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German Business Bulletin Vol.84

German Business Bulletin Vol.84

保険料税、法人税、個人所得税、法務関連など日本企業がドイツに投資あるいは事業展開をする上で留意すべき最新トピックスを解説しています。

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I. 保険料税 - 税制改正

2012年12月5日付の取引税改正法に伴い、ドイツ保険料税法についても数回の改正が行われ、当該改正後のドイツ保険料税法が2013年1月1日より施行されています。当該改正により、ドイツ国外に所在する会社がドイツで事業を行っている場合、ドイツ保険料税を申告及び納税する義務を負う可能性がある点に注意が必要です。


At a glance:
EU/EEA域外に所在する保険会社との保険契約の締結

多国籍企業では、親会社と保険会社が保険契約を締結し、当該保険契約が両社の所在地国(日本等)以外の国(ドイツ等)に所在する子会社の事業に係るリスクをカバーするようなケースが多くみられます。当該保険契約の典型例としては、企業賠償責任保険(“Betriebsstattenhaftpflichtversicherung”)や職業責任義務保険(“Berufshaftpflichtversicherung”)等があります。

上記のようなケースについては、今回の保険料税法の改正前から、ドイツ保険料税の対象となっておりましたが、税務執行上、ドイツ税務当局による国外の保険会社への保険料税の課税が課題となっていました。今回の改正は、ドイツ保険料税の執行を確保するものといえます。

本改正後も、保険会社がEU又はEEA域外に所在し、かつ、支店や代理人を同域内に有しない場合、保険契約者であるドイツ国外の親会社は、引き続き納税義務者とされます。今回の改正によりTax discharge debtorという概念が導入され、保険契約者が税務当局に対して、保険料税を計算し、申告及び納税の義務を履行しない場合、ドイツ子会社が保険料の申告及び納税の義務を負うこととされました。一定の記録・保存義務が導入・拡大されたものの、保険料税の対象となる「ドイツ子会社の事業活動に係るリスクを対象とした保険に係る保険料」をどのように計算するかという点につき具体的なガイドラインが公表されていないため、適切な計算方法等を検討するとともに、申告に必要とされる情報の記録についても検討が必要です。なお、保険料税の申告・納付は対象となる保険料が支払われる各月毎に行われる必要があり、また、税率は19%と定められています。申告及び納税がなされない場合、ペナルティーが課せられる可能性もあります。

今回の税制改正により、日本親会社のみならずそのドイツ子会社へも申告及び納税義務が拡大されたといえます。また、これに伴い、最近の税務調査において、本件に関する調査が、日本法人のドイツ子会社に対してもなされています。

保険料税の二重課税(ドイツ法人が海外に恒久的施設を有している場合)
ドイツ法人がEU/EEA域外に恒久的施設を設けて事業を行っている場合、当該恒久的施設に係るリスクをカバーするために、当該恒久的施設の所在地国の保険会社と保険契約を締結することが要求されることがあります。そして、当該所在地国においても保険料税が課される場合、ドイツと当該所在地国において保険料税の二重課税が生じるという状況に陥る可能性があります。しかしながら、現状は、当該所在地国において課せられた保険料税をドイツの保険料税から控除する等といった二重課税排除策が講じられておりません。

Recommendation

今回の改正に伴う潜在的な影響についての早期の検討が望ましいと考えます。

まず、EU/EEA域外の保険会社との契約でドイツのリスクをカバーしているものに関して、現行の契約内容および保険料についての検討が必要と考えます。

更に、個々の契約の内容の分析、日独親子間での情報の共有を行い、また、保険料の負担に関しての移転価格税制面からの調査も必要となると考えます。

II. 法人税

1. グループ間ファイナンス

昨今の金利の不安定な状況下においては、税務調査時に、グループ間のファイナンスについて注意が向けられる傾向があります。


At a glance:
組織再編や会計監査、プロジェクトや日々の業務等のあらゆる場面において、グループ間ファイナンスの客観性については検討が必要です。

  • 金利水準: 現在、貸付期間5年、信用格付けBB/Ba2の場合の利率は、約4%となっています。一方、2009年の初めでは、同利率は約10%でした。市場金利が大幅に低下しているにも関わらず、グループ間の貸付けに関して、過去の金利水準が前提とされていないか、特にドイツ法人が貸し手かどうか、適用利率が市場金利より乖離していないか、金利の変動を考慮しているかなど検討することが考えられます。
  • 税務調査: ローン、保証、キャッシュプーリング等あらゆる種類のグループ間ファイナンスについて、市場金利の低下と過去の税務調査の動向を鑑み、次の点についての検討が考えれます。
    • “the decree of the German Ministry of Finance dated 29 March 2011 regarding sec. 1 Foreign Transaction Tax Act(“Aussensteuergesetz”)”の適用可能性についての検討
    • キャッシュプーリングストラクチャーや保証契約についての詳細な確認及び再検討
    • 解除条項付きのファイナンス、繰上げ返済、自動延長、業績連動金利、その他の特殊なファイナンスについての検討

