合併・株式交換等の税効果会計適用のポイント

合併・株式交換等の税効果会計適用のポイント

本稿では、組織再編のうち、会社分割以外の合併や株式交換等における税効果会計の取扱いをあらためて復習し、設例を一部用いて解説する。なお、文中、意見に関する部分は、筆者の私見であることを申し添える。

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合併の場合の税効果

(1)取得の場合(図表1)

1. 税効果に係る会計処理

合併の場合、取得企業は、企業結合日において、被取得企業から生じる一時差異等に係る税金の額を、将来の事業年度において回収または支払が見込まれない額を除き、繰延税金資産または繰延税金負債として計上する。被取得企業から生じる一時差異等とは、取得原価の配分額(繰延税金資産および繰延税金負債を除く)と課税所得計算上の資産および負債の金額との差額と、取得企業に引き継がれる被取得企業の税務上の繰越欠損金等である(企業会計基準適用指針10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(以下、「結合・分離適用指針」という)71項)。

パーチェス法の場合、繰延税金資産および繰延税金負債は、暫定的な会計処理の対象となる。暫定的な会計処理の対象としていた識別可能資産および負債の取得原価への配分額の見直しに伴い、企業結合日に認識された繰延税金資産および繰延税金負債への取得原価の配分額の見直しがされる場合、企業結合日におけるのれん(または負ののれん)の額が修正されたものとして処理する(結合・分離適用指針73項(1))。暫定的な会計処理の確定または見直しが、企業結合年度の翌年度において行われた場合、企業結合年度に当該修正が行われたとしたときの損益影響額(のれんの償却額等)を、企業結合年度の翌年度において、原則として、特別損益に計上する(1)(結合・分離適用指針70項)。

また、将来年度の課税所得の見積りの変更等による繰延税金資産の回収見込額の修正により、企業結合日に認識された繰延税金資産および繰延税金負債への取得原価の配分額の見直しがされる場合がある(結合・分離適用指針73項(2))。この繰延税金資産の回収見込額の修正のうち、企業結合年度における修正は、企業結合日におけるのれん(または負ののれん)の額を修正し、企業結合年度の翌年度における修正は、原則として、翌年度の損益(法人税等調整額)に計上する。

ただし、企業結合年度の翌年度における修正であっても、その修正内容が、明らかに企業結合年度における繰延税金資産の回収見込額の修正と考えられるとき(企業結合日以後1年以内に行われたものに限る)は、企業結合日におけるのれん(または負ののれん)の額を修正する。このようなのれん(または負ののれん)の修正となるのは、回収見込額の修正が、企業結合時点に存在していた事実や状況について、後日追加的な情報を入手したことによるような場合と考えられる。

のれん(または負ののれん)は取得原価の配分残余であるため、のれん(または負ののれん)に対する税効果は認識しない(結合・分離適用指針72項)。なお、非適格合併等における税務上ののれん(資産調整勘定または差額負債調整勘定)が認識される場合においては、その額を一時差異とみて、繰延税金資産または繰延税金負債を計上したうえで、配分残余としての会計上ののれん(または負ののれん)を算定する(結合・分離適用指針378-2項)。

取得と判定された合併等において、取得企業が被取得企業から受け入れた子会社株式等の一時差異(会計制度委員会報告10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(以下、「個別税効果実務指針」という)24-2項の要件(後述「株式交換・株式移転の場合の税効果」(2)参照)を満たしたものに限る)に関する税効果は認識しないものとされている(個別税効果実務指針34-2項)ことに留意が必要である。

(1)現在、会計基準24号が適用されている状況を踏まえ、企業結合年度の財務諸表に反映させる方向性について検討されている(2012年6月7日企業会計基準委員会審議事項(2)-1)。

(図表1)設例1:合併の税効果(取得の場合)

【設例1の前提】

1. ×1年4月1日、X社を吸収合併存続会社とし、Y社を吸収合併消滅会社とする合併を行った。当該合併はX社を取得企業とする取得と判定された。X社は、3月決算会社である。
2. 合併対価は株式であり、Y社の株主へ交付した株式の時価は500(取得原価)である。
3. 税務上、非適格合併である。
4. Y社から受け入れた資産・負債の取得原価の配分額(時価)とX社における税務上の取得原価は以下のとおりである。

