会社法による内部統制関連要求

会社法による内部統制関連要求

2006(平成18)年5月施行の会社法では、大会社について内部統制システムの構築の基本方針の決定を義務づけています。

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会社法では、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を義務づけ、その「その他株式会社の業務の適正を確保するための体制」として、法務省令である会社法施行規則で、次のような体制が挙げられています(図参照)。

  • 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
  • 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
  • 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
  • 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
  • 当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

取締役会設置会社の場合に適用される条文

監査役設置会社の場合には、さらに次のような体制が含まれます。

  • 監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項
  • 前号の使用人の取締役からの独立性に関する事項
  • 取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制
  • その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

従来は、監査役をおかない委員会設置会社のみに法的に義務づけられ、監査役設置会社では、取締役の善管注意義務とされていた内部統制の整備ですが、会社法では、大会社において、委員会設置会社、監査役設置会社を問わず、リスクマネジメント、コンプライアンスなどを含む内部統制の整備を要求しています(大会社:資本金5億円以上または負債200億円以上を有する株式会社)。

会社法制の大幅な見直しの意義

そもそも、なぜ新たな会社法が創設されたのでしょうか。

これまで会社法制は、商法は片仮名・文語体の表記であり、かつ「商法第2編(会社)」「有限会社法」「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」などの各規定と分散されていたことにより、国民にとってわかりやすいものとはいえませんでした。最近の社会経済情勢の変化に対応するための会社法制の各種制度の見直しとともに、現代的な表記に改めたうえでわかりやすく再編成することが必要となっていたのです。

最低資本金制度、機関設計、合併等の組織再編行為など、会社に係る各種制度のあり方について、体系的かつ抜本的に見直しが行われています。

このように会社法は、会社経営の機動性・柔軟性の向上を図るため、株式会社の組織再編行為や資金調達に係る規制の見直し、株主に対する利益還元方法などの合理化を行う反面、会社経営の健全性を確保し、株主および会社債権者の保護を図るため、内部統制システムなどの整備によりコーポレートガバナンスの充実を求めています。株式会社にとっては、選択の裁量が広がった代わりに、株主・債権者に対する自己責任が求められているといえます。

業務の適正を確保するための体制(内部統制システム)とは

取締役会が決定すべき業務の適正を確保するための体制の構築の基本方針とはどのようなものでしょうか。その解釈を行うには、会社法施行規則で規定されている項目が、委員会設置会社が旧商法施行規則第193条のもとで要求され、営業報告書で開示している項目と類似していることから、委員会設置会社の記載事例を参考とすることができます。

1. 業務の適正を確保する体制の内容

1)取締役および使用人の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制

この項目は、いわゆる「コンプライアンス体制」といわれるものと解釈できます。つまり、一般的には、経営方針それにもとづく行動指針などの遵守基準の策定に始まり、コンプライアンス基本方針・関連規程やコンプライアンス推進体制および内部通報制度などが検討されることになります。

2)取締役の職務の執行に係る情報の保存および管理に関する体制

この項目は、文書情報管理体制の整備を要請し、取締役の職務執行について、重要な意思決定を議事録として残し、その記録を何年間保管するのかなど、取締役会などで決議した事項の概要を記載することになります。具体的には、議事録や稟議書類等の保存対象情報の定義、保管期間および保管場所等を定める文書管理規程やその改廃の承認、監査役等の要求に対する情報提供などについて検討されることになります。なお、委員会設置会社の事例では、文書・情報の保管にとどまらず、情報セキュリティに係る取組みにいたるまでの記載例があります。

3)損失の危険の管理に関する規程その他の体制

この項目では、いわゆる「リスクマネジメント体制」といわれているものと解釈できます。自社で発生する可能性がある多様なリスクについて、その発生を未然に防止するための手続き・体制や、発生した場合の対処方法等を定めた社内規程の整備など、取締役会で決議した事項の概要を検討することになります。委員会設置会社の事例では、自社なりに定義したリスク内容や事業継続計画にいたるまでの記載例があり、この項目でいう損失の危険とは、防災などの単なる危機管理ではなく、全社的リスクマネジメント(ERM)として、自社なりに定義することが望まれます。

4)取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制

この項目では、取締役の職務執行体制ということで、いわゆるコーポレートガバナンスに含まれるもの、さらにはそれにもとづく効率的な経営管理全般に関する事項を要求しているものと解釈できます。具体的には、経営機構、執行役の職務分掌、経営管理システム、予算制度・業績管理などについて検討することになります。

5)当該株式会社ならびにその親会社および子会社からなる企業集団における業務の適正を確保するための体制

この項目は、これまでに述べた内部統制システムの構築を、連結ベースで行うことを求めたものです。従来は、「子会社」の立場から「親会社」を含む体制を言及することはありませんでしたが、今回、子会社自身においても、子会社が親会社から不当な指示を受けた場合の対応などについての子会社自身の方針・体制整備が求められています。

2. 監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

前述のほか、監査役設置会社は、1.の項目に加えて、以下の監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制について取締役会が決定しなければなりません。

(1)監査役の職務を補助する使用人を置くかどうか、置くとした場合に、監査役専属の使用人を置くのか、他の部署に属する使用人に兼務の形で監査役の職務の補助をさせるのか、(2)監査役の職務を補助する使用人を置くこととする場合に、当該使用人の他部署からの異動や他部署への異動について、監査役の同意に係らしめるのか否か、当該使用人による監査役の職務の補助に関して執行役の指揮命令権が及ぶものとするのかなど、(3)取締役・使用人からの監査役への報告・通報体系、および関係部門からの内部統制の実施状況を監査するための報告などを決議することになります。

3. 事業報告での開示と監査役の監査

上記の事項は、会社法施行日である2006年5月1日以後最初に開催する取締役会で決定することになっています。

また、取締役会が決定した上記の事項の内容を事業報告に記載しなければなりません。その事業報告に業務の適正を確保するための体制に関する事項についての決定または決議の内容が記載された場合には、監査役がその内容を相当でないと認めるときはその旨およびその理由を監査報告書に記載しなければなりません。

会社法の要求する内部統制システム

それでは、会社はどのように内部統制システムの構築を推進すればよいのでしょうか。

取締役会で決定・決議する際に、何を、どのように、どこまで決定すればよいのか悩んだ企業も多くありました。ここで留意すべきことは、会社法は、内部統制システムとして、法的にどこまで整備すればよいのかという達成レベルを明示しているものではないということです。内部統制というものは、既に企業独自に何かしら構築されているもので、その現状およびあるべき姿は各社各様であり、その推進方法は自社なりに設定することが求められています。

つまり、会社法では内部統制を整備することにつき、取締役が公式に決議して、構築を進めるそのプロセスが求められているのです。その構築にあたっては、COSOなどの内部統制フレームワークなどを活用しながら自社なりに推進していくことが重要となるでしょう。

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