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German Business Bulletin Vol.80

German Business Bulletin Vol.80

最新の税制動向について、2012年10月に連邦議会を通過したドイツ税制改正案や移転価格税制、EU域外の事業者によるVAT還付手続き、単一ユーロ決済圏の観点から解説しています。

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「2013年ドイツ税制改正案」と「法人課税及び税務上の旅費規程に関する改正・簡素化法案」

「2013年ドイツ税制改正案」
2013年ドイツ税制改正案は、2012年10月に連邦議会(Bundestag)を通過するも連邦参議院(Bundesrat)で否決されたため、仲裁委員会(Vermittlungsausschuss)にて妥協案が討議され、再び連邦議会と連邦参議院へ持ち込まれました。2013年1月17日に連邦議会は無事通過しましたが、2月1日に再び連邦参議院で否決されています。

現在、否決された2013年ドイツ税制改正案に盛り込まれていた下記の項目などを含めた新法案が、連立与党により草案として公開されています。

  • VATに関する変更(特に役務提供地に関するルール、リヴァースチャージ、請求書の内容等)
  • 電子課税情報取得方式(給与計算時のタックスカードに代わるもの)
  • カンパニーカーの課税(EVの普及に対する)など


「法人課税及び税務上の旅費規程に関する改正・簡素化法案」
法人課税及び税務上の旅費規程に関する改正・簡素化法案は、2012年10月に連邦参議院で一旦否決されたものの、仲裁委員会からの妥協案を、2013年1月17日に連邦議会が、2月1日には連邦参議院が可決しました。

 

At a glance:
「法人課税及び税務上の旅費規程に関する改正・簡素化法案」

仲裁委員会による最終的な妥協案における改正項目は、当初案に比して、著しく少ないものでした。これは、仲裁委員会の妥協案に含まれる僅かな変更でも、個人所得税及び法人税に重要な影響を及ぼすことから、合意に時間がかかったためと想像されます。

仲裁委員会による妥協案は、2013年1月17日に連邦議会通過後、2013年2月1日に連邦参議院にて可決されました。可決された法案には以下の3点が盛り込まれています。

(1)旅費規程の改正及び簡素化(交通費、食事手当、宿泊費等)
(2)判例及びEU規制に基づくドイツ連結納税制度(Organschaft)の簡素化
(3)欠損金の繰戻還付枠の増額(511,500ユーロから1,000,000ユーロに増額)

連結納税制度に関する改正の多くが、所得通算を効果的にするための形式的かつ複雑な要件の簡素化に焦点が置かれている一方、特に上記(3)の欠損金の繰戻還付の適用範囲の拡大については、ドイツに子会社を有する日系多国籍企業にも便益があるものと考えられます。

当該改正案における欠損金の繰戻還付では、2013年に生じた欠損金を、2012年に繰り戻し、1百万ユーロを限度として2012年の課税所得と相殺することができます(過年度は、515,500ユーロまでとされていました)。当該改正は、ユーロクライシスによって経済環境が悪化した、ドイツの中小企業の財務状況を改善・復活させることを目的として制定されました。

Recommendation

2013年税制改正は、上記両法案が仲裁委員会での協議も含め、同時並行的に議論されてきたため、いずれの法案が可決され、また、どのような改正がなされたのか、整理する必要があります。

最終的に可決された「法人課税及び税務上の旅費規程に関する改正・簡素化法案」における旅費規程の改正(2014年より適用開始)については、日本企業の皆様に直接関連するものであり、KPMGにて、当該改正を含めた旅費規程の最新情報をお伝えする日本語セミナーを開催予定です(KPMGフランクフルトでは8月開催予定、他のオフィスについても適時開催予定)。ご興味をお持ちの方は、貴社ご担当のKPMGスタッフに、お気軽にご連絡ください。

