欧州金融規制AIFMDについて | KPMG | JP

欧州金融規制AIFMD(Alternative Investment Fund Managers Directive)について

欧州金融規制AIFMDについて

金融危機後の欧州金融規制の一部であるAIFMD(Alternative Investment Fund Managers Directive)は、2013年7月に各EU加盟国での国内法制化期限を迎えました。

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規制対象となるファンドの運用業者(AIFM = Alternative Investment Fund Manager)は、EU加盟国のどこかで認可を受ければ他のEU加盟国でその運用するファンド(AIF = Alternative Investment Fund)をプロの投資家に販売できる資格(Passport)を手にすることになります。

1.AIFMD導入の背景と適用スケジュール

前回の金融危機で流動性不安に陥ったヘッジファンドが急激な資産処分を行ったことが金融危機を増幅させたとの認識から、欧州ではヘッジファンド、PE(プライベートエクイティ)ファンドなどの投資ファンドを金融当局の監督下に置くためにAIFMDが導入されることになった。その主眼は、UCITS規制の対象となるリテールファンドと合わせてEU域内で設立・販売される全てのファンドを金融当局の監督下に置くことにあります(注1)。

AIFMDの適用スケジュールは以下のとおりです。

年月 スケジュール
2011年7月 AIFMDレベル1発効
2012年12月 AIFMDレベル2公表(注2)
2013年7月 AIFMDのEU加盟国での国内法制化期限
2014年7月 既存のAIFMの登録認可期限
2015年10月 EU域外(non-EU)(注3) のAIFMへのパスポート付与期限
2018年以降 現行の各国の私募ファンド規制の廃止
AIFMDのパスポート制度へのEU域内一本化

現時点は既存のAIFMによる登録認可の申請期間となります。

(注1)UCITS(Undertakings for Collective Investment in Transferable Securities)は、リテール投資家に販売されるファンドを規制対象としています。現在施行されているのはUCITS IV。

(注2)AIFMDに関する法令は2種類あり、2011年7月に発効したレベル1(指令2011/61/EU)とその補足規則として2012年12月に公表されたレベル2(規則231/2013)から構成されています。

(注3)EU AIFMはEU加盟国内に登記された事務所を持つAIFM、non-EU AIFMはEU AIFMでないAIFMと定義されています。

2.AIFMDの主な概要

1)適用対象

適用対象は運用業者であるAIFMであり、以下のように分類されています。

  • AIFを運用するEU AIFM
  • EU AIFを運用するnon-EU AIFM
  • EU域内でAIFを販売するnon-EU AIFM

EU監督当局は、UCITSでの規制対象とならない全てのファンドについてAIFMDによって監督下に置く(下表参照)ことを目的としており(レベル1前文(3))、EU域内で組成・流通するファンドは全て当局の監督対象となります(注4)。

  規制対象 ファンドの購入者
AIFMD 運用業者(AIFM) プロ投資家
UCITS ファンド リテール投資家

(注4)小規模なAIFMは規制対象となりません。レバレッジのあるケースで100万ユーロ、ないケースで500万ユーロを下回る運用資産しかない場合には、適用除外とされます。但し、小規模ファンドとしてEuropean Venture Capital Funds(EuVECA)及びSocial Entrepreneurship(EuSEF)の規制対象となり、小規模であってもAIFMDの適用を受けることを選択できます。

2)AIFMとしての機能と外部委託

AIFMは運用会社として様々な機能を持つことを要求されており、ポートフォリオマネジメントとリスクマネジメントは投資管理に関するコア機能として必須とされています。この他に管理機能として会計サービス、顧客調査、バリュエーション、コンプライアンス、記録保存などが求められています。こうした機能は外部委託することができますが、それによってAIFMとしての責任が軽減されることはありません。

コア機能の外部委託には制限が設けられており、コア機能の何れかを外部委託するにはAIFM所在国の監督当局への事前通告が必要とされます。外部委託の結果、AIFMがもはや運用業者でなくletter-box-entity (空の郵便箱)と認識されるような場合には外部委託することはできません。

