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過大支払利子税制

過大支払利子税制

支払利子の損金算入を制限する制度として、日本には、移転価格税制(独立企業原則に照らして高率な利率による支払利子の損金算入を制限する制度)及び過少資本税制(資本に比して過大な負債の利子の損金算入を制限する制度)がすでにありましたが、所得に比して過大な支払利子の損金算入を制限する制度はありませんでした。

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そこで、主要先進国の諸制度を踏まえ、2012年度税制改正により、所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防止することを目的として、過大支払利子税制が導入されました。

制度内容の周知及び企業の資金政策等の見直しのための準備期間を設ける観点から、本制度は2013年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。

本制度の概要は、弊社ニューズレター「2012年度税制改正大綱」(2011年12月14日発行)でお知らせしていますが、このニューズレターではより詳細に解説いたします。

 

英語コンテンツ
Japanese Earnings Stripping Rules

I. 制度の概要

過大支払利子税制とは、法人の関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%を超える事業年度において、その超える部分の金額の損金算入を制限する制度です。本制度により損金不算入とされた金額は、超過利子額として翌事業年度以降、7年間にわたり繰り越され、関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%に満たない事業年度において、その満たない金額を限度として損金に算入されます。

II. 過大支払利子の損金不算入

法人の関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%を超える事業年度において、その超える部分の金額(以下の算式により計算した金額)が損金に算入されないこととなります。

関連者純支払利子等の額※1 – 調整所得金額 x 50%


※1 関連者支払利子等の額の合計額から控除対象受取利子等合計額を控除した残額

1. 調整所得金額

調整所得金額とは、下記の(1)の規定を適用せず、かつ、支出した寄附金の全額を損金に算入した場合のその事業年度の所得の金額(欠損の場合には、マイナスの金額)に、(2)に掲げる金額を加算した金額(マイナスの金額の場合には、ゼロ)をいいます。


(1)調整所得金額の計算上適用しない規定のうち主なもの

  • 受取配当益金不算入
  • 外国子会社から受ける配当等の益金不算入
  • 物損等の事実による資産の評価損の損金算入
  • 法人税額から控除する所得税額・外国税額の損金不算入
  • 欠損金の繰越控除額等
  • 国際戦略総合特別区域における指定特定事業法人の課税の特例
  • 特定目的会社に係る課税の特例等
  • 過少資本税制
  • 本制度(過大支払利子税制)


(2)加算する金額

  • 関連者純支払利子等の額
  • 損金に算入される減価償却費
  • 損金に算入される貸倒損失額

2. 関連者等

関連者等とは、次の(1)関連者及び(2)一定の第三者をいいます。


(1)関連者
法人の関連者とはその法人との間に特殊の関係を有する法人又は個人をいい、関連者が法人の場合における特殊の関係は以下の関係をいいます。関連者が個人の場合における特殊の関係も、以下とほぼ同様です。


(a)二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式の50%以上を直接又は間接に保有する関係

(b)二の法人が同一の者によってそれぞれその発行済株式の50%以上を直接又は間接に保有される関係

(c)役員の兼務、取引の依存又は事業活動に必要な資金の借入れ等の事実により、二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係


(2)一定の第三者

(a)関連者が第三者を通じてその法人に対して資金を供与したと認められる場合(いわゆるBack-to-backローンが提供された場合)におけるその第三者

(b)関連者が第三者に対してその法人の債務の保証をすることにより、その第三者がその法人に対して資金を供与した場合のその第三者

(c)関連者からその法人に貸し付けられた債券が第三者に担保として提供等されることにより、その第三者がその法人に資金を供与した場合のその第三者

(d)関連者が第三者(A)に対して債務保証をすることにより、第三者(A)からその法人に貸し付けられた債券が、他の第三者(B)に担保として提供等されることにより、他の第三者(B)がその法人に資金を供与した場合の第三者(A)及び他の第三者(B)

3. 関連者支払利子等の額

関連者支払利子等の額とは、法人の関連者等に対する支払利子等の額で、関連者等の課税対象所得(原則として、日本において、所得税又は法人税の申告の対象となるもの)に含まれないものをいいます。したがって、日本に恒久的施設を有しない非居住者又は外国法人である関連者等に対する支払利子等は、源泉所得税が課されるか否かにかかわらず、関連者支払利子等の額とされます。

4. 控除対象受取利子等合計額

各事業年度の控除対象受取利子等合計額とは、次の算式により計算した額をいいます。

なお、法人が国内関連者等(その法人の関連者等のうち居住者、内国法人又は国内に支店等を有する非居住者若しくは外国法人)から受ける受取利子等の額については、以下のいずれか少ない金額が上記算式の受取利子等の額とされます。

  • その国内関連者等から受ける受取利子等の額
  • その法人のその事業年度と同一の期間において、その国内関連者等が非国内関連者等(その法人及びその法人に係る他の国内関連者等以外の者)から受けた受取利子等の額

これは、本制度の対象となる法人が国内関連者等に貸付けを行うことによるループホール(その法人の受取利息が関係者純支払利子等の額を減少させるともに、その国内関連者等の支払利息が課税所得を減少させることになります。)を防止する観点から設けられた措置です。

5. 支払利子等及び受取利子等

本制度における支払利子等及び受取利子等とは、それぞれ以下のとおりです。


(1)支払利子等

  • その法人の支払う負債の利子
  • 手形の割引料
  • 売買取引として取り扱われるリース取引(対価の額が1,000万円以上のもの)のリース料に含まれる利息相当額
  • 社債等の償還差損
  • 上記2(2)(b)(c)(d)の場合において関連者等に支払われる債務の保証料及び債券の使用料
  • 償還有価証券のアモチゼーションによる調整差損
  • その他経済的な性質が利子に準ずるもの