日独租税協定の交渉状況

新日独租税協定は、依然として、交渉過程にあり、発効時期が見えない状況にあります。現行の租税協定の問題点の一つである配当源泉税(制限税率15%)により、ドイツ子会社から日本の親会社への配当に苦慮されているという現状もあります。一方、昨今の欧州司法裁判所の判決に、ドイツが非居住者に対する配当に対して課するドイツ源泉税は、EU法に抵触しているとする興味深いものがあります。

 

At a glance:

上記の判決は、EU域内の非居住者に対する配当にかかるドイツ源泉税の可否(EU法への抵触の可否)についてのものですが、その根拠に「資本移動自由の原則」があります。当該原則によれば、EU加盟国は、自国の者と他の加盟国の者に対して差別的な取り扱いをしてはならないとしており、ドイツの非居住者に対する配当源泉税はこれに抵触しているものとしています。つまり、ドイツ国内間における配当は、実質的に(ドイツの)配当受領者に追加的な税負担はありませんが、ドイツ国外への配当については、(ドイツ国外の)配当受領者がドイツ源泉税を追加的に負担することとなり、これが差別的な取り扱いをしているということとしています。

一見、当該議論は、EU法に基づくものであり、EU加盟国のみに対して影響がある判決に見えますが、EU法に規定する「資本移動自由の原則」は、EU域内の法人のみならず、EU域外の法人へも適用されるものとされていることから、当該議論は、EU域外の法人である日本の株主にも影響があるものと考えられます。(つまり、ドイツ法人の株主である日本法人に対して課す配当源泉税は、EU法に抵触している可能性があるということになります。)

Recommended Action

上記に関して、現時点において、ドイツ税務当局の明確な見解は公表されていません。また、新日独租税協定が発効されるまでは、税負担の観点から日本への配当を保留するということは引き続き継続すべきと考えられます。以上の観点から、現時点で、日系企業が取りうる手段は、おおむね以下の通りと考えられます。

  1. 過去配当を行い(又は、税務調査で隠れた利益配当の認定を受け配当源泉税(15%)を納税している場合
    ドイツ税務当局に対して、配当源泉税の還付申請を行うかどうか社内で検討を行うことが考えられます。検討の要否は上記の議論に基づくものですが、還付申請期限(本件に関する明文規定はないが、一般的な4年の期限が考慮されることも考えられる)を考慮し、コストとベネフィットを比較の上、期限を逸しないよう適時に判断することが望ましいと言えます。
  2. 新租税協定前に日本へ配当等を行いたい場合
    現行の租税協定を考慮した場合、15%による税負担を鑑みれば、新租税協定発効まで配当を見合わせるべきと考えられます。しかしながら、余剰資金の還流(日本における資金のニーズ)や配当可能利益の確保という要請から、アップストリームローンの活用や支払いを繰り延べた配当の決議など、事前の策を講じることも考えられます。

移転価格税制の動向 - 連邦財政裁判所判決 2012年10月11日(IR 75/11)

ドイツ連邦財政裁判所は、2012年10月の判決において、ドイツ移転価格税制における関係会社間取引にかかる契約書等の事前の書類の整備に関する要件は、OECDモデル条約第9条に記載される独立企業の原則が、対象国間の租税条約等において規定されている限りにおいて、適用されない旨を明確にしました。

 

At a glance:

判決は、適切に書類の整備がなされている独立企業間価格による関係会社間取引は、仮にそれが事前又は口頭での確認のみで遡及的に書類の整備がなされたものであったとしても認められるべきであるとするKPMGの見解を支持するものといえます。即ち、移転価格税制における関係会社間取引の価格の妥当性は、その取引が、適切な検討に基づく独立企業間価格によっているか否かをもって判断すべきであり、ドイツ移転価格税制が要求する取引開始前の契約書等の書類整備の不備のみをもって、その適正性を判断すべきでないということになります。

