新企業結合会計基準等の実務上の留意点 | KPMG | JP

新企業結合会計基準等の実務上の留意点

新企業結合会計基準等の実務上の留意点

本稿では、少数(非支配)株主持分の取扱いの見直しを中心に、改正基準における実務上の留意点について解説する。

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はじめに

企業会計基準委員会(ASBJ)から平成25年9月13日に公表された改正企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」および関連する他の改正会計基準等(以下、本章ではこれらをあわせて「改正基準」という)は、少数株主持分から非支配株主持分への変更、支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動による差額を資本剰余金に計上するなど、わが国において長年定着してきた連結実務を大きく変更する内容が含まれている。

本稿では、少数(非支配)株主持分の取扱いの見直しを中心に、改正基準における実務上の留意点について解説する。なお、文中の意見に関する部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りする。また、本稿で使用する各会計基準(とその略記)は次のとおりである。

  • 改正企業会計基準21号「企業結合に関する会計基準」(以下、本章では「企業結合会計基準」という)
  • 改正企業会計基準22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下、本章では「連結会計基準」という)
  • 改正企業会計基準適用指針10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(以下、本章では「結合分離適用指針」という)
  • 改正企業会計基準適用指針9号「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」(以下、本章では「株主資本適用指針」という)

子会社株式の追加取得等における連結上の留意点

(1)子会社株式の追加取得

子会社株式を追加取得した場合、連結財務諸表上、改正前の会計基準では、追加取得持分と追加投資額との間に生じた差額は、のれん(または負ののれん)として処理することとされていたが、改正基準では、当該差額は資本剰余金として処理することになる(連結会計基準28項)。すなわち、いったん支配を獲得して子会社とした以降は、当該子会社の株式を追加取得してものれん(または負ののれん)が生じることはなく、追加取得分に係るのれん償却費や負ののれん発生益といった損益が発生しなくなる。

この取扱いにより、たとえば、TOB等で現金対価により株式を取得し支配を獲得した後、当該取引の翌事業年度に株式交換により非支配株主から残りの株式を取得するなどの方法で段階的に完全子会社化する場合、支配獲得後の子会社株式の追加取得においてはのれん(または負ののれん)が生じないため、支配関係のないある会社を株式交換により一度に完全子会社化する場合と比較して、のれんの金額が大きく異なる可能性があると考えられる。

なお、実務においては子会社株式の追加取得の処理(後述(2)および(3)を含む)の結果、資本剰余金が借方(負の値)に生じることも少なくないが、そのような場合には、連結会計年度末において、資本剰余金を零とし、当該負の値を利益剰余金から減額することとされている(連結会計基準30-2項)。連結財務諸表においては、資本剰余金を区分しないことから、この取扱いは資本剰余金全体が負の値となるかどうかにより判断される。

(2)子会社株式の一部売却

子会社株式の一部売却後も引き続き親会社と子会社の支配関係が継続している場合、連結財務諸表上、改正前の会計基準では、売却持分と投資の減少額との間に生じた差額は、子会社株式の売却損益の修正として処理することとされていたが、改正基準では、売却持分と売却価額との間に生じた差額は資本剰余金として処理することになる(連結会計基準29項)。すなわち、個別財務諸表上は子会社株式売却損益が計上されるものの、連結財務諸表上は損益が発生しなくなる。
この取扱いにより、たとえば、子会社株式について、支配を喪失する持分比率まで持分を一度に譲渡すると損益が計上されるが、支配が継続する持分比率までの持分を譲渡し、その後、当該取引の翌事業年度に支配を喪失する持分比率まで持分を譲渡するなどの方法で段階的に支配を喪失する場合、最初の取引においては損益が計上されないことになるため、一度に支配を喪失する場合と比較して、連結財務諸表上の損益が大きく異なる可能性があると考えられる。

なお、一部売却の会計処理の際、改正前の会計基準では、のれんの未償却額のうち売却した株式に対応する額は減額し、売却価額から控除していたが、改正基準では、支配獲得時に計上したのれんの未償却額は減額しないため、従来の連結実務とは異なる点に留意が必要である(連結会計基準29項および(注9)(1))(図表1)。
また、この会計処理において、関連する法人税等(子会社への投資に係る税効果の調整を含む)は資本剰余金から控除する(連結会計基準(注9)(2))。改正基準ではこれ以上の定めは示されていないが、連結子会社における親会社株式の売却損益の取扱い(企業会計基準適用指針2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」16項)が参考になると考えられる。

(3)子会社の時価発行増資等

子会社の時価発行増資等に伴い、親会社の払込額と親会社の持分の増減額との間に差額が生じた場合、連結財務諸表上、改正前では、親会社の持分比率が増加したときには追加取得に準じて処理するとしてのれん(または負ののれん)が計上されていた(日本公認会計士協会会計制度委員会報告7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(以下、本章では「資本連結実務指針」という)48項)。また、親会社の持分比率が減少したときには原則として一部売却に準じて処理し損益を計上するものの、利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる場合には利益剰余金に直接加減することができるとされていたが(資本連結実務指針49項)、この点に関しては実務上の課題が指摘されていた(連結会計基準51-2項)。改正基準では、当該差額(親会社と子会社の支配関係が継続している場合に限る)は、親会社の持分比率が増加したときも減少したときも、資本剰余金として処理することになり、利益剰余金に直接加減できる定めは削除されている(連結会計基準30項)(図表1)。