 

(2)受取利子等

  • その法人の支払を受ける利子
  • 手形の割引料
  • 売買取引として取り扱われるリース取引のリース料に含まれる利息相当額
  • 償還有価証券のアキュムレーションによる調整差益
  • その他経済的な性質が利子に準ずるもの

6. 債券現先取引等がある場合の緩和措置

現金担保付債券貸借取引で借り入れた債券又は債券現先取引で購入した債券を、関連者等に対し、現金担保付債券貸借取引で貸し付ける場合又は債券現先取引で譲渡する場合には、これらの取引に係る受取利子及び支払利子は除外して、損金不算入額を計算することとされています。

これは、金融機関等が国外の関連者等から債券現先取引等により借り入れた資金を、国内の金融機関等に対して貸し付ける取引が行われていることに配慮したもので、過少資本税制においても、同様の取引に係る緩和措置が設けられています。

III. 過大支払利子の損金不算入の適用除外基準

法人が次のいずれかに該当する場合には、確定申告書に明細書等の添付があり、かつ、その計算に関する書類を保存していることを要件に、本制度の損金不算入の規定は適用されません。

 

(a)その事業年度の関連者純支払利子等の額 ≦ 1,000 万円
(b)その事業年度の関連者支払利子等の額の合計額 ≦ その事業年度の支払利子等の額の合計額 × 50%

その法人に係る関連者等に対する支払利子等の額でその関連者等の課税対象所得に含まれるものは除かれます。

IV. 超過利子額の損金算入

法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において本制度の適用により損金に算入されなかった金額(以下「超過利子額」)がある場合には、その超過利子額は、関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%に満たない事業年度において、その満たない金額を限度として、損金に算入されます。ただし、超過利子額に係る事業年度のうち最も古い事業年度以後の各事業年度の確定申告書に明細書の添付があり、かつ、この措置の適用を受けようとする事業年度の確定申告書に一定の記載及び明細書の添付がある場合に限られます。

なお、この超過利子額には引継ぎ規定が設けられており、適格合併が行われた場合には、被合併法人の超過利子額は合併法人に引き継がれます。また、清算中の法人の残余財産が確定した場合には、その法人との間に完全支配関係があり、かつ、その法人の株式の全部又は一部を有する内国法人に、その法人の超過利子額のうち、その内国法人の持分に応じた金額が引き継がれることとされています。

V. 他の制度との関係

1. 過少資本税制

本制度及び過少資本税制の両制度において損金不算入額が算出される場合には、その算出された金額のうちいずれか多い金額に係る制度が適用され、両制度が重複して適用されることはありません。本制度には超過利子額の7年間の繰越し規定がありますので、将来損金算入する機会が残されることから、過少資本税制ではなく本制度が適用された方が納税者にとって有利といえます。

本制度と過少資本税制の主な相違点は、以下のとおりです。

  過大支払利子税制 過少資本税制
(a)制度のターゲットとされる取引 国外の関連者等に対し、所得に比して過大な利子を支払う取引 国外の株主に対し、配当に代わり利子を支払う取引
(b)制限を受ける利子の支払先 国外の関連者等
(外国の子会社も含まれる。)
国外支配株主等
(外国の兄弟会社は含まれるが、子会社は含まれない。)
(c)損金不算入額 調整所得金額の50%を超える純支払利子の額 資本の3倍を超える負債に係る支払利子の額
(d)繰越制度 あり
(超過利子額の7年間繰越制度)
なし

2. タックス・ヘイブン対策税制

タックス・ヘイブン対策税制のもと、内国法人(以下「親会社」)が軽課税国にある一定の外国子会社(以下「特定外国子会社等」)を有し、かつ、一定の要件等が満たされない場合には、その特定外国子会社等の所得の全部又は一部がその親会社の所得とみなされ、その親会社の他の所得とともに合算課税されます。

この場合において、親会社が特定外国子会社等に対し支払った利子等の額が本制度により損金算入の制限も受けることとなると、タックス・ヘイブン対策税制による合算課税と本制度による損金不算入の二重課税が生じることとなります。そこで、この二重課税を避けるため、以下の特例措置が設けられています。(タックス・ヘイブン対策税制の合算課税は、特定外国子会社等の事業年度終了の日から2ヵ月を経過する日を含む、親会社の事業年度において行われるため、二重課税が生じるタイミングに応じ、以下の2つの場合に分けて規定されています。)

合算課税が行われる事業年度 二重課税の調整措置
(a)親会社が特定外国子会社等に対して利子を支払った事業年度の翌事業年度
 
利子の支払事業年度において生じた超過利子額のうち、その特定外国子会社等に対する支払利子の額に係る金額が損金に算入される。
(その特定外国子会社等の合算課税される所得の金額が限度)
(b)親会社が特定外国子会社等に対して利子を支払った事業年度 損金不算入額(この規定を適用しないで計算した金額)のうち、その特定外国子会社等に対する支払利子の額に係る金額が、損金不算入額から減額される。
(その特定外国子会社等の合算課税される所得の金額が限度)

3. 連結納税制度

連結納税制度を採用している場合には、連結グループを一体として本制度が適用されることになります。連結法人の本制度適用上の主な留意点は、次のとおりです。

  • 連結法人が他の連結法人から配当を受ける場合において、その配当の計算期間を通じて連結完全支配関係があったときは、その連結法人の調整所得金額の計算上、その配当については受取配当益金不算入の規定を適用する。
  • 連結法人の控除対象受取利子等合計額を計算する場合における受取利子等の額には、他の連結法人からの受取利子等の額を含まない。
  • 関連者支払利子等の額及び適用除外基準の判定をする場合における支払利子等の額には、他の連結法人に対する支払利子等の額を含まない。

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