Recommended Action

当該判決に基づき、現在進行中及び将来の税務調査における税務調査官からの形式面のみを根拠とした疑義に対する抗弁として有効なものであると考えられますが、今日のドイツの税務調査においては、事前の文書化の問題や契約の遡及的締結に関して、調査官の注意を引き、また、疑義を持つことが見受けらるのも事実です。実務上、形式面は、客観的な側面を持ち、無用な疑義を避けるためには有効な手段として考えられることから、引き続き、書類の整備に関しては、事前の十分な検討を行い準備をしていくことが望ましいと考えます。

EU域外の事業者によるVAT還付手続の簡素化 - 欧州委員会による要請

ドイツに対するEU域外の事業者に対する仮払VAT(Input VAT)の還付に関する、欧州委員会(EU Commission)によるVAT侵害訴訟が第二ステージに入りました。

 

欧州委員会(EU Commission)は、ドイツに対し、EU域外の事業者がVAT還付申請の際に要求される納税者自身による署名の要件を課すべきではないと要請しました。

ドイツのVAT税制上、EU域外の事業者による還付申請については、納税者自身の署名が必須とされております。

欧州委員会は、当該ドイツにおける取り扱いは、基本的なEU法の原則である実効性、均衡、同等性に抵触しており、EU域外の事業者に対して自身の署名を要求することは、EU域内に拠点を有しない者がVATの還付を受けることを過度に困難にさせるものであるとしています。欧州委員会は、ドイツが署名を要件とすること、即ち租税回避への対応及び適切な還付手続の確立をすることは、税務代理人による代行を通じても可能であると考えています。

今後の当該侵害訴訟の進展が注目されるべきところですが、本訴訟が欧州委員会の主張の通りとなった場合には、例えば、事務手続に煩雑さが伴う公証された商業登記簿を証憑とする納税者自身による署名手続等をなしに、VATの還付手続をスムーズに進めるための税務代理人による代行の可能性など、将来、欧州域外の事業者が行うVATの還付手続が簡素化が図られると考えられます。

単一ユーロ決済圏 - Fit for SEPA?

単一ユーロ決済圏(The Single Euro Payments Area(SEPA))とは、欧州委員会及び欧州中央銀行が取り組むユーロ建ての決済プロセスの共通化のためのプロジェクトです。SEPAの導入により、欧州加盟国間(スイス等を含む)の資金決済がユーロ建てにより、迅速かつ効率的に行うことが可能となります。

 

SEPAの導入は、ユーロ建ての取引を行う全ての法人(及び個人)の国際間の資金決済に影響を与えるものと考えられます。KPMGの調査では、SEPA導入に伴う手続やIT面の検討を行っている法人は、現時点で20%程度であるという情報もあり、将来の導入に向けた検討を開始することが望ましいと考えられます。

 

At a glance:
EU 規則(260/2012 of 14 March 2012)によると、将来、例えばBIC(business identifier codes)などの国際間の資金決済において必要であったコードが、将来不要となることが考えられます。SEPA の導入に伴う国際間の資金決済時の新たなデータストラクチャーの導入やプロセスの導入により、今後の国際間の資金決済に向け、既存のERPシステムのカスタマイズなど、対応の検討が必要となると考えられます。
SEPAへの移行期限は、2014年2月とされています。
また、上記の移行期限のほか、BICが国際間の資金決済において不要となる2016年2月1日、ユーロ建ての取引に関する欧州域外の国のSEPAに基づく銀行口座振替及び自動引落の移行期限である2016年10月31日も見据え、システムのカスタマイズのスケジュールを検討していく必要があると考えられます。

Recommendation

SEPAではISO20022が標準メッセージフォーマットとして採用されているため、データコンプライアンスへの対応に向けた、自社システムのカスタマイズの検討を行い、SEPAの移行期限を見据え検討を開始することが望ましいと考えられます。

また、SEPAへの対応により、各国ごとに保有・管理していた銀行口座や送金手続などの統一化が図られ、効率化の良い機会になるとも考えられます。

SEPAに関する詳細な情報は、EU Commissionの公式HPでも確認ができます。

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