新機能の実装と新デザイン