リスクマネジメントについては、ポートフォリオマネジメントを含む執行部門からの分離が求められており、レバレッジ上限値の設定、ストレステスト、バックテスト、シナリオ分析などを行う必要があります。

資産及び一口純資産(NAV)のバリュエーションは、外部の独立した評価者もしくはAIFMがポートフォリオマネジメント等からの独立性を確保したうえで自ら行うことができます。前者の場合は法令等でプロフェッショナルとして認められているなどの要件があり、後者の場合は外部の評価者もしくは監査人による検証が必要とされています。バリュエーションに際して評価モデルを利用する場合には、そのモデルの開発に関与していない専門家による有効性評価と上級管理者による事前承認が求められています。なお、外部評価者はその業務を第三者に外部委託することは禁止されています。

3)Depositary(受託者)の機能と責任

マドフ事件を契機に顧客資産保護の観点から導入されることになったのがdepositary制度であり、その責任はAIJ事件を契機に信託会社等に課された責任よりも重くなっています。

AIFMはAIFごとに一つのdepositaryを任命しなくてはなりません。Depositaryは銀行等の金融機関に限定されませんが、AIFMはdepositaryとなることができず、AIFの取引相手となるプライム・ブローカーも原則としてdepositaryとして任命されることはありません。

Depositaryは、<1>Cash flow monitoring <2>Safe-keeping and record-keeping of assets <3>Oversight of certain operational functionsという3種類の機能と責任が課されています。

<1>Cash flow monitoring

DepositaryはAIF名義の口座、AIFのためのAIFM名義もしくはdepositary自身の口座の何れのケースにおいてもAIFの入出金をモニタリングすることになります。日次でのリコンサイルを求められ、募集・償還などによるAIFの資金の動きとの不一致の有無、残高証明書とAIFMのcash positionの記録との突合などが要求されています。定期的なリコンサイル手続の見直しが必要とされ、不一致が発見されれば遅滞なくAIFMに報告されることでAIFの投資家は保護される仕組になっています。

<2>Safe-keeping (保管)and record-keeping (記録保存)of assets

保管業務は金融商品とそれ以外の資産に分けて定められています。

現物の受渡が行われない譲渡可能有価証券(組込デリバティブを含む)、短期金融商品、集団投資事業の投資口、depositary名義で口座に登録される金融商品は、depositaryの保管義務の対象となります。同様に現物の受渡が行われる金融商品も常にdepositaryの保管義務の対象となります。口座についてはAIFのために分別管理されます。

金融商品以外のその他の資産については、所有権の検証と記録を行う必要があり、所有権の確認はAIFもしくはAIFMから提供された情報等と外部の証憑を利用して実施します。Depositaryは、記録をアップデートし、保存しなくてはなりません。

Depositaryの責任のうち保管業務だけは第三者への外部委託が認められており、その場合定期的に実施されるリコンサイルはdepositaryの内部口座と記録及び第三者との間で実施されます。

<3>Oversight of certain operational functions

Depositaryは、法令・AIFの約款等に従って募集・販売・バリュエーション・収益計上等が行われているかを監視する義務を負い、法令違反の疑いのある事象を発見した場合の上位者への包括的な報告手続を明確に定め、いつでも監督当局に詳細を報告できるようにしておく必要があります。

4)損害賠償責任

Depositaryは、金融商品の喪失による損賠賠償責任を負い、同一の金融商品もしくは喪失した金融商品相当額をAIFに返還することになります。

また、故意・過失によって生じた全ての損害についてはAIFもしくはその投資家に対して損害賠償責任を負うことになります。

5)内部監査

AIFMは他の機能から独立した内部監査機能を備える必要があります。内部監査は、AIFMのシステム、内部統制、組織に関してその適切性と効率性を評価する内部監査計画を設定し、内部監査を実施します。内部監査の対象にはリスクマネジメント機能のパフォーマンス評価も含まれます。その結果、改善事項等があればそれを含めて内部監査の結果を年1回以上の頻度で上級管理者に報告します。

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