Recommendation

グループ間ファイナンスは独立企業原則に従って行われる必要があり、適用金利の合理性を示す証憑類の整備が必要となります。更に、金利の変動等の経済環境の変化や制度の改正に応じて、適宜見直すことが必要であると考えられます。

2. OECD承認アプローチ:恒久的施設への帰属利得に関する法令草稿

2013年6月26日付のAdministrative Assistance Implementing Actにより、OECD承認アプローチ(Authorized OECD Approach,以下AOA)がドイツ税制に導入されました。AOAの下では、機能的分離企業アプローチ、つまり、国内法人と海外の恒久的施設、又は、外国法人と国内の恒久的施設について、両者を別個の独立した企業とみなして所得の配分を行うアプローチが適用されることとなります。従って、恒久的施設は、一つの独立した企業体として取り扱わなければなりません。


At a glance:
2013年の8月13日、連邦財務省はドイツ税制におけるAOAの実務的な運用のために、恒久的施設に対して適用する独立企業原則に関する法案を公表しました。ドイツ国外に恒久的施設を有するドイツ法人及びドイツ国内に恒久的施設を有する外国法人が当該法案の対象となります。

  • 恒久的施設は、その帰属所得計算のために適切な勘定を設け、その人的機能に応じて配賦される資産、無償資本、負債、収益及び費用といったあらゆる帰属所得の計算要素を計上する必要がある
  • 当該法案は、資産、機会及びリスク、無償資本及び負債を恒久的施設に配賦する規定を含んでおり、原則として、当該配賦は重要な人的機能に応じてなされる必要がある
  • 法的には同一の企業体である恒久的施設との間のみなし契約関係の決定
  • 銀行業、保険業、建設業、及び鉱業等についての産業特有の規定

原則として当該法案は2013年1月1日以後に開始する事業年度から適用されることとなります。新しい所得配賦ルールの導入は現行税制からの極めて大きな改正であり、一定の事業については経過措置が手当てされいます。
当該法令の施行のためには、ドイツ議会の上院(“Bundesrat”)の承認を得てドイツ連邦法官報に公告される必要があり、当該公告は2013年内に完了することが予想されています。

Recommendation

AOAの導入は、納税者と税務当局の双方にとって国際標準に基づく所得配分を可能にするものであり、日本本社とそのドイツ内の恒久的施設との間の将来の所得配分も見直し、検討すべきと考えられます。また、恒久的施設の補助的・準備的性格に関する移転価格税制の観点からの適正性についても検討する必要があります。ERPシステムを今回の改正に対応させることなども必要になってくるでしょう。

3. 欧州司法裁判所におけるArgenta Spaarbank NV に関する判決(case C 350/11)

2013年7月4日、欧州司法裁判所はベルギーのみなし利子控除制度が、EUの企業設立の自由(Freedom of establishment)に反するという旨を判示しました。ドイツの過大支払利子税制(“Zinsschranke”)上、支払利息の損金算入額の決定にあたっては、国外の恒久的施設に係る所得が考慮されないこととされており、今回の判示が、同税制のEU法への抵触に関して影響を及ぼす可能性が考えられます。


At a glance:
ベルギーでは、資本金に一定割合を乗じて計算したみなし利子を所得税額より控除するというみなし利子控除規定を導入しています。但し、資本金の調整として、ベルギーとの租税条約等により免税となっているような国外の恒久的施設に係る純資産の額は、当該資本金から控除するとされています。

本裁判では、ベルギー税務当局は、その資本金の調整にあたり、オランダの恒久的施設に係る純資産の額を控除すべきとしていました。

欧州司法裁判所は、ベルギー法人が全世界所得に対して法人税等が課されていた点に注目し、たとえ最初に控除額が恒久的施設の所得から控除された場合であっても、残りの控除額がベルギー本店の所得から控除されるべきであるとして、ベルギー税務当局の主張を退けました。

更に、裁判所は、本ベルギーの規定は、ベルギー国外に恒久的施設有する者の差別的取り扱いに当たるとして、EUの企業設立の自由(Freedom of establishment)に反すると結論付けました。

Outlook

この判決により、免税とされていた恒久的施設に係る純資産をみなし利子控除の基礎となる資本金から控除していたベルギー法人は、過去5年間分につき、還付請求ができると考えられます。

この判決に伴い、ドイツの過大支払利子税制(“Zinsschranke”)に関する議論がなされるものと考えられ、ドイツ国外に恒久的施設を有するドイツ本社への差別的な取り扱いもなくなる可能性が考えられます。

4. ドイツ連邦税務裁判所による判決 - 取り止めになった企業買収に係るデューデリジェンス費用の損金性について(Case I R 72/11)