  取得原価の配分額(時価) 税務上の取得原価   取得原価の配分額(時価) 税務上の取得原価
資産 450 500 負債 50 50

5. 取得企業X社における繰延税金資産は全額回収可能とする。
6. 法定実効税率は便宜上、40%とする。

<企業結合日(×1年4月1日)のX社の会計処理>

税務

借) 資産 500 貸) 負債 50
資産調整勘定* 50 資本金等の額 500

* 税務上ののれん(資産調整勘定)は、当初計上額50÷60×事業年度の月数(12)の額が損金算入される。

会計

借) 資産 450 貸) 負債 50
繰延税金資産* 40 払込資本 500
のれん 60  

* 繰延税金資産:(資産に係る将来減算一時差異50(=500-450)+資産調整勘定50)×0.4=40

  • X社は、企業結合日において、Y社から受け入れた資産および負債等に関して生じた一時差異等(識別可能資産に対する取得原価の配分額450と当該資産の税務上の取得価額500との差額50)について税効果20(=(500-450)×0.4)を認識する。
  • 資産調整勘定50については、5年間で損金算入されるため、将来減算一時差異とみて、税効果20(=50×0.4)を認識する。
  • これらの繰延税金資産は、X社における繰延税金資産の回収可能性の判断に基づき、計上する。
  • 配分残余ののれん60(=500-(450+20+20-50))については税効果を認識しない。
  • なお、資産調整勘定50については、毎期10(=50÷60×12か月)ずつ損金になるごとに、以下の仕訳をすることになる。
借) 法人税等調整額 4 貸) 繰延税金資産 4

(出所)結合・分離適用指針設例32を一部参考に作成

2. 合併直前事業年度の税効果の扱い

取得の場合の繰延税金資産の回収可能性の扱いについては、図表2のように示されている(結合・分離適用指針75項)。

このため、企業結合による影響は、企業結合年度から反映させることになるため、取得が行われる直前の事業年度の取得企業の繰延税金資産の回収可能性の判断においては、企業結合による影響を反映できないことになる。

(図表2)繰延税金資産の回収可能性

  • 繰延税金資産の回収可能性は、取得企業の収益力に基づく課税所得の十分性等により判断し、企業結合による影響は、企業結合年度から反映させる。
  • 将来年度の課税所得の見積額による繰延税金資産の回収可能性を過去の業績等に基づいて判断する場合には、企業結合年度以後、取得した企業または事業に係る過年度の業績等を取得企業の既存事業に係るものと合算したうえで課税所得を見積る。

(2)共通支配下の取引等の場合(図表3、4、5)

1. 税効果に係る会計処理

共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産および負債は、原則として、移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上する(企業会計基準21号「企業結合に関する会計基準」41項)。

結合・分離適用指針設例35「共通支配下の取引における吸収合併存続会社の税効果会計」(2)1. において、吸収合併存続会社が吸収合併消滅会社に係る資産および負債の合併期日の前日に付された適正な帳簿価額を引き継ぐ場合には、繰延税金資産についても、吸収合併存続会社における回収可能性の有無にかかわらず合併期日の前日に付された適正な帳簿価額をそのまま引き継ぐとされている。

(図表3)設例2:合併の税効果(共通支配下の取引の場合、子会社同士の合併)

【設例2の前提】

1. ×1年4月1日、P社の100%子会社であるS1社を吸収合併存続会社とし、同じく、P社の100%子会社であるS2社を吸収合併消滅会社とした合併を行った。S1社およびS2社は、3月決算会社である。合併対価は株式である。
2. ×1年3月期末のS2社貸借対照表

棚卸資産*1 200 負債 200
繰延税金資産*2 20 繰延税金負債 40
投資有価証券(帳簿価額500) 600 資本金 1,000
その他資産 480 その他有価証券評価差額金 60

*1 棚卸資産の税務上の簿価は250とする。
*2 棚卸資産に係る将来減算一時差異250-200=50に対して、S2社における回収可能性を判断のうえ、繰延税金資産20(=50×0.4)を計上している。