(図表1)子会社が時価発行増資を行った場合の連結上の会計処理

【前提条件】

  • P社はX0年3月31日にS社株式の70%を5,500百万円で取得し、S社を連結子会社とした。
  • S社の資産および負債には、時価評価による重要な簿価修正額はないものとする。
  • のれんの償却は、本設例では簡略化のため行わないものとする。
  • 資本取引以外の連結グループ会社間での取引は発生していないものとする。
  • X1年3月31日においてS社は1,000百万円の増資を行い、P社はそのうちの100百万円を払い込んでいる。この結果、P社のS社に対する持分比率は70%から60%に低下した。
  • S社の個別貸借対照表の抜粋は次のとおりである。
個別貸借対照表(抜粋) S社
X0/3/31 X1/3/31
純資産の部
I 株主資本
1. 資本金 5,000 6,000
2. 資本剰余金 0 0
3. 利益剰余金 2,200 2,200
株主資本合計 7,200 8,200
純資産合計 7,200 8,200

(単位:百万円)

【会計処理】

1)投資と資本の相殺消去

借) 資本金 5,000 貸) S社株式 5,500
利益剰余金 2,200 非支配株主持分 2,160
のれん 460  

2)S社の増資に係る連結消去仕訳(*3)

借) 資本金 1,000 貸) S社株式 100
資本剰余金(*1) 220 非支配株主持分(*2) 1,120

(*1) S社増資後P社持分8,200百万円×60%-S社増資前P社持分7,200百万円×70%-P社出資額100百万円
(*2) S社増資後非支配株主持分8,200百万円×40%-S社増資前非支配株主持分7,200百万円×30%
(*3) 改正前の会計基準では、のれんの未償却額460のうち、親会社の持分比率減少分に対応するのれん65(=460×10%÷70%)を減額していたが、改正基準では減額しないこととなる。

(出所)株主資本適用指針の設例4を参考に筆者作成

共通支配下の取引等における留意点

少数(非支配)株主持分の取扱いの見直しは、共通支配下の取引等に影響を及ぼすため、次のようなグループ内の組織再編を実施する際には留意が必要である。

  • 親会社が子会社を吸収合併する場合
  • 子会社が親会社に会社分割により事業を移転する場合
  • 親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合
  • 親会社が子会社を株式交換完全子会社とする場合
  • 親会社と子会社が株式移転設立完全親会社を設立する場合
  • 子会社同士が合併する場合
  • 子会社が他の子会社に会社分割により事業を移転する場合

本稿では、誌面の都合上、2つのケースについて紹介する。

(1)子会社同士の合併

改正前の会計基準では、子会社同士の合併において、合併対価が吸収合併存続会社の株式のみである場合、親会社は、連結財務諸表上、吸収合併存続会社に係る親会社の持分の増加額と吸収合併消滅会社に係る親会社の持分の減少額との間に生じる差額、または吸収合併消滅会社に係る親会社の持分の増加額と吸収合併存続会社に係る親会社の持分の減少額との間に生じる差額は、のれん(または負ののれん)および持分変動差額として取り扱うとされていた。

改正基準では、当該差額は資本剰余金として処理することになる(結合分離適用指針249項)(図表2)。

(図表2)子会社同士の合併の会計処理

【前提条件】

  • P社の80%子会社S1社を吸収合併消滅会社とし、60%子会社S2社(株式数80株)を吸収合併存続会社とする吸収合併により、S1社の株主はS2社の株式20株を受け取る。
  • S1社の諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)とする。S2社の諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)とする。
  • 合併後のS2社(株式数100株)に対する持分比率は、P社が64%(64株)、旧S1社の株主が4%(4株)、旧S2社の株主が32%(32株)となる。
  • P社が保有するS1社株式の適正な帳簿価額は64、S2社株式の適正な帳簿価額は240とする。
  • S1社とS2社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

S1社個別貸借対照表

諸資産 100 資本金 80
  利益剰余金 20

S2社個別貸借対照表

諸資産 600 資本金 400
  利益剰余金 200

【会計処理】

1)P社の個別財務諸表上の会計処理

借) 子会社株式(S2社) 64 貸) 子会社株式(S1社) 64

2)P社の連結財務諸表上の会計処理

S1社に関する開始仕訳

借) 資本金 80 貸) 子会社株式(S1社) 64
利益剰余金 4 非支配株主持分 20

S2社に関する開始仕訳

借) 資本金 400 貸) 子会社株式(S2社) 240
利益剰余金 80 非支配株主持分 240

S1社に関する開始仕訳の振戻し(S1社がS2社に合併されたため)