ドイツ連邦税務裁判所は、企業買収にあたり支出したデューデリジェンス費用につき、当該買収が取りやめになった場合には、当該費用を事業上の費用として損金の額に算入される見解を示しました。


At a glance:
2001年にドイツ法人がスイス法人の買収を検討したものの、デューデリジェンスの結果、2002年に買収を中止することを決定し、当該ドイツ法人は、当該デューデリジェンスに要した費用を費用処理することとしました。

しかしながら、ドイツ税務当局は、株式取得関連費用の損金算入制限規定(配当及び株式譲渡益を免税としていることとの整合を図る規定)を根拠に、その損金性を否定しました。

今回の裁判所の見解では、上述のように実現しなかった取引に関する費用については、損金算入制限規定の適用はなく、損金算入できるとしています。

Outlook

今回の判決により、取り止めになった企業買収に係るデューデリジェンス等の費用が、損金とされるのか又は株式の取得価額に算入されるのかという不明瞭だった点が明らかになった点、注目に値します。

過去に同様の費用の発生がなかったか、また、その税務上の取り扱いについて、確認することが望ましいものと考えられます。

III. 個人所得税 - 旅費精算の取扱いの改正及び簡素化

所得税法の改正により、2014年から旅費精算の取扱いが改正及び簡素化されることとなります。


At a glance:
交通費:「主たる勤務地」について
所得税法の改正により、主たる勤務地という概念が導入されました。改正前においては、旅費精算の計算上、場合によっては2以上の「通常の勤務地」が用いられていましたが、改正後は一の「主たる勤務地」のみが用いられることとなります。主たる勤務地は、従業員が恒久的に勤務する固定的な場所と定義されています。恒久的な勤務とは、雇用契約期間の全期間における勤務又は48ヶ月超の期間の勤務を指すとされています。幾つかの勤務地がある場合においては、一定の基準の下、主たる勤務地の判定がなされることとなります。居所から主たる勤務地までの通勤については、原則4,500ユーロ/年を限度として、「片道0.3ユーロx実際に業務で走行した距離」により算出した金額その他一定の方法により計算した金額が非課税として精算可能な交通費となります。

食事手当
従業員が主たる勤務地を離れて勤務することに伴って雇用者が食事手当を行う場合、勤務の性質(国内・国外の別、自宅と勤務先の不在期間)に応じて定額非課税支給可能額(最大60ユーロ)が定められており、その額については非課税として支給されます。

国内出張・国外出張ともに自宅と勤務先の不在期間に応じて3段階の定額非課税支給可能額が定められておりましたが、今回の改正により2段階に変更されることとなります。下記は国内出張のケースの非課税限度額となります。

  • 不在期間が8時間超の日帰りの国内出張:12ユーロ/1日
  • 不在期間が24時間/1日の国内出張:24ユーロ/1日
    ※不在期間が8時間以下の日帰りの国内出張については非課税枠は無い

また、改正により、2日間以上の出張の場合における出発日と帰着日については、不在期間に関係なく一律12ユーロまでの非課税限度額が認められています。

宿泊費
本改正前においては、業務に関連する宿泊費は事業所得にかかる費用として無制限に損金算入が認められていましたが、改正後に損金算入が認められるのは48ヶ月間までの期間に限定され、その後の48ヶ月を超える期間については年間1,000ユーロが非課税で精算できる金額の限度となります。

Recommendation

人事部等の給与関係のご担当者に本改正をご連絡頂くことが望ましいものと考えられます。KPMGでは本改正に関するセミナーを開催することを予定しております。

IV. 法務 - 完成品の販売者へのREACH 法の適用について

REACH法は、化学物質の製造や販売だけでなく、市場の「完成品」の流通に対しても適用がされます。この場合における「完成品」とは、その形状等がその化学成分よりもその機能にとって重要であるものをいい、例としては、繊維製品、電子機器、工具、器具及びすべての家庭用品が挙げられ、市場で販売されているものの大部分が「完成品」に該当するものと考えられます。「完成品」に懸念物質の含む可能性については報告をする義務があり、REACH法第33条に既定がされています。


At a Glance:
最近まで、REACH法33条の違反に対しては、罰則規程がありませんでした。しかしながら、2013年4月における“Chemikalien-Sanktionsverordnung“(chemicals enforcement ordinance)の施行により罰則規定が設けられ、法令違反に対しては罰則が課されることとなりました。違反があった場合、罰科金に加え、市場から製品を回収する行政命令がなされる可能性もあり、企業にとっての風評被害も懸念されます。

Recommendation

最新のREACH法に基づき、包装に関する条例、電気・電子法“Elektrogerategesetz”等といった関連法令等を含め、REACH法に関する法令遵守の手続きを見直すことが望ましいと考えられます。

欧州内で販売活動を行う会社で、現地での規制への対応のための体制が限定的な場合や幅広い製品群を扱う場合、規制に対する体系的な対応が有効であり、製品の安全性及び環境規制に関する法令遵守への対応が必要といえます。

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