3. ×2年3月期末、S2社から受け入れた棚卸資産に係る将来減算一時差異200について、S1社では回収可能性はないと判断された。
4. ×2年3月期末、S2社から受け入れたその他有価証券については、期末の時価が550になった。
5. 法定実効税率は便宜上、40%とする。

<企業結合日(×1年4月1日)の会計処理>

S2社の資産および負債の合併期日の前日に付された適正な帳簿価額を引き継ぐ場合には、繰延税金資産についても、S1社における回収可能性の有無にかかわらず、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額をそのまま引き継ぐ(結合・分離適用指針206項(1))。

借)
棚卸資産 200 貸) 負債 200
繰延税金資産 20 繰延税金負債 40
投資有価証券 600 その他有価証券評価差額金 60
その他資産 480 払込資本 1,000

<×2年3月期末の会計処理>

受け入れた諸資産に係る一時差異に対する繰延税金資産の回収可能性は、通常と同様に、期末において見直される。

借) 法人税等調整額 20 貸) 繰延税金資産 20
繰延税金負債 40 投資有価証券 100
その他有価証券評価差額金 60
投資有価証券 50 繰延税金負債 20
その他有価証券評価差額金 30

(出所)結合・分離適用指針設例35を一部参考に作成

(図表4)設例3:合併の税効果(共通支配下の取引の場合、親会社と債務超過の子会社との合併)

【設例3の前提】

1. P社(親会社、吸収合併存続会社)は、×1年4月1日に100%子会社S社と合併する。P社は、3月決算会社である。
2. P社のS社株式の取得原価は100、S社への貸付額は200であった。
3. S社の×1年3月31日時点の貸借対照表

資産 200 P社からの借入金 200
その他負債 150
資本金 100
利益剰余金* △250

* 繰越欠損金も△250とする。

4. S社の繰越欠損金250については、合併直前事業年度末は、子会社は合併が行われないものと仮定した場合の将来課税所得の見積額により、税効果の検討をすることになるものと考えられる((2)共通支配下の取引等の場合2.参照)。このため、債務超過であるS社は、繰延税金資産の計上はできないものとする。
5. 法定実効税率は便宜上、40%とする。

<合併の直前の決算日(×1年3月31日)の会計処理>

  • P社は、子会社株式減損100と、貸付金に対する貸倒引当金(債務超過分の150を引き当てするという前提)を設定し、貸倒引当金繰入150を計上する。いずれも、税務上、否認されるものとする。
借) S社株式評価損 100 貸) S社株式 100
貸倒引当金繰入 150 貸倒引当金 150
  • 子会社株式減損100については、有税で評価損を計上しているため、売却等により、当該一時差異が解消するときにその期の課税所得を減額する効果を持つものであれば、子会社株式に係る将来減算一時差異に該当する。
  • しかし、合併時に、当該一時差異が解消するときに、税務上、抱合株式の税務上の簿価を資本金等の額から減算するものと考えられる。このため、子会社株式減損100については、損金不算入になるものと考えられることから、繰延税金資産を計上しないものと判断した。
  • 貸付金に対する貸倒引当金繰入150については、資産負債法の考え方によれば、会計と税務の資産・負債の差額があるため、将来減算一時差異として、繰延税金資産60(=150×0.4)を計上することも考えられると思われる。しかし、当期、貸倒引当金繰入が税務上加算されるが、合併時の翌期には、会計上、貸倒引当金戻入益を計上し、税務上同額の減算が発生し、当該一時差異の解消時に課税所得を減額することにならず、損金不算入になるものと考えられる。このため、ここでは、繰延税金資産は計上しないものと判断した。

<P社における合併受入れの会計処理>

借) 資産 200 貸) P社からの借入金 200
その他負債 150
P社からの借入金 200 S社への貸付金 200
貸倒引当金 150 貸倒引当金戻入益 150
抱合株式消滅差損 150 S社株式 0

<合併後の決算日(×2年3月31日)の会計処理>

  • S社の繰越欠損金250について、P社において引き継いだ場合において、当該繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性があると判断された場合、合併後の最初に到来する事業年度末に、当該繰延税金資産を計上する。
借) 繰延税金資産* 100 貸) 法人税等調整額 100