借) 子会社株式(S1社) 64 貸) 資本金 80
非支配株主持分 20 利益剰余金 4

親会社の持分変動による差額の会計処理

借) 払込資本 100 貸) 子会社株式(S2社) 64
非支配株主持分(*1)
12
資本剰余金(*2) 8
利益剰余金(*3) 16

(*1) 被結合企業S1社に係る非支配株主持分36(=S1社の諸資産の適正な帳簿価額100×36%)と連結上減少する非支配株主持分24(=S2社の諸資産の適正な帳簿価額600×4%)との差額12
(*2) 吸収合併消滅会社S1社の株主(親会社)P社の連結上減少する非支配株主持分24と、被結合企業S1社に係る被結合企業の株主P社の持分の減少額16(被結合企業S1社に係る帳簿価額による株主資本額100に減少した株主P社の持分比率16%を乗じた額)との間に生ずる差額8
(*3) S1社を連結していたことにより生じていた親会社P社に係る取得後剰余金16(~20×80%または20-4)の認識

(2)親会社と子会社の合併

親会社が非支配株主の存在する子会社を吸収合併する場合、親会社の個別財務諸表上、改正前の会計基準では、非支配株主持分相当額と、取得の対価(非支配株主に交付した親会社株式の時価)に取得に直接要した支出額を加算した額との差額はのれん(または負ののれん)とすることとされていた。

改正基準では、非支配株主持分相当額と、取得の対価との差額をその他資本剰余金として処理することになる(結合分離適用指針206項(2))(図表3)。

(図表3)親会社が子会社を吸収合併した場合の会計処理

【前提条件】

  • P社(公開企業)はX1年3月31日にS社の株式の80%を1,700で取得し、子会社とした。株式取得時のS社の諸資産は1,500(簿価=時価)であり、のれんが500生じている。
  • X2年3月期のS社の当期純利益は1,000であった。
  • P社はS社をX2年4月1日に合併した(吸収合併存続会社はP社とする。)。
  • S社の発行済株式数は100株であり、合併比率は1:1である。
  • P社は新株をS社の非支配株主に20株(合併期日の時価600(1株あたり30))発行した。また、P社は新株発行に伴う増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。
  • S社株式取得時に発生したのれんの償却期間は5年とする。
  • 合併期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

S社個別貸借対照表

諸資産 2,500 資本金
利益剰余金
1,500
1,000

P社連結貸借対照表

諸資産
のれん
2,800
400
資本金
利益剰余金
非支配株主持分
1,000
1,700
500

【会計処理】

P社の個別財務諸表上の会計処理

借) 諸資産
のれん(*1)
その他資本剰余金(*4)
2,500
400
100
貸) S社株式
その他資本剰余金(*3)
抱合せ株式消滅差益(*2)
1,700
600
700

(*1) のれんの未償却残高400は連結財務諸表上の帳簿価額として、親会社の個別財務諸表に引き継がれる。
(*2) 親会社持分相当額(のれんの未償却残高400を含む)2,400(=2,500×80%+400)と、親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合せ株式)の帳簿価額1,700との差額700を特別損益に計上する
(*3) 取得の対価(非支配株主に交付した親会社株式の時価)600が増加すべき払込資本となる。
(*4) 取得の対価600と子会社から受け入れる資産および負債の非支配株主持分相当額500(=2,500×20%)との差額をその他資本剰余金に計上する

(出所)結合分離適用指針の設例20を参考に筆者作成

取得関連費用

改正前の会計基準では、取得とされた企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められるものは取得原価に含めていたため、取得原価の配分を行った結果として、当該支出額に相当する部分がのれんに含まれていたこともあったものと考えられる。改正基準では、取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、発生した事業年度の費用として処理する(企業結合会計基準26項)。

なお、個別財務諸表における子会社株式の取得原価は、従来と同様に、企業会計基準10号「金融商品に関する会計基準」および日本公認会計士協会会計制度委員会報告14号「金融商品会計に関する実務指針」に従って算定することに留意するとされている(企業結合会計基準94項)。このため、たとえば、取得とされた株式交換の会計処理については次の取扱いが示されているが(結合分離適用指針110項および116項)、取得関連費用を発生した事業年度の費用として処理することにより、連結手続上、資本と相殺消去する投資の額が個別財務諸表上の子会社株式の取得原価とは異なる場合がある点に留意が必要である。

  • 株式交換完全親会社の個別財務諸表上の会計処理
    →子会社株式の取得原価=取得の対価に付随費用を加算して算定する。
  • 株式交換完全親会社の連結財務諸表上の会計処理
    →資本連結手続上の投資=結合分離適用指針37項から50項に準じて算定する。

おわりに

改正基準を受けて、日本公認会計士協会から公表されている資本連結実務指針や会計制度委員会報告6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」など多数の実務指針が改正されることが予想され、今般の改正基準では明らかになっていない実務上の取扱いが示されることも考えられるため、今後の動向に留意する必要がある。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
前田 啓(まえだ・けい)

日本基準のトピック

中央経済社「経理情報 2013年11月1日号」に掲載されたものを転載しています。

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