関税と移転価格

関税と移転価格

企業のグループ内で行われるクロスボーダーの取引価格に直接的に関連する税制として、移転価格税制と関税が挙げられる。一般的に移転価格の引上げにより仕向地国で生じる課税所得が減ると、同国での輸入関税の課税ベースは増えるというトレードオフ関係が生じる可能性があり、企業が関税と移転価格の両税制との間で板挟みの状況になることも少なくない。

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これは、税務当局と関税当局双方が独立企業間価格を要求している点については共通であるものの、取引価格の算定方法につき、両当局が独自の方法を有していることによっている。そのため、税務当局が考える独立企業間価格の要件を充足しているとしても、必ずしも関税当局が考える独立企業間価格ではない場合がある点に留意が必要である。

日本では移転価格税制は国税庁が、関税は関税局・税関がそれぞれの根拠法令に基づき執行を行っており、両税制を橋渡しする税制も現在の日本においては定められておらず、原則として独立したものとなっている。したがって移転価格のプランニングを行う際には、移転価格税制の観点からの価格調整のみならず関税のリスク評価を行い、適切な取引価格を設定することが必要である。

なお移転価格上、価格調整金による調整(後述)やAPA締結後の補償調整(後述)など、事後的な調整が行われる場合がある。具体的な調整の内容は下記のとおりである。いずれも法人税上の調整のみが行われて関税の評価額は自動的には調整されないため、事後的な調整に関するプランニングにより関税リスクへの対応が望まれている。

価格調整金による調整

法人が価格調整金等の目的で、既に行われた国外関連取引に係る対価の額を事後に変更している場合には、その変更が合理的な理由に基づく取引価格の修正に該当するものかどうかを検討する。その変更が国外関連者に対する金銭の支払又は費用等の計上(以下「支払等」という。)により行われている場合には、その支払等に係る理由、事前の取決めの内容、算定の方法及び計算根拠、その支払等を決定した日、その支払等をした日等を総合的に勘案して検討し、その支払等が合理的な理由に基づくものと認められるときは、取引価格の修正が行われたものとして取り扱う。なお、その支払等が合理的な理由に基づくものと認められない場合には、その支払等が国外関連者に対する寄附金とみなされる可能性もあるので、留意する必要がある。

APA締結後の補償調整

補償調整とは、事前確認の確認対象期間中に行われた確認対象取引に係る実績値が確認内容に適合しないことが判明した場合において、企業が行う事前確認に係る価格の調整のことをいう。確定決算が相互協議の合意が成立した事前確認の内容に適合していないことにより所得金額が過大/過小となることが、確認事業年度に係る確定申告前に判明した場合には、確認法人は補償調整に係る相互協議の合意内容に従い、申告調整により所得金額を修正することができる。また、確定申告が相互協議の合意が成立した事前確認の内容に適合していないことにより所得金額が過大/過小となっていたことが、確認事業年度に係る確定申告後に判明した場合には、確認法人は補償調整に係る相互協議の合意内容に従い、更正の請求/修正申告を行うことができる。

なお、米国のように、税務申告目的に適用する関連者からの製品輸入価格(売上原価又は棚卸資産の評価額)は輸入申告価格を上回ってはならないという制限を設け、企業が関税目的には過小な評価(価格)で申告を行い、その後の税務申告目的では過大な評価(価格)で申告を行うなどの租税回避を意図する勘定操作の防止に努めている国もある(内国歳入法1059A条(関連者から輸入する資産の価格に関する制限規定))。

また多国籍企業グループ間の取引について移転価格税制上の要請から事後的な価格調整が行われる場合が増えている状況に鑑みて、下方の価格調整が行われた場合に米国関税の還付を認めるという新しいルーリングレターを米国税関国境警備局(CBP)が2012年5月に発行し、移転価格税制と関税の調和を図ろうとしている動きもある。

いずれにしても、企業としては、両税制に準拠し、総合的な税務コストメリットを得られる価格設定及び関税評価を行うことが重要となる。

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