* 250×0.4=100

2. 合併直前事業年度の税効果の扱い

共通支配下の取引の場合における、当該組織再編が行われる直前事業年度の結合当事企業の繰延税金資産の回収可能性については、結合・分離適用指針等では明記されていないものと考えられる。しかし、結合・分離適用指針において、以下のような記載がある。

親会社が子会社を吸収合併する場合、「親会社が子会社から受け入れる資産及び負債は、・・・合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上」(結合・分離適用指針206項(1))し、「受け入れた諸資産に係る一時差異に対する繰延税金資産の回収可能性は、通常と同様に、期末において見直される」(結合・分離適用指針設例35(2)①)とされている。また、分離元企業の会計処理および税効果会計の扱いとしての記載であるが、移転した事業に係る適正な帳簿価額の算定にあたり、投資が継続しているとみる場合には、事業分離が行われないものと仮定した場合の将来課税所得等を勘案して判断するものとされている(結合・分離適用指針90項(1) 、107項(2))。合併消滅会社における繰延税金資産の回収可能性については、この考え方により、投資が継続しているとみる場合、合併が行われないものと仮定したときの当該子会社の将来年度の収益力に基づく課税所得等を勘案して判断することになると考えられる。

吸収合併存続会社についても、合併直前年度の繰延税金資産の回収可能性は、自社の将来年度の収益力等に基づく課税所得等により判断し、合併消滅会社の将来年度の収益力に基づく課税所得等は勘案しないものと考えられる。これは、合併消滅会社の適正な帳簿価額を引き継ぐことになるため、合併消滅会社の税効果の考え方と整合させるためとされている(2)。

したがって、吸収合併存続会社および吸収合併消滅会社ともに、将来の合併を見込んで繰延税金資産の回収可能性を判断することはなく、合併がないものとして、合併直前の繰延税金資産の回収可能性を判断することになるものと考えられる。また、合併直前年度は、それぞれの過去の業績に基づく会社区分で繰延税金資産を計上するものと考えられる。

その後、合併後の事業年度末において、合併後の将来課税所得に基づき、繰延税金資産の回収可能性を判断した結果により繰延税金資産および繰延税金負債を計上することになるものと考えられる。

(2)布施伸章『詳解 組織再編会計Q&A』清文社

<参考:連結納税の場合の取扱い>

実務対応報告5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」Q13(2)1. では、現在、連結子会社である会社を追加取得する意思決定がなされ、実行可能性が高いと認められる時点から、当該連結納税子会社となる連結子会社の個別財務諸表において、将来、加入するものとして繰延税金資産の回収可能性を判断するものとされている。逆に、現在連結子会社ではない会社にはこの扱いは適用されない。

一方、結合・分離適用指針75 項では、前記のとおり、取得企業の税効果会計の取扱いとして、企業結合による影響が企業結合年度より反映されるものとしている。この規定の趣旨によれば、子会社株式の追加取得が行われて連結納税に加入した時点から、連結納税主体を含む連結企業集団の連結財務諸表および連結納税子会社となる連結子会社の個別財務諸表における回収可能性の判断にその影響を反映させるべきものと考えられる。

「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)(案)」および「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)(案)」(平成22年5月20日)に対する「主なコメントの概要とその対応案」(企業会計基準委員会HP)において、この点につき、連結納税へ加入する意思決定を行った場合、これらの定めのいずれが優先されるのか取扱いを明確化すべきであるとするコメントが提出されている。しかし、「当該取扱いは平成22 年度税制改正に関連する項目ではない事から、今回の実務対応報告改正の検討対象外である。しかしながら、今後、それぞれの会計基準等の考え方に不整合があるのか否かを分析し、対応を図ることの必要性について検討を行っていく。」というコメント対応がされている。今後の検討が期待される。

(図表5)設例4:親会社と子会社の合併-税効果(合併直前年度の親会社、子会社における繰延税金資産の回収可能性の判断)

【設例4の前提】

1. 親会社P社(3月決算会社、吸収合併存続会社)は、その100%子会社S社(3月決算会社)と×3年4月1日に吸収合併する。
2. 合併直前年度の×3年3月期末において、P社は、期末における将来減算一時差異を十分上回る課税所得を毎期(当期およびおおむね過去3年以上)計上している。よって、監査委員会報告66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」における会社の例示区分は(1)とする。
P社の合併がなかったとした場合の将来課税所得の見積りは以下のとおりであったものとする。

  実績
×年3月期 0年 1年 2年 3年
(当期)*1
将来減算一時差異解消額の減算等をする前の所得見積額*2 500 500 500 500
将来減算一時差異 60 60 60 60
所得金額 440 440 440 440

 

  計画
×年3月期 4年 5年 6年 7年 8年
将来減算一時差異解消額の減算等をする前の所得見積額*2 500 500 500 500 500
将来減算一時差異 60 60 60 60 60
所得金額 440 440 440 440 440

*1 ×3年3月期末の将来減算一時差異残高は300とする。
*2 当期末に存在する将来加算(減算)一時差異のうち、解消が見込まれる各年度の解消額を加算(減算)する前および当期末に存在する税務上の繰越欠損金を控除する前の繰越期間の各年度の所得見積額である(個別税効果実務指針21項)

3. 合併直前年度の×3年3月期末において、S社は、過去(おおむね3年以上)連続して重要な税務上の欠損金を計上しており、当期も重要な税務上の欠損金の計上が見込まれる。よって、会社の例示区分は(5)とする。
S社の合併がなかったとした場合の将来課税所得の見積りは以下のとおりであったものとする。

  実績
×年3月期 0年 1年 2年 3年
(当期)*
将来減算一時差異解消額の減算等をする前の所得見積額 △20 △20 △20 △20
所得金額 △20 △20 △20 △20
  計画
×年3月期 4年 5年 6年 7年 8年
将来減算一時差異解消額の減算等をする前の所得見積額 △20 △20 △20 △20 △20
所得金額 △20 △20 △20 △20 △20

* ×3年3月期末の将来減算一時差異残高はなく、繰越欠損金残高は△100とする。

4. 当該合併は適格合併となり、S社の繰越欠損金100はP社に引き継がれるものとする。
5.法定実効税率は便宜上、40%とする。

<合併直前年度の×3年3月期末におけるP社およびS社の繰延税金資産の回収可能性の判断>

  • S社は、親子会社同士の合併は、投資が継続しているとみる場合に該当するため、合併が行われないものと仮定したときの当該子会社の将来年度の収益力に基づく課税所得等を勘案して判断する。このため、親会社との合併により合併後生じると考えられる将来課税所得を見込まずに、会社の例示区分(5)として税効果の検討を行うことになるものと考えられる。

S社

借) 繰延税金資産 貸) 法人税等調整額

* S社では、繰越欠損金100×0.4=40の繰延税金資産を計上しない。

  • P社についても、合併直前年度の繰延税金資産の回収可能性は、自社の将来年度の収益力等に基づく課税所得等により判断するものと考えられるため、合併を考慮せず、会社の例示区分(1)として税効果の検討を行うことになるものと考えられる。

P社

借) 繰延税金資産* 120 貸) 法人税等調整額 120

* 300×0.4=120

株式交換・株式移転の場合の税効果

(1)取得の場合(図表6)

株式交換完全親会社が受け入れた子会社株式(株式交換完全子会社の株式)に係る一時差異(取得のときから生じていたものに限る。)に関する税効果は認識しないこととされている。ただし、予測可能な期間に当該子会社株式を売却する予定がある場合(一部売却で売却後も子会社または関連会社にとどまる予定の場合には売却により解消する部分の一時差異に限る)、または売却その他の事由により当該子会社株式がその他有価証券として分類されることとなる場合には、当該一時差異に対する税効果を認識する(結合・分離適用指針115項)。

株式移転設立完全親会社が受け入れた子会社株式(取得企業および被取得企業の株式)に係る一時差異(取得のときから生じていたものに限る)に関する税効果の取扱いも同様である(結合・分離適用指針123項)。

これは、継続保有を前提として新規に子会社株式を取得したにもかかわらず、税効果を通じて株式の取得時に損益を認識することは適当ではないことや、将来における投資の売却により解消する一時差異は、親会社が売却時期を決定でき、かつ予測可能な将来期間に売却を行う意思がない場合は税効果を認識しない連結財務諸表における税効果の取扱いと整合的であることから、このような取扱いとされている(結合・分離適用指針404項)。

なお、株式交換後に当該子会社株式に生じた一時差異は、通常の税効果会計の取扱いによることに留意が必要である。

(図表6)設例5:株式交換が取得と判定された場合における、株式交換完全親会社が取得した株式交換完全子会社株式に係る一時差異

【設例5の前提】

  1. A社を株式交換完全親会社、B社を株式交換完全子会社とする株式交換を行った。当該株式交換は、A社を取得企業とする取得と判定された。
  2. A社はB社の株主にA社株式を交付した。交付した株式の株式交換日の時価に基づく時価総額は200だった。
  3. A社のB社株式の税務上の簿価は100であった。
  4. A社は、B社株式について、予測可能な期間に売却予定等はない。
  5. 法定実効税率は便宜上、40%とする。

<A社(株式交換完全親会社)の個別上の会計処理>

借) B社株式* 200 貸) 払込資本 200

* 株式交換完全親会社が株式交換完全子会社株式を継続して保有する場合、取得時点から生じている会計簿価200と税務簿価100の一時差異について、税効果を認識しない。

<B社(株式交換完全子会社)の個別上の会計処理>

  • 非適格株式交換となる場合、株式交換完全子会社が株式交換直前に有している固定資産、有価証券などの時価評価資産の評価益または評価損が、当該株式交換を行った日の属する事業年度の益金または損金に算入される。このため、株式交換完全子会社では、会計と税務の資産・負債の差額が生じて一時差異が生じることが考えられるが、これについては、通常の税効果会計の扱いによることになるものと考えられるため、一時差異が生じた年度に、税効果の認識を行うことになるものと思われる。

(出所)結合・分離適用指針設例14、33を一部参考に作成

(2)共通支配下の取引の場合(図表7)

組織再編に伴い子会社株式等を受け取った場合の税効果の取扱いについて、個別税効果実務指針24-2項では、次のような扱いを示している。

  • 組織再編に伴い受け取った子会社株式および関連会社株式(事業分離等に伴い分離元企業が受け取った子会社株式等を除く)に係る一時差異のうち、当該株式の受取時に発生していたもので、かつ受取時に会計上の損益および課税所得(または繰越欠損金)に影響を与えないものについては、税効果は認識しない。
  • ただし、予測可能な期間に当該子会社株式等を売却する予定がある場合(一部売却で売却後も子会社または関連会社にとどまる予定の場合には売却により解消する部分の一時差異に限る)、または売却その他の事由により当該子会社株式がその他有価証券に分類されることとなる場合には、当該一時差異については通常の税効果会計を適用する。
  • なお、当該組織再編後に当該子会社株式等に生じた一時差異は、通常の税効果会計の取扱いによる。

共通支配下の取引において、株式交換完全親会社または株式移転設立完全親会社が受け取った子会社株式に係る一時差異(個別税効果実務指針24-2項の要件を満たしたものに限る)については、この扱いにより、税効果を認識しないものとされている(個別税効果実務指針34-2項)。

(図表7)設例6:共通支配下の場合の株式移転における、株式移転完全親会社が取得した株式交換移転子会社株式に係る一時差異

【設例6の前提】

  1. 株式移転により、P社の100%子会社であるS1社とS2社は、株式移転完全親会社HD社を設立した。
  2. S1社の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額は200、S2社の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額は300であった。
  3. HD社におけるS1社株式の税務上の簿価は100、S2社株式の税務上の簿価は200であった。
  4. HD社は、S1社株式およびS2社株式について、予測可能な期間に売却予定等はない。
  5. 法定実効税率は便宜上、40%とする。

<HD社(株式移転完全親会社)の個別上の会計処理>

借) S1社株式*1*2
200 貸) 払込資本 200
S2社株式*1*2 300

*1 S1社およびS2社の適正な帳簿価額による株主資本の額により算定する。
*2 株式移転完全親会社が株式移転完全子会社株式を継続して保有する場合、受け取った時点から生じているS1社株式およびS2社株式に係る一時差異について、税効果を認識しない。

(出所)結合・分離適用指針設例33を一部参考に作成

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
波多野 直子

日本基準のトピック

中央経済社「経理情報 2012年7月1日号」に掲載されたものを転載